Johnson Controls Inc. 2014年9月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
2014年
9月期
2013年
9月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 42,828 41,410 3.4 1)
セグメント利益 2,877 2,686 7.1 -
自動車部品部門
売上高 22,032 20,461 7.7 2)
セグメント利益 886 698 26.9 -
バッテリー部門
売上高 6,632 6,358 4.3 3)
セグメント利益 1,061 1,004 5.7 -

*2014年7月の売却により非継続事業となったエレクトロニクス事業の業績および研究開発費は、2014年9月期の数値から控除されている。また、2013年9月期以前に関しても遡って修正されている。

要因
1) 全社売上高
-2014年9月期の売上高は、前年比3.4%の増加。ビルディングシステム事業の販売が減少したものの、自動車部品部門およびバッテリー部門の販売増が全社売上高を押し上げた。また、為替差益も売上高増に寄与。

2) 自動車部門
-2014年9月期の同部門の売上高は、前年比7.7%の増加。シート事業および内装事業がともに売上高増に貢献した:
  • シート事業:販売増、買収効果、製品ミックスおよび為替差益が奏功。一部、事業売却による販売減、製品価格の下落などのマイナス要因により相殺。
  • 内装事業:販売増、製品価格の上昇、為替差益により前期比で増収。一方で事業売却および製品ミックスの悪化が一部売上高を押し下げた。
3) バッテリー部門
-2014年9月期の同部門の売上高は、前年比4.3%増。銅価格下落の影響を受けたものの、販売増、買収効果、優位な製品価格決定・製品ミックス、為替差益が売上高増加に貢献。

企業買収

-中南米における自動車用バッテリー事業の拡大に向け、コロンビアのバッテリーメーカーMACの株式90%を取得。今回の取引により両社は拠点を拡大し、新技術の導入を見込むほか、コロンビアから主にアンデス諸国への輸出を増やす計画。なお、同社とMACは2011年6月に合弁会社を設立し、中南米市場向けに鉛酸バッテリーの生産・供給を行っている。(2013年11月8日付プレスリリースより)

合弁会社

-上海延鋒工貿実業有限公司 [Shanghai Yanfeng Industry and Commerce] および安徽延生汽車内飾件有限公司 [Anhui Yansheng Automotive Trim] と、中国の安徽省淮南 (Huainan) 市にファブリックの合弁会社を設立することで合意したと発表。新会社「Anhui New Nangang Johnson Controls Automotive Trim Co., Ltd.」は、中国の自動車メーカー向けにファブリックの設計・エンジニアリング・生産からトリム製品までさまざまなサービスを提供する。同合弁会社では、縦編み・横編みが可能な設備を備え、扱う製品には織物やシートトリムカバーが含まれる。2014年10月に操業を開始する予定。(2014年7月23日付プレスリリースより)

-華域汽車系統 (HASCO) の完全子会社である延鋒汽車飾件系統 [Yanfeng Automotive Trim Systems] と、自動車用内装部品の合弁会社を設立することで合意したと発表。華域汽車系統は、上海汽車 (SAIC) 傘下のサプライヤー。新会社の売上高は約75億ドルを見込む。出資比率は延鋒汽車飾件系統が70%、Johnson Controlsが30%。上海を本拠とし、米国・欧州・中国・日本・インドにエンジニアリング・開発拠点やカスタマーセンターを置く。取り扱う製品は、インストパネル、コックピットシステム、ドアパネル、フロアコンソールなど。新会社の設立手続きは2015年上期に完了する予定。(2014年5月18日付プレスリリースより)

事業再編

Visteonにエレクトロニクス事業を売却
-2014年7月、エレクトロニクス事業を265百万ドルでVisteonに売却。今回売却した事業は、インストメーター、インフォテインメント、ディスプレイ、ボディエレクトロニクス関連の製品を自動車メーカー向けに供給しており、2013年9月期の売上高は13億ユーロを記録した。欧州・アジア・北米において、約1,000名の技術者・専門家・設計者を含む従業員約5,000名に影響を及ぼすという。(2014年7月1日付プレスリリースより)

受注

-上海汽車 (SAIC) と自動車用バッテリー供給に関する長期契約を締結。上海汽車傘下の自主ブランドのアイドリングストップシステム搭載車に、ガラスマット電解液吸収型 (AGM) バッテリーを供給する。AGMバッテリーは充放電耐久性が普通電池の3倍、高出力、製品寿命が長いなどの特徴に加え、過酷環境下においても使用が可能という。同社は世界で520百万米ドルを投じ、AGMバッテリーの生産能力増強を計画しており、そのうち中国では100百万米ドルを投じ生産能力を2百万個まで引き上げる予定。(2014年5月6日付け各種リリースより)

-Daimlerの新型 「Mercedes-Benz S-Class」のフロントシート、オプションの高級リアシート、リアシートエンタテインメントシステム、ヘッドライナー、サンバイザーなどの主要部品を納入している。同社はシートの開発をMercedes-Benzと共同で行い、主要部品をMercedes-Benzのシート生産工場に納入している。フロントシートストラクチャーの重さは20kgで、従来の同様の設計に比べて約20%の軽量化を実現した。(2013年12月17日付プレスリリースより)

-同社製品がGM 「Cadillac CTS」の2014年モデルに採用されたと発表。シートシステム一式をジャストインタイム生産システムにより納入している。「Cadillac CTS」のシートには、フロントシート用暖房・換気機能、リアシート用暖房機能、フロントシート用クッションエクステンダーおよび調整式ボルスター、ランバーサポートなどのオプションが装備。このほかにも、4段階調整が可能なヘッドレストのほか、車線を外れるとドライバーへ警告を行う警告機能付きクッション、フロントおよびリアシート用側面衝突エアバッグなどの機能を備えている。さらに、同社はこのモデルに、AGM (吸収ガラスマット) バッテリーも納入している。(2013年12月12日付プレスリリースより)

受賞

-Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America (TEMA) より複数の部門で最高賞を受賞したと発表した。同社の自動車用シート事業 (Automotive Seating)、自動車用電装・内装部品事業 (Automotive Electronics & Interiors)、バッテリー事業 (Power Solutions) は、シート、オーバーヘッドコンソール、射出成形部品、ヘッドライナー、ドアトリム、バッテリーなどの納入に関して、「Supplier Diversity Award」の「Superior」賞を受賞した。また、自動車用シート事業で、トヨタ 「Corolla」向けのシート生産の立ち上げに関して、「Excellent」賞も受賞した。同モデル向けのシートの生産は、カナダ・オンタリオ州のMilton工場で行っている。(2014年3月27日付プレスリリースより)

-2014年1月に広汽ホンダより2013年「Supply Guarantee Award」を受賞。同社のバッテリー供給が評価されたもの。また、2月には比亜迪汽車 (BYD) から、ディーラーにおけるアフターサービスに関して「Excellent After Sales Service」を授与された。さらに、2013年11月には、吉利汽車 (Geely) より品質および顧客サービスが評価され、電池メーカーとして唯一「Annual Excellent Supplier」を受賞している。(2014年3月5日付プレスリリースより)

-Volvoより3つの賞を受賞。ドイツのHanoverおよびZwickauにあるバッテリー工場はそれぞれ「Quality Excellence Award」を受賞。また、Johnson Controlsとしては、「Volvo Cars Award of Excellence 2013」を「企業の環境・社会的責任 (Environmental and Social Responsibility)」部門で受賞した。(2014年1月6日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2014年9月期 2013年9月期 2012年9月期
合計 792 791 834

*2014年7月の売却により非継続事業となったエレクトロニクス事業の業績および研究開発費は、2014年9月期の数値から控除されている。また、2013年9月期以前に関しても遡って修正されている。

研究開発拠点

自動車部品部門 技術センター
-米国 ミシガン州 Plymouth
-米国 ミシガン州 Holland
-ドイツ Burscheid
-ドイツ Solingen
-ドイツ Kaiserslautern
-ドイツ Remscheid
-スロバキア Trencin
-中国 上海
-中国 吉林省 長春市
-日本 神奈川県 横浜市
-韓国 京畿道 安山市
-インド マハラシュトラ州 Pune

バッテリー部門 バッテリー技術センター
-米国 ミシガン州 Holland
-米国 ウィスコンシン州 Milwaukee
-ドイツ Hannover
-メキシコ Monterrey
-ブラジル Sorocaba
-中国 上海

-2014年、米国のミシガン州Plymouthの自動車用シート事業本部で衝突試験施設を開設。面積6,000平方フィートの同施設には、Seattle Safety製のスレッドシステムServoSledを設置。ドイツのBurscheid、中国の長春や上海、横浜にある試験施設とグローバルに連携しながら、精密かつ標準化したシートの安全性試験を行うことが可能になる。(2014年8月12日付プレスリリースより)

-米ウィスコンシン大学マディソン校のWisconsin Energy Instituteにおいて、新たに研究室を開設したと発表。この研究室「Johnson Controls Advanced Systems Test Lab」では、自動車や定置向けのエネルギー貯蔵システムの研究を行う。(2014年5月5日付プレスリリースより)

研究開発活動

テーラードハイブリッドチューブの生産プロセスの最適化
-自動車関連の研究プロジェクト「自動車の軽量構造に向けたハイドロフォーミング技術:スチールとアルミニウムを使ったレーザーろう付けテーラードハイブリッドチューブ用途 (IHU-THT)」に出資すると発表。同プロジェクトでは、科学・産業分野からの参加団体がスチールとアルミニウムを組み合わせたテーラードチューブの開発に取り組む。これにより、10~20%の軽量化につながるという。プロジェクト期間は2年間で、科学者やレーザー技術分野の企業、自動車部品サプライヤーや自動車メーカーが、生産プロセスの最適化を行い、自動車の車体部品、ドアやシートクロスメンバーの衝突保護部品などへの適用に備える計画。次の段階として実際に部品を生産し、さらにシートバックにテーラードハイブリッドチューブを採用したコンセプトシートを発表する。(2014年8月21日付プレスリリースより)

軽量材料を使用したシート重量の削減
-自動車用部品に関して研究開発能力を増強する計画。欧州投資銀行からの220百万ユーロの融資により同社が進める取り組みには、軽量材料を使用したシート重量の削減が含まれる。これにより、さらなる車両軽量化に貢献していく意向。(2014年2月28日付プレスリリースより)

技術提携

自動車バッテリー用の冷却システムでFraunhofer研究機構と協業
-Fraunhofer研究機構と、低コストでエネルギー効率を向上させた自動車バッテリー用の冷却システムの開発に向けて提携することで合意した。まず、48ボルトのマイクロハイブリッドバッテリーの開発に注力する。このバッテリーは、燃料消費や排出ガスを大幅に低減し、HV・EVに比べて低コストで負荷管理が可能になるもの。今回の提携により開発した技術は、まず欧州で採用されたあと、すぐに米国でも使用される予定。2020年からグローバルでの採用を見込んでいる。(2014年3月20日付プレスリリースより)

レーザー技術に関するプロジェクト「LASHARE」への参画
-レーザー技術に関するプロジェクト「LASHARE」への参加を発表。このプロジェクトにおいて同社は、スペインの技術センターAimenとレーザー技術メーカーMonocromとともに、レーザーを利用したロール成形プロセスの開発に取り組む。この成形プロセスにより、スチール製リアシートストラクチャーの材料コスト削減および軽量化を実現するほか、スチールの成形性向上を目指す。この新技術の試験生産プロセスは、ドイツHilchenbachに位置するJohnson Controlsの金属工場で行われる予定。なお、「LASHARE」には、欧州の約30の会社と6つのレーザー技術の機関が参加している。(2014年2月18日付プレスリリースより)

エネルギー貯蔵技術に関して、ローレンス工科大学と提携
-米国ミシガン州Southfieldのローレンス工科大学と提携し、車両システムにおける新たなエネルギー貯蔵技術の開発および検証を行うと発表。今回の提携による研究は、燃費・排出ガス基準の達成、ガソリン費用の削減、車両性能や機能性の向上など、同社の現在の取り組みを促進するとみられる。同社は、ローレンス工科大学へ最新の試験設備や技術的資源を提供し、車両とバッテリー設計の最適化に向けた学術・応用研究を推進する。(2014年1月29日付プレスリリースより)

製品開発

自動車シート用コーティング
-自動車用シートを清潔かつ衛生的に保つ布用コーティング「FreshPer4mance」を開発した。このコーティングは、汚れや液体をはじいて、乗員を細菌や静電気から保護する。あらゆる種類のカバー生地に適用が可能で、頑固な汚れも一拭きで簡単に取り除くことができる。(2014年4月15日付プレスリリースより)

自動シートプレ調節システム
-個々のドライバーの体型に合わせて快適・安全な姿勢を実現できる自動シートプレ調節システムを開発。このシステムの使用にあたって、同社はスマートフォンからドライバーの体型の情報をインプットできるアプリを開発した。もしくは、車両のデジタル制御コンソールに直接データを入力することができる。また、車載カメラによりドライバーが車に乗り込む前に自動的に体格を測定し、正しい位置にシートを動かすことも可能になる。ファミリーカーや社用車、レンタカー、カーシェアリング用の車両など、同じ車を複数人で使用する場合に特に役立つという。(2014年1月15日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2014年9月期 2013年9月期 2012年9月期
全体 1,199 1,377 1,831
-自動車部品部門 632 754 777
 ・シート事業 420 467 549
 ・内装事業 181 235 171
 ・エレクトロニクス事業 31 52 57
-バッテリー部門 328 425 875

海外投資

<中国>
-中国の重慶 (Chongqing) に自動車用バッテリー工場を開設したと発表。年産能力はバッテリー600万個。工場面積は133,000平方メートルで、投資額は154百万ドル。フル稼働時には従業員500名超を雇用する計画。(2014年6月4日付プレスリリースより)

-中国の四川省成都 (Chengdu) 市に新工場を開設したと発表。合弁会社であるChongqing Yanfeng Johnson Controls Automotive Componentsの傘下となる。新工場は、Volvo向けにシート一式、ヘッドライナー、フロアコンソールキャリアのほか関連するサービスをVolvoの成都工場に供給する。最初のプロジェクトは「S60L」向け。成都経済技術開発区に位置し、従業員数は100名となる。(2013年11月14日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-メキシコのQueretaroに新工場を開所したと発表。自動車シート用の成形ポリウレタンフォームを生産する。2013年3月に建設を開始し、2013年10月に完成。2014年2月から生産を開始している。工場面積は9,300平方メートルで、メキシコ中部に拠点を持つ大手自動車メーカー向けにシートフォームを供給する。現在はフォーム成形ライン1本が設置されており、従業員数は約150名。5年以内にフル稼働に達する計画で、さらなる増員を見込んでいる。(2014年2月17日付プレスリリースより)