Delphi Automotive PLC 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2012年
12月期
2011年
12月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 15,519 16,041 (3.3) 1)
営業利益 1,476 1,644 (10.2) -

要因
1) 売上高
-2012年12月期の売上高は、前年比3.3%の減少。

-前年比で1%の成長を達成したものの、為替差損 (主にユーロおよびブラジルレアル)、コモデティ価格の顧客転嫁がうまくいかず減益となった。

-一方、2012年10月のMVL買収により売上が110百万ドル増加した。

受注

-2012年末までに欧州で発売される電気自動車(EV)4モデルに、同社の音声発生装置が採用されたと発表。このほか、アジアでも2013年に発売予定の1車種に搭載される。このシングルボックスの音声発生装置は、従来のマルチボックスシステムに比べて約3分の1の軽量化、90%の省電力を実現。周波数域は500 Hzから10 KHzで、個々の自動車メーカーごとに独自のメロディーが再生可能となる。(2012年9月14日付プレスリリースより)

-大型ディーゼル燃料噴射装置 (FIE) に使用するコモンレールシステムの生産を開始したと発表。このシステムは欧州排出基準「Euro 6」に対応する。最大2,700バールで作動するこのシステムの構造は3種類。従来のリモートポンプコモンレール「F2R」と2種類の分散ポンプコモンレールシステム「F2E」および「F2P」。同社は現在、最大3,000バールで作動するシステムを提供しており、さらに高圧下での試験も行っている。2013年半ばまでにこの3種類のシステムの生産を開始し、9~16Lの様々なエンジン向けに納入する計画。なお、同社はこれらの製品について3件の受注を獲得しており、モデルライフ全体の受注総額は37億ユーロを超えるという。これに伴い、同社は英国のStonehouseおよびSudburyをはじめとする世界の拠点に向けて大幅な投資を行う予定。(2012年9月5日付プレスリリースより)

-起亜 「Cee'd」にディーゼルコモンレールシステムを納入している。このモデルは欧州で販売されている。(2012年7月5日付プレスリリースより)

買収

-フランスを本拠とするFCIグループより自動車部門MVL (Motorized Vehicles Division) の買収を完了したと発表。買収金額は765百万ユーロとなる。(2012年10月26日付プレスリリースより)

-フランスを本拠とするFCIグループの自動車部門MVL (Motorized Vehicles Division) の買収に関して、独占交渉を開始したと発表。買収金額は765百万ユーロで、2012年末に手続きが完了する見込み。買収完了後、MLVはDelphiの電気・電子アーキテクチャー部門 (E/EA) に属することになる。MLVは、様々な製品向けにインターコネクションシステムを供給しており、安全拘束システム (SRS)、パワートレイン、EVなどで使用するコネクターなどが含まれる。2011年12月期の売上額は692百万ユーロ。今回の買収はDelphiにとって、HV・EV用コネクター製品の大幅な拡大に繋がる見込み。また、MLVの中国、インド、韓国における生産・エンジニアリング拠点などグローバルに展開する拠点を活用して、Delphiはアジア市場における基盤をさらに強化していく計画。(2012年5月24日付プレスリリースより)

事業提携

-ボーフム応用科学大学と共同で、都市交通型EV「BOmobil」の設計に取り組んでいる。既に量産準備が整っており、ドイツのミュンヘンにおける「eCarTec」でプロトタイプが展示される予定。今回のプロジェクトで同社は、電気接続システムやエネルギー管理、パワーエレクトロニクス、制御エレクトロニクスなどに使用する高電圧ハーネスシステム向けに、最適な電気・電子構造の研究および開発を行っている。なお、この「BOmobil」プロジェクトは、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州が支援している。(2012年10月23日付プレスリリースより)

-TTI Inc.とアジア太平洋地域における販売代理店契約を締結したと発表。今回の契約により、同地域ではTTIを通じてDelphi Connection Systems (DCS) の製品が購入可能となる。TTIは米国を本拠とし、相互接続部品・受動部品・電気機械部品・個別部品などの販売を行っている。(2012年3月19日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:億ドル)
2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
合計 12 12 10

-同社は2013年12月期の研究開発費に12億ドルを投じると予想している。

研究開発体制
-2012年12月31日現在、全世界に18,000名を超える科学者、エンジニア、技術者が研究開発に従事している。

-全世界に15の研究拠点を保有。

  • 北米:5拠点
  • 欧州、中東およびアフリカ:5拠点
  • アジア太平洋:4拠点
  • 南米:1拠点

研究開発活動

-同社とルクセンブルク大学のSnT学際センター (Interdisciplinary Centre for Security, Reliability and Trust) は、自動車向けの電子制御システムに関して、4年間の共同研究プログラムを行うことで合意した。まず2つのプロジェクトが予定されており、1つは内蔵ソフトウェアの試験、もう1つはその安全性に関するもの。両者は、ECUソフトウェアシステムに対する効果的・効率的な自動検証および検証技術の開発を目指す。(2012年12月7日付プレスリリースより)

-同社は、マイクロマシニング加工法の開発に米国エネルギー省 (DOE: U.S. Department of Energy) から3.7百万ドルの資金を受けた。超高速レーザー加工技術を活用し、直噴燃料噴射装置 (GDi) の流量制御ホール加工の生産性を高める。既存のエッチング、ばり取り、表面洗浄工程を省くことで、同工程のエネルギー効率を最大25%向上するとしている。

製品開発

<電気・電子アーキテクチャー>
フレキシブルビームコネクター
-次世代のフレキシブルビームコネクター (Flexible Beam Connector) を開発し、接続システムの製品群を拡大している。これまで、非密封型の「GT 150」コネクターおよび「GT 280」コネクターに使用されていたフレキシブルビーム技術は、密封型の「GT 150」コネクターおよび「GT 280」コネクターにも使用が可能。また、従来の2ピースコネクターに対して、この技術では1ピースのプラスチックを使用する。これにより、複雑さ・組立時間・コストが最小限になり、ワイヤーハーネスの組立工程の簡素化を実現。同時に、標準的な2ピースタイプと同レベルの端子保持力を維持することが可能になる。(2012年3月20日付プレスリリースより)

<パワートレインシステム>
排出ガス削減対応製品
-ドイツで行われる第21回Aachen国際会議において、ガソリン車およびディーゼル車の排出ガス削減課題に対応する新技術に関する技術論文を発表する。最初の2本の論文では、生産開始間近のSCR (選択還元触媒) 噴射システムと、先行開発中のガソリン直噴圧縮着火 (GDCI) エンジンについて説明する。SCRシステムは乗用車および小型商用車向けで、新型アンモニアセンサーを装備。同社は2015年より生産を開始する予定。また、Daimlerが発表する3本目の論文では、Daimlerと同社の共同開発による燃焼システムに関して詳細が述べられる。なおこの燃焼システムは、同社の2ステージディーゼルインジェクターの新型プロトタイプを採用している。(2012年10月8日付プレスリリースより)

コモンレール式燃料噴射システム - 中国
-大型ディーゼルエンジン用の廉価型コモンレール式燃料噴射システムを開発中であると発表した。中国などの新興市場を対象とするもの。このシステムは高圧ポンプ、レールASSY、電子コントローラー、インジェクターなどで構成される。9~16Lのエンジン向けで、最大レール圧力は1,800バールを実現するほか、中国の第4、第5段階の排出ガス基準を達成する。(2012年9月7日付プレスリリースより)

コモンレール燃料噴射システム
-大型ディーゼルエンジンおよび小型エンジン向けに、コモンレール燃料システムを新たに開発した。大型コモンレールシステムは3タイプ。このうち分散ポンプコモンレールシステム (DPCRS) は2タイプあり、多数の独立したポンプユニットから圧力が供給される。一方のリモートポンプコモンレールシステム (RPCRS) は、従来のコモンレールシステムの構造と類似するもの。同社はまた、1~4気筒の小型ディーゼルエンジンに使用する軽量ユニットポンプコモンレール (UPCR) システムも開発した。現在生産しているのは1,600バールで作動するタイプ。さらに2,000バールタイプも開発中で、今後施行される予定の欧州排ガス基準「Euro 7」にも準拠する見込み。(2012年4月25日付プレスリリースより)

<電子・安全>
車載情報・エンターテインメントシステム
-3月18日まで開催中のジュネーブ国際モーターショーに、次世代の車載情報技術を搭載したデモカー「F1for3」を出展した。イタリアの自動車デザイナー、フランコ・スバーロ氏との共同企画によるもので、信頼性の高い高速通信技術による快適で利便性の高い車載インフォテイメントシステムを提案している。デモカーはF1カーをイメージした3人乗りのスポーツカーで、4G (第4世代移動通信システム) を搭載し、テレビやインターネットのデータをタブレットPCやスマートフォンなど乗員の携帯端末に送信できるようにした。車載情報システムとして同社の「MyFiマルチファンクション・インフォテインメントユニット」を搭載し、タッチセンシティブセンターディスプレイで操作できるようにした。(2012年3月13日付日刊自動車新聞より)

車載機器用のワイヤレス充電システム
-車載機器用のワイヤレス充電システムを新開発した。電力を伝送する際、電子機器を充電する場所を限定しない。また、同社のEV用ワイヤレス充電システムと同様に磁気共鳴技術を用いているため、複数の機器を同時に充電可能。なお、同社は現在、複数のデモカーにおいてこのシステムを試験中で、2014年モデルから供給を開始する計画。(2012年1月5日付プレスリリースより)

MyFiシステム
-米国ラスベガスで開催される「2012 Consumer Electronics Show」において、新型「MyFi」システムを出展する。Windows Azureを用いたクラウドベースのポータル機能を追加したもの。これにより、ドライバーはタイヤ空気圧・エンジン状態・ブレーキ寿命などを、ポータブルタブレットやスマートフォンから確認できる。また、安全センサーと交信することで、ドライバーの注意を促す必要がある際に警告を発する。(2012年1月4日付プレスリリースより)

<サーマルシステム>
相変化物質 (PCM) エバポレーター

-同社の新たなエアコン技術「相変化物質 (PCM) エバポレーター」は、アイドリングストップ車においてキャビン内の冷房持続時間を延長する。エアコンシステムが停止すると、PCMは徐々に液化または溶解しながら空気中から熱を吸収する。また、HVACシステムの燃費を50%向上するとともに、HV・EVの電気走行距離の伸長にも貢献。この技術は現在、試験段階から最初の車両開発プログラムへ移行しており、2015年までにこのシステムを搭載した車両が販売される見込み。(2012年4月25日付プレスリリースより)

ユニタリーヒートポンプエアコン
-ユニタリーヒートポンプエアコン (HPAC) を新開発したと発表。冷媒型ヒートポンプと冷却水分配システムを一体化したもの。周囲の空気から熱を取り去る一方で、利用可能な廃熱を集めてキャビンに送り込むこともできる。大型商用車を含む全ての車両タイプに対応するが、特にHV・EVに対してはバッテリーの消耗を軽減するため走行距離の延長に貢献する。プラグインハイブリッド車でのリグテストでは、3.8g/マイルのCO2削減を実現した。さらに、冷媒の量は従来のシステムに比べて半分となる。同社はこのHPACに関して、2015年モデルに向けて生産を開始する予定。(2012年4月25日付プレスリリースより)

排ガス熱交換器
-同社が新たに開発した排ガス熱交換器 (EGHX) は、CO2排出を削減するとともにキャビン内を迅速に暖め、安全性向上および冷間始動における燃料消費の大幅な削減に貢献する。この製品は、通常エキゾーストシステムで失われる熱の回収を行うため、時速35-45マイル (時速約56-72km) での走行において5kWから7kW分の回収が可能になる。同社は、このEGHXを年内に発売する計画。(2012年4月25日付プレスリリースより)

設備投資

部門別設備投資額

(単位:百万ドル)

2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
電気・電子アーキテクチャー 238 219 202
パワートレインシステム 304 228 186
電子・安全 66 100 59
サーマルシステム 63 70 35
排除およびその他 34 13 18
合計 705 630 500

地域別設備投資額

(単位:百万ドル)

2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
北米 210 176 140
欧州/中東/アフリカ 308 278 236
アジア太平洋 155 118 87
南米 32 58 37
合計 705 630 500

海外投資

<中国>
-中国の山東省煙台 (Yantai) において、新たに建設するディーゼル燃料噴射装置の生産工場の起工式を行ったと発表。建設および設備には、約100百万米ドル (643百万中国元) を投じる。新工場での生産は2013年後半に開始し、江蘇省蘇州 (Suzhou) にある既存のエンジンコントロールモジュール工場と連携して運営する計画。なお、Delphiは煙台市において現在2,800名の従業員を抱えており、新工場では今後、500名を雇用する見込み。(2012年10月11日付プレスリリースより)

<英国>
-大型ディーゼル燃料噴射装置 (FIE) に使用するコモンレールシステムの生産を開始したと発表。このシステムは欧州排出基準「Euro 6」に対応する。最大2,700バールで作動するこのシステムの構造は3種類。従来のリモートポンプコモンレール「F2R」と2種類の分散ポンプコモンレールシステム「F2E」および「F2P」。同社は現在、最大3,000バールで作動するシステムを提供しており、さらに高圧下での試験も行っている。2013年半ばまでにこの3種類のシステムの生産を開始し、9~16Lの様々なエンジン向けに納入する計画。なお、同社はこれらの製品について3件の受注を獲得しており、モデルライフ全体の受注総額は37億ユーロを超えるという。これに伴い、同社は英国のStonehouseおよびSudburyをはじめとする世界の拠点に向けて大幅な投資を行う予定。(2012年9月5日付プレスリリースより)