大豊工業 (株) 2015年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2015年 3月期 |
2014年 3月期 |
増減率 | 備考 | |
全社 | ||||
売上高 | 98,221 | 93,632 | 4.9 | - |
営業利益 | 4,675 | 4,162 | 12.3 | - |
経常利益 | 4,973 | 4,449 | 11.8 | - |
当期純利益 | 3,194 | 2,796 | 14.2 | - |
自動車部品関連事業 | ||||
売上高 | 81,470 | 79,944 | 1.9 | - |
営業利益 | 8,125 | 8,291 | 2.0 | - |
新製品
-2015年3月期、新樹脂コーティング軸受、カーエアコン用コンプレッサーの軽量シュー、ターボチャージャー関連製品などが量産に移行。また、新工法として、アルミダイカストにおける「回転鋳抜き製法」や、軸受における「低コスト樹脂コーティング製法」等を量産に適用。
樹脂コーティング軸受 >>>樹脂コーティング付きエンジン用軸受け (2015年人とくるまのテクノロジー展情報)
-2015年度までに樹脂コートを施した高付加価値型のエンジン軸受の生産を現状の約2倍となる年7千万個に拡大する。同製品の中核工場となる生産子会社大豊岐阜 (岐阜県御嵩町)のラインを現状の7本から10本に増やし、フル生産を行う。15年度までに米国工場でも生産を始める。樹脂コート軸受は価格が数十円なが ら、燃費を通常の軸受に比べて0.2%改善できる。現行品に比べてコストを2割低減した低価格品や燃費低減効果を引き上げた次世代品を開発しており、さらに受注、供給量が拡大する見通し。(2014年4月15日付日刊自動車新聞より)
-樹脂コーティング軸受RAシリーズでは、新工法による量産を2014年5月より開始。また、耐摩耗性に優れた新コーティング材料RCシリーズの量産を同年12月に開始。
ターボチャージャー関連製品 >>>ターボチャジャー用軸受 >>>バキュームポンプ (2015年人とくるまのテクノロジー展情報)
-過給ダウンサイジングエンジンに対しては、ターボチャージャー用軸受、ウェイストゲート用アクチュエーター、同社独自のアルミダイカスト製法を用いたエルボ、ブレーキブースターに用いるバキュームポンプの量産を2014年5月から開始。
ガスケット製品 >>>ディーゼルエンジン向けシリンダーヘッドガスケット (2015年人とくるまのテクノロジー展情報)
-子会社の日本ガスケット(株)は、2015年をめどにディーゼルエンジン(DE)向けのガスケット市場に参入する。トヨタ自動車が15年に立ち上げる新型エンジン「GD型」向けのガスケットを受注した。日本ガスケットがDE向けに製品を本格供給するのは初めて。DEの内部環境に合わせてメタル製ガスケットを専用開発した。トヨタはGD型を次期「IMV」などに搭載する。GD型には親会社の大豊工業がバキュームポンプを供給、豊田自動織機が自動車用の過給機を初供給する。今後はトヨタグループ各社でDEビジネスが活発化しそうだ。(2014年6月23日付日刊自動車新聞より)
部品共通化
-2014年1月、同社はトヨタ自動車の部品共通化構想「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー (TNGA)」に対応し、エンジン軸受の共通化を推進すると発表した。トヨタはTNGAの一環として2015年度以降に新型エンジンを導入する方針。同ユニットに照準を合わせて、設計、仕様を絞り込んだ軸受を開発する。エンジン軸受は、ベースとなる裏金の表面に加工を施して耐熱性や耐摩耗性などの性能要件を引き出していく。裏金に使用するアルミ合金には黄銅系とリン青銅系の30~40種類があり、エンジンごとに複数の種類を使用していた。これに対し、新型は素材を1種類のみに限定し、寸法のバリエーションも絞り込む。素材の集中購買や量産効果の向上を実現し、コスト競争力を高める。
中期経営計画
VISION2015
-2013~2015年度 (2014年3月期~2016年3月期) を対象期間とする中期経営計画「VISION2015」を実践中。以下3つの方針のもと、2015年度 (2016年3月期) の売上高1,100億円、営業利益率6.5%を目指す。
- 製品・製造領域のグローバルな拡大:軸受のグローバル市場を的確に把握し、適時・適地に適切な製品を供給
- 製品技術・生産技術の革新:トライボロジーを軸に軸受から潤滑システムへ技術領域を拡大
- 人財力の強化
-軸受事業の拡大:2014年3月期の同社のエンジンベアリングの市場シェアは20% (同社予測)。乗用車だけでなく乗用車以外への拡販を強化し、2016年3月期には世界トップクラスの25%に拡大。また、世界各地で生産ラインを7、8 本新設し、生産能力を月4千万個に引き上げる。
-非軸受事業の拡大
- 軸受から潤滑システムへの領域拡大
- EGRバルブ:2013年3月期のEGRバルブの売上高は1,600百万円。大型車を中心に供給しているが、ディーゼル乗用車への製品領域を拡大し、2016年3月期の売上高2,300百万円を目指す。
- バキュームポンプ:2013年3月期のバキュームポンプの売上高は650百万円。低燃費車、ディーゼル向けに機種を拡大していく。2015年3月期には大型 乗用車向けに新機種の供給する。2016年3月期には新興国向け低価格車用のバキュームポンプをタイで現地生産するなどし、売上高3,000百万円を目指す。
VISION2020
-2016年3月期は、2013年4月に公表した中期経営計画「VISION2015」を確実に成し遂げ、「VISION2020」のスタートに向けた取り組みを強化する。
-2020年製品ビジョン:コア技術であるトライボロジーを木の根とし、幹となる製造・生産技術をさらに太く成長させ、すべり軸受、システム製品、シーリング製品、造機・造型製品などの果実を増やす。
- 軸受:エンジンベアリング、トランスミッション用軸受、カーエアコン用コンプレッサー軸受などを継続して拡大。既存の軸受製品群(エンジンベアリング、ピストンピンブシュ、クランクワシャ)を最適化(油量低減、油量制御、油温制御)して、「潤滑システム」への領域拡大を図る。
- システム製品:バキュームポンプや排気制御装置を中心に強化し、軸受と並ぶ製品基盤に育てる。
- シーリング製品(日本ガスケット(株)):ガスケットに関しては、クリーンディーゼルをはじめ、様々な環境対応エンジンへの最適設計を目指すとともに、品質・コスト面において、グローバルな視点で競争力を高める。また、シール材料技術を応用して、新たな機能を持った付加価値の高い製品開発を進める。
2016年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2016年3月期 (予想) |
2015年3月期 (実績) |
増減率 (%) |
|
売上高 | 110,000 | 98,221 | 12.0 |
営業利益 | 7,150 | 4,675 | 52.9 |
経常利益 | 6,600 | 4,973 | 32.7 |
当期純利益 | 4,200 | 3,194 | 31.5 |
-2016年3月期の売上高は前年度比12.0%増の1,100億円と予測。
-2016年3月期の経常利益は6,600百万円と予測。
- プラス要因:売上増(3,500百万円)、合理化(1,700百万円)
- マイナス要因:減価償却費(1,500百万円)、労務費(1,200百万円)、為替変動(390百万円) など
事業別売上高 | (単位:百万円) |
2016年3月期 (予測) |
2015年3月期 (実績) |
増減率 (%) |
|
軸受製品 | 47,593 | 43,166 | 10.3 |
システム製品 | 12,925 | 11,418 | 13.2 |
ダイカスト製品 | 10,613 | 10,264 | 3.4 |
ガスケット製品 | 14,679 | 11,709 | 25.4 |
設備/精密金型 | 18,323 | 16,544 | 10.8 |
その他 | 5,867 | 5,117 | 14.7 |
合計 | 110,000 | 98,221 | 12.0 |
-2015年3月期の軸受製品売上高は431億円で全体の44%を占める。軸受製品の売上高は、国内向け236億円、海外向け195億円。
-2016年3月期の軸受製品売上高は475億円で全体の44%を占める見通し。海外生産の拡大に伴い、国内向け238億円、海外向け237億円とほぼ同等になる見込み。納入先は、トヨタ24%、トヨタ系18%、トヨタ以外の日系21%、中国系 13%、欧米系10%、その他14%。
-非軸受製品では、子会社の日本ガスケット(株)のタイ、中国における増産により、ガスケット製品の売上高が117億円から146億円に増加する見通し。また、バキュームポンプとEGRバルブを戦略製品と位置づけており、システム製品の売上高は114億円から129億円に増加すると見ている。
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2015年3月期 | 2014年3月期 | 2013年3月期 | |
全社 | 3,209 | 3,268 | 3,202 |
自動車部品関連事業 | 2,999 | 3,064 | 2,910 |
研究開発体制
-トライボロジー (摩擦/磨耗/潤滑技術) をはじめとする基礎研究部門、製品開発部門、生産技術開発部門を愛知県豊田市の「技術開発センター」に集約し、さまざまな課題に対応できる体制を確立。その他に、摩擦技術研究センター、エンジン試験センター、生技開発センターを有している。
研究開発活動
軸受製品
-エンジン用軸受では、ハイブリッドやアイドリングストップのエンジンに同社の樹脂コーティング軸受が採用され、頻繁な起動停止に対応し、低燃費化に貢献。また、低摩擦効果が得られる樹脂コーティング付きクランクワッシャーを開発・量産化。
>>>樹脂コーティング付きエンジン用軸受け (2015年人とくるまのテクノロジー展情報)
-2015年後半をめどにエンジン内で使用する潤滑油を低減して燃費改善を図る業界初の軸受を市場導入する。軸受に切削で潤滑油がたまる特殊形状を施す。これにより、摩擦面から潤滑油が逃げる構造的な課題を解消し、潤滑油の低減やオイルポンプの小型化につなげる。数千~数万円単位のコストが生じる燃費改善デバイスに対し、低価格で省燃費効果が期待できるとしている。既に自動車メーカーから受注しており、15年後半から供給を開始する。(2015年2月12日付日刊自動車新聞より)
-ブシュでは、高性能新アルミ軸受材料、高性能新カーボン軸受材料を開発中。
-カーエアコン用コンプレッサー向けの特殊軸受では、高性能、軽量新シュー・低コスト新斜板を開発・量産化。
ダイカスト製品
-CAE (流動解析) を用いて冷却・湯流れを最適化し、薄肉鋳造および鋳造精度を実現、高精度で低コストな製品を提供。
-回転鋳抜き製法:ダイカストで湾曲配管を製造する際にコストを3割低減する業界初の新工法を確立した。従来、重力鋳造で製造していた部品をダイカストに置き換えるもので、過給器の吸気側配管に採用して製品化した。ダイカストで湾曲配管を製造する場合は加工品が固まった後に金型を抜き取るのが一般的だが、製品側をロボットで抜き取る業界初の手法を考案した。重力鋳造に比べサイクルタイムを4分の1に低減、製造工程を10工程から7工程に短縮した。第1弾製品は、トヨタがレクサス「NX」に搭載している新型ターボチャージャーに初採用された。現在は本社工場(愛知県豊田市)で月2万個の規模で生産している。今後は同製品を他の自動車メーカーや過給器メーカーに提案する一方、新工法を活用して他のエンジン部品を開発して拡販に結びつける。(2015年2月2日付日刊自動車新聞より)
システム製品
-商用車向けの電子制御式EGRバルブ:国内の「ポスト新長期排気ガス規制」、および米国排出ガス規制「US13」に対応した第2世代EGRバルブを開発・量産化。
-バキュームポンプとEGRバルブをシステム部品分野の戦略品と位置づけ、2020年度までに売上高100億円規模のビジネスに育成する。両製品ともに自動車メーカーが推進する共通化構想に対応しながらシリーズ化。小型~大型エンジン向けのラインアップを構築して拡販を図る。17年度までにバキュームポンプの受注を45億円以上、EGRバルブは20年度までに約40億円に引き上げる。両製品を核とする組付品を主力事業の一つに育成し、主力のエンジン軸受け、システム製品、潤滑マネジメントの3本柱で収益基盤に厚みを持たせる。(2014年8月27日付日刊自動車新聞より)
>>>バキュームポンプ (2015年人とくるまのテクノロジー展情報)
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2015年3月期 | 2014年3月期 | 2013年3月期 | |
全社 | 10,393 | 7,591 | 4,763 |
自動車部品関連事業 | 9,809 | 6,439 | 4,397 |
自動車部品関連事業
-新製品切替や生産能力増強、維持更新を目的とした設備投資を実施。国内、海外の投資は以下の通り:
- 国内の連結子会社:大豊岐阜 (株) による軸受製品製造設備への新製品切替や生産能力増強を目的とした投資を中心に実施。
- 海外子会社:Taiho Corporation of America による軸受製品製造設備への新製品切替や生産能力増強を目的とした投資を中心に実施。
海外投資
-海外での受注拡大を受け、軸受製品の海外生産拡大に対応するため、米国、中国、インドネシア、韓国子会社において、工場拡張や生産能力の増強を実施。
<タイ>
-同社システム製品として初の海外生産となるバキュームポンプについて、タイ子会社Taiho Corporation of Thailand (TCT)の2014年2月に完成したプラチンブリ工場で、2015年2月から量産を開始、4月より量産品の納入を開始。
-子会社の日本ガスケット(株)では、2015年4月からタイのNippon Gasket (Thailand) Co., Ltd.でディーゼル用シリンダーヘッドガスケットの量産を開始。トヨタの世界戦略車「IMV」シリーズ向けに納入。
<中国>
-子会社の日本ガスケット(株)では、煙台日柯斯密封墊有限公司[Yantai Nippon Gasket Co., Ltd.]の工場を拡張し、2013年10月からガソリン用シリンダーヘッドガスケットの量産を開始。
<韓国>
-韓国大豊 (株) [Taiho Corporation of Korea]で2014年12月からカーエアコン用コンプレッサー軸受で新構造の軽量シューの量産を開始。
<ハンガリー>
-2014年2月、2015年度までにハンガリー工場を拡張すると発表。新たな建屋を設置し、生産スペースを現状の約2倍となる1万6千平方メートル規模に広げる。ディーゼルエンジン (DE) 用燃料噴射システム向けのリングカムアウターや、エンジン軸受の増産に活用する。投資額は15億~20億円を見込んでいる。ハンガリー工場はエンジン軸受の欧州各国に供給する生産基地に位置づけている。新たに拡張するスペースは、16年度以降の生産基盤の拡充に向けて手当てする。
国内投資
-2015年4月から金型業務を大豊精機 (株)に集約。
設備の新設
-米国のTaiho Corporation of Americaでは2015年6月から樹脂コーティング軸受、インドネシアのPT. Taiho Nusantaraでは7月にエンジンベアリングの新工法ラインでの量産を予定。
-2016年3月期、同社グループの設備投資予定額は9,000百万円。主な内訳は以下の通り。
事業所名 | 主要設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
目的 |
本社および本社工場 (愛知県豊田市) |
ダイカスト製品製造設備等 | 30 | 維持更新 |
細谷工場 (愛知県豊田市) |
軸受製品製造設備等 | 815 | 新製品切替・拡張・能力増強 |
篠原工場 (愛知県豊田市) |
システム製品製造設備等 | 463 | 新製品切替・拡張・能力増強 |
九州工場 (鹿児島県出水市) |
軸受製品製造設備等 | 180 | 拡張・能力増強 |
幸海工場 (愛知県豊田市) |
軸受製品製造設備等 | 192 | 新製品切替・合理化 |
大豊精機 (株) 本社および本社工場 (愛知県豊田市) |
軸受製品製造設備等 | 1,000 | 基礎投資 |
(株) ティーイーティー 春日井工場 (愛知県春日井市) |
加工設備 | 20 | 拡張・能力増強 |
大豊岐阜(株) 本社および本社工場 (岐阜県可児郡) |
軸受製品製造設備等 | 262 | 新製品切替 |
日本ガスケット (株) 滋賀工場 (滋賀県米原市) |
ガスケット製品製造設備 | 558 | 基礎投資 |
Taiho Corporation of America 本社および本社工場 (米国 オハイオ州) |
軸受製品製造設備等 | 302 | 拡張・能力増強 |
PT. Taiho Nusantara 本社および本社工場 (インドネシア 西ジャワ州) |
軸受製品製造設備等 | 240 | 拡張・能力増強 |
Taiho Corporation of Europe 本社および本社工場 (ハンガリー Ujhartyan) |
軸受製品製造設備等 | 33 | 新製品切替 |
韓国大豊 (株) [Taiho Corporation of Korea] 本社および本社工場 (韓国 Daegu) |
軸受製品製造設備等 | 57 | 新製品切替 |
大豊工業 (煙台) 有限公司 [Taiho Kogyo Corporation of Yantai] 本社および本社工場 (中国 煙台市) |
軸受製品製造設備等 | 769 | 拡張・能力増強 |
常州恒業軸瓦材料有限公司 [Hengye Bearing Materials Co.,Ltd (Changzhou)] 本社および本社工場 (中国 常州市) |
軸受製品製造設備等 | 90 | 拡張・能力増強 |