TRW Automotive Holdings Corporation 2013年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2013年
12月期
2012年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 17,435 16,444 6.0 -売上高の増加は、主にアクティブ・パッシブセーフティ関連製品の需要増と北米とアジア太平洋の自動車生産量の増加 (843百万ドル)、為替差益 (176百万ドル)に因る。2012年第3四半期の事業売却による売り上げ減 (28百万ドル) により一部相殺された。
純利益 970 1,008 (3.8) -
シャシーシステム
売上高 11,492 10,685 7.6 -マイナス要因として、2012年第3四半期の事業売却による売り上げ減 (28百万ドル)。
乗員安全システム
売上高 3,314 3,287 0.8 -マイナス要因として、価格下落による売り上げ減 (87百万ドル)。
電子部品
売上高 721 654 10.2 -マイナス要因として、価格下落による売り上げ減 (33百万ドル)。
自動車部品
売上高 1,908 1,818 5.0 -

ZFによる同社買収

-2014年9月、ZF Friedrichshafen AGの同社買収に関して両社が合意に達したと発表。2015年第1四半期に買収が完了し、同社はZFの独立事業部門になる見通し。

受注
-Ferrari初のハイブリッドモデル 「LaFerrari」 向けに、電動油圧パワーステアリング (EPHS) システムを納入すると発表した。同社のEPHSシステムは、従来の油圧パワーステアリングと比べて、100kmあたり最大0.3Lの燃費削減が可能になるほか、CO2排出量も1kmあたり約7g削減する。また、電動パワーステアリングとの比較においても、燃費とCO2削減の点で優れているという。このEPHSでは、小型のモーターポンプユニット (MPU) が従来のラックピニオン型パワーギアに接続。他の電動パワーステアリングシステムと同様に、エンジンからは独立している。 (2013年10月15日付プレスリリースより)

-観致汽車の新型セダン 「Qoros 3」 に多数の同社製品が採用されていると発表した。同社は車両の開発段階から主要なパートナーとして、観致汽車へのサポートを行っていた。パッシブセーフティシステム一式の開発に携わり、エアバッグ (サイドおよびカーテンエアバッグを含む)、シートベルト、ステアリングホイール、セーフティエレクトロニクスを納入。アクティブセーフティ分野では横滑り防止装置 (ESC)、アンチロックブレーキシステム (ABS)、ファウンデーションブレーキシステムを納入している。 (2013年10月9日付プレスリリースより)

-スリップコントロールシステムのPremium (P) やPremium Hybrid (PH) などさまざまなタイプで大型受注を獲得した。6ピストンポンプシステム「EBC 460」をはじめとする横滑り防止装置 (ESC) 製品をベースとしたESCブレーキシステムは、高いブレーキ圧を迅速に提供するとともに、PHタイプでは部分的に回生ブレーキを用いることが可能になる。同社は2015年に、「ESC PH」を製品化し2017年モデルの自動車向けに生産準備を行う予定。 (2013年2月14日付プレスリリースより)

-日系メーカーから国内生産モデル向けに電動パーキングブレーキ (EPB) とニーエアバッグを初受注した。同一メーカーの複数車種向けに供給を始めた。製品は海外から輸入する。同グループはグローバルで日系メーカーと安全関連部品を中心に取引実績がある。設計自由度が高く小型・軽量化という製品の特徴に加え、コスト競争力の高さで受注に結びついた。今後も提案活動を積極的に展開し、日系メーカーとの取引拡大につなげる。 (2013年2月8日付日刊自動車新聞より)

-パッシブエントリーシステムがChryslerの2013年型 「Ram」 トラックに採用されたと発表。従来のリモートキーレスエントリー (RKE) システムと比べて大幅に利便性を向上させたもの。「Ram」 トラックのパッシブエントリーシステム「Keyless Enter 'n Go」は、キーフォブを持ってドアセンサーの感知範囲内まで近づくと、キーフォブのボタンを押すことなくドアのロックを自動で解除することが可能になる。 (2013年1月14日付プレスリリースより)

生産開始

車線維持支援システム (LKA)
-クローズドループ制御による最新の車線維持支援 (Lane Keeping Assist:LKA) システムの量産を開始したと発表した。欧州市場で販売される2種類のプラットフォームに初搭載される予定。従来のLKAシステムは車両が車線の境界線に近づいたときのみ起動し、カウンターステアトルクが作動して車両位置の修正をサポートしていた。このクローズドループ制御システムは、ステアリングの角度をより細かく制御することが可能で、車線の境界線から離れてレーンの中央を走行するようドライバーを「指導」する。 (2013年12月3日付プレスリリースより)

24GHz前方監視レーダー
-PSA Peugeot Citroenのプラットフォーム「EMP2」向けに、24GHz前方監視レーダー「AC100」の生産を開始した。まず、今夏に発売されたCitroen 「C4 Picasso」 に搭載されるほか、2013年末に発売予定の新型Peugeot 「308」 にも採用される予定。このプラットフォームに搭載された「AC100」レーダーは、車間距離警告および衝突警告のほか、ブレーキシステムとの統合による追従停車付きアダプティブクルーズコントロール (ACC) など複数の安全・快適性向上機能が可能になる。また、可逆的拘束システム、プリクラッシュおよびプレフィルブレーキ、アダプティブブレーキアシスト、自動緊急ブレーキ (AEB) などの先進機能も提供する。 (2013年7月29日付プレスリリースより)

乗員安全システム
-次世代シートベルトプリテンショナー「スネーク・プリテンショナー・リトラクター4 (SPR4)」の生産と供給を開始したと発表した。従来の金属部品からプラスチックのピストンを採用し、プリテンショナーの小型・軽量化を実現した。北米・欧州・中国で生産する自動車に搭載される。SPR4は、小型のAセグメント車からSUV車まで幅広い車種に搭載される予定という。 (2013年6月5日付日刊自動車新聞より)

-広州汽車 (GAC Group) が中国で販売するセダン 「Trumpchi」 およびSUV 「Trumpchi GS5」 向けに、乗員安全システム一式の生産を開始した。同社は両モデルに、運転席・助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、フロントおよびリアシートベルト、ECUを納入する。製品の設計・生産のほかに、ハードウェアシミュレーション、エアバッグ展開時間、チューニング、システム統合など試験プログラム全体にも貢献している。 (2013年4月22日付プレスリリースより)

電動パワーステアリングシステム (EPS)
-大手ステアリングメーカーとして初めてブラジルで先進電動パワーステアリングシステム (EPS) の生産を開始する。Ford 「Ecosport」 および「Fiesta」 に採用され、南米に拠点を持つ自動車メーカーのコスト・排出ガス削減に貢献する。 (2013年10月7日付プレスリリースより)

-中国でベルトドライブ式電動パワーステアリングの生産を開始したと発表した。ベルトドライブとボールナットの機構によってラックにアシストを加えるラック式パワステとなる。ゼネラル・モーターズ (GM) のグローバルプラットホーム向けで、生産能力は2014年までに年間40万ユニットとなる見込み。GM生産拠点に近い上海市嘉定区安亭の工場で生産する。 過去1年半に渡ってベルトドライブユニットの生産と組み立てのための設備投資を行っていた。TRWはステアリングコラムに搭載する電動パワステも生産している。 (2013年6月26日付日刊自動車新聞より)

-中国の大手自動車メーカー向けにコラム式電動パワーステアリング (EPS) システムの生産を開始したと発表した。この製品は、2013年に同国内で発売される3つのプラットフォームにも採用される予定。生産は安亭 (Anting) 工場で行う。なお、TRWはこれらのプラットフォーム向けに、2種類のEPSを供給する予定。一方はコラム式EPSで、車室内のステアリングコラムに搭載されるもの。もう一方はベルトドライブ式EPSで、ベルトとボールナット機構によってラックを直接アシストするものとなっている。 (2013年4月22日付プレスリリースより)

海外事業

<ルーマニア>

-ルーマニアのBaia Mareで新工場の開所式を行った。主にAudi向けのステアリングホイールの革巻き工程を行う。現在の従業員数は約300名。2013年1月に稼動を開始しており、従業員数は年内に最大650名にのぼる見込み。 (2013年4月29日付プレスリリースより)

受賞

-生産10拠点がGMより2013年「Supplier Quality Excellence Award」を受賞したと発表した。受賞した拠点と生産品目は以下の通り。
・ 韓国・安山 (Ansan) TSCL:ステアリングシステム
・ 中国・河北省廊坊 (Langfang) LVLB:ブレーキシステム
・ 中国・安亭 (Anting) :ブレーキシステム、スリップコントロールシステム
・ ドイツ・Beckedorf:エンジンバルブ
・ イタリア・Bricherasio:エアバッグ、ステアリングホイール
・ 米国バージニア州・Marion:ステアリングシステム
・ 韓国・仁川 (Incheon) :ファスナー
・ フランス・Orleans:エンジンバルブ
・ ポーランド・Czestochowa:エアバッグ、シートベルト
・ ドイツ・Koblenz:ブレーキシステム、スリップコントロールシステム
(2013年10月28日付プレスリリースより)

-ChryslerのInnovationグループより2012年度「Innovation Award」を受賞した。同社のレーンセンタリングアシスト (Lane Centering Assist) システムの開発におけるユーザーエクスペリエンスおよび運転支援技術が評価されたもの。 (2013年3月7日付プレスリリースより)

2014年12月期の見通し

-2014年12月期の売上高を、第1四半期の売上高約4,300百万ドルを含め、17,300百万ドルから17,600百万ドルと予想。この売上高の主な前提は以下の通り:
・生産レベルが北米で16.8百万ユニット、欧州で19.5百万ユニット
・北米での一部ブレーキ部品とアッセンブリーからの撤退
・中国での継続的な自動車生産数の増加
・期待為替レート

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2013年12月期 2012年12月期 2011年12月期
全社 905 834 827

研究開発拠点数

(2013年12月31日現在)
  北米 欧州 アジア太平洋 その他 合計
シャシーシステム 3 4 5 1 13
乗員安全システム 2 3 - - 5
電子部品 2 - - - 2

-TRWオートモーティブジャパンは、日本での開発体制を強化する。本社内のエンジニアリングセンターの技術者増員や米と独のエンジニアリングセンターとの連携を高め、設計変更や技術改良の対応スピードを早める。横浜市のエンジニアリングセンターは、エアバッグ・シートベルト・ブレーキの性能評価と試作品の製作、車両への取り付けなどの機能を持つ。現在、約50人の技術者が在籍し、日系メーカーとの共同開発を行っている。同社は昨年、ブレーキキャリパーを直接作動させる直動式EPB、ニーエアバッグ、運転支援システム用カメラを、日系メーカーの国内生産モデル向けに初受注した。日本での取引はさらに拡大する見込みで、メーカーの技術要求に迅速に対応する体制を高める。 (2013年2月21日付日刊自動車新聞より)

技術供与契約

-ショーワは米TRWから技術供与を受け、コラム式の電動パワーステアリング (EPS) を製品化する。TRWの設計をベースに顧客車両向けの適合開発を行い、自社拠点でのライセンス生産や、TRWの生産拠点を活用してグローバルに供給する体制を整える。3、4年後をめどに量産の立ち上げを目指す。 (2013年3月21日付日刊自動車新聞より)

製品開発

センサー技術
-衝突被害軽減ブレーキなどに使われるカメラやレーダーなどの検知機能を、一つのカメラに統合した検知システムを開発した。カメラを二つ使うステレオカメラ方式や、カメラとミリ波レーダーを併用するフュージョン方式は高コストであることから、新システムはより安価となる。単眼カメラに200メートル以上先の障害物を検知するミリ波レーダーのような長距離センサー機能を盛り込むことは難しいが、現在普及する安価なシステムに比べ高性能という。衝突被害軽減ブレーキシステムを高級車でなく普及価格帯の車種に採用することを自動車メーカーに促していく。車載カメラ用画像処理技術世界大手のモービルアイ (イスラエル) と提携し、白線や歩行者、その他の障害物を検知する機能の高度化を図った。 (2013年12月12日付日刊自動車新聞より)

-次世代レーダー「AC1000」を欧州自動車メーカーと共同開発し、2015年に量産予定であることを発表した。360度の検知範囲と、低速・高速のデュアルモード機能を一つのユニットで実現する。前方、後方、側方の検知に用いられ、アダプティブクルーズコントロール (ACC)、前方衝突警報や衝突被害軽減ブレーキ、自動緊急ブレーキ、緊急時ステアリングアシスト、歩行者保護、死角検知、車線変更支援、車両接近警報などに用いられる。 (2013年9月10日付プレスリリースより)

-ビデオカメラの次世代製品「S-CAM 3」を開発した。既存製品に比べて6倍の処理能力を備え、性能向上および複数の新機能の追加を実現している。このカメラは、2015年はじめに製品化され、多数の2016年モデルに搭載される予定。MobileyeのEyeQ3技術を採用しており、車線逸脱警告・前方衝突警告・ヘッドライト制御・交通標識認識・歩行者検知など既存製品の機能をすべて備えている。このほかに、垂直・水平視野を拡大し、さらに高解像度の撮像装置を搭載することで、自動緊急ブレーキ、高速道路用のアダプティブクルーズコントロール (ACC)、先進交通標識認識などの拡張機能が可能になる。既存の第2世代S-CAMは、年内に北米・欧州・アジアの大手自動車メーカー5社の車両に搭載される予定。 (2013年9月10日付プレスリリースより)

電子制御ユニット (ECU)
-セーフティドメインECUの第2世代製品「SDE 2」を開発した。運転支援システム、シャシー、サスペンションなど複数の機能の制御を1つのユニットに統合したもの。従来製品と比べて大幅に性能を向上させた「SDE 2」は、半自動運転や車車間通信において重要な技術となる。TRWは2017年にこの製品の生産を開始する予定。第1世代製品の生産は2013年9月に開始しており、大手欧州自動車メーカー向けに納入している。 (2013年9月10日付プレスリリースより)

シートベルト
-ロータリー方式による新型アンカーシートベルトプリテンショナー「APR1」を開発した。軽量・小型化を実現したこの「APR1」は、自動車への実装が容易になるほか、リンク用部品が不要で、車室内では通常のシートベルトウェビングのみが見える形となる。3kN超のプリテンション荷重を実現し、衝突の検出から数ミリ秒以内にシートベルトの一定の緩みを取り除くことができる。また、TRWのアクティブコントロールリトラクター (ACR) システムやアクティブバックルリフター (ABL) との組み合わせが可能で、アクティブセンサーが危険性を感知すると衝突前にシートベルトの緩みを引き込むことができる。この「APR1」は、欧州の複数のプラットフォーム向けに2015年に供給が開始される予定。 (2013年8月21日付プレスリリースより)

-ジュネーブモーターショーでRinspeedが展示するコミューターカーのコンセプトカー 「microMAX」 に、同社の新型シートベルトシステムが採用されていると発表した。このシステムでは、シートベルトのバックルやタングの代わりに、「ウェビングキャッチャー」とよばれる機能により半自動でシートベルトの着脱が可能になる。(2013年3月5日付プレスリリースより)

リモートキーレスエントリーおよびタイヤ空気圧監視システム
-日本の自動車メーカーと提携し、リモートキーレスエントリーシステム (RKE) およびタイヤ空気圧監視システム (TPMS) を初めて統合したと発表した。これにより、部品数を削減しながらRKEとTPMSの機能を提供することが可能になる。また、このシステムでは、複数の周波数を用いることにより無線電波の干渉リスクも軽減している。一方で、RKEの使用に際しては今までと何も変わらないものとなっている。従来のRKE用・TPMS用の受信機と同様の方法で、統合ECUがドアやトランクの開閉機能の起動信号を解読し、さらに、ドライバーへタイヤ空気圧の警告情報を提供する。 (2013年4月11日付プレスリリースより)

統合ブレーキコントロール (IBC)
-バキュームシステムに依存しない統合ブレーキコントロール (IBC) システムを開発した。機能性の向上と同時にブレーキシステムの簡素化を実現する。IBCは、横滑り防止装置 (ESC) をはじめ、バキュームブースター、関連ケーブル、センサー、スイッチ、電子コントローラーのほか、低真空および非真空構造において必要となるバキュームポンプなどに代わる機能を1つのユニットに統合したもの。IBCシステムの中核となるアクチュエーターは、超高速作動ブラシレスモーターによって駆動する。レーダーやカメラといった運転支援システムと連携すれば自動緊急ブレーキシステム (AES) などに効果を発揮する。従来のESCシステムと比べると、パッケージングと重量の面で大幅な軽量化を実現。従来の部品一式が7kgであるのに対し、IBCは3.8kgとなる。電動バキュームポンプを必要とするハイブリッド車に関してはさらに3.0kgの減量が見込まれる。

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2013年12月期 2012年12月期 2011年12月期
シャシーシステム 461 364 372
乗員安全システム 112 104 73
電子部品 80 61 57
自動車部品 77 86 62
全社 5 8 7
合計 735 623 571

-2014年12月期の設備投資額を、730百万ドルから750百万ドルの間になると見込んでいる。

国内投資

-米国のイリノイ州Marshallにあるエレクトロニクス工場に投資し、同国でのカメラシステムの生産を開始したと発表した。同工場では従業員約25名を管理・生産・組立部門で増員したほか、ミシガン州Farmington Hillsのエレクトロニクス部門本社においても約60名を増員し、カメラ技術の開発および応用を進める計画。2008年にLancia 「Delta」 向けに第1世代のカメラシステムの生産を開始し、2011年に第2世代の「S-Cam」カメラシステムを発売している。この「S-Cam」は2013年末までに、北米・欧州・アジアの自動車メーカー5社のモデルに搭載される予定。さらに、第3世代製品は、さまざまな2016年モデル向け製品に採用される見込み。(2013年4月11日付プレスリリースより)