Adient plc (旧 Johnson Controls Inc.の自動車用シート事業部門) 2016年9月期の動向
業績 |
(単位:百万ドル) |
2016年 9月期 |
2015年 9月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 16,837 | 20,071 | (16.1) | 1) |
純利益 | (1,449) | 541 | - | 2) |
部門別売上高 | ||||
シート事業 | 16,616 | 16,859 | (1.5) | 3) |
内装部品事業 | 221 | 3,212 | (93.1) | 4) |
要因
1) 全社売上高
-2016年9月期の売上高は、前年度比16.1%減の16,837百万ドル。為替の影響による減少分は411百万ドル、2015年7月に中国の合弁事業 「延鋒汽車内飾系統有限公司 [Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd.]」 を終了したことによる減少分が2,954百万ドル。これら2つの要因を除いた売上高は、前年度比131百万ドル増。アジア、欧州地域での増収が貢献したもの。
2) 純利益
-2016年9月期、1,449百万ドルの純損失を計上した (前年度は541百万ドルの純利益)。損失の主な理由はJohnson Controlsからの分離に伴う一時費用。
3) シート事業
-2016年9月期のシート事業の売上高は前年度比1.5%減の16,616百万ドル。販売量の増加による増収が270百万ドルであったが、為替差損 402百万ドル、製品価格などによる影響 130百万ドルに相殺された。
4) 内装部品事業
-2016年9月期の内装部品事業の売上高は前年度比2,991百万ドル減の221百万ドル。中国の合弁事業 「延鋒汽車内飾系統有限公司 [Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd.]」 終了による減収が2,954百万ドル。工場縮小に伴う生産量の減少、製品価格の下落、為替差損などの影響も減収につながった。
事業再編
オートモーティブシステムズ部門のスピンオフ
-2015年7月、オートモーティブシステムズ部門 (Automotive Experience) に関して、非課税のスピンオフ手続きを進めると発表。内装部品事業は競合企業が多く、利益率が低いため、今後のコア事業となるパワーソリューションズ部門およびビルディングシステム部門に注力する。
内装事業を中国企業との合弁会社に移管
-2015年7月、華域汽車系統股份 (HUAYU) の完全子会社である延鋒汽車飾件系統 [Yanfeng Automotive Trim Systems Co., Ltd] との合弁会社 「延鋒汽車内飾系統有限公司 [Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd.]」 が営業を開始したと発表。Johnson Controlsは同社の株式30%を保有する。新会社は上海を本拠を置き、Johnson Controlsの内装事業を移管する。新会社の売上高は85億ドル、受注残高は100億ドルとなる見込み。世界90カ所に生産、開発、エンジニアリング、カスタマーサービス拠点を保有。インストパネル、コックピットシステム、ドアパネル、フロアコンソール、オーバーヘッドコンソールなどを生産する。(2015年7月2日付プレスリリースより)
シート事業を新会社 「Adient」 としてスピンオフ
-2016年10月31日、AdientはJohnson Controlsからの分社化が完了し、ニューヨーク証券取引所に上場したと発表した。大手シートサプライヤーとして、自動車メーカーに高品質の製品や優れた技術を提供する。従業員数は75,000名で、33カ国に230の生産・組立拠点を有する。特に中国市場では、17のシート合弁会社が32都市に60の生産拠点を運営している。(2016年10月31日付プレスリリースより)
中国事業
![]() |
出典: Adient |
-中国市場で圧倒的なプレゼンスを確保することが、同社の成長戦略の柱の1つ。すでにシートのジャストインタイム (JIT) 供給でトップであり、中国シート市場で44%のシェアを有する。
-上海汽車、東風汽車、第一汽車、長安汽車、北京汽車、広州汽車、華晨汽車等とそれぞれ合弁事業を設立したことにより、各OEM向けの納入シェアは高い。
-2016年9月期、同社の中国市場における売上高 (合弁事業を含む) は73億ドルに達した。中国における事業規模は以下の通り:
- 合弁会社: 17社
- 技術センター: 3拠点
- エンジニア: 1,300名
- 生産拠点: 60工場 (32都市)
- 従業員数: 31,000名
-延鋒汽車内飾系統有限公司 [Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd.] に29.7%出資している。Johnson Controlsからのスピンオフ後も持分を保持。
受注
-同社はVolvo 「S90」 向けのシートを開発した。高品質のシートカバー材料や快適性のあるクッション材を用いている。また、メタルフレームも含めたリアシートの開発・統合も行った。同社は設計からメタルフレームの供給、統合まで、開発の全工程を担当した。(2016年5月31日付プレスリリースより)
受賞
-トヨタから 「Award for Excellence」 を受賞。「Tacoma」 2016年モデル向けシートが高く評価されたもの。
-韓国の安山 (Ansan) にある技術センターが現代・起亜より 「Technology 5 Star」 の認証を取得した。(2016年2月23日付プレスリリースより)
-中国合弁会社で自動車用シートを手がける重慶延鋒安道拓汽車部件系統有限公司 [Chongqing Yanfeng Johnson Controls Automotive Components (CQYFJC)] は、Volvoより 「Quality Excellence (VQE) Award」 を受賞したと発表した。四川省の成都 (Chengdu) に建設したCQYFJCの新工場は、Volvo 「S60L」 および 「XC60」 向けに納入したシートの高い品質が評価されている。(2015年11月2日付プレスリリースより)
2017年9月期の見通し
-同社は2017年度の売上目標を168~170億ドルと発表した。また、中国の自動車シート市場において業界トップの地位を維持する意向も示している。Adientは中国で17のシート合弁会社を運営しているほか、32都市に60の生産拠点を保有している。(2016年9月15日付プレスリリースより)
研究開発費 |
(単位:百万ドル) |
2016年9月期 | 2015年9月期 | 2014年9月期 | |
合計 | 460 | 599 | 667 |
研究開発拠点
-ドイツのBurscheid拠点に 「シェイカー (shaker)」 とよばれる新型の油圧高周波振動試験システムを導入し、同拠点の試験能力を増強した。投資額は約2百万ユーロ。この6軸のシステムにより、走行距離10万kmの快適性・耐久性試験が可能になる。特殊な人工気候室に設置されており、さまざまな気候状況におけるシミュレーションができるという。(2015年11月9日付プレスリリースより)
-下記12カ所に主要なエンジニアリング開発センターを保有。
- 米国 ミシガン州 Plymouth
- ドイツ Burscheid
- ドイツ Kaiserslautern
- ドイツ Remscheid
- ドイツ Solingen
- スロバキア Trencin
- 中国 上海市
- 中国 長春市
- 中国 重慶市
- 日本 横浜市
- 韓国 安山市
- インド Pune
製品開発
低排出ポリウレタンフォーム
-低排出の第3世代ポリウレタンフォームを発売した。10年前に比べてVOC (揮発性有機化合物) を最大90%低減するもの。さらに、素材不純物やフォームの匂いも大幅に削減している。この低排出フォームの開発は、フランスのStrasbourgにある同社の技術センターが中心となり、米国のミシガン州Plymouthや中国の上海にある研究開発センターと協力しながら、グローバル自動車メーカーの厳しい排出要件を大幅に上回る製品を開発した。生産は、欧州および中国の生産拠点で行われる。米国における第3の拠点も計画されている。(2016年3月3日付プレスリリースより)
設備投資額 |
(単位:百万ドル) |
2016年9月期 | 2015年9月期 | 2014年9月期 | |
全社 | 437 | 478 | 624 |