thyssenkrupp AG (旧 ThyssenKrupp AG) 2019年9月期の動向
業績 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年 9月期 |
2018年 9月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 41,996 | 41,534 | 1.1 | 1) |
EBIT | 802 | 1,444 | (44.5) | |
部品テクノロジー | ||||
売上高 | 6,871 | 6,610 | 3.9 | 2) |
EBIT | 233 | 197 | 18.3 | |
欧州鉄鋼事業 (Steel Europe) | ||||
売上高 | 9,065 | 9,470 | (4.3) | 3) |
EBIT | 31 | 687 | (95.5) |
※前年のデータはIFRS15の適用により一部修正されている
要因
1) 全社売上高
-2019年9月期の売上高は前年比1.1%増の41,996百万ユーロ。部品テクノロジーとエレベーター事業はともに1桁の伸びと堅調に推移。一方素材及び欧州鉄鋼事業がマイナスの伸びとなったため全体ではおおむね横ばいとなった。調整済みEBITは世界経済の減速と中国自動車市場を中心とした需要減少の影響を受け前年比44.5%減となった。
2) 部品テクノロジー
-2019年9月期の部門売上高は前年比3.9%増の6,871百万ユーロ。産業分野での受注増により前年比増となった。カムシャフト及びステアリングは好調だったものの、中国、西欧、米国市場の減速により相殺された。調整済みEBITは、スプリング及びスタビライザーにおける販売減及び新規プロジェクト立上げコストなどによりマイナスの影響を受けたものの、産業用分野における収益改善により18.3%増となった。
3) 欧州鉄鋼事業
-2019年9月期の売上高は前年比4.3%減の9,065百万ユーロ。売上高が市場低迷の影響を受けたほかライン川の水位低下及びWLTPによる影響を受け出荷減少となった。調整済みEBITは、為替の影響で原料コストが増加したこと及びライン川の影響による物流コスト等により収益率は大幅に減少した。
研究開発費 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年9月期 | 2018年9月期 | 2017年9月期 | |
合計 | 761 | 787 | 816 |
ーシャシー部品開発
車両内の各アクチュエーターからの情報を統合する統合制御モジュール(車両モーションコントロール)を開発中。自動運転時の車両安全、またユーザーに最適化された運転制御に貢献する。現在、すでに量産を開始し、既存の車両に搭載されている。
ー自動運転に関してIBMと協業
自動運転車からの速度情報、加速などのデータをIBMのAI「Watson」に送信し評価する共同パイロットプロジェクトを行っている。機械学習などを通じたユーザー固有の運転スタイルに適したソリューションの提供を目指す。
ーthyssenkrupp Garageによる「carValoo」
シェアリングモビリティに向けたサービス。カーシェアサービス企業、レンタカー運営企業、リース業界などに各所有の自動車使用状況を提供する。車両の加速度、回転をセンサーにより認識しクラウドに送信、アルゴリズムによって運転状況や損傷を測定する。
研究開発体制
-2018年9月末時点、90拠点で約4,800名が研究開発に従事。
特許
-2019年9月期において約2,500の特許および実用新案を登録。現在、計約22,100件の特許および実用新案を保有。
設備投資額 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年9月期 | 2018年9月期 | 2017年9月期 | |
全社 | 1,443 | 1,386 | 1,666 |
-部品テクノロジー | 479 | 523 | 551 |
-欧州鉄鋼事業 (Steel Europe) | 482 | 442 | 566 |
国内・海外投資
-2019年7月ドイツHomburg拠点に鍛造ラインを新設すると発表した。80百万ユーロを投じる新施設では、トラック用の鍛造フロントアクスルを生産する。Homburg拠点で最大の単一投資となり、約70名の新規雇用を見込む。2020年初頭から既存の敷地に12,000平方メートルの施設の建設を開始し、2021年初めから操業を開始する予定。トラック用フロントアクスルの生産は同社にとって新市場の開拓となり、新施設には16,000トンの鍛造プレス圧を有する高さ10m、重量1,700トンのデジタル鍛造ラインを導入するという。(2019年7月10日付プレスリリースより)
ー2019年6月、ルーマニアのSibiuに工場を新設したと発表した。この工場では、ダイムラー、ジャガー・ランドローバー (JLR) 、ポルシェなどの自動車メーカー向けのダンパーを製造する。thyssenkruppは1996年からSibiuでダンパーを製造しており、今回新設した工場は既存拠点の拡張となる。約60百万ユーロを投じた当該工場では350名超の雇用を創出し、同地域での従業員は約1000名となるという。また同社は、自動インテリジェントシャシー・システム向けの新世代ダンパーの工業化に向けた取り組みも行っている。(2019年6月25日付プレスリリースより)
ーハンガリー投資促進公社 (HIPA) は、同社がPecsに次世代カムシャフトや電気モーター部品を製造する工場を設立すると発表した。55百万ユーロ以上の投資を伴う新工場では、インダストリー4.0に基づく生産ラインを導入し、約200名の雇用を創出する。今回新設するPecsと2018年に稼働開始したJaszfenyszaruの工場で生産されるカムシャフトとモーター用部品は、CO2の排出削減に貢献しEU内で厳格化が進むCO2排出基準についても2025年以降も適応できるとしている。(2019年6月21日付HIPAプレスリリースより)
ー各種報道は、同社が50百万ブラジルレアルを投じてブラジルSao Jose dos Pinhais工場に組立ラインを導入し、電動パワーステアリング(EPS)システムを製造する計画であると報じた。初期投資額は4百万ブラジルレアルで、2019年末までに50百万ブラジルレアルに達する見込みで、フル稼働時には年間40万個の製品を生産し、今後数年間で100万個を製造する計画。同社は現在、ブラジルではエンジンおよびサスペンション部品を製造している。(2019年2月15日付各種報道より)
ーMexico-Now は、同社が80百万ドルを投じて拡張したメキシコHuejotzingo工場の拡張が完了したと報じた。投資の一部はFord、BMW、Daimler向けのステアリングボックスの生産ラインや、GNK、Dana、Nexteerなどティア1サプライヤー向けの冷間鍛造品を製造する熱処理施設の生産能力増強に充てられたという。thyssenkruppは20年前にPueblaでVolkswagenのサプライヤーとして事業を開始し、2年前には第4工場を開設してAudi「Q5」向けのリアおよびフロントアクスルを供給している。現在thyssenkruppは、メキシコ国内ではPuebla4カ所、San Miguel de Allende2カ所、San Luis Potosi1カ所の計7拠点で操業している。(2018年12月11日付 Mexico-Nowより)