トヨタ紡織 (株) 2012年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万円) |
2012年 3月期 |
2011年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 964,295 | 983,727 | (2.0) | -円高が影響 |
営業利益 | 20,910 | 36,856 | (43.3) | -合理化等の増益要因が、製品価格変動の影響および労務費・諸経費の増加により相殺 |
経常利益 | 23,225 | 36,027 | (35.5) | - |
当期純利益 | 3,232 | 11,466 | (71.8) | - |
要因
<日本>
-「CT200h」、「Prius α」、「Aqua」の新車立ち上げによる増産効果があったものの、製品構成の影響等により、売上高は前年比0.1%減少の572,342百万円。
-営業利益は、増産効果があったものの、製品構成の影響等により、前年比38.5%減少の4,189百万円。
<北中南米>
-「Camry」などの減産および円高の影響等により、売上高は前年比19.6%減少の142,460百万円。
-営業損失は、収益構造改革活動の成果があったものの、売上減少により前年比228百万円 (2011年3月期:5,700百万円の営業損失)増加の5,928百万円。
<アジア・オセアニア>
-中国の「Collora Verso」の新車立ち上げ等による増産効果はあったものの、円高の影響等により、売上高は前年比4.9%減少の250,134百万円。
-営業利益は、売上減少などにより前年比30.4%減少の24,950百万円。
<欧州・アフリカ>
-フランスの「Yaris」の増産効果、POLYTEC Holding AGの内装事業部門を取得し、紡織オートモーティブヨーロッパ有限責任会社として事業を開始したこと等により、売上高は前年比105.8%増加の50,979百万円。
-営業損失は、トヨタ紡織ソマン株式会社およびTBAIポーランド有限責任会社の生産準備費用の影響等により、前年比2,135百万円 (2011年3月期:912百万円の営業損失)増加の3,048百万円。
国内事業
-2011年5月、トヨタ紡織東北株式会社の宮城県新工場において、「Collora Axio」のシート生産を開始。海外事業
<米国>-米ミシシッピ州の生産会社でトヨタ 「Collora」向けのシートとドアトリムの生産を開始したと発表した。シートはグループ生産会社トヨタ紡織ミシシッピ(TBMS)がフレームを生産。現地企業のSYSTEMS・ENTERPRISES社と合弁で設立したシステムズ・オートモーティブ・インテリア(SAI)がシート組立を行い、トヨタのミシシッピ工場に納入する。ドアトリムはTBMSが生産する。(2011年11月24日付日刊自動車新聞より)
<フランス>
-フランス拠点でトヨタ自動車の新型「Yaris」(日本名Vitz)向けにシート、天井などの生産を開始したと発表した。同社がEU域内において自社で受注したシートや内装部品を生産するのは初めて。今回の受注実績を生かし欧州でのビジネス拡大に取り組む。生産を開始したのはトヨタ紡織の欧州統括会社の子会社であるトヨタ紡織ソマン(略称=TBSO、ノールパ・ド・カレ州ソマン市)。TBSOはシート、天井のほかエアクリーナー、エアコン用フィルターを生産しヤリスに供給する。(2011年7月27日付日刊自動車新聞より)
受注
-植物材料ケナフを活用し、より軽量化されたドアトリムがトヨタ新型 「Lexus GS」に採用。-エアクリーナーケースがトヨタ 「Crown Comfort」に採用。
-トヨタ 「86」およびスバル 「BRZ」向けのスポーツシートを受注。
-トヨタ 「Yaris」向けシートおよびヘッドライナーを受注。
買収
-欧州における内装事業を強化するため、オーストリアのポリテックホールディングス社が保有する自動車内装事業を取得すると発表した。ポリテック社はビーエムダブリューやダイムラー、フォルクスワーゲングループ、オペルなどの独自動車メーカーのドアトリムや天井をはじめとする内装部品を手がけており、この強みを生かして欧州事業の拡大を図る。(2011年6月11日付日刊自動車新聞より)合弁事業
-同社とアイシン精機の合弁会社TBAI Polandは、自動車用シートフレーム・シートカバーの生産開始を祝い、開所式を行った。TBAIが生産するシートフレームは、材質の一部に980メガパスカル級高張力鋼板を使用することで軽量化・省資源化を図るとともに、乗り心地性能を追求した新世代シートフレーム「TB-NF110シリーズ」。このシートフレームは、既に2011年6月より生産を開始しており、フランスのToyota Boshoku Somain S.A.S.でシートASSYに組み立てられ、新型「Yaris」を生産するToyota Motor Manufacturing France S.A.S.に納入している。敷地面積は約8万平方メートルで、日本・北米に続き3番目の生産拠点となる。なお、合弁会社への出資比率はToyota Boshoku Europeが70%、Aisin Europeが30%。(2011年10月17日付プレスリリースより)
事業再編
-中国の完全子会社で現地統括会社である「豊田紡織 (中国) 有限公司」に、生産子会社の天津英泰汽車飾件有限公司のトヨタ紡織出資分を付け替え豊田紡織 (中国)の子会社とし、トヨタ紡織の孫会社とすると発表した。統括会社の豊田紡織 (中国)を中心とした事業運営と各機能を一元管理する効率的な事業経営体制の構築を目指したもので、付け替えは今年12月に行う。天津英泰汽車飾件は2003年4月にトヨタ紡織が75%を、長春一汽富維汽車零部件股份有限公司が25%を出資し設立、自動車用シートや内装品の製造・販売を手がける。(2011年8月2日付日刊自動車新聞より)
-TBカワシマ (滋賀県愛荘町)は、完全子会社の川島愛知川工場 (滋賀県愛荘町)を10月1日付で吸収合併し、川島愛知川工場を同日付で解散する。TBカワシマは、トヨタ紡織、川島織物セルコン、豊田通商の3社が2009年12月設立した自動車内装材メーカー。2010年7月1日を創業日とし、川島愛知川工場は同日付で川島織物セルコンからTBカワシマに譲渡されていた。(2011年7月16日付日刊自動車新聞より)
2013年3月期の見通し |
(単位:億円) |
2013年3月期 (予想) |
2012年3月期 (実績) |
増減 | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 10,100 | 9,642 | 458 | - |
営業利益 | 300 | 209 | 91 | - |
経常利益 | 300 | 232 | 68 | - |
当期純利益 | 130 | 32 | 98 | - |
セグメント別売上高 | ||||
日本 | 5,950 | 5,723 | 227 | -エコカー補助金の効果等により、台数が堅調に増加し、増収増益 -上期は順調に増産となるが、補助金打ち切り後は減産傾向となる見通し |
北中南米 | 1,450 | 1,424 | 26 | -前期に立ち上がった「Collora」の寄与はあるが、「Camry」生産移管の影響等により売上は横這い -ブラジルの生産準備費用等の減益要因があるものの、ブレイクイーブンとなる見込み |
アジア・オセアニア | 2,650 | 2,501 | 149 | -台数が堅調に回復する見通し |
欧州・アフリカ | 600 | 509 | 91 | -前期に立ち上がった「Yaris」、および紡織オートモーティブヨーロッパが寄与し、増収 |
>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)
2015 中期経営計画
-2015年度までに連結売上高を11年度見通しに対して38.2%増の1兆3千億円に引き上げる新中期経営計画を発表した。営業利益は同3倍強の650億円を目指す。トヨタ自動車向けの維持、拡大とともに他系列からの受注増加を図ることで、売上規模を増やす。15年度までに非トヨタ系からの受注比率を現状の7%から10%に拡大する。今回の新中期経営計画の策定に合わせ、20年度までの長期ビジョンも策定した。20年度時点の収益目標は売上高1兆6千億円、営業利益800億円に設定した。非トヨタ系からの受注比率を3割に拡大することを目指す。(2012年4月18日付日刊自動車新聞より)-中期経営計画の達成に向け、以下の取り組みを実施。
1) 事業領域の拡大に向けた先端技術の追求
-開発体制の再構築
- 製品開発を客先の開発拠点のある地域で完結
- 先端・先行開発は日本で実施
- 地域R&D拠点間での技術情報共有化と応受援体制の構築
2) 新興国を中心としたグローバルでの事業拡大の加速
-世界の自動車メーカーの販売台数は本国域外で伸張していること、また国別では中国、インドに加え東南アジアで拡大していることから、新興市場への対応を実施。既存拠点を最大限活用しながら、政治・治安動向を見極めたうえで成長市場として進出を検討。
-アジアにおける新興国戦略として、現地開発体制の整備、および技術力アピールや積極的投資による事業拡大。
- トヨタ紡織アジアMRD (Marketing Research & Development)センターが2012年に稼動開始
- トヨタ紡織 (中国) R&Dセンターの移転・拡大を計画中
-現状、トヨタグループ向け事業が売上高の90%以上を占めており、2020年度に売上高に占める非トヨタグループ向け事業の割合を30%へ増加。
4) 日本事業のスリム、高効率、高付加価値化の徹底
-投資半減、生産準備工数半減、生産比率変動に強いラインづくり
-環境変化に対応した、最適化シナリオの策定
- 工場リソースを再配置し、新規事業に活用
- 新規製品・工法開発を実施し、量産化につなげることで事業を拡大
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2012年3月期 | 2011年3月期 | 2010年3月期 | |
全社 | 32,543 | 32,434 | 30,021 |
研究開発拠点
-日本で先端・先行開発を実施し、製品開発は客先の開発拠点のある各地域拠点で実施。
地域 | 所在地 |
日本 | -猿渡開発センター (愛知県豊田市) -大口開発センター (愛知県丹羽郡) -刈谷開発センター (愛知県刈谷市) |
北中南米地域 | 米国ケンタッキー州 |
中国 | 中国上海 |
アジア・オセアニア地域 | タイ バンコク |
欧州・アフリカ地域 | ベルギー ザベンタム |
デザインスタジオ | イタリア ミラノ |
-2014年3月に稼働を予定している多治見技術センター (岐阜県多治見市)の予定地で起工式を実施した。同センターには同社として初めて自前のテストコースを設置する。起工式に出席した豊田周平社長は「(テストコースを生かし)世界ナンバーワンのシート、内装部品、パワートレーン関連部品を開発する。トヨタはもちろん、系列外にも供給を拡大し、20年度までに系列外取引を3割に拡大したい」と述べた。多治見技術センターは、敷地面積が約36万平方メートル、テストコース面積が約14万平方メートル。コースには周回路、特殊路などを設ける。投資額は26億円を見込む。(2012年4月14日付日刊自動車新聞より)
-2012年2月、トヨタ紡織アジア株式会社にASEAN地域の市場調査・ベンチマークの充実による開発力強化を目的とした、MRD (Marketing Research & Development)センターを開設。
-2011年9月、欧州における初のデザイン開発拠点としてイタリア・ミラノ市にカーインテリアのデザインスタジオを開設、同月1日に活動を開始したと発表した。スタジオの名称は「トヨタ紡織ミラノデザインブランチ」。デザイン情報の収集や創作活動、顧客への提案活動などを業務内容とし、海外のデザイナーと協力し創作活動を行うことで、デザイン部門でのグローバルな競争力向上を目指す。(2011年9月13日付日刊自動車新聞より)
-2011年7月、トヨタ紡織アメリカ株式会社に、北米地域の製品開発力の強化を目的としたテクニカルセンターを新設。
製品開発
エアクリーナーケース-ケナフとポリプロピレン(PP)の混合した樹脂材料を射出成形する技術を確立し、エアクリーナーケースを開発したと発表した。ケナフ繊維を40%配合しながら、材料のなかに均質にまぜる技術を実用化。高い品質を維持しながら、射出成形を行えるようにした。従来品に比べて10%の軽量化を図るとともに、ライフサイクル全体を通したCO2(二酸化炭素)排出量を20%削減した。1月からトヨタ自動車の「クラウンコンフォート」に採用された。エンジン周辺の機能部品にケナフを活用したコンポーネントが採用されるのは初めて。新開発したエアクリーナーケースは、デンソーの商標で商品化した。今回、実用化した技術は射出成形で製造する樹脂部品に幅広く応用が可能としており、今後は内装や機能部品の各コンポーネントで実用化を検討する。(2012年2月18日付日刊自動車新聞より)
軽量化技術
-ケナフ繊維を活用したドアトリム基材、バックボード基材を大幅に軽量化する新技術を開発したと発表した。原材料のポリプロピレン(PP)とケナフ繊維に親和性を高める添加剤を配合することで、両者の接合強度を高めた。これにより、使用材料の低減を図り、従来に比べて約20%の軽量化を達成した。また、基材のプレス成形と樹脂製構成部品の射出成形を同時に行う新工法も開発し、生産効率を高めた。こうした改良点が評価され、1月にトヨタ自動車が全面改良したレクサス「GS」シリーズに採用された。(2012年2月10日付日刊自動車新聞より)
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2012年3月期 | 2011年3月期 | 2010年3月期 | |
全社 | 37,583 | 41,229 | 43,076 |
-新製品への対応、生産設備の合理化・更新などを中心に投資。
<日本>
-新製品対応、生産設備の合理化・更新、テストコース用地の取得などに17,789百万円を投資。
<北中南米>
-主にトヨタ紡織 ド ブラジル有限責任会社の生産準備、新製品対応、生産設備の合理化・更新などに5,653百万円を投資。
<アジア・オセアニア>
-新製品対応、生産設備の合理化・更新などに9,646百万円の投資。
<欧州・アフリカ>
-紡織オートモーティブヨーロッパ有限責任会社の土地、建屋の取得などに4,494百万円を投資。
設備の新設 |
(2012年3月31日現在) |
会社名/事業所名 | 所在地 | 設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了予定 |
猿投工場 | 愛知県 豊田市 |
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 | 7,199 | 2012年 4月 |
2013年 3月 |
刈谷工場 | 愛知県 刈谷市 |
エアフィルター等の新製品対応、設備の維持更新 | 4,722 | 2012年 4月 |
2013年 3月 |
豊橋南工場 | 愛知県 豊橋市 |
シート、カーペットの新製品対応、設備の維持更新 | 1,037 | 2012年 4月 |
2013年 3月 |
2013年3月期 設備投資額見通し |
(単位:億円) |
2013年3月期 (予想) |
2012年3月期 (実績) |
増減 | |
日本 | 200 | 182 | 18 |
北中南米 | 50 | 55 | (5) |
アジア・オセアニア | 120 | 95 | 25 |
欧州・アフリカ | 50 | 43 | 7 |
合計 | 420 | 375 | 45 |