KYB (株) (旧 カヤバ工業) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 355,320 370,327 (4.1) -自動車向け製品販売は堅調に推移したが、中国等における建設機械市場が低迷したことが主な要因。
営業利益 4,327 14,461 (70.1) -
税引き前利益 2,825 14,892 (81.0) -
親会社の所有者に帰属する当期利益または当期損失 (3,161) 8,036

-

-米国独占禁止法に関して、罰金62百万ドル(約7,400百万円)を支払うこと等を内容とする司法取引に合意し損失として計上した結果
AC (オートモーティブコンポーネンツ)
売上高 240,903 237,203 1.6 1)
営業利益 5,220 8,378 37.7 -

*2016年3月期より国際会計基準 (IFRS) に基づいて連結財務諸表を作成。

要因
1) AC (オートモーティブコンポーネンツ)
四輪車用油圧緩衝器 (ショックアブソーバー、サスペンションシステム、ステイダンパー)
-国内およびアジアでの販売が減少となったが、欧米市場が好調であったため、売上は1,626億円と前年度と比べ2.1%の増収。

四輪車用油圧機器 (パワーステアリング、CVT用ベーンポンプ)
-油圧ポンプが減少したものの、電動パワーステアリングやCVT用ベーンポンプの販売が堅調に推移。売上は463億円と前年度に比べ0.9%の増収。

特別損失の計上

-2015年9月17日、自動車用と二輪車用のショックアブソーバーの販売で米国独占禁止法に違反していたとし、罰金6200万ドル(約74億円)を支払う司法取引を行うことで米国司法省と合意したと発表した。2016年3月期第2四半期決算で74億4千万円を特別損失として計上する。米国司法省は自動車部品の価格カルテルの捜査を進めており、KYBは14年4月以降、調査に全面協力してきた。同省は1990年代半ばから2012年にかけ自動車、二輪車用ショックアブソーバーの価格操作に同社が関わったとしている。(2015年9月18日付日刊自動車新聞より)

社名変更

-商号を現在の「カヤバ工業」から「KYB」に変更すると発表。2015年6月24日に開催する定時株主総会に定款の一部変更を付議し決定する。2015年10月1日から実施する。2005年に通称社名「KYB」を採用。新たなロゴマークとともにブランドの定着を図ってきた。今年創立80周年を迎えたことを機に、登記上の社名もKYBに統一し、ブランドイメージを一段と強固にする。 (2015年5月26日付日刊自動車新聞より)

採用・受注

-減衰力性能を高めたショックアブソーバーがトヨタ自動車の新型「プリウス」 に採用されたと発表した。採用されたショックアブソーバーは、コンピューター解析によって構成部品の形状の最適化を図り、作動油の流れを清流化したことで応答性を向上した。中空化したピストンロッドの採用で、車両当たり約700グラムの軽量化も実現した。(2016年5月28日付日刊自動車新聞より)

-ホンダの次期「シビック」のショックアブソーバーを 世界4カ国で受注した。これまで日本と米国で受注実績があるが、次期型ではグローバル開発チームを編成し、グローバルで受注した。同社はトヨタ自動車との取引が多く、ホンダとの取引はショックアブソーバーの売上高全体の5%程度となっている。新型車で供給地域を広げ、ホンダ向けの売り上げ拡大につなげる。米国、ブラジル、タイ、マレーシアの工場で生産し、それぞれ現地のホンダの工場に納入する。4カ国合計での納入本数は年間220万本を見込んでいる。 (2015年7月14日付日刊自動車新聞より)

受賞

-2016年3月期の主な受賞:

顧客 表彰名 受賞内容
トヨタ自動車
東日本
品質感謝状 品質クレーム目標値達成

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 7,760 8,910 6,916
-AC (オートモーティブコンポーネンツ) 5,121 5,943 4,493



研究開発体制

名称 所在地 研究内容
KYB開発実験センター 岐阜県
加茂郡
-自動車・二輪車用サスペンションやステアリング機器の開発・実験。
-テストコース
基盤技術研究所 神奈川県
相模原市
-油圧機器、自動車機器などに関する基礎研究と新製品・新技術の開発。
電子技術センター 神奈川県
相模原市
-電子機器の設計や評価、製造技術の集約。
生産技術研究所 岐阜県
可児市
-性能向上、低コスト化等の商品力向上のための開発。
工機センター 岐阜県
可児市
-生産技術研究所および各工場で培われた生産設備設計のノウハウの集約。
-設備の内製化の強化および推進。
KYB Technical Center (Thaialnd) Co., Ltd. タイ -
KYB Europe Headquarters GmbH (Spain Branch) スペイン -ショックアブソーバーの開発
KYB (China) Investment Co., Ltd. 中国 -ショックアブソーバーの開発
KYB Americas Corporation アメリカ -ショックアブソーバーの開発
KYB Manufacturing Czech, s.r.o. チェコ -ショックアブソーバーの開発



製品開発

ストラット式ショックアブソーバー
-外筒の材料に樹脂を使ったストラット式ショックアブソーバーを開発、東京モーターショーで世界初公開した。ショックアブソーバーを軽量化するための将来的な技術の一つとして自動車メーカーに提案する。熱可塑性樹脂を使った炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)を射出成形することによって複雑な形状をつくり出した。鉄製の外筒を使う従来品に比べ、本体部分と合わせた重量を約20%軽くできる。車体を支えるストラット式ショックアブソーバーは車体とタイヤをつなぐ部品であるため高い強度が求められる。開発品は強度、耐久性で従来品と同等を確保した。ただ、樹脂は経年劣化があるため、どこまでの耐久性を確保するかなどの課題がある。(2015年11月6日付日刊自動車新聞より)

積載量感応ショックアブソーバー
-乗員や荷物による積載重量の変化をショックアブソーバーの長さの変化によって検知し、減衰力を機械的に切り替える「積載量感応ショックアブソーバー」を開発したと発表した。車両の積載量が変化しても、常に快適な乗り心地と操縦安定性を得られる。ミニバンなどでの需要を見込んでいる。車両の積載量に応じ、積載重量が軽い時は低減衰力、重い時は高減衰力と2段階に自動で減衰力を切り替える。減衰力が瞬間的に切り替わることを防止する機構を備えているため、走行中にショックアブソーバーが伸縮しても減衰力を維持する。(2015年8月25日付日刊自動車新聞より)

車両向け通信端末
-トラック、バス、タクシーなどの車両向け通信端末を開発したと発表した。携帯電話網または衛星通信網を使い、端末とサーバーとの間で情報を送受信する。コ ンクリートミキサー車でモニター評価を行っており、2016年秋に量産を始める。(2015年11月20日付日刊自動車新聞より)

ソフトウェア開発
-事故多発地点や危険登録地点に近付くと音声で注意を促すワーニングマップ機能や、Wi―Fiで画像を送信する通信機能をドライブレコーダーに付加するソフトウエアを開発し販売を始めたと発表した。トラック・バスなどを使う事業者向けに、事故時の記録だけでなく、事故の未然防止につながる機能として提供する。ワーニングマップ機能は危険地点の半径を任意で設定できるようにした。走行中にドライバーが「注意した方が良い」と判断した地点で専用ボタンを押すことで登録ができ、登録した危険地点はユーザー所有の全車両で共有できる。Wi―Fi通信により、運行管理者がリアルタイムで必要なデータのモニタリングを可能にした。(2015年10月26日付日刊自動車新聞より)

技術研究

ステアリングとショックアブソーバーの統合制御技術
-ステアリングとショックアブソーバーを統合制御する技術の研究に着手した。一部車種向けに世界で初めて量産化したステアリングの電子制御技術 (ステアバイワイヤー) をベースに、電子制御のショックアブソーバーと協調制御することで、車の走行安定性や快適性を向上させる。同技術は高度運転支援システム (ADAS) や将来の自動運転に必要とされる技術と見て、実用化を視野に入れた研究を進める。(2015年7月27日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 21,300 29,785 29,908
-AC (オートモーティブコンポーネンツ) 15,070 19,152 18,391

設備の新設計画

2017年3月期の投資予定額:16,600百万円
AC (オートモーティブコンポーネンツ):12,400百万円

供給能力拡大計画

-同社は2020年にメキシコでの四輪用ショックアブソーバーの生産能力を16年の3倍に当たる年間600万本に引き上げる。日系自動車メーカーの生産拡大に合わせ、現地の供給能力を順次増強し、新車・市販用の需要増加に対応する生産体制を整える。完成車メーカーではメキシコを米国市場向け小型車の輸出拠点として活用する動きが広がっている。トヨタ自動車も本格進出することを踏まえ、現地の供給体制を整える。(2015年8月19日付日刊自動車新聞より)

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 346,000 355,320 (2.6)
営業利益 13,800 4,327 218.9
税引き前利益

12,900

2,825 356.6
親会社の所有者に帰属する当期利益 9,200 (3,161) -


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

新中期計画 (2015年3月期 - 2017年3月期)

基本方針
①AC (オートモーティブコンポーネンツ) 事業
-世界5極開発によるグローバルでの顧客獲得
-市販ビジネスの拡大

②HC (ハイドロリックコンポーネンツ) 事業
-農業用機械・航空機器・鉄道機器などの販売拡大
-建機用油圧製品のコスト競争力確保

③人材育成
-グローバル成長戦略を支える人財の育成と確保およびグローバル経営幹部育成

④技術・商品開発
-各市場ニーズに基づいた商品開発体制の強化

⑤モノづくり
-リードタイム半減活動の海外および取引先への展開拡大によるグループ生産性の向上および国際物流費の低減

⑥マネジメント
-欧州・中国・米州地域統括機能の充実