BorgWarner Inc. 2019年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
  2019年
12月期
2018年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 10,168 10,530 (3.4) 1)
営業利益 1,303 1,190 9.5 2)
エンジン部門
売上高 6,214 6,447 (3.6) 3)
ドライブトレイン部門
売上高 4,015 4,139 (3.0) 4)

要因

1) 売上高
-2019年12月期の売上高は前年比3.4%減の10,168百万ドル。為替および買収・売却の影響を除いた売上高は、前年比0.7%増。

2) 営業利益
-2019年12月期の営業利益は前年比9.5%増の1,303百万ドル。売上高が減少した一方、売上原価と販管費(主にコスト削減施策および製品保証費用)の減少等により全体として増益。

3) エンジン部門
-2019年12月期のエンジン部門の売上高は前年比3.6%減の6,214百万ドル。為替の影響及び買収・売却を除くと、前年比1.3%増。商用車グローバル販売減に伴う影響を、ライトビークル向けターボチャージャーおよびエンジンタイミングシステムの販売増が上回った。

4) ドライブトレイン部門
-2019年12月期のドライブトレイン部門の売上高は前年比3.0%減の4,015百万ドル。為替の影響を除いた同部門の売上高は前年並み。
 

事業再編

<サーモスタット事業の売却>
-サーモスタット事業をArlington Industries Groupに売却することで合意したと発表した。今回の売却には、ドイツのOberboihingenとブラジルのPiracicabaの製造施設も含まれる。売却額は約24百万ユーロで、取引完了は2019年第1四半期の予定。サーモスタット事業は、2014年にGustav Wahler GmbH&Co. KGから排気ガス再循環バルブ事業とともに買収した事業。BorgWarnerは市場の要件を満たすため、サーモスタット製品技術を継続的に開発してきたが、同社が注力する内燃機関、ハイブリッド、電気自動車用の推進システム事業ではなかったため、今回の売却に至ったという。2018年のサーモスタット事業の売上高は110百万ユーロ規模となる見込み。(201914日付プレスリリースより)

-Arlington Industriesは、BorgWarnerからWahlerのサーモスタット事業を買収したと発表した。今回の買収は2017年のMagal Engineeringの買収を補完するもので、Arlington Industriesは自動車事業部門下に2つの部署を新設する。Arlington Thermal Managementは、Wahler、Magal、Dauphinoise Thomsonの各ブランドを統合し、ドイツ、ブラジル、中国、米国、英国、フランスの各工場で内燃機関、ハイブリッドおよび電気自動車用熱管理製品を製造する。(201943日付プレスリリースより)


<試作向け電動化ソリューション会社の設立>
-Rinehart Motion SystemsとAM Racingを買収し、2社を統合して完全子会社「Cascadia Motion」を設立したと発表。Cascadia Motionは米国オレゴン州に本拠を置き、試作および少量生産アプリケーション向けのハイブリッドおよび電動化ソリューションを設計、開発、生産する。Rinehart Motion Systemsは、プロ用モータースポーツ、二輪車、特殊車両、バス、大型車両の電気自動車(EV)およびハイブリッド車用推進インバータおよび制御システムに関する技術と専門知識を有する。一方AM Racingは、これらすべての同一市場セグメントで使用されるシングルコアおよびデュアルコアの電気モーターとギアセットを設計、製造している。(2019219日付プレスリリースより)
 

合弁事業

-バッテリーモジュールとパックのサプライヤーRomeo Power Technologyとの間で合弁会社を設立すると発表した。出資比率はBorgWarner60%Romeo Power Technology40%。合弁会社設立により、BorgWarnerはポートフォリオを補完するとともに、バッテリーセルメーカーとハイブリッドおよび電気自動車(EV)の顧客との間の市場におけるギャップを埋めることを目指すという。Romeo Power Technology はSpaceX、Tesla、Samsungのエンジニアグループによって2015年に設立された企業で、Romeoのバッテリーモジュールとパックには、性能とサイクル寿命を向上させるための独自のアルゴリズムを持つインテリジェントバッテリー管理システムや、独自の熱光学などを備えている。合弁事業は小型自動車をターゲットとした事業展開をする予定。また、BorgWarnerRomeo Power Technologyの株式20%を取得し、取締役会の2議席を占める計画で、株式投資と合弁事業の取引は2019年第2四半期に完了する見込み。(201957日付プレスリリースより)

 

その他の動向

-ブラジル市場向けのフレックス燃料車用小型ターボチャージャー 「B01」の増産を行ったと発表した。VW「アップ!(UP!)」に続き、「ゴルフ (Golf)」、「ポロ (Polo)」「Virtus」に採用された実績を持つ「B01」は、現在VWのTSI仕様に導入されているが、今回新型SUV「Tクロス (T-Cross)」などの新型車への採用をはじめとする需要増に対応するため、Itatiba工場での生産量を増加させる。同ターボチャージャーは先進的な材料と技術を使用し、1,050度までの排気温度に耐える。また、アルミ製のコンプレッサーホイールのほか、最適化されたベアリングシステム、電子制御のウェイストゲート、先進的なノイズリダクション機能を備えている。(2019年7月11日付プレスリリースより

 

受注

-特定車両モデルに供給している製品は以下の通り。

<エンジン部門>

製品 搭載モデル(エンジン) 備考
3.5L EcoBoostエンジン用アップグレードターボチャージャー Ford「F-150」
2ステージターボチャージャー (R2S) BMW 2.0L 4気筒ターボディーゼルTwinPowerエンジン 低圧可変タービンジオメトリ (VTG)ターボチャージャーと高圧ウェイストゲートターボチャージャーの組み合わせ
2ステージターボチャージャー (R2S) Mercedes-Benz 4気筒ディーゼルエンジンOM654


<ドライブトレイン部門>

製品 搭載モデル
(トランスミッション)
備考
トリプルクラッチP2ドライブモジュール、電気油圧制御ユニット 長安汽車の2020年モデル
「Gen V」AWDカップリング BMW「X1」「X2」「2シリーズ・アクティブツアラー(2 Series Active Tourer)」、Mini「カントリーマン(Countryman)」「クラブマン(Clubman)」


-ブラジルの各種メディアは、同社OEMからフレックス燃料ライトビークル用ターボチャージャーの受注を獲得し、2020年後半からブラジルItatiba工場で生産を開始すると報じた。Itatiba工場では現在、VWUp !」、「Polo」、「Virtus」、「T-Cross」、「Golf」に搭載する1.0L EA 211エンジンおよび1.4L TSIエンジン向けターボチャージャーを製造している。同工場は供給先の自動車メーカーについては明示していないが、今後生産予定のターボチャージャーはフレックス燃料車の1.0Lおよび1.3Lエンジンに採用されるとしている。ブラジルでは5月にFCA500百万ドルを投じてBetim工場で1.0L1.3LエンジンをベースとするT3およびT4ターボエンジンを製造すると発表している。また、同社2020年後半にブラジルBrusque工場でスタート/ストップシステム付きスターターを製造することもあわせて発表した。この製品もブラジルの大手OEM2社の1.0Lおよび1.3Lエンジン搭載車に採用される見込みだという。(2019年11月29日付各種報道より)

-中国の大手新エネルギー車(NEV)メーカーと提携し、2021年量産予定の電気自動車(EV)統合ドライブモジュール「iDM」を供給すると発表した。今回のプロジェクトは、同社にとって中国初のiDMプロジェクトとなる。iDM」シリーズはハイブリッド車(HV)およびEVの両方に適合し、「iDM 90」、「iDM 120」、「iDM 160」の3種類の異なる電力レベルで展開され、アーキテクチャと用途に応じてフロントまたはリアアクスルに簡単に統合することが可能。作動電圧220-480Vの「iDM」は、最高出力150kW、最大トルク3,000Nmで、必要に応じてそれぞれ160kW3,800Nmまで拡張できる。(20191029日付プレスリリースより)

-欧州の大手商用車メーカーが2019年に発売するプラグインハイブリッド(PHEV)トラックに、電気モーター「High Voltage Hairpin (HVH) 410」が採用されたと発表した。130kWの出力と1,050Nmのトルクを発生させるHVHモーターは、水素化植物油(HVO)またはディーゼルで作動する直列5気筒エンジンと並行して作動し、ブレーキ時や下り坂での走行時にバッテリーパックを回生充電する。「HVH 410」は従来の丸型巻線に代わり、平角線を使用した高電圧ヘアピン巻線技術を採用することで95%超の高効率を発揮し、最高出力は300kW、最大トルクは2,000Nmに達するという。(2019220日付プレスリリースより)

 

2020年12月期の見通し

-同社は、2020年12月期の本業による売上高を前年比ー2.5~+0.5%の範囲と予想。9,750~10,075百万ドルとなる見込み。但し、この見通しはDelphi Technologies買収による影響を考慮していない。

  

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
合計 413 440 408
売上に対する比率 (%) 4.1 4.2 4.2

-上記3年間に研究開発費全体の5%を超える個別の研究開発案件はない。

-2020年12月期の研究開発費は売上高の約4.3~4.5%の約440百万ドルを計上する見込み。

  

製品開発

EV Japan 2020における技術展示
-12回オートモーティブワールド内の「第11EVHEV駆動システム技術展」において、高効率の電気自動車 (EV)向け最先端技術の最新ポートフォリオを出展すると発表した。同社は、電気自動車向けの製品ポートフォリオを強化するために、電気自動車向けバッテリーパックの開発を目的として、20195月に Romeo Power Technology と合弁会社を設立した。このバッテリーパックは極めて高いエネルギー密度を実現する小型設計の標準的な円筒形電池を搭載し、サーマルエンジニアリングおよびバッテリーマネジメントに関する独自の専門知識を生かして開発しており、航続距離と性能を飛躍的に向上させることを目指している。また特別に開発されたパワーエレクトロニクスと電気モーターおよびトランスミッションの技術を完全に統合したシステムソリューションの統合ドライブモジュール「iDM」や、タービンと同じ単一のシャフトに取り付けられたモーター発電機とパワーエレクトロニクスを統合したターボチャージャー「eTurbo」なども公開予定。(20191212日付プレスリリースより)

高電圧ヘアピン146モーター
-新型高電圧ヘアピン (HVH) 146モーターの導入により、電気モーター製品ラインナップを拡大すると発表した。この電気モーターは、特許取得済みのHVHモーターシリーズに追加され、モーターASSYまたはローター/ステーターASSYとして利用可能。HVH 146は、従来のオルタネーターが配置されるハイブリッド車 (HV)のベルト駆動統合に最適な、内部永久磁石電気モーターだという。エンジン前部に取り付けられ、高張力ベルトシステムを介して高出力を発揮し、ストップ/スタートデバイスとして使用するだけでなく、ブレーキ時やコースティング走行時のバッテリーパックの回生充電としても使用できる。最高出力35kW、最大トルク65Nmのモーターは、当初は小型HV向けに発売されるが、商用車にも適用できるという。(2019125日付プレスリリースより)

EV向けトルクベクタリングシステム
-電気自動車(EV)向けの新型トルクベクタリングシステムを開発したと発表した。このシステムは一般的な2つの電気モーターではなく、1つの電気モーターのみで作動する。この製品は大手自動車のEV向けに2022年前半から生産開始予定。トルクベクタリング・デュアルクラッチユニットは、電動ドライブラインの従来のディファレンシャルに代わり、2つのクラッチ(内側・外側)を備えている。このシステムはクラッチあたり最大2,600Nmを発揮し、全輪駆動が不要な場合は後車軸を切断し、前輪駆動モードで動作することが可能。(20191028日付プレスリリースより)

IAA(フランクフルトモーターショー)2019での展示

-フランクフルト・モーターショーにハイブリッド車 (HV) 、電気自動車 (EV) 向けの部品やシステムを出展すると発表した。同社は小型設計で標準の円筒状セルを備え、優れたエネルギー密度を持つ最新の電池パックを公開予定。また、電気モーターと共に専用設計されたパワーエレクトロニクスと単一でコンパクト設計のトランスミッション技術を組み合わせている統合ドライブモジュールiDMや、カーメーカーが既存の内燃エンジン車をエンジンやトランスミッションの変更なしにHVに転換できるP2オンアクシスハイブリッドモジュールおよびP2オフアクシスハイブリッドモジュールも出展される。そのほか、eマシーン・モータージェネレーターがタービンと同一軸に取り付けられた電動アシスト式ターボチャージャー「eTurbo」も披露される。(2019年8月27日付プレスリリースより

コンパクトブラシレス直流モーター付きAWDカップリング
-小型ブラシレスDCモーターと統合された電子ユニットで最適化された最新のAWDカップリングを開発したと発表した。アクチュエーターとしては、高耐久かつ従来比約15%の軽量化を実現し、応答時間・トルク密度・トルク精度を備えたことで、優れた操舵性、安定性、トラクション性能を実現した。カップリングの中核技術としては、システム油圧の生成と制御を行う、特許取得済み6ピストン用の遠心制御ピストンポンプがある。新カップリングは、2つのアクスルから独立して作動し、路面状況や車両重量配分によってロッキングトルクを伝達する。またエコモード時には、モーターを完全に分離することでエネルギー消費を抑えるほか、ECUを統合することによりコスト削減とパッケージング性向上を実現させるという。(2019年8月22日付プレスリリースより

車載バッテリー充電器
-先駆的な炭化ケイ素技術を使用し、電力密度、電力変換効率および安全性に優れた最新の車載バッテリー充電器(OBC)を発表した。ハイブリッド車または電気自動車(EV)に搭載されるOBCは、バッテリー充電のために電力網からの電流を交流(AC)から直流(DC)に変換する。この技術は7.4 kW、11 kW、22 kWなど幅広いAC範囲に対応し、2.3 kW〜3.6 kWのDC / DCコンバーターを統合でき、全てのバッテリーケミストリーと400V、650V、800Vの電力に適合するという。(2019516日付プレスリリースより)

人とくるま展における技術展示
-電動化ソリューションなどの最新技術を横浜で開催の「人とくるまのテクノロジー展」に出展すると発表した。同社は新開発の車載バッテリーチャージャー(OBC)を日本で初めて展示する。OBCはバッテリー充電を行うハイブリッド車、電気自動車に搭載され、化学電池と互換性のある400V650V、および800Vの電圧レンジに適用可能。また、電動自動車向けの統合ドライブモジュール「iDM」や電動コンプレッサー「eBooster」も公開予定。そのほか同社は、ターボチャージャー付きガソリン車の普及率が2027年までに20%から67%に増加すると予想しており、内燃機関向けの「VTGターボチャージャー」も出展する。(201958日付プレスリリースより)

電動車向けHY-VOチェーンドライブシステム
-HY-VOチェーンドライブシステムをハイブリッド車や電気自動車向けに展開する意向があることを発表した。汎用的にトランスファーケースやトランスミッションに適用可能なHY-VOチェーンは、特許取得された逆歯式で静粛性の高いチェーンシステムであり、P2オフアクシス(駆動モーターがエンジンとトランスミッション間に設置されるもの)やP3(駆動モーターがトランスミッションの後に設置されるもの)、P4(駆動モーターがリアアクスルに設置されるもの)などのハイブリッドシステムに搭載されている。チェーンドライブは、P2オフアクスルのほか、P3,P4のハイブリッド車のトランスミッションに容易に統合可能で、柔軟性の高い搭載レイアウトが実現できる。HY-VOチェーンのほか、同社は幅広い顧客ニーズに対応するためブッシュチェーンやローラーチェーンも展開している。(2019年4月30日付プレスリリースより

インテリジェントカムトルクアクチュエーター(iCTA)
-燃費効率を改善し排出ガスを削減する新型カムトルクアクチュエーター(iCTA)を発表した。カムトルク駆動(CTA)位相器とねじり補助(TA)位相器技術の利点を融合した独自のiCTA技術はあらゆるタイプのエンジン構造に適合し、特にカムトルクエネルギーが可変もしくは低い直列4気筒シリンダーエンジンに最適だという。この製品は2019年と2020年に中国および北米自動車メーカーに供給する見込み。(2019312日付プレスリリースより)

2019 Arctic Drive Winter Testで紹介された技術
-スウェーデンArjeplogで開催される「Arctic Drive Winter Test」において、積雪地と凍った湖で最新のパワートレイン技術を公開すると発表した。同社は「P2モジュール」、電動コンプレッサー「eBooster」、電気モーター「High Voltage Hairpin (HVH)」など最新の48Vソリューションを出展する。技術改善の継続により、同社は極端な気温に強い最先端のeモビリティソリューションの提供を図るという。(2019221日付プレスリリースより)

統合ドライブモジュール (iDM)
-量産を開始した電動ドライブモジュール(eDM)に続く製品として、特別に開発されたパワーエレクトロニクスを搭載する統合ドライブモジュール(iDM)を発表した。この新製品は3つの異なるバージョン「iDM XS」、「iDM S」、「iDM M」で展開され、アーキテクチャと用途に応じて乗用車と小型商用車のフロントまたはリアアクスルに簡単に統合することが可能。このソリューションは、高効率パワーエレクトロニクス、先進トランスミッションシステムおよび効率的な巻線ステータソリューションを特徴とする業界最先端の駆動モーター技術を統合したもので、電気自動車(EV)とならび、前輪駆動車のリアアクスルにモーターが位置するP4ハイブリッド車にも適合するという。(2019124日付プレスリリースより)

 

特許

-2019年12月末時点、同社は6,430件以上の特許を保有および出願中である。

 

設備投資額

 (単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
合計 481 546 560
売上に対する比率 (%) 4.7 5.2 5.7

ー2019年12月期の設備投資額は、525百万ドルから575百万ドルの範囲となるとの見込み。

海外投資

<インド>
-Kakkalur工場の拡張を発表した。同工場では、エンジンタイミングシステムおよび可変カムタイミング (VCT)システム用の最先端の生産ライン導入により、拡大する東南アジア市場の需要に対応し、インド市場のBS VI規制基準に適合した製品を供給する。総面積4,023平方メートルに拡張した工場はエンジニアリング、製造、オフィス、倉庫エリアなどを備える。同社は現地生産によって革新的で効率的な技術に対する需要増に対応し、環境対応推進ソリューションのサプライヤーとしての地位強化を図るとしている。(2019129日付プレスリリースより)