日立化成 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 546,468 526,687 3.8 -2015中期経営計画の下、M&Aを含む海外投資の成果の刈り取り
-新製品・新事業の創出
-生産性の向上をめざした業務プロセスおよびコスト構造の改革など
営業利益 53,036 29,226 81.5 -売上拡大
-継続的な原価低減
-希望退職等の構造改革に伴う固定費削減効果
税引前当期利益 53,682 34,692 54.7 -
当期利益 39,152 22,867 71.2 -
親会社株主に帰属する当期利益 38,512 22,587 70.5
-機能材料
売上収益 269,769 277,127 (2.7) -無機材料:リチウムイオン電池用カーボン負極材は、環境対応自動車向けが減収。
-樹脂材料:機能性樹脂は、2015年4月に台湾日邦樹脂股份有限公司を連結子会社化したことにより増収。
営業利益 38,574 23,494 64.2 -
-先端部品・システム
売上収益 276,699 249,560 10.9 -自動車部品:樹脂成型品、粉末冶金製品は、海外子会社の売上増加により増収。摩擦材は、国内の売上は軽自動車の需要減により減少したものの、海外子会社の売上が増加し、前年度実績並みとなった。
-蓄電デバイス・システム: 車両用電池は、国内外で補修用途を中心に売上を拡大し、増収。
営業利益 14,388 5,846 146.1 -



事業再編

-2016年1月、新神戸電機を吸収合併、蓄電システム事業を同社第3の基幹事業に成長させる基盤を構築
-2015年4月、米国に地域統括会社Hitachi Chemical Company America, Ltd.を設置
-2015年4月、タイで複数の子会社を再編・統合、経営資源を集中
-2015年4月、台湾日邦樹脂股份有限公司を連結子会社化、アジア地域における事業強化
-2015年1月、台湾神戸電池股份有限公司を連結子会社化、海外における販路・拠点を獲得

新神戸電機を吸収合併
-同社は完全子会社の新神戸電機の吸収合併に伴い、2016年1月1日を効力発生日として、新神戸電機の完全子会社で電池関連部品の製造・物流業務を担当する新神戸テクノサービスを日立化成に吸収合併すると発表した。日立化成を存続会社とする吸収合併方式で、新神戸テクノサービスは解散する。さらに、新神戸電機の完全子会社である新神戸プラテックスを、同日付で日立化成の完全子会社である日立化成オートモーティブプロダクツに吸収合併する計画。新神戸プラテックスは、合成樹脂製品の製造を行っている。(2015年8月25日付プレスリリースより)

海外事業

<米国>
-米国販売子会社Hitachi Chemical Company America, Ltd. (HCA) に統括機能を付与し、2015年4月1日付で米国における地域統括会社として発足させると発表。同社は現在、米国に販売子会社1社、製造子会社2社、研究開発子会社1社を有している。統括会社の発足により、製造子会社であるHitachi Chemical Diagnostics, Inc. (診断薬の製造・販売) およびHitachi Powdered Metals (USA), Inc. (粉末冶金製品の製造・販売) はHCAの完全子会社となる。また、研究子会社のHitachi Chemical Research Center, Inc. (バイオテクノロジーに基づく研究・開発) は、HCAに吸収合併される予定。 (2015年2月3日付プレスリリースより)

<タイ>
-タイの連結子会社4社を2015年4月に統合すると発表。経営資源を1社に集約することで、全社機能のレベルアップを図る。今後も成長が期待される東南アジア市場でのポジションを高め、事業拡大を目指していく。現地子会社の日立粉末冶金 (タイランド) を存続させ、合弁会社を除く日本ブレーキ (同)、日立ストレージバッテリー (同)、日立化成 (同) の連結子会社3社を統合する。会社名は日立化成アジア (同) に変更し、存続会社の資本金を7億6,445万バーツ (約24億9千万円) から21億8千万バーツ (約71億円) に拡大。チャチューンサオ県に本社を置く計画で、従業員数は4社の従業員数を合計した約1,300人になる見通し。(2014年9月2日付日刊自動車新聞より)

<台湾>
-2015年5月、台湾のTaiwan PCB Techvest (TPT) と配線板事業に関して協業すると発表した。これに伴い、日立化成の100%子会社である台湾日立化成工業股份 (HCT) の株式80%をTPTに譲渡し、HCTをTPTと同社の合弁会社とする予定。株式譲渡時期は2015年11月1日を予定している。なお、TPTへの株式譲渡に先立ち、HCTから感光性フィルム事業を分離し、日立化成の100%子会社である台湾日立化成電子材料股份 (HCET)に移管する予定。台湾地域および中国大陸に展開するTPTグループの工場との連携を図ることで、日立化成は十分な生産能力を備えた供給体制を構築し、今後需要が見込まれる車載・産業・情報通信用途向けに配線板事業を拡大する意向。(2015年5月29日付プレスリリースより)

-2015年4月、アジア地域での接着剤事業を強化するため、台湾の関連会社を子会社化したと発表した。自動車や建築向け接着剤の分野で世界最大の市場を持つ中華圏での事業拡大を図る。これまで、台湾では日立化成グループが32%の株式を保有する現地メーカーの台湾日邦樹脂股份 (TLB) とTLBの関連会社を通じて、接着剤製品の製造や販売を行っていた。今回は新たに24%の株式を取得し、TLBを子会社化したもの。(2015年4月10日付日刊自動車新聞より)

製品開発

バックドアモジュール (外装樹脂成形品)
-国内で初めてバックドアモジュールの樹脂化を実現。日産 「X-trail」 に採用。高強度・高剛性のガラス繊維強化熱可塑樹脂製インナーパネルと、外観に優れたエンジニアリングプラスチック製アウターパネルを接着剤で接合。自動車の軽量化、低燃費化、デザイン性の向上に貢献。

アイドリングストップシステム (ISS) 車用バッテリー
-新型セパレーター (G3セパレーター) を採用し、従来のISS車用バッテリーと比較して耐久性を1.5倍に向上。製品保証をISS車用鉛バッテリーとして業界初の38カ月保証とした。軽自動車向けに 「Tuflong G3」 を2016年6月に発売。乗用車向けは2016年秋に発売する予定。

銅フリーディスクブレーキパッド
-水質汚染の要因となる銅を用いないディスクブレーキパッドを開発。他の金属、無機系材料で補完させる技術。米国の銅使用規制*に先立って開発し市場投入予定。
*2021年から銅含有量5%以上、2025年から0.5%以上の製品は、販売および新車への組み付けが禁止される予定。

研究開発体制

-2016年4月1日付の組織再編により、研究 (R機能) と開発 (D機能) の役割を明確化し、機能の強化を図る。

  • イノベーション推進本部・コア技術革新センター: 将来の非連続成長に必要な基盤技術開発 (R機能)
  • 開発統括本部: 既存事業の拡大を支える新製品開発 (D機能)



研究開発拠点

名称 所在地
コア技術革新センター 茨城県つくば市
コア技術革新センター (山崎) 茨城県日立市
コア技術革新センター (下館) 茨城県筑西市
コア技術革新センター (埼玉) 埼玉県深谷市
Hitachi Chemical Research Center, Inc. 米国カリフォルニア州
Hitachi Chemical - SJTU Research & Development Center 中国上海市



技術供与契約

(2016年3月31日現在)
契約会社名 相手方の名称 契約内容 契約期間
同社および
日本ブレーキ工業
Federal-Mogul Corp.
(米国)
ディスクブレーキパッドに関する特許実施権および技術情報の供与 2007年3月31日 -
契約製品を使用する対象車種の生産終了時
同社 Brembo S.p.A.
(イタリア)
ディスクブレーキパッドに関する特許実施権および技術情報の供与 2009年8月31日 -
2014年8月31日
(その後は5年ごとの自動更新)
同社 Hung-A Forming Co., Ltd.
(韓国)
インナーパネルを除くバックドアモジュールに関する技術実施許諾 2013年3月11日 -
2029年9月30日
(その後は1年ごとの自動更新)



技術導入契約

(2016年3月31日現在)
契約会社名 相手方の名称 契約内容 契約期間
同社 日立製作所 (日本) ミューチップタグに関する特許権および技術ノウハウの実施権の取得 2007年04月20日-
2017年04月19日



研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 27,800 26,900 26,200
-機能材料 19,800 19,800 19,900
-先端部品・システム 8,000 7,100 6,300


-機能材料: 大型発電機用高熱伝導マイカテープ、微細塗布用反応性ホットメルト接着剤等
-先端部品・システム: 自動車用マニュアルトランスミッション用シンクロハブ、高周波対応配線板等

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全体 32,000 26,600 33,500
-機能材料 12,000 12,500 13,600
-先端部品・システム 20,000 14,100 19,900


2016年3月期の設備投資額
-機能材料: 国内における半導体回路平坦化用研磨材料の評価設備導入、ディスプレイ用回路接続フィルムの試作評価設備導入等
-先端部品・システム: 国内における樹脂成形品の生産能力増強、タイにおける摩擦材の生産能力増強、米国における粉末冶金製品の生産能力増強等

2017年3月期の設備投資額
-機能材料 23,600百万円、先端部品・システム 21,600百万円で、合計45,200百万円を予定している。

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
売上収益 550,000 546,468 0.6
-機能材料 274,000 269,769 1.6
-先端部品・システム 276,000 276,699 (0.3)
営業利益 54,000 53,036 8.3
税引前当期利益 55,000 53,682 2.5
当期利益 39,200 39,152 0.1
親会社株主に帰属する当期利益 38,500 38,512 0.0

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-機能材料: 需要拡大が期待される次世代半導体や車載用機器等向けに、半導体実装材料や機能性樹脂を中心に拡販を強化する。
-先端部品・システム: 自動車部品は、海外での販路・拠点強化、差別化製品の投入加速等により、海外での実績拡大を図る。蓄電デバイスは、自動車用、産業用ともに海外での需要獲得を強化する。

中期経営計画 (抜粋)

2015中計 2018中計
全社 グローバル事業強化、事業構造改革
-売上収益: 5.6% (CAGR、2012年度→2015年度)
-営業利益率: 9.7%
グローバル事業強化、経営基盤の強化
-売上収益: 7~8% (CAGR、2015年度→2018年度)
-営業利益率: 11%
自動車部材 海外生産体制の拡充
-北米や中国で製造・販売拠点を新設・増設
-中国で自動車用成形品、タイで粉末冶金製品の売上収益が拡大
-海外生産比率は51.1% (2014年3月期) から58.3% (2016年3月期) まで上昇
製造拠点に加え、海外開発拠点の拡充
-欧州市場に参入強化
環境対応製品戦略
-軽量化: 外板部品、構造部品の樹脂化
-燃費改善: ターボ・アイドリングストップ・可変バルブ機構向け部品
-環境規制: 銅フリー化、電動化
-電装化: 熱マネジメント部材
蓄電システム アイドリングストップシステム (ISS) 車用バッテリー
-耐久性を従来比で1.5倍に向上した 「Tuflong」 シリーズを発売
自動車用バッテリーのシェア拡大
-日本:ISS車用バッテリーは軽自動車を軸に新車認定取得を拡大するほか、補修用への拡販にも注力する
-欧州:開発・製造拠点の構築
-ASEAN:製造拠点の拡充、二輪車用バッテリーの販売ルート確立


-10年後に高機能材料を基軸に化学を超えたイノベーションをグローバルに提供する企業を目指す。