日本精工 (株) 2014年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万円) |
2014年 3月期 |
2013年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 871,742 | 732,842 | 19.0 | - |
営業利益 | 68,049 | 32,361 | 110.3 | - |
経常利益 | 66,785 | 30,310 | 120.3 | - |
当期純利益 | 31,167 | 15,739 | 98.0 | - |
自動車関連製品 | ||||
売上高 | 590,545 | 490,545 | 20.4 |
1) |
営業利益 | 49,201 | 24,992 | 96.9 | - |
要因
1) 自動車事業売上高
-自動車関連需要は、自動車軸受および自動車部品ともに増加。
<日本>
-売上減。消費税増税前の駆け込み需要による効果もあったが、一部生産の海外移転の影響を受けた。
<米州>
-売上増。底堅い買い替え需要により市場が堅調に推移。
<欧州>
-売上増。夏以降自動車市場が持ち直しの傾向にあり、新規受注品の立ち上げも寄与し、軸受が増収。
<中国>
-売上増。自動車生産の堅調な拡大により、軸受が増収。電動パワーステアリングが新規車種で立ち上がった。
<ASEAN>
-軸受が新規受注効果により増収。
新会社
<中国>-2013年4月、中国で12番目、内陸部で初となる生産拠点「合肥恩斯克有限公司」 (安徽省合肥市) で開所式を開いた。創業100周年を迎える2016年までに中国事業での売り上げを2013年3月期の2倍強となる2千億円にまで高める計画。
<メキシコ>
-2013年4月、メキシコに新設した自動車軸受の製造会社、NSK Bearings Manufacturing Mexico S.A. de C.V.の工場の起工式を行った。投資額は約70億円。自動車産業が集積する同国中部のグアナファト州サンタフェ市工業団地に約10万平方メートルの敷地を確保し、第1期工事として約1万3千平方メートルの面積を持つ工場を建設する。早期に60億円の売り上げを目指すとともに、2016年には70億円に引き上げる。14年春に操業を始め、北米市場に供給する。
中期経営計画 (2014年3月期 - 2016年3月期)
-2014年5月、2016年3月期の自動車事業売上高目標を中期経営計画の5,900億円から6,400億円程度に引き上げた。自動車市場の好調により2014年3月期で中計を達成したため、さらなる上乗せを狙う。同時に現地生産化を進めるなど収益性を高めることで、営業利益率も1.4ポイント高めて8.3%以上を目指す。利益率の高い産業機械事業が伸び悩んでおり、好調の自動車事業を強化して、中計の必達につなげる考えだ。自動車事業は、2013年春に立ち上げた中国・安徽省合肥市の工場や、今春稼動したメキシコ工場で軸受の生産を本格化するほか、タイの無段変速機 (CVT) 用軸受も生産を拡大。現地化を進めるとともに調達コストの低減などにより、軸受の利益率を高めていく。需要が拡大する電動パワーステアリング (EPS) も海外生産へのシフトを加速するなど、競争力を高めて販売強化に結びつける。自動車事業の課題 | 対応 |
1. 自動車軸受: 需要拡大地域での展開 |
-アジアでの売上拡大については、生産能力拡充と現調化の推進継続 -メキシコ工場稼働開始 |
2. 自動車部品: 電動パワーステアリング (EPS) の拡大 |
-搭載率の拡大 -コラムタイプで伸長 -バランスのとれた顧客構成 -海外で拡大 -技術の海外移管と定着 (製品・生産・管理) -次世代技術の開発 |
2015年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2015年3月期 (予測) |
2014年3月期 (実績) |
増減率 (%) | |
売上高 | 910,000 | 871,742 | 4.4 |
営業利益 | 75,000 | 68,049 | 10.2 |
経常利益 | 72,000 | 66,785 | 7.8 |
当期純利益 | 50,000 | 31,167 | 60.4 |
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
全社 | 9,919 | 10,432 | 10,373 |
自動車関連製品 | 6,795 | 6,681 | 6,455 |
研究開発体制
-日本の技術開発センター (神奈川県藤沢市) を核に、日本6、米州2、欧州3、アジア3、グローバル全体では14拠点のテクノロジーセンターで研究開発活動を展開。製品開発
自動車軸受新興国市場向けクラッチレリーズ軸受
-2013年12月、新興国市場で求められる耐久性を高めたクラッチレリーズ軸受を開発したと発表。シール形状の工夫と排水溝の新設によって、転がり抵抗値を維持したまま泥水に浸かった際の耐久性を従来比約10倍に引き上げた。2018年に15億円の売上高を目指す。従来品は納入先の了承を得て生産を終了し、順次新製品へ切り替えていく方針。
樹脂化による自動変速機用ニードル軸受
-2013年12月、無段変速機 (CVT) やハイブリッド車 (HV) 用変速機などの遊星歯車に使われる小型軽量のニードル軸受を開発したと発表。保持器を鉄から樹脂に置き換えた。材料置換によって従来比で25%軽量化できる。また保持器の設計自由度が上がったことから、ニードルの数を増やして軸受の幅を10%程度小型化しても従来と同等の許容性能を確保できる。変速機全体の小型、軽量化につながるとしている。遊星歯車の回転や公転の回転数が低く、保持器への応力が小さい用途を想定する。2017年に5億円の売上高を目指す。
超高速プラネタリ用ニードル軸受
-2013年10月、自動変速機 (AT)の多段化やハイブリッド車 (HV) 用駆動モーターの小型化に対応した、自動変速機向け「超高速プラネタリ用ニードル軸受」を開発したと発表。変速機内部のギアの高速回転化によって生じる遠心力に耐える独自の被膜を軸受の保持器に設けて、耐摩耗性を従来比1.5倍に高めた。世界最高性能としている。変速機ギア比のワイドレンジ化や高速回転化するモーターの小型化を可能にし、燃費削減に貢献する。2016年に5億円の売り上げを目指す。ケージ&ローラータイプの同社AT用ニードル軸受の約1割を占める見通し。
自動変速機用長寿命円すいころ軸受
-2013年11月、自動変速機 (AT) やディファレンシャル (デフ) の小型、軽量化につながる新型の円すいころ軸受を開発したと発表。ころの長寿命化やリングの強度を高め、従来品に比べ摩擦抵抗を40%、重量を20%低減した。軸受に求められる荷重や寿命の要件が従来と同程度であれば、より小型な軸受を使うことができ、摩擦抵抗の低減やATやデフの小型軽量化につながる。2016年秋に量産を開始し、18年に年間20億円の売上高を目指す。
トランスミッション用軸シールタイプ密封クリーン玉軸受
-2013年6月、摩擦を半減すると同時に部品点数の削減に貢献するマニュアルトランスミッション (MT) およびデュアルクラッチトランスミッション (DCT) 用軸受を開発したと発表。シール形状を工夫することでシールに起因する摩擦を半減した。また従来は異物混入防止用のゴムシールと接する溝を軸受外輪に刻んでいたが、溝をなくしたことで外輪の強度が向上し、軸受とギアの間に必要だった緩衝部品を省略できるようにした。異物混入に対する耐久性は従来品と同レベルを確保した。欧州およびBRICs向けに供給し、2018年に年間約18億円の売上高を目指す。
世界初、自動変速機用トルクセンサーユニット
-2013年11月、オートマチックトランスミッション (MT) やベルト式無段変速機 (CVT) などの自動変速機の効率向上や変速ショック低減、小型・軽量化に貢献する自動変速機用「トルクセンサーユニット」を開発したと発表。今後、自動車メーカーや変速機メーカーに本製品の提案を行い、商品化を目指す。
ターボチャージャー用高機能カートリッジ軸受
-2013年10月、ターボチャージャー用軸受の新製品を開発したと発表。ほとんどのターボに使われているすべり軸受けに比べて、回転抵抗を全回転域で半減したのが特徴。ターボメーカーが摩擦損失の低減を狙い、転がり軸受を採用するニーズが高まっている状況に対応する。2017年に年間約2千万個を生産し世界シェア50%を獲得する目標で、売上高は同30億円を目指す。
自動車部品
モジュール化対応高機能電動パワーステアリング
-2013年12月、自動車メーカーが推進する共通モジュール設計に対応した電動パワーステアリング (EPS) を開発したと発表。数十品種に相当するEPSの設計を1本化した。今後は異なる自動車メーカーからの注文であっても、同EPSの設計を適用する方針で量産効果を引き出していく。2017年に同社EPS事業の約2割に相当する350億円の売上高を目指す。開発したのは排気量2リットルクラスに相当するCプラットホーム向けコラム式EPS。すでに量産が始まっており、自動車メーカー1社、2車種に搭載されている。
操舵支援システム
-2013年11月、ホイールハブモーター (WHM) と電動パワーステアリング (EPS) を組み合わせた、操舵支援システムを開発したと発表。レーンチェンジ時などドライバーの運転操作によって、車両の姿勢が不安定になった際に、ホイールの回転と操舵を自動で制御して、走行安定性を高める。自動車メーカーに提案し、早ければ5年後をめど量産化したい考え。将来的には生活支援ロボット開発で培った外界視界認識技術、アクチュエーター制御技術などを組み合わせ、自動運転機能の実現を視野に入れる。
電動パワーステアリングの低音化
-2013年7月、電動パワーステアリング (EPS) が発する音の低減に取り組むと発表。走行音が静かな電動車両に対応するため、製造ラインの検査工程に音量センサーを採用する。これまでの作業員による感応評価に替えて、新たにセンサーを活用したデジタル評価を取り入れ、より静かなEPSの開発に役立てる。年内にEPSを製造するNSKステアリングシステムズ (前橋市総社町) 総社プラントに導入し、来年以降にNSKグループの国内外の工場へ展開する。
ウェッジギア固定式ステアリングコラム
-2013年4月、フォルクスワーゲン (VW) の「up! (アップ)」 を始めとするコンパクトカー数車種で、新たな固定機構を採用した電動パワーステアリング (EPS) システムを受注した。新機構は、ドライバーの体格や好みに合わせてステアリングホイールの高さを調節できるステアリングコラム部の機能にウェッジ (くさび) ギア方式を用いたもので、従来方式に比べ調整のしやすさを向上させたほか、万一の衝突時のドライバー保護性能を高めた。また、従来方式と比較し、部品点数の大幅な削減を可能にし、生産効率の向上を実現した。VWのほか、欧米や日系自動車メーカーへの提案活動を強化、ステアリング部門の売り上げ向上につなげる。欧州と中国で生産する。
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
全社 | 45,448 | 48,025 | 54,619 |
自動車関連製品 | 32,613 | 31,936 | 29,892 |
-自動車事業では、中国、メキシコ、タイ等への設備増強のための投資を行った。
-生産拠点として12カ国、64拠点を展開。
海外投資
<インド>-2013年6月、Rane Groupは、2016年までの3年間で58.8億ルピー (約97百万ドル) の投資を行うと発表した。大部分がステアリングギア、電動パワーステアリング (EPS) のほか、ブレーキライニング、ディスクパッドなど摩擦材製品を含む自動車部品の生産能力の拡大向けとなる。なお同グループは今回、傘下の子会社7社に資金を割り当てる計画。Rane MadrasとRane NSK Steering Systemsにはそれぞれ16億ルピー、15億ルピーを充当し、生産能力を拡大する。また、Rane Brake Liningsは約11億ルピーを研究開発能力および輸入事業の強化に投じる予定。残りを Rane Engine、Rane TRW Steering Systems、Rane Diecast、 Kar Mobilesの4社に割り当てる。
主な設備の新設計画 (自動車関連製品) |
(2014年3月31日現在) |
設備投資計画金額 (百万円) | 内容 | |
全社 | 49,000 | - |
自動車関連製品 | 34,500 | 中国、タイ、メキシコ等への増強投資 |