Arconic Inc. (旧 Alcoa, Inc.のValue-Add事業部門) 2015年12月期の動向

組織変更

-Alcoa Inc.は11月1日付で2つの独立企業 「Arconic Inc.」 と 「Alcoa Corporation」 に分割したと発表した。新生Arconicはマルチ材料、精密エンジニアリングおよび高度製造技術の業界リーダーとして、ニューヨーク証券取引所に上場。分割に伴い、ArconicはAlcoaの株式19.9%を保有する。Arconicに移管された事業の2015年売上規模は約125億ドルで、内訳は航空・自動車部門が約65%、産業・建設部門が残り35%を占める。Arconicは軽量化の需要が高まる北米自動車市場向けにアルミ接合技術を開発。同社では北米自動車向けアルミ板材の売上高が2013年の229百万ドルから2018年には1,300百万ドル、6倍に成長すると予想している。同社は北米における自動車事業売上高の96%を市場シェアトップないし第2位の製品で占めるという。また、全社売上高の約40%を占める航空事業では、機体構造ならびにエンジン向けのエンジニアリング製品・ソリューションを供給。同社は金属製およびCFRP製航空機の構造部品における業界リーダーとなっている。(2016年11月1日付プレスリリースより)

-2015年9月、会社を2つの独立した上場企業に分割する計画を発表した。そのうち1社は川上部門を担い (Upstream Company)、グローバル一次製品 (Global Primary Products) 部門を構成するボーキサイト、アルミナ、アルミニウム、鋳造、エネルギーの5分野から成る予定。世界で64拠点を保有し、従業員数は約17,000名を見込んでいる。同事業の2015年6月末までの1年間の売上総額は132億ドルだった。一方、高付加価値製品を手がけるもう1社 (Value-Add Company) は、グローバル圧延製品、エンジニアリング製品およびソリューション、輸送・建設向けソリューションなどの分野を含む。世界で157拠点を保有し、従業員数は約43,000名となる見込み。2015年6月末までの1年間の売上総額145億ドル。2016年下期に分割の手続きを完了する計画。 (2015年9月28日付プレスリリースより)

事業提携

-2015年9月、同社とFordは、成形性や設計の柔軟性を高めた次世代の自動車用アルミ合金の生産に関して提携を発表した。これに伴いFordは、「F-150」 の2016年モデルの複数の部品に、Alcoaの生産技術 「Micromill」 を用いて製造した材料を採用する予定。Fordは、この自動車用先進アルミニウムを実用化する初の自動車メーカーとなる。2015年第4四半期から、「F-150」 の生産において 「Micromill」 材料の使用を開始する計画で、今後数年間でさまざまな自動車部品や次世代のプラットフォーム向けに採用を拡大していく。2016年から2017年の間に、Fordのモデルに採用する 「Micromill」 材料を2倍超に増やす見込み。 (2015年9月14日付プレスリリースより)
>>>アルミシート生産技術 「Micromill」についての説明

製錬・精錬能力削減

-2015年3月、1年間で製錬能力50万トン、精錬能力280万トンを削減もしくは売却する可能性を検討すると発表した。これは、同社のグローバルでの製錬能力の14%、精錬能力の16%に相当する。同社は現在、グローバルで製錬能力の19% (66.5万トン) と精錬能力の7% (120万トン) を使用していない。また、2007年から一次金属事業において、グローバルの製錬能力の31% (130万トン) を縮小・閉鎖・売却しているという。 (2015年3月6日付プレスリリースより)

* 製錬 (Smelting) = 鉱石を還元することによって金属を取り出す工程
* 精錬 (Refining) = 製錬した金属から不純物を取り除いて純度を高める工程

<南米スリナム>
-2015年9月、南米スリナム共和国にある傘下のSuralcoにおいて、残りの年間88.7万トンのアルミナ精錬能力を削減すると発表。同社とスリナム政府は、同国のボーキサイトおよび精錬事業の維持に向けた協議を続けてきた。両者の協議は2014年10月から行われていたが、Suralcoが直面するボーキサイトの埋蔵量や長期エネルギー不足などの問題により今回の結論に至った。精錬能力の削減は、2015年11月末までに行われる予定。Suralcoは、Alcoaが60%、Alumina Limitedが40%を出資するAlcoa World Alumina and Chemicalsの傘下企業。 (2015年9月14日付プレスリリースより)

<ブラジル>
-2015年6月30日をもってブラジルPocos de Caldas拠点のアルミニウム製錬所を完全閉鎖すると発表。同製錬所では2014年5月から製錬能力を削減していたが、市場が改善しないことから閉鎖に至った。同製錬所の閉鎖により、Alcoaのグローバルでの製錬能力は96,000トン減の340万トンとなる見込み。なお、Pocos拠点の鉱山、精錬所、アルミ粉末工場、鋳造工場は引き続き操業を行うという。 (2015年6月30日付プレスリリースより)

-2015年3月、ブラジルのSao Luisに位置する合弁会社Alumarにおいて、2015年4月15日までに残りの製錬能力74,000トンを削減すると発表。同拠点ではすでに2014年5月までに85,000トン、2014年10月までに12,000トンを削減している。今回の減産が完了すれば、同社は製錬能力の21% (約74万トン) を削減することになるという。 (2015年3月30日付プレスリリースより)

受注

-Ford 「F-150」 2015年モデルは、同社の軍事グレードのアルミ製品を幅広く採用し、700ポンド (約318Kg) の軽量化を実現。

-Tesla 「Model S」 2014年モデルは、同社アルミ製品を多く採用し、鉄製比33%の重量削減、200ポンド (約90.7Kg) 以上の軽量化を実現。

-Jaguar Land Rover 「Range Rover」 2014年モデルは、世界初のアルミボディのSUV。鉄製比39%の重量削減を達成。

-Chevrolet 「Corvette Stingray」 2014年モデルは、同社アルミフレームを採用し、旧モデルより100ポンド (約45.4Kg) 軽量化し、57%の剛性向上を実現している。

研究開発費

(単位:百万ドル)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
合計 238 218 192


-2015年12月期の研究開発費の増加分は、2015年に終了した米テキサス州San AntonioにおけるMicromill (アルミシート生産技術) のアップグレード費用、グローバル圧延製品に属する自動車用シートおよび3Dプリンティング用の添加剤の製造開始費用に充てられた。

研究開発拠点

-2015年9月、米国ペンシルベニア州のPittsburgh近郊にある米国最大級の軽金属研究開発センター 「Alcoa Technical Center」 を拡張すると発表。3Dプリンティング向けの先進材料およびプロセスの開発を加速する目的。投資額は60百万ドル。航空産業をはじめ自動車、医療、建築、建設などの成長市場において、3Dプリンターで製造した複雑な高性能部品の需要が増加しているのに伴い、Alcoaはさまざまな付加製造技術のために特別に開発した材料を生産する。新たな施設の建設は、2016年第1四半期に完了する予定。今回の拡張により、2017年までに従業員100名超が増員される見込み。また、同社は最先端の材料や設計、付加製造プロセス、従来の製造プロセスを組み合わせた 「Ampliforge」 とよばれる新たな製造技術を発表した。この 「Ampliforge」 では、3Dプリンターによってほぼ完全な形の部品を設計・製造し、その後、鍛造のような従来の製造プロセスを用いて仕上げていく。同社は、Pittsburghおよびオハイオ州Clevelandの拠点で、この技術を試験的に導入している。 (2015年9月3日付プレスリリースより)

製品開発

アルミシート生産技術 「Micromill」
-自動車用アルミシートの新たな生産技術 「Micromill」 を用いたアルミ合金は、既存の自動車用アルミニウムに比べて成形性が40%向上するという。これにより、ドアのインサイドパネルや外側のフェンダーなど、複雑な形状の部品も成形しやすくなる。Ford 「F-150」 2016年モデルの複数の部品に、この生産技術を用いて製造した材料が採用される予定。 (2015年9月14日付プレスリリースより)

-同技術は、金属の微細構造を劇的に変化させる。この技術を用いたアルミ合金は自動車製品の厳しい品質要件をクリアしながら、既存のアルミを使用した製品に比べて成形性が40%、強度が30%向上する。さらに、高強度鋼で作った部品に比べて成形性は2倍、重量も30%以上軽くなり、軟鋼と同等の成形性を持つという。すでに開発を受注しており、米国テキサス州のSan Antonioにある 「Micromill」 のパイロット施設において、顧客による試験を成功させている。 (2014年12月4日付プレスリリースより)

アルミニウム接合技術
-2014年7月、同社のアルミニウム接合技術 「Alcoa 951」 がR&D Magazineより 「R&D 100 Award」 を受賞したと発表した。このアルミを多用した車両向けの接合前処理技術では、競合技術に比べて9倍の耐久性を持つという。現在、米国アイオワ州のDavenportにある同社工場において、出荷前のアルミシートに 「Alcoa 951」 を適用する処理工程が行われている。 この技術は、2013年4月、ドイツのChemetallとの間でグローバル独占販売契約を締結したもの。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
合計 1,180 1,219 1,193

国内投資

-2015年9月、米国テネシー州にある自動車用アルミシートの生産工場の拡張を完了したと発表。同工場は、Ford、FCA (Fiat Chrysler)、GMなどに納入している。今回の拡張により、同工場では従業員約200名を新たに雇用した。今月はじめに顧客への納入を開始している。この300百万ドルのプロジェクトは、同社の自動車部品工場の大規模拡張工事としては北米で2番目となる。これにより、複数の長期受注契約に対応していく。最初の拡張工事を行ったアイオワ州のDavenport工場では、2015年第2四半期の自動車用シートの出荷量が前年同期比の約3倍を記録している。 (2015年9月24日付プレスリリースより)

海外投資

<ハンガリー>
-2015年1月、ハンガリーにあるホイール工場の拡張を完了したと発表。今回の拡張により同社の 「Dura-Bright EVO」 ホイールの生産能力は2014年の2倍になる見込み。欧州市場において、耐久性が高くメンテナンスが容易な商用車用軽量アルミホイールの需要増に対応する。13百万ドル (28億フォリント) を投じた拡張工事は計画通りに完了し、フル稼働時には同国で新たに35名の新規雇用を創出するとみられる。今回の拡張計画に向けて、ハンガリー政府は政府主導の経済開発プログラム 「Regional Operative Program」 を通じて4.4百万ドルの支援を行っている。 (2015年1月30日付プレスリリースより)