日本電産 (株) 2019年3月期の動向

業績

(米国会計基準、単位:百万円)
2019年
3月期
2018年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,518,320 1,488,090 2.0 ー過去最高を更新
営業利益 138,620 166,842 (16.9) ー国内外工場及び拠点の統廃合等による構造改革費用、新規商材の立ち上げロス、M&A費用等の一時費用を約388億円計上
税引前当期純利益 139,014 163,665 (15.1) -
親会社株主に帰属する当期純利益 111,505 131,521 (15.2) -
日本電産
売上高 215,685 222,689 (3.1) -HDD用モータ及び車載用モータの売上減少
営業利益 19,400 25,381 (23.6) -売上の減少及び構造改革費用等の一時費用の計上
日本電産サンキョー
売上高 153,935 150,282 2.4 -その他小型モータの売上が減少するも、主に液晶ガラス基板搬送用ロボット及び成形品の売上が増加
営業利益 13,739 21,661 (36.6) -売上の増加があったものの、主に構造改革費用等の一時費用を計上
日本電産モータ
売上高 457,012 435,586 4.9 -前第2四半期に買収が完了した新規連結会社及び産業用モータ、発電機等の売上増
営業利益 32,199 30,506 5.5 -構造改革費用等の一時費用の計上があったものの、主に売上の増加及びコスト削減効果により増益
日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ
売上高 306,334 302,824 1.2 -日本電産トーソクのコントロールバルブ製品等の売上増
営業利益 34,832 34,932 (0.3) -売上の増加があったものの、主に構造改革費用等の一時費用を計上

 

受注

E-Axle
-トラクションモーターシステム「E-Axle」が量産車に初採用されたと発表した。同システムが採用されたのは、広汽新能源汽車が2018年の広州モーターショーで発表した新型量産電気自動車 (EV) 「Aion S」。中国にEV市場の将来性を見込んでいる日本電産では、E-Axleの専用工場を中国・平湖工業圏に建設中で、2019年5月に量産を開始する。同社は今後、自動車メーカーや1次サプライヤー向けにE-Axleを積極的に拡販する。(2018年12月12日付日刊自動車新聞より)

-広汽新能源汽車が2019年の上海モーターショーで発表した「Aion LX」にも採用。

 

買収

-子会社の日本電産シンポのドイツ現地法人Nidec-Shimpoを通じ、ドイツの小型精密減速機メーカーのMS-Graessnerおよびグループ関連会社の全株式を取得したと発表した。MS-Graessner201712月期の売上高は21.8百万ユーロ。今回の買収により、Nidec-Shimpoは精密遊星減速機(同芯軸+直交)全種を保有し、遊星減速機の大市場である欧州におけるGraessnerの販売網が活用できるようになる。今後は、急速な成長が見込まれるロボット産業関連市場からの需要を積極的に取り込み、飛躍的な成長を目指すとしている。(201893日付プレスリリースより)

 

合弁事業

-フランスのグループPSAとの自動車用トラクションモーター合弁会社の設立手続きが完了したと発表した。社名は「日本電産PSAイーモーターズ」で、設立時払込資本金は1500万ユーロ(約19億5千万円)。日本電産ルロア・ソマーホールディングとPSAオートモービルスが折半出資した。本社と開発拠点はフランスのキャリエール・ス・ポワシー、生産拠点は同国のトレムリーに置く。自動車用トラクションモーターとインバーターの開発・生産・販売を行う。従業員数は会社設立時が40人で、今夏末までに30人以上新規採用する予定で、事業拡大に応じて追加採用する。(2018年5月18日付日刊自動車新聞より)

 

事業提携

-WABCO Holdingsは、商用車の縦方向制御用の完全統合電動ドライブトレインとブレーキ制御ソリューションの開発・生産・商業化に向け、日本電産子会社の日本電産モーターと戦略的提携の覚書を締結したと発表した。まず、都市バスや電動トレイラー用技術を開発し、その後、グローバルマーケットに対応する商用車用プラットフォームに拡大する。両社は、車両ダイナミクスの安定性を維持する一方で、クラス最高の高効率を実現するエネルギーマネジメントを提供。新たな電動ドライブトレイン・ソリューションは、あらゆる使用事例においてエネルギー回生が向上し、エネルギー効率のさらなる向上に貢献するという。(2018919日付プレスリリースより)

 

海外事業

<グローバル>
-“米中貿易戦争”の対応策として中国から米国に出荷していたモーターをメキシコからの輸出に切り替える。2018年度中にメキシコ工場に総額200億円を投じ、パワーステアリングなど車載向けや家電用モーターの生産能力を倍増する。車載向けではメキシコ工場のレイアウトを変更し、家電用は隣接地に新たな工場棟を建設して増産対応する。一方で中国拠点では同国内のEV普及を見込み、増産投資を実施する。トラクションモーターやギアボックス、インバーターを含むトラクションモーターシステム「E-Axle」の生産を新たに開始するため19年5月までに量産化体制を築き、まずは中国系自動車メーカーに納入する。中国には今後2年間で1千億円を投じる予定だが、このうち大半を車載向けに充てる。このほか、ポーランド工場でもE-Axleの量産体制を築き、引き合いがある欧州自動車メーカーに供給する。20~21年ごろに発売予定のEVに搭載される見通しだ。(2018年10月25日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-5月に中国で量産を開始する「E-Axle(イーアクスル)」の年間生産数を2021年度に20万台に引き上げる。19年度は約5万台を生産する。すでに受注が決まっている広汽新能源汽車のほか、中国地場メーカーを中心に新規受注を獲得し、生産ボリュームを拡大する。量産実績を蓄積し、日欧米の自動車メーカーやティア1の受注につなげる。E-Axleは、トラクションモーターとギア、インバーターを一体化したユニット部品。同社製品は、油冷方式を採用し、小型軽量化と出力性能を高めたほか、丸線で平角線同等の出力を実現する独自技術で高いコスト競争力を実現している点を特徴としている。現在、E-Axleの工場を中国・浙江省に建設しており、5月にも広汽新能源汽車の電気自動車セダン「Aion S」向けに供給を開始する。同社は、年間1500億円の投資を継続し、駆動用モーターの売上高を25年に2千億円に拡大する計画を掲げている。(2019年2月6日付日刊自動車新聞より)

 

2020年度 新中期戦略目標

-「利益ある高成長の飽くなき追求」

  • 連結売上目標 2兆円 (新規M&A 約5,000億円を含む)
  • 内、車載売上高目標 7,000億円~1兆円
  • 連結営業利益率目標 15%以上
  • ROE (株主資本利益率) 18%以上 (株主資本比率60%を前提目標)
  • グローバル5極経営管理体制の確立 (日本、中国、アジア、米州、EMEA (欧州、中東およびアフリカ))

-電動化部品の2020年度市場規模予想と世界シェア目標:

  • 電動パワステ用モーター: 市場規模 70百万台、シェア目標 50%
  • 電動デュアルクラッチ用モーター: 市場規模 10百万台、シェア目標 70%
  • 電動オイルポンプ: 市場規模 11百万台、シェア目標 30%
  • 電動ウォーターポンプ: 市場規模 34百万台、シェア目標 20%

-モジュール化:

  • 電動パワステ用パワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製ECU)
  • 電動オイルポンプパワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製インバーター、日本電産トーソク/Nidec GPM製ポンプおよびケース)

-パワートレイン系への展開:

  • 油圧から電動への変革期が到来。パワトレ市場への本格参入を狙う。
  • 製品例として、SiCインバーター内蔵SRモーター:モーターの小型・軽量化・低消費電力化に成功。

-中国の低速電気自動車 (LSEV) 用駆動システムの主要コンポーネントを受注。

  • モーター、ギアボックス、コントローラー、バッテリーチャージャー
  • 中国の4輪車両とインド・東南アジアの3輪車両に注力。

-部品内製化: プレス部品、樹脂成形、ダイキャスト、シャフト加工、ハウジング加工などを内製化。

-LiDAR (Laser Imaging Detection & Ranging) の適用用途拡大 (自動運転等)

2020年3月期の見通し

(米国会計基準、単位:百万円)
  2020年3月期
(予想)
2019年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 1,650,000 1,518,320 8.7
営業利益 175,000 138,620 26.2
税引前当期純利益 170,000 139,014 22.3
親会社株主に帰属する当期純利益 135,000 111,505 21.1

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 62,912 55,438 52,807
-日本電産 25,439 20,829 21,459
-日本電産サンキョー 5,610 5,509 5,137
-日本電産モータ 5,299 5,722 5,945
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 9,113 7,959 7,311

-2020年3月期の研究開発費は全社で75,000百万円と予想。

 

研究開発体制

-中央モーター基礎技術研究所、シンガポールモーター基礎技術研究所、台湾モーター基礎技術研究所:全社的なモーター全般の要素技術研究を行い、グローバル技術開発戦略の中核となる要素技術研究の一層の高度化を推進している。

<日本電産>
-滋賀技術開発センター: HDD用を除く精密小型DCモーターおよびファンモーター、並びに自動車のパワーステアリング用をはじめとする各種車載用モーター等に関する新製品および新機種量産化、製品の品質向上を目的とした研究開発を行っている。

 

研究開発活動

<日本電産>
-車載用モーターでは、先進国市場のほか、中国、インド、ブラジルといった新興国市場向け新製品の開発を強化。
-開発案件は以下の通り:

  • 小型・高性能次世代パワーステアリングモーター
  • シート・ブレーキ・サンルーフ等用のモーターおよび付帯する電子制御ユニット(ECU)
  • デュアルクラッチトランスミッション
  • 油圧・電動システム向けブラシレスモーター
  • 電気自動車(EV)向け駆動用モーターや車載用モーターをセンサー・制御装置と組み合わせたパッケージ開発


<日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ>
-車載用モーター: ドイツ、ポーランド、スペイン、日本を中心に車載用モーターの高寿命化、小型化および軽量化に向けた研究開発を行っている。

  • シート調整、ステアリングコラム調整、サンルーフ向けレアアース不要の小型ブラシ付きモーターの開発・研究
  • エンジン冷却用小型、軽量ブラシ付きモーター・ブラシレスモーター・ファンモーター

-シャシー制御領域 (ブレーキ、ステアリング):

  • ブレーキ: 回生協調ブレーキシステム用ECUブラシ付きモーターとブラシレスDCモーターの商品化 (量産) 開発、横滑り防止装置用ECUの商品化 (量産) 開発
  • 電動パワーステアリング: ブラシ付きモーター用とブラシレスモーター用ECUの開発が完了、機能安全対応を盛り込んだブラシレスモーター用ECUの先行開発を行っている。

ー先進安全領域(カメラ、ミリ波レーダー)

  • 先行開発及び商品化(量産)開発

-その他の研究開発領域:

  • 自動変速機 (A/T)、デュアルクラッチ変速機 (DCT)、無段変速機 (CVT) 用のコントロールバルブASSYの高機能化と高性能化
  • 電動オイルポンプ:グループ会社の技術力を最適に組み合わせて実施
  • トランスミッション用電動油圧アクチュエーター
  • トラクションモーター、トラクションモーターシステム:E-Axleの開発


<日本電産サンキョー>
-ステッピングモーター: 車載への用途展開において、小型化、高性能化、コストパフォーマンスの改善に向けて開発を進めている。

<日本電産モータ>
-車両駆動用モーター: レアアースを使わないSRモーター技術をベースにエンコーダーとのモジュール化を行い、建機・農機など大型車両のハイブリッド化・電気化に向けた開発を行っている。

<日本電産コパル>
-東京技術開発センターにおいて、車載用レンズ、車載用モーター等のシステム機器関連の要素技術、製品開発を行っている。

  • 光学製品: デジカメ用からポートフォリオの転換として、車載用レンズやモバイル製品の開発に力を入れている。
  • モーター: デジカメ用からモバイル、車載、医療への移行を進めている。

 

製品開発

EV用インホイールモーター
-1基で1.8リットルのガソリンエンジンに相当する100キロワットの出力を発生するほか、すべての駆動方式にも対応する。2023年をめどに量産を始める。5月に量産を始めるトラクションモーターシステム「E-アクスル」の技術を応用して開発した。モーターと減速機で構成し、20インチホイールに収まるサイズで32キログラムと小型軽量化している。(2019年3月8日付日刊自動車新聞より)

EV用超急速充電器
-この充電器は、電力グリッドと充電タワーとの間の緩衝器(バッファ)として機能する。最新の電力制御装置に160kWhのバッテリーを組みこんでおり、50kWのエネルギー要件に対して320kWの電力供給が可能だとしている。約15分間の充電で最大容量の約80%の充電ができ、最高500kmの航行が可能となる。また、2台並列もしくは3台直列で、効率95%の充電を行うこともできるという。(201859日付プレスリリースより)

E-Axle
-車両の電動化に対応するため、トラクションモーター、ギアボックス、インバーターを一体化したトラクションモーターシステム。小型・軽量化するとともに、最大出力トルクもアップした。2019年に中国で量産を開始し、その後グローバル展開する予定。小型車からSUVまで幅広い車種に搭載可能。オプションでクラッチ機構を設定しており、四輪駆動システムやプラグインハイブリッド車にも適用できるとしている。 (2018年4月21日付日刊自動車新聞より)

 

主な設備投資額

(単位:百万円)
  2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 120,555 90,841 68,718
-日本電産 1,875 75 427
-日本電産サンキョー 8,803 9,303 5,386
-日本電産モータ 19,405 18,222 12,328
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 37,310 22,515 15,505

-2020年3月期の設備投資額は全社で150,000百万円と予想。

 

国内投資

-本社の隣接地に第二本社機能や子会社の研究開発拠点などを集約した新拠点を建設すると発表した。約2千億円を投じ、2022年から30年にかけて計4棟を新設する。グループ企業間の連携強化が目的で、最終的には現本社を含めて5千人体制を目指す。敷地面積は約6万平方メートル。建物は第二本社と生産研究棟3棟で、総床面積は約15万4700平方メートル。竣工時期は日本電産シンポの研究開発拠点の新設や日本電産リードの本社移転の第一期が22年3月を見込む。第二期は25~26年、第二本社の第三期は30年を予定する。(2019年1月10日付日刊自動車新聞より)

 

海外投資

<米国>
-傘下のNidec Motorは、18百万ドルを投じてケンタッキー州Lexington工場の拡張を行うと発表した。新製品の製造に向け、301名の新規雇用を創出するという。今回の拡張の発表は、日本電産のLeroy-Somer Americas(テネシー州Lexington)買収に続くものとなる。(2018615日付 Kentucky Department of Economic Developmentプレスリリースより)

<ポーランド、メキシコ>
-ポーランド、メキシコに電動車両向け駆動用モーターの量産工場を立ち上げる方針を示した。自動車メーカーからの受注を確保してから具体的な計画を詰める。(2018年4月26日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2019年03月31日現在)
事業所名 所在地 設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手および完了年月
着手 完了
日本電産(株) 京都府
向日市
第2本社およびグループ会社集約拠点 200,000 2020年 2030年
日本電産東測(淅江)有限公司 中国淅江省
平湖市
車載製品用製造工場 2,028 2018年2月 2019年5月
日本電産精密馬達科技(東莞)有限公司 中国広東省
東莞市
精密小型モーター製品用製造工場 2,048 2017年9月 2019年5月
日本電産モータ(株) アメリカ
オハイオ州
家電・商業・産業用製品工場 1,387 2019年4月 2019年12月
日本電産サンキョー(株) 長野県
諏訪町
精密小型モータ、車載用製品、機器装置および電子部品製造設備 9,782 2019年4月 2020年3月