三桜工業 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 130,008 130,627 (0.5) -海外における自動車生産の増加傾向が堅調に推移した。
営業利益 5,250 5,840 (10.1) -欧州における新規立上がり費用の増加および為替差損等により、減益。
経常利益 4,255 5,123 (16.9)
親会社株主に帰属する当期純利益 (618) 1,577 - -
日本
売上高 34,743 38,193 (9.0) -国内自動車販売台数の減少により、減収・減益。
営業利益 876 2,171 (59.6)
北南米
売上高 45,515 41,861 8.7 -自動車需要の回復および新規受注
-メキシコ新工場の売上増加
-為替の影響等により、増収・増益。
営業利益 2,693 1,862 44.6
欧州
売上高 22,987 24,446 (6.0) -為替換算の影響等により、減収。
営業利益 (113) 606 - -Geiger Automotive GmbHにおける新規立上り費用の増加等により、営業損失。
中国
売上高 10,835 10,345 4.7 -新工場の本格稼働による、直噴フューエルインジェクションレール製品の日本向け出荷の拡大等により、増収・増益。
営業利益 436 75 481.3
アジア
売上高 15,926 15,781 0.9 -ほぼ前年並み。
営業利益 874 1,426 (38.7) -インドネシアにおける売上の減少およびインドにおける固定費の増加等により、減益。


要因

Geiger収益悪化の原因と対策
-原因:BMW向けエアシャッターガイド受注、新規立上げ時の生産混乱
-対策:Geiger事業管理プロジェクトを発足 => Geigerバックアップ体制の強化
   三桜プログラムマネジメントシステムの導入

ロシア減損の原因と対策
-原因:ロシア自動車生産が3年間で37%減産。
    ロシア通貨ルーブルが3年間で43%安。
-対策: 1. SEZ (経済特区) への工場建設を凍結。
    2. ロシア3工場統廃合による業務、生産効率向上。
    3. 経営現地化を推進。現地幹部による経営体制にシフト。
    4. 為替変動に伴う客先販売単価の交渉。

ブラジル減損の原因と対策
-原因:ブラジル自動車生産が3年間で35%減産。
    ブラジル通貨レアルが3年間で29%安。
-対策: 1. 造管工場建設の凍結。
    2. 為替リスク軽減のための設備現地調達および現地製作。
    3. 三桜メキシコグループ会社から完成品で購入している樹脂製品の現地生産化。
    4. 為替変動に伴う客先販売単価の交渉。


埼玉事業所・滋賀事業所減損の原因と対策

-現象:埼玉事業所の売上高が2007年から2015年 (8年間) で55%減。
    滋賀事業所の売上高が2007年から2015年 (8年間) で54%減。
-原因: 1.海外現地生産化加速による国内売上減。
    2. ブレージング製品の国内生産集約による他工場移管。
    3. 客先生産車種の他地域 (国内・海外) への移管。
4. グループ全体のマザー工場として、新技術・新設備導入費用が増大。
-対策:従来の工程別組織から車輛配管事業部へ組織変更。
    1. 減損となった加工・組み立て工程以外の工程もトータルで利益管理。
2. グローバルマザー機能強化、ロイヤリティ還元
    3. 生産体制再編、全体最適化
    4. 新技術・新製品:市場投入スピードアップ
    5. お客様ニーズへの迅速な対応



直噴エンジン用のフューエルインジェクション (FI) レールを増産

-直噴エンジン用のフューエルインジェクション (FI) レールを増産する。中国、メキシコに加え、2016年には日本でも生産を開始し、2020年には2015年の約6倍に当たる1千万個以上に生産数量を引き上げる。燃費性能の向上、排出ガス低減に効果のある直噴エンジンは、今後、世界的に搭載が広がる見通し。生産の拡大により、2020年に直噴用FIレールの世界市場で25%のシェア獲得を目指す。 (2015年6月3日付日刊自動車新聞より)



受賞

-2016年3月、子会社のSanoh America Inc.は、トヨタより「Excellence Award」または「Special Recognition Award」を受賞した。 (2016年3月16日付プレスリリースより)

-2015年6月、三菱自動車より、2014年度 「バリューアップ優秀賞」 を受賞したと発表。同社は、三菱自動車の水島製作所 (岡山県) において配管製品の生産を行っている。 (2015年6月22日付プレスリリースより)

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 132,000 130,008 1.5
営業利益 5,100 5,250 (2.9)
経常利益 5,000 4,255 17.5
親会社株主に帰属する当期純利益 2,000 (618) -

-売上高の変動要因:

  • 日本、アジア (タイ・インド) での売上増
  • 円高により米州、欧州の円換算後の売上減

-営業利益の変動要因:

  • 円高により海外現地法人が日本から購入する材料価格が上昇することによる利益減

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 2,978 2,965 2,394

研究開発活動

新中長期開発計画 (GOAL15)
-2010年度より、世界の情勢や今後の動向を考慮して新たな視点から中長期開発計画 (GOAL15) を策定し取り組んできた。
-特に環境負荷低減のための軽量化自動車部品の開発、省エネルギー新工法開発、高付加価値創出と新規製品分野に参入するための製品技術開発、計30テーマを推進した。
-2015年3月期は、10年後の2025年を見据えた新規中長期研究テーマを選出し、情報収集および研究の基盤づくりを推進。

軽量化自動車部品の開発
-欧州自動車メーカーを中心にフューエルインジェクションレール、燃料配管やフィラーパイプ、その他パワートレイン系・燃料系部品の樹脂化が加速。ドイツの樹脂成型メーカーGeiger Automotive GmbHを2013年10月に買収し、欧州に樹脂製品の営業・開発拠点を設立。
-鉄をより軽量な樹脂やアルミニウムなどの材料に置き換える為に、強度や振動、流体の挙動のシミュレーション、各種評価・計測機器を拡充し、解析能力の強化を実施。

高付加価値の新製品開発
-直噴エンジン用の高圧フューエルインジェクションレール、ディーゼルエンジン用超高圧燃料噴射管、インバーターやバッテリー周辺の熱交換製品、燃料配管の樹脂化、エンジン冷却システム、EGRシステム等の複合部品の開発・量産を推進。
-次世代のパワーデバイスや蓄エネルギーシステムなどに関する研究も継続。

設備投資費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
日本 2,946 2,205 2,158
北南米 2,173 2,964 2,466
欧州 1,422 721 263
中国 892 1,155 1,404
アジア 769 875 1,338
全社 8,202 7,919 7,629


2016年3月期の設備投資
-生産性向上・設備の更新等を中心に実施。

生産技術開発

完成車工場内にコンパクトな生産ライン
-自動車メーカーの完成車工場内にブレーキチューブの最終加工作業を行うための新たなソリューションを開発した。ロボットなどを活用したコンパクトな生産ラインを、完成車工場内に設ける。ブレーキチューブのユニット部品と完成車を同期生産することで、自動車メーカーの在庫削減や物流コストの大幅低減が図れる。同社と自動車メーカーと双方で相乗効果がある仕組みとしてアピールし、受注拡大を目指す。新たなソリューションは自動車メーカーの生産計画にも密接にかかわる。このため、将来の新型車導入などを見据えながら、製品と合わせてパッケージで提案し、受注獲得につなげる。(2016年9月8日付日刊自動車新聞より)

ブレーキチューブ生産ラインの75%縮小に開発着手
-主力製品のブレーキチューブで現在より4分の1程度コンパクト化を実現する新たな生産ラインの開発に着手した。めっき工程で完全無排水処理する独自技術を開発し、排水設備を不要とするなど、設備の小型化にめどをつけた。工場新設の投資を抑制して海外展開しやすい体制を確立する。グローバルで供給力を高めると同時に、為替リスクも軽減して企業競争力の強化につなげる。同社は亜鉛とアルミ、マグネシウムの合金を溶融してめっき処理を施す「ZAM-Dry (ザム-ドライ) めっき」技術を独自開発し、特許も取得した。これまでの電気亜鉛めっき設備に必要だった排水設備を不要としたほか、耐蝕性の高い製品を生産できる。この新技術を新ラインに導入するほか、造管工程も見直す。現在、ロウを加熱して溶着させるためには、大型の炉が必要となるが、新たに電気抵抗で加熱できるようにし、生産設備をコンパクト化する。これらの技術を組み合わせ、ブレーキチューブの生産ライン長を現在の約340メートルから、約80~90メートルに短縮する。従来は各工程に大型の生産設備が必要なことから、大量生産を前提としたラインの設計となっていた。同社はコンパクトな新ラインを実現することで採算ラインも5分の1程度に引き下げられるとみている。(2016年8月1日付日刊自動車新聞より)