Tenneco Inc. 2019年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
  2019年
12月期
2018年
12月期
増減率
(%)
要因
売上高 17,450 11,763 48.3 1)
純利益 (220) 111 N/A -
部門別売上高
-クリーンエア 7,121 6,707 6.2 2)
-パワートレイン 4,408 1,112 296.4 3)
-ライドパフォーマンス 2,754 2,164 27.3 4)
-モーターパーツ 3,167 1,780 77.9 5)

 

要因
1) 全社売上高
-2019年12月期の売上高は、前年比48.3%増の17,450百万ドル。増加の主な要因はFederal-Mogul買収の影響によるもので、5,600百万ドル増。そのほか、為替影響による310百万ドルの減収で一部相殺されるも、販売増および製品構成の改善で370百万ドルの増収となった。


2) クリーンエア部門の売上高
-クリーンエア部門の2019年12月期の売上高は、前年比6.2%増の7,121百万ドル。オフハイウェイおよびその他車両向けの販売減により一部相殺を受けるも、ライトビークルおよび商用車向けの販売増で606百万ドルの増収となった。そのうち、為替影響はマイナスに働き、181百万ドル減となった。

3) パワートレイン部門の売上高
-パワートレイン部門の2019年12月期の売上高は、前年比3,296百万ドルまたは296.4%増となる4,408百万ドル。売上増の主な要因は、2018年に買収したFederal-Mogulから引き継いだ事業での通年に渡る営業によるもの。

4) ライドパフォーマンス部門の売上高
-ライドパフォーマンス部門の2019年12月期の売上高は、前年比27.3%増の2,754百万ドル。Federal-Mogul買収により獲得した事業の通年営業による効果が増収の主要因。一方で買収の影響以外では、販売減や製品構成の悪化により96百万ドルの減収となり、そのうち為替影響による減収は75百万ドル。

5) モーターパーツ部門の売上高
-モーターパーツ部門の2019年12月期の売上高は、前年比77.9%増の3,167百万ドル。Federal-Mogul買収により獲得した事業で、1,524百万ドルの増収となった。一方で、販売減および製品構成の悪化による132百万ドルの減収と為替影響による42百万ドルの減収があった。

 

買収

-同社は、自動車およびモータースポーツ向け高性能サスペンションシステムやその部品の開発製造を行うスウェーデンのOhlins Racingの買収を完了したと発表した。Ohlins Racingの昨年度の売上高は約130百万ドル。同社はこのOhlins Racingを162百万ドルで取得したという。(2019年1月10日付プレスリリースより)

 

事業再編

DRiV Incorporated 事業分割
-同社は、2018年10月に買収したFederal-Mogulの事業分割により設立する上場企業2社のうち、アフターマーケットとライドパフォーマンス事業を扱う新会社の名称を「DRiV Incorporated」とすると発表した。分割は2019年後半に完了する予定で、107億ドル規模の売上を見込むパワートレインおよび排ガス製品を扱うもう一つの事業についてはTennecoの名称を維持するという。新会社DRiVはシカゴエリアに本拠を設置し、グローバル規模のマルチライン、マルチブランドを扱うアフターマーケット事業と、ライトビークル、商用車、アフターマーケット向けのOEライドパフォーマンスとブレーキ製品事業を手掛ける。総売上の44%を占めるDRiVのOE製品事業は、ショックアブソーバー、ストラット、NVH技術、ブレーキ摩擦材料などを開発、製造、供給する。また、残りの売上高56%を占めるアフターマーケット事業についてはMonroe、Ohlins、Walker、Clevite Elastomersなど幅広いブランドビジネスを展開させる計画。 (2019年2月14日付プレスリリースより)

-同社は2019年第1四半期の報告書で、新会社DRiVの事業分割の時期を変更すると発表した。両社が分割のプロセスやシステムについて調整を行い、財務実績を向上させるためにより時間が必要となったことが要因。同社は、DRiVの事業分割が2020年中頃になると見込んでいる。(2019年5月9日付プレスリリースより)

 

受注

-同社のDRiV部門は、日産の「スカイライン 400R (Skyline 400R)」の2020年モデルに連続可変セミアクティブ (CVSAe) サスペンション技術を搭載したインテリジェント・ダイナミック・サスペンション (IDS) が採用されたと発表した。CVSAe技術は路面および運転状況をセンサーによりモニタリングし、動作を安定させるためにリアルタイムで個々のショックアブソーバーに情報を与える。(2019年12月4日付プレスリリースより)

-同社のDRiV部門は、BMW「3シリーズ」の2019年モデルに連続可変セミアクティブ (CVSAe) サスペンション技術を搭載したアダプティブMサスペンションが採用されたと発表した。CVSAe技術は路面および運転状況をセンサーによりモニタリングし、リアルタイムでダンピングレベルを調整する。個々のショックアブソーバーは、セントラルECUに接続され、センサーが検知した情報に基づいてダンピングの設定が行われる。(2019年7月31日付プレスリリースより)

-同社のDRiV部門は、Ohlins Dual Flow Valve調整サスペンションダンパーがポールスターのファストバックスタイルのEV「ポールスター2 (Polestar 2)」のパフォーマンスパッケージに採用されたと発表した。このダンパーは道路状況、運転スタイルなどの要素に基づいて、シャシーダンピングや乗り心地のカスタマイズを可能にする。(2019年7月9日付プレスリリースより)

-同社のDRiV部門は、Monroeブランドのサスペンションがトヨタのスポーツクーペ「GR Supra」2020年モデルに採用されたと発表した。Tennecoの連続可変セミアクティブ(CVSAe)サスペンション技術を搭載する「GR Supra」は、2019年春に発売予定。それぞれのトリプルチューブ・ショックアブソーバーは、最適な乗り心地とコントロールを達成するために10ミリ秒毎に減衰設定を再調整することができる中央の電子制御ユニット(ECU)に接続するOhlinsの外付け電子バルブ「CES8700」を備える。TennecoのCVSAeサスペンションシステムは、スペインErmua工場で製造されている。(2019年5月17日付プレスリリースより)

-同社は、Jaguarの電動SUV「I-PACE」にサスペンション製品が採用されたと発表した。同社はパッシブフロントダンパーとリアダンパー、コイルおよびエアスプリングのサスペンションモジュールを供給する。フロントパッシブダンパーはベルギーSint-Truiden工場で、リアパッシブダンパーとリアモジュールはチェコHodkovice工場で、フロントエアおよびコイルモジュールASSYは英国Birmingham工場でそれぞれ製品を生産する。車両重量の軽量化は、従来の内燃機関のパワートレインと比較してより重くなる可能性がある電動パワートレインの効率化にとって非常に重要であるため、同社はサスペンションモジュールにアルミや樹脂製品などを採用することにより、軽量化をサポートするとしている。(2019年3月6日付プレスリリースより)

 

受賞

-同社は、「2018年GMサプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。クリーンエア部門はエギゾーストシステム技術で評価され、エラストマーNVHパフォーマンス材料チームは、ハイドロマウント・キャブサスペンション部品で賞を受賞した。クリーンエア部門とNVHパフォーマンス材料チームが受賞されるのは、2年連続となる。また、NVHパフォーマンス材料チームがこの4年間で賞を受賞するのは3回目となる。(2019年5月30日付プレスリリースより)

-同社は、パワートレイン部門が米国の自動車専門誌「Automotive News」が主催する「2019 Automotive News PACE Awards」で2つの賞を受賞したと発表した。受賞したうちの1つは、ディーゼルエンジンのピストン向けの合金「DuraForm-G91」で、現代の高負荷なディーゼルエンジンで使用される鋳造ピストンを3から5倍の寿命で設計することが可能になる。また、材料強度が向上したことで機械的負荷の増加に強くなり、エンジンがより高出力に効率的に動作できるようになる。もう一方の賞は、シミュレーションツールである「PRiME 3D」ソフトウェアで、これによりエンジン開発期間を最大70%短縮できるほか、ピストンとピストンリングの設計を早期に最適化できることで、排ガス排出量と燃料消費量も削減させる。この「PRiME 3D」を活用して設計段階でエンジンのバーチャルモデルを作成することで、シリンダーパフォーマンスやパワートレインの特性を正確に予測することができるようになる。 (2019年4月9日付プレスリリースより)

 

2020年12月期の見通し

-2020年12月期、全社売上高は167億~171億ドルを予測。

 

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
合計 324 200 158


-2019年12月期のエンジニアリングおよび研究開発費は、主にFederal-Mogulの買収により前年度比62.0%増加した。

 

研究開発拠点

-2019年12月末時点、全社で45カ所のエンジニアリングおよび技術施設を保有。クリーンエア部門は7カ所、パワートレイン部門は14カ所、ライドパフォーマンス部門は19カ所、モーターパーツ部門は5カ所の施設を有する。

 

研究開発活動

-同社のDRiV部門は、自動運転車向けの先進ホイールコーナーコンセプトの設計および評価用の助成金を受けるために、複数のパートナーと提携している。DRiVは、第2世代電気自動車 (EV) の設計と製造を行うロンドンのテクノロジー企業Arrivalおよび、複数の大学や産業機関と協業してOWHEELプロジェクトを行っている。このプロジェクトは、静止ホイールポジショニング付きパッシブコーナー、パッシブコンポジットコーナー、ライドダイナミクス制御付きアクティブコーナー、統合ホイールポジショニング制御付きアクティブコーナーの4つの次世代ホイールコーナーコンセプトに関するパフォーマンスの開発とベンチマーク活動を行う。(2019年12月11日付プレスリリースより)

 

製品開発

MLS多層スチールガスケット「PermaTorque」向けコーティング技術
-同社は、グループ傘下のDRiV AutomotiveがMLS多層スチールヘッドガスケット「PermaTorque」向けの次世代コーティング技術を開発したと発表した。「Fel-Pro」ガスケット修理向けに特別設計されたシーリング技術の開発を続けており、次世代コーティング技術は高温のエンジン環境に適応できる設計になっている。「PermaTorque」は摩擦に耐性があり、平均演色評価数を80Ra程度に仕上げる。これらのガスケットは、「LaserWeld」ストッパーレイヤー技術備え、ガスケットの損傷を防ぎ、燃焼機関に優れたシール性をもたらす。各ガスケットはフルハードステンレス鋼の複数の層により、ガスケットの形状を維持し、ヘッドリフトに対応する。また、重要箇所に配置されたシーリングビーズが液体漏れを防ぐという。(2019年11月5日付プレスリリースより)

Monroe RideRefine SDD 調整可能アドオンバルブ
-同社グループ傘下のDRiVは、乗用車向けアプリケーションで幅広く使用されるパッシブダンパーにクラス最高の快適さをもたらす調整可能なアドオンバルブを発表した。費用対効果の高い新型Monroe RideRefine SDD(ストローク依存ダンピング)バルブ技術は、ダンパーのメインバルブと連携して動作し、あらゆる運転条件で高度に洗練された乗り心地を実現する。メインバルブのバイパスは、オイルをMonroe RideRefine SDDバルブに送り、小さなストロークの個別に調整可能なダンピングをもたらし、振動と耳障りを軽減させるという。(2019年9月17日付プレスリリースより)

2019年上海モーターショーで展示された技術
-同社は2019年の上海モーターショーで最新のエンジンおよびエギゾーストシステムソリューションを披露した。披露した技術は以下の通り。

  • 「Megabond」シリンダーライナー : 上海モーターショーでデビューした先進ライナー技術。機械的な結合強度と構造安定性をもつ。
  • 「PRiME 3D」シミュレーションソフトウェア : 「PRiME 3D」は、開発段階でエンジン動作のバーチャルモデルを作り出すことで開発期間を短縮させるシミュレーションツール。
  • 車両ハイブリッド化技術 : 同社はマイクロおよびマイルドハイブリッド向けの先進スタータージェネレーターである「CPT SpeedStart」を披露した。そのほか、「COBRA」電動スーパーチャージャー、統合排気ガスエネルギー回収システム「TIGERS」ターボジェネレーターも披露した。
  • 「IROX」2ポリマーエンジンベアリング: 「IROX」2ベアリングは、小型・大型エンジン向けで、ハイブリッドやエンジンの始動/停止が効率的に行えるコーティング技術を採用している。
  • 排出低減システム : 同社はガソリン微粒子フィルター、エアギャップマニホールド、コールドスタートサーマルユニットを披露。
  • 燃費システム : 同社は排気ガス熱回収システムと軽量排気システムを披露。
  • ハイブリッド化システム : ハイブリッドパワートレインにおける寸法の制約に焦点を当てた、コンパクトエミッションモジュールを披露。そのほか排気チューニング用のスピーカーベースのシステム「Smart Sound」やモジュール式電動バルブやパッシブバルブも披露。

(2019年4月11日付プレスリリースより)

 

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
クリーンエア 208 197 222
パワートレイン 265 58 -
ライドパフォーマンス 184 160 142
モーターパーツ 61 36 28
その他 26 56 27
合計 744 507 419

-設備投資費は主に新施設、既存製品のアップグレード、新製品投入、インフラおよび設備改善に費やされた。

-2020年12月期の設備投資額は610~650百万ドルと見込んでいる。