Autoliv 2007年度の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万ドル)
2007
年度
2006
年度
増減率
(%)
要因

売上高

6,769 6,188 9.4 下記1)参照
営業利益 502 520 (3.5) 下記2)参照


要因

1)
-2007年の売上高は前年実績より581百万ドル(9.4%)増の6,769百万ドル。主な要因は為替差益323百万ドル(5%)とインド工場買収による増収分9百万ドル。
-エアバッグの売上高は前年比2%増。サイドカーテンエアバッグ搭載車種の増加、また安全エレクトロニクスやステアリングホイール市場の拡大が起因。マイナス要因としては製品価格の低下や一部フロントエアバッグ契約終了が挙げられる。
-シートベルトの売上高は前年比7%増。その他地域における自動車生産量増加とプレテンショナー付先進シートベルトシステムへの需要伸長が主な要因。

2)
- 2007年の営業利益は502百万ドル(前年比18百万ドル減)、売上高営業利益率は7.4%(2006年は8.4%)。減収はもっぱら裁判費用として支出した30百万ドルによるもので、これが利益率を0.5%押し下げた。訴訟関連コスト差し引前き前の営業利益は532百万、同営業利益率は7.9%。


地域別
欧州
-売上の約50%を占める欧州では、前年比4%の売上増。この増加率は西欧小型車市場(同社欧州売上の90%を占める)における増加率の2%を上回る。東欧地域では小型車の生産台数が18%増。一台あたりの安全システム単価は低いが、市場規模の拡大により同社の売上増に貢献。

北米
-売上の4分の1を占める北米では、小型車生産台数が1.5%落ち込んだが、売上高は1%弱の減少にとどまった。業績が比較的堅調だったのはカーテンエアバッグの需要急増と安全エレクトロニクスやステアリングホイール市場でのシェアアップによる。しかしながら、価格の引き下げ、また一部モデル向けフロントエアバッグ供給契約の終了により増加分は一部相殺された。

日本
-売上の10%近くを占める日本では、小型車生産は1%の増加にとどまったが、同社売上は13%アップ。全ての製品の売上が伸長する中、とりわけシートベルトが好調であった。

その他地域
-売上の約15%近くを占めるその他市場では、小型車生産が13%伸張したことにより、10%の売上増。



企業買収
-2007年1月、 Autolivは韓国Autoliv-Mandoの未取得分株式35%を取得することで合意した。Autolivによる投資は、韓国の自動車産業に対するグローバル支援の一環。2010年までに自動車生産台数を倍増、8百万台にまで伸ばすと予測される韓国の自動車産業だが、それは殆ど韓国国外における成長によるとみられている。この買収によりAutoliv-MandoはAutolivのグローバルな事業展開に完全に統合される。

-2007年10月、Autolivは、中国の合弁会社 Autoliv (Changchun) Maw Hung Vehicle Safety Systemsを完全子会社化する。Autolivは、既にAutoliv (Changchun) Maw Hung Vehicle Safety Systemsの株式59%を保有しているが、このほど、残りの株式49%を1,400万ドルで買取ることとした。同合弁会社は、Autolivにとって中国で8番目の工場で、主にシートベルトを生産している。当該取引は、中国政府による承認手続待ち。

-2007年10月、Autoliv Inc.は、インドの合弁会社「Autoliv IFB Private Limited.」の株式50.01%を取得し、完全子会社化する。1991年、Autoliv AB (1991年当時の旧社名)は、インドのIFB Seating Systems Limited との合弁により、「Autoliv IFB Private Limited」を設立した。Autolivは、同合弁会社の創業以来、株式49.99%を保有していたが、このほど、残りの株式50.01%を取得したもの。「Autoliv IFB Private Limited」は、Bangaloreに主要拠点を構えており、シートベルトの組立てを行うとともに、シートベルトの動的試験(スレッドテスト)も実施している。操業以来、業績を着実に伸ばしており、今日ではインドのシートベルト市場で50%以上のシェアを誇る大手メーカーに成長している。 Suzuki、Telco、HyundaiといったOEM顧客向けに製品を納入しており、年商は約4,500万ドル(2006年実績)。

売却
- 2007年8月、Autoliv Inc.の北米部門(Autoliv North America)は、ケンタッキー州のMadisonville工場を閉鎖すると発表した。Madisonville工場は、北米市場向けに、シートベルト製品などを生産している。目下Madisonville工場で行っている生産は、北米の同社他工場に移管される。Madisonville工場の現従業員は、約220人。Autolivは、2007年初旬、シートベルト生産を、主力工場であるMadisonville工場から、メキシコにある複数のシートベルト工場に移転すると発表、低コスト生産国に労働集約的な生産事業を移すことでコスト削減を図る方針を明らかにした。シートベルト補修部品の生産については、エアバッグ補修部品の生産を行っているユタ州の工場に集約化する。

展望
-2008年は中国の新工場で増産予定。アジア太平洋地域や東欧市場では自動車生産台数が伸長し、北米-欧州はサイドカーテンエアバッグ搭載モデルが増加している影響で受注拡大を見込む。小型車生産は世界平均で2.5%増加するが、北米および西欧では5%減少すると予測されている。

-2008年は売上増7%を見込むが、企業買収等による増収を除く純粋な増収分は2%、インド拠点の買収による増収分は1%と予測。主要市場における小型車生産は縮小傾向であるが、営業利益率は8.0%-8.5%に上がる見込み。

開発動向

単位(百万ドル) 2007 2006 2005 2004 2003
研究開発費 396 398 386 368 305

-2007年度の研究開発費は396百万ドル。うち80%は新モデルをはじめとした新規受注対応。残り20%は革新的な新製品の開発だけでなく既存製品の改良、標準化、コスト削減に向けた取り組み。


研究開発
Front Edge and Bumper Airbags (フロントエッジ、バンパーエアバッグ)
2007年6月、Autolivは、死亡、重傷をともなう交通事故の件数を削減すべく、2種類の新型エアバックを発売した。スポーツタイプ多目的車(SUV)用バンパーエアバッグは、SUV等、車体の前部が高い車両が、乗用車等、車体の前部が低い車両と衝突事故を起こした場合に発生する、共通の特徴に着目したエアバッグ。もう一つのフロントエッジエアバッグは、SUVによる歩行者死亡事故を防止する目的で開発された装備。SUVは、ボンネットなど車体前部が高く、角ばった形状であることから、歩行者に及ぼす危険度が高い。歩行者がSUVとの衝突事故で死亡、あるいは重傷を負う危険性は乗用車との衝突事故に比べ2.5倍とされる。事故により損傷をおける人体の部位も、乗用車とは異なる。乗用車の場合、衝突事故で歩行者が死亡するのは、大抵の場合、ボンネットやフロントガラスに頭部を強打することによるものだが、SUVとの衝突事故で歩行者が死亡したり、重傷を負ったりするのは、胸部ないし腹部をボンネットの突端(BLE)に胸部ないし腹部を強打したことによるケースが圧倒的であるという。

Stereo Vision Camera and Vehicle Radar (ステレオビジョンカメラ、車両レーダー)
ステレオビジョンカメラと車両レーダにより前方の車両や危険物までの距離を正確に計測。衝突が避けられない状況下で運転手に警告を発したり、車両安全システムを起動させることができる。衝突予知センサーはエアバッグインフレーターシステムを使いドアビームを加圧。サイド衝突時の乗員保護システムを向上。

Active Structures (アクティブストラクチャー)
これまでは個々の特殊な衝突条件に適合するように車両のデザインを調整することは不可能であったが、同社が開発中のプリクラッシュセンサー技術によりこれが実現される見通し。Active structureは車両ビームのフロントエンドにクラッシュボックスを設置したもの。通常状態のクラッシュボックスは比較的柔らか。これは中低速走行時の衝突時に歩行者の脚部などを保護する目的から。しかし、高速衝突が予知された場合は、センサーが起動しクラッシュボックス内にガスを噴射。ガスが入ったクラッシュボックスは硬度化し、強い衝撃時の安全性が向上するしくみ。この高度技術と優れた耐衝撃性を備えたユニットは、車両の小型化、軽量化、省エネ、排ガス削減に貢献する。


Alcohol Sensors (アルコールセンサー)
同社が長期的視点で注力しているのが、"interlock system"と呼ばれるアルコールセンサー。
トヨタは2009年中に同種システムを搭載したい考え。日産は飲酒運転を予防するシステムの試験段階。Saabはここ1-2年の間に屋外試験や試験的導入を行ってきた。Volvoの同技術"Alcoguard"システムは2008年の初頭から欧米モデルにオプション装備される予定。

設備投資

単位(百万ドル) FY2007 FY2006 FY2005 FY2004
設備投資費用 324 328 315 324
売上高比 4.8 5.3 5.1 5.3

-自動車の安全関係市場の成長に応えて生産能力を増強する必要から、投資額は昨年に引き続き当年の減価償却(301百万ドル)を上回った。
-2008年の予定投資額は、350百万米ドルから380百万米ドル。


海外投資

-2007年10月、Autolivは、このほど、つくば市に衝突実験用施設を開設した。新設した実験用施設には、将来の車体設計に則った複雑な衝突形態を忠実に再現できる機能が採用されている。いわゆる「ピッチング(前面衝突時に生じる車両の前方への傾斜)」を再現することができる、業界ではAutolivが唯一提供できる先進技術を導入したことで、最大時速80キロ(50マイル)での前面衝突および側面衝突でのシミュレーションが可能という。Autolivは、この実験用施設に1,300万ドルの投資を行なっている。