日立金属 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(IFRS、単位:百万円)
  2015年
3月期
2014年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 1,004,373 807,794 24.3 -2013年7月に日立電線を合併した影響
営業利益 84,407 53,428 58.0 -日立機材 (建材機器事業) の売却等による事業再編利益を計上
税引前利益 86,391 55,820 54.8 -
親会社の所有者に帰属する当期利益 70,569 48,133 46.6 -
高級金属製品
売上収益 257,396 234,464 9.8 1)
営業利益 34,661 19,731 75.7 -
磁性材料
売上収益 135,400 134,326 0.8 2)
営業利益 11,492 10,058 14.3 -
高級機能部品
売上収益 282,018 186,025 51.6 3)
営業利益 28,074 12,915 117.4 -
電線材料*
売上収益 327,595 251,423 30.3 4)
営業利益 19,845 15,975 24.2 -

*2013年7月、日立電線を合併し、同セグメントを新設。2014年3月期の第2四半期より計上されている。
-2015年3月期から国際会計基準 (IFRS) を適用。

要因 (自動車関連分野)
1) 高級金属製品
-自動車関連材料: 環境親和製品への需要が国内、海外ともに堅調に推移 (ピストンリング材、CVTベルト材)
-世界最大級の24t真空誘導溶解炉 (VIM: Vacuum Induction Melting & Casting) の稼働開始、CVTベルト材の量産化対応

2) 磁性材料
-希土類磁石: 国内自動車において需要調整の動きが見られたが、海外向けハイブリッド車や電動パワーステアリングなど自動車用電装部品の需要が堅調に推移。

  • ハイブリッド車用希土類磁石の生産能力増強 (NEOMAX近畿)
  • 中国・北京中科三環高技術股份との合弁設立検討

-フェライトコア: 自動車用電装部品およびスマートフォン向けを中心に需要が堅調に推移。

3) 高級機能部品

-2014年11月から Waupaca Foundry, Inc. の業績を反映し、自動車用鋳物全体として大幅な増加となった。
-耐熱鋳造部品: 主要市場である欧州で需要持ち直しの兆しが見え始め、米国における需要も堅調に推移。
-高級ダクタイル鋳鉄製品: 米国をはじめ海外の自動車における旺盛な需要が続き、国内も消費税率引き上げに伴う需要反動減の明らかな影響は見られず、全体として好調に推移。
-アルミホイール: 国内は同社製品の搭載車種の一部に減産の動きがあったが、米国の需要が堅調に推移し前年比増加となった。

4) 電線材料
-自動車部品: 北米を中心とした自動車の旺盛な需要が続き、車載センサーなど電装部品を中心とした需要が好調に推移。アジア・中米拠点を強化。

中国マグネット事業の合弁

-2015年6月、中国でネオジム磁石の製造・販売を行う合弁会社を設立することで同国の磁石関連メーカーと合意したと発表した。現地での需要拡大が見込まれるハイブリッド車や産業用モーター向けなどの磁性材料を供給する。2017年度には、新会社で100億円の売上高を目指す。2015年12月に中国・江蘇省に北京中科三環高技術股份有限公司 [Beijing Zhong Ke San Huan Hi-Tech Co., Ltd.] との合弁会社 「日立金属三環磁材 (南通) 」 を設立する。資本金は4億5千万元 (約90億円)で、出資比率は日立金属が51%、中科三環が49%。16年12月に年間1千トン規模の製造設備でネオジム磁石の一貫生産を開始し、将来的には同2千トンまで生産能力を増強する。中科三環は中国におけるネオジム磁石のトップメーカーで、日立金属と古くからライセンス契約を締結していた。(2015年6月22日付日刊自動車新聞より)

米国鋳物事業の買収

-2014年11月、米Waupaca Foundry (ウィスコンシン州) の全株式を取得し、子会社化を完了したと発表。米国の輸送機器向け鉄鋳物製造大手を買収することで、鉄鋳物事業の抜本的強化とグローバルでの中長期的な成長を目指す。Waupacaは、北米で自動車や産業機械向けにブレーキやエンジン部品を製造している鋳物メーカー。鉄鋳物では世界最大の生産規模を有しており、年間157万トンの生産量を誇る。買収により、日立金属が強みを持つ高付加価値製品とWaupacaの強大な生産設備を融合し、輸送機器分野での事業拡大に結びつける。(2014年11月11日付および8月21日付日刊自動車新聞より)

-2015年4月1日付で北米組織を再編し、高級機能部品カンパニーに属する米州拠点は、Waupacaを軸とした組織体制に変更。Waupacaの生産技術を日立金属の米国、インド、韓国拠点に展開するとともに、メキシコおよび欧州市場に鉄鋳物製品の顧客基盤を拡大する。

電装部品のグローバル生産

-自動車用電装部品はグローバル生産体制を強化し、事業規模を拡大。トルクセンサーは、タイに加え、メキシコで量産開始。EPBハーネスは、中国・チェコに加え、タイ・メキシコで量産開始。

中期経営計画

-2013年8月、2015年度中期経営計画 (~2016年3月期) を発表。最終年度の売上高は8,800億円、営業利益は750億円を目標とする。

-2014年10月、「2015年度中期経営計画」 を見直して発表した。米Waupaca社の子会社化やグローバル需要の増加による業績の拡大を見込んだもので、13年8月に公表した経営目標値を再設定した。15年度の新たな経営目標は前回公表値に比べ、売上高が2,300億円増の1兆1,100億円、営業利益が150億円増の900億円、当期純利益が160億円増の700億円。Waupaca買収による売上高の増加分は1,870億円を見込んでいる。(2014年10月29日付日刊自動車新聞より)

-「変革」と「発展」により、世界トップクラスの金属材料会社として持続的発展を実現。重点項目は以下の通り:
1) 新製品創出・新技術開発力の強化
2) グローバル成長戦略の強化・加速
3) 強固な経営基盤の確立

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2016年3月期
(予測)
2015年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上収益 1,100,000 1,004,373 9.5
営業利益 107,000 84,407 26.8
税引前利益 106,000 86,391 22.7
親会社の所有者に帰属する当期利益 73,000 70,569 3.4


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
高級金属製品 5,903 5,719 5,192
磁性材料 2,861 3,166 3,514
高級機能部品 2,516 2,709 2,370
電線材料 9,623 5,220 -
合計 20,903 16,814 11,076
-総売上収益対比 2.1% 2.1% 2.1%

-2016年3月期の研究開発費は、22,000百万円を計画。

研究開発体制

-同社の研究開発体制は以下の通り:

  • ディビジョンラボ制を導入しており、各カンパニーはそれぞれの事業戦略に沿って、各カンパニーの研究開発部門で開発を推進している。
  • 次世代の主力となる新製品・新技術や基盤技術は、株式会社日立製作所の各研究所と連携して開発を実施している。
  • 将来の新製品に繋がる新材料・新技術シーズの発掘には、海外を含めた大学等の社外機関と共同開発を行なっている。

研究開発拠点

拠点名 所在地
生産システム研究所 埼玉県熊谷市
冶金研究所 島根県安来市
磁性材料研究所 大阪府三島郡
素材研究所 栃木県真岡市
電線材料研究所 茨城県日立市

技術供与契約

(2015年3月31日現在)
相手方
(国名)
契約品目 契約内容 期間
安泰科技股份有限公司
[Advanced Technology & Materials Co., Ltd.]
(中国)
微細結晶軟磁性合金 微細結晶軟磁性合金に関する非独占的実施権の許諾 2005年10月1日から
契約対象特許の終了日まで

製品開発

自動車関連製品の主な研究開発実績 (2015年3月期) 

部門 開発実績
高級金属製品 -高疲労強度CVTベルト材
-高性能精密鋳造タービンホイール
-Niアモルファスろう材
磁性材料 -高性能フェライト磁石
-マイクロHEV用トランス
-車載・高機能モバイル端末用金属パウダーコア
高級機能部品 -低燃費ダウンサイジングエンジン用耐熱鋳鋼製品の拡充
-軽量足回り部品向けダクタイル製品の拡充
電線材料 -HEV/EV補機用高絶縁性エナメル線
-高機能純銅 「HiFC」
-電動パーキングブレーキ/車輪速センサー用複合ハーネス
-電動ドア挟み込み防止用感圧センサー


ソフトフェライトコア材料

-2015年3月、高周波特性に優れた新しいソフトフェライトコア材料の2製品を開発し、量産化の準備を整えたと発表した。自動車やネットワーク機器、スマートフォンなどの部品の小型化や省エネ化に貢献する材料として訴求する。新開発の 「ML95S」 と 「ML90S」 は、高周波領域での低磁心損失化に有利なMn-Zn (マンガン亜鉛) 系のフェライト材料。独自の粉末制御技術や熱処理技術を活用することで、Ni-Zn (ニッケル亜鉛) フェライト材料よりも性能特性を高めることに成功した。実際の使用環境に近い高温環境下での低磁心損失化にも優れているため、消費電力だけではなく、発熱量を低減することも可能だ。(2015年3月24日付日刊自動車新聞より)

-2014年12月、高温特性に優れた車載用ソフトフェライトコア材料「MB20D」を開発したと発表した。自動車の電装品に使われる電子部品の高効率化、小型・軽量化に貢献する技術として訴求する。新材料の開発により軟質磁性材のラインアップが充実したことで、従来以上に顧客の幅広い要求への対応が可能になったとしている。MB20Dは車載用途を想定したマンガン (Mn) -亜鉛 (Zn) 系のフェライト材料で、高温環境下での低損失特性に優れている。独自の粉末配合技術と粉末加工・熱処理技術を用いることで、低い磁心損失と高い飽和磁束密度を両立した。トランスやインダクターなどの電子部品に採用することで、消費電力や発熱量の低減が可能となる。現在はサンプル出荷を進めており、2015年内の量産化を見込んでいる。(2014年12月4日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 51,474 31,987 26,688
-高級金属製品 18,724 11,849 10,336
-磁性材料 10,209 7,297 8,368
-高級機能部品 12,576 6,380 7,015
-電線材料 9,094 5,604 -


-2015年3月期の主な設備投資:

事業部門 投資目的・内容
高級金属製品 国内における生産体制の増強および高付加価値製品の生産体制構築
磁性材料 国内および海外における磁石の生産体制増強投資
高級機能部品 海外における生産体制整備、国内における合理化投資
電線材料 国内における高付加価値製品の開発強化、海外での増産投資

設備の新設計画

(2015年3月31日現在)
事業セグメント 予定金額
(百万円)
投資目的・内容
全社 65,000 -
-高級金属製品 18,900 国内工場の合理化投資と高付加価値製品の生産体制構築
-磁性材料 8,500 国内および海外工場における能力増強および希土類磁石の海外拠点設立
-高級機能部品 17,100 自動車部品の海外増産投資、国内工場の増産合理化投資
-電線材料 14,200 海外工場における自動車電装部品の能力増強