武蔵精密工業 (株) 2016年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2016年 3月期 |
2015年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 164,397 | 158,209 | 3.9 | -日本と南米で売上が減少したものの、北米、欧州およびアジアで売上が伸長し、増収。 |
営業利益 | 13,398 | 11,588 | 15.6 | - |
経常利益 | 11,449 | 11,875 | (3.6) | - |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 6,809 | 6,379 | 6.7 | - |
事業動向
<中国>
-2015年10月、中国で2拠点目となるMusashi Seimitsu Auto Parts (Nantong) Co., Ltd. [武蔵精密汽車零部件 (南通) 有限公司] (中国江蘇省) において量産を開始。デファレンシャルやボールジョイント部品を生産する。
<メキシコ>
-2016年3月期、Musashi Auto Parts Mexico, S.A. de C.V. (メキシコ サンルイスポトシ州) において、生産能力拡大に着手した。従来の生産品目にAT用プラネタリィギアを追加。機械加工も手掛けて、部品の加工から組み立てまで一貫生産体制を整える。
<日本>
-事業部別組織体制を採用。既存の二輪事業部に加え、「PT事業部 (Power Train)」、「L&S事業部 (Linkage & Suspension)」を新設した。
事業計画
デファレンシャルの世界販売拡大
-デファレンシャルの世界販売を2019年度に14年度の2.5倍に当たる1千万個に拡大する。小型・軽量、高効率であることが評価され、国内外の自動車メーカー、変速機メーカーからの受注が増加している。販売量の大幅な増加により、同製品の世界市場シェアは、14年度の5%から19年度に10%へ倍増する見通しだ。売上高も同年度には300億円超と、13年度の2倍に拡大する。日本、北米、中国、アジアで生産しているが、生産地域をさらに広げて需要に対応する。(2015年3月19日付日刊自動車新聞より)
買収
-2016年5月、Hay Group各社の持ち株会社であるHay Holding GmbHの全株式を取得することでThe Gores Groupと合意。取得金額は361百万ユーロ。2016年6月30日に買収手続きを完了した。Hay Groupは、ドイツに本社を持つ鍛造・機械加工メーカー。ドイツ、ハンガリー、スペインの欧州3カ国8拠点よりエンジン部品やギア部品などの供給を行っているほか、中国では新たに鍛造工場の稼働を開始した。
-2016年8月、Hay Holding GmbHに住友商事が資本参加することで基本合意したと発表。住商は武蔵精密が全株保有しているHay Holding GmbHの株式の25%を取得する。武蔵精密が持つ技術開発力と住商の営業力などのノウハウを融合することで、Hay Holding GmbHの事業基盤を強化する方針だ。(2016年8月13日付日刊自動車新聞より)
-Hay Holding GmbHの技術
- 高速大量生産を可能とする、ハテバ社製鍛造機
- 3,000~5,000トンの大型鍛造インフラ
- 世界最高レベルの冷間精密鍛造技術 (冷間シャフト)
- 独自のローリング鍛造技術とインフラ (リング形状ギア)
-買収により、主に欧州生産拠点が強化される。欧州地域向け売上高比率が33.2% (2016年3月期4.0%) となる見通し。
受注
-2016年3月期の主な受注は以下の通り:
顧客/モデル | 製品 | 生産工場 | 供給時期 |
Fordの小型・中型車種 | デファレンシャルASSY | Musashi Auto Parts Michigan (MAP-MI) (米国) | 2019年4月 |
American Axle & Manufacturing | ベベルギア | Musashi do Brasil (MSB) (ブラジル) | 2015年8月 |
四輪駆動システム | 2015年3月 | ||
Fiatの主要小型車 | デファレンシャルASSY | 2016年4月 | |
Dana | トヨタ 「Hilux」 向けのベベルギア | 2016年1月 | |
泰国いすゞ | エンジン部品 | Musashi Auto Parts (MAP-TH) (タイ) |
2015年10月 |
Getrag | デュアルクラッチトランスミッション用デファレンシャルASSY | Musashi Hungary Manufacturing (MHM) (ハンガリー) | 2017年2月 |
-ドイツの変速機メーカー、GetragからデファレンシャルアASSYを受注した。同社との取引は、全ての製品・地域を通じて初めてとなる。ハンガリーにある欧州工場にラインを設置し、2017年2月から生産を始める。欧州の主要変速機メーカーの一つであるGetrag社が取引先に加わったことにより、戦略的に受注活動を進めてきた同製品の販売拡大に弾みがつくと見られる。(2015年5月15日付日刊自動車新聞より)
2017年3月期の業績予想 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 (予測) |
2016年3月期 (実績) |
増減率 (%) | |
売上高 | 175,000 | 164,397 | 6.4 |
営業利益 | 11,000 | 13,398 | (17.9) |
経常利益 | 8,300 | 11,449 | (27.5) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 5,300 | 6,809 | (22.2) |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 2,373 | 1,880 | 1,563 |
研究開発体制 |
担当部門 | 役割 |
開発部 | -シャシー系、エンジン系、駆動系商品の開発 -次世代商品に向けた技術開発 -知的財産の管理 |
生産技術部・塑型技術部 | -新生産技術方案の研究開発 -新塑型技術方案の研究開発 |
九州武蔵精密 (株) 技術部 |
-二輪、汎用ギア、カムシャフト等の生産技術に関する研究開発 |
研究開発活動
「PT事業部 (Power Train)」
駆動系商品開発
<デファレンシャル>
-同社の小型・高精度べべルギアを適用し、従来比10%軽量化となる軽量デファレンシャルASSYの量産開発および適用拡大を図っている。
-自動車排気量ごとに軽量デファレンシャルASSYの全シリーズ化を完了。
-海外顧客向けに提案・拡販活動を強化。
-今後も軽量化開発および現地調達化開発を継続的に行い、新規受注に向けた拡販活動を継続する。
<プラネタリィギア>
-日本で培ったノウハウを各海外拠点へ水平展開し、日本と同等の品質を確保した競争力の高いプラネタリィASSYの量産を開始し、今後は同社の生産技術力を活かした拡販活動を展開していく。
エンジン系商品開発
-品質工学や最新のシミュレーション技術を積極的に取り入れ、効率的な商品開発を行っている。
-環境ニーズの高まりに合わせて進化する製品仕様に無駄なく追従可能な次世代ラインを開発し、新規顧客の獲得、事業の拡大を目指す。
「L&S事業部 (Linkage & Suspension)」
足廻り系商品開発
-環境ニーズに対応するため、高精度シミュレーションを活用した最適設計による小型・軽量のボールジョイントが顧客に採用されている。
-自社設計・一貫加工の強みを活かし、今後も軽量化商品を、世界各地のリソースを最大限活用しながらグローバル展開してゆく。
先進技術開発
-電気自動車向け新機構商品、電動パーソナルモビリティ向け独自の電動ユニットの研究を推進。
-要素技術の領域において、トライボロジーをベースとした技術に基づく表面改質の研究開発を継続。
-モデルベース開発を基本に、シミュレーション技術の基礎研究、実験設備の充実から、研究開発レベルの向上と効率化を実施している。
生産技術開発
<加工技術開発>
-加工領域においては、自社ブランド商品の現地調達化に向けた最適工程設計の確立を図っている。
-デファレンシャルにおいて、現地の特性を生かした工程設計や現地設備の活用を強力に推進している。
-プラネタリィASSYにおいて、特殊表面処理の現地立ち上げ等を行い、グローバル供給体制を確立し、各極で量産を開始している。
<塑型技術開発>
-塑型領域においては、ロボット化を積極的に取り入れ、搬送時のダコン (打痕) 撲滅等品質改善および省人化によるコスト低減に取り組んでいる。
-異形部品の自動化にも挑戦している。
-開発領域では、独自の解析技術に取り組み、開発設計のリードタイムを大幅に短縮している。
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 9,295 | 16,324 | 24,314 |
-2016年3月期 地域別設備投資内訳 | (単位:百万円) |
地域 | 新機種対応 | 増産対応 | 合理化投資 | 既存設備の更新 | 全社 |
日本 | 754 | - | 251 | 291 | 1,953 |
北米 | 1,252 | - | 576 | - | 2,523 |
欧州 | 135 | - | - | - | 256 |
アジア | 1,149 | 954 | - | - | 3,811 |
南米 | 617 | - | - | - | 752 |
海外投資
-2016年度中にもメキシコでオートマチックトランスミッション (AT) 用プラネタリィギアを生産する。機械加工も手掛けて、部品の加工から組み立てまで一貫生産体制を整える。これまでメキシコでは組み立てのみを行ってきたが、新たに機械加工も現地で行うことによりコスト競争力を高める。14年に稼働したメキシコ工場 (サンルイスポトシ州) では、ボールジョイントやデファレンシャル、無段変速機 (CVT) 用のプラネタリィギアを生産している。生産品目を増やすことでメキシコの売上高を早ければ17年に年間100億円以上に引き上げる。北米市場は燃費性能や走行性能向上のため、自動車メーカーがATを多段化する動きを加速している。ATの構成部品であるプラネタリィギアの需要増加が見込まれるため、生産能力の増強とともに工程の現地化も推進して競争力を高める。(2016年4月14日付日刊自動車新聞より)
設備の新設計画 |
(2016年3月31日現在) |
地域 | 計画金額 (百万円) | 設備等の主な内容・目的 |
全社 | 15,000 | - |
-日本 | 3,500 | 研究開発、新機種対応、既存設備の更新、合理化 |
-北米 | 4,500 | 新機種対応、四輪部品の生産能力増強、既存設備の更新、合理化 |
-欧州 | 250 | 新機種対応 |
-アジア | 6,500 | 新機種対応、二輪・四輪部品の生産能力増強 |
-南米 | 250 | 既存設備の更新、合理化 |