トヨタ紡織 (株) 2010年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2010年
3月期
2009年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 953,729 979,775 (2.7) 1)
営業利益 25,143 14,054 78.9 -
経常利益 24,067 13,292 81.1 -
当期純利益 6,882 (5,064) - -
自動車部品事業
売上高 950,262 976,116 (2.7) -

要因
1)
-シート、ドアトリムなどの減産により減少。

<日本>
-政府の環境対応車への優遇施策による増産効果などはあったものの、北米市場を中心とした輸出の低迷などにより、売上高は前年に比べ5.0%減の553,600百万円。

<北中南米>
-カナダのRAV4の増産やアメリカのハイランダー、シエナ、メキシコのキャデラック SRXの新車効果などにより、売上高は前年に比べ7.0%増の164,349百万円。

<アジア>
-中国・天津のRAV4や広州のハイランダー等の新車効果などにより、売上高は前年に比べ1.3%増の196,303百万円。

<その他>
-市場低迷による大幅な減産の影響などにより、売上高は前年に比べ20.8%減の39,475百万円。

受注

-2009年のプレスリリースによる主な受注は以下の通り。
メーカー・モデル 搭載部品
トヨタ「Wish」 新世代シート骨格
トヨタ「Crown Majesta」 スピーカー内蔵ヘッドレスト
富士重「Legacy」 樹脂製インテークマニホールド
(2・5リットル水平対向4気筒エンジン)
トヨタ「i-REAL Ann」 エコプラスチック
トヨタ「i-REAL kei」 エコプラスチック
「Lexus HS250h」 エコプラスチック(ラゲージトリム、スカッフプレート、
ツールボックス、カウルサイドトリム、フィニッシュプレート)
トヨタ「Land Cruiser Prado」 シート
トヨタ「SAI」 エコプラスチック製表皮材

国内動向

-宮城県大衡村に自動車用シート工場を新設。

-2009年8月、富士裾野工場(静岡県裾野市)が竣工。
>>>詳細は、設備投資へ

-関連会社の関東シート製作所(岩手県北上市)が2009年10月1日付で実施する第三者割り当て増資を引き受け子会社化すると発表した。社名は「トヨタ紡織東北」に変更する。関東シートの相模原工場(神奈川県相模原市)は、トヨタ自動車の子会社であるセントラル自動車(神奈川県相模原市)が宮城県に移転するのに合わせ、工場を宮城県黒川郡大衡村に移転する計画。増資分の8億3500万円は土地の取得費用に充てる。今回の第三者割り当て増資により、同社の出資比率は63・13%になる。宮城工場は近く着工し、2010年8月に完成、2011年1月に生産を開始。総投資額は40億円。生産能力は当面年間12万台分とする。(2009年8月3日付日刊自動車新聞より)

-カーエアコン用フィルター「キャビンエアフィルター」の濾材の生産を愛知県刈谷市の刈谷工場で開始したと発表。内製化に当たり生産効率を大幅に向上し、濾材開発から生産、組み立てまでの一貫生産を可能にした。従来、別々の工法で製造していた2層構造の濾材において、同一ライン上で連続して製造する「2層メルトブロー工法」を採用。従来品と同等の性能を確保しながら、濾材の生産を効率化した。海外のキャビンエアフィルターの生産拠点でも生産を検討し、自動車用フィルター部品事業のグローバル競争力強化につなげる。(2009年10月6日付日刊自動車新聞より)

-子会社でシート・内装品メーカーのトヨタ紡織東北(株)(岩手県北上市)は、2009年12月1日付で同じくトヨタ紡織子会社の(株)TB岩手を統合。統合前のTB岩手は、関東自動車工業(株)岩手工場内のサテライトショップで、フェンダーライナー、エンジンアンダーカバーを生産していた。トヨタ紡織東北への統合後も、生産の場所と品目に変更はないという。(2009年12月1日付プレスリリースより)

海外動向

<米国>
-米ケンタッキー州のシートカバー生産拠点を2009年6月末で閉鎖。自動車生産の落ち込みによる稼働率の大幅な低下に対応するための生産体制を再編。同拠点の生産品目はメキシコの生産拠点に移管する。北米でのシートカバー生産は同国に集約することになる。閉鎖するのはトヨタ紡織アメリカのリッチフィールド工場(ケンタッキー州リッチフィールド)で、現在はトヨタ自動車がカナダ工場で生産するLexus「RX」用のシートを生産している。閉鎖を受け従業員300人は全員が希望退職に応じ、4-6月にかけて退職する予定。閉鎖後の工場は物流拠点としての活用も検討している。RX用シートカバーは2009年7月からTBメキシコ(コアウイラ州)のチャベツ工場に移管する。(2009年4月16日付日刊自動車新聞より)

-米インディアナ州に設立した新会社「トヨタ紡織インディアナ」(TBIN)でシート部品の生産を開始したと発表。新会社で生産するのはトヨタ自動車が2009年10月からインディアナ工場で生産を始めた「ハイランダー」用のリヤシートフレームとシートウレタン。グループ会社のオートモーティブ・テクノロジー・システムズ(イリノイ州、ATS)がシートに組み立てトヨタのインディアナ工場に納入する。ATSは大型ピックアップトラック「タンドラ」の生産がインディアナからテキサス工場に移管されたことを受け生産量が減少していた。ハイランダー用シートの生産を新たに開始し生産量を増やす。2009年(10月16日付日刊自動車新聞より)

合弁事業

-豊田通商、川島織物セルコンと各社共同出資により新会社を設立し、自動車を含む輸送用機器用内装材事業を統合する契約を締結したと発表。3社合計の売上規模は現在、年間約300億円で世界シェアは約15%だが、新会社ではシェア30%でトップをめざす。3社で重複する事業の合理化を進める一方、シート本体も生産する同社、販売を手掛ける豊田通商との連携で、より自動車メーカー側が求める仕様に沿った製品の開発をする。2009年12月22日に設立した新会社のTBカワシマ(本店=愛知県刈谷市、本社=滋賀県愛荘町)は資本金が100万円。同社と川島織物が各39%、豊田通商グループが22%をそれぞれ出資した。さらに、2010年4月1日には資本金を4億9千万円に増資する。(2009年12月24日付日刊自動車新聞より)

>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)

 

2011年3月期の見通し

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 増減
売上高 9,500 9,537 (37)
営業利益 270 251 19
経常利益 260 240 20
当期純利益 70 68 2
設備投資額 540 430 110
-日本 305 217 88
-北中南米 60 71 (11)
-アジア 110 109 1
-その他 65 33 32

 

地域別売上高

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 増減
日本 5,550 5,909 (359)
北中南米 1,550 1,664 (114)
アジア 2,350 2,032 318
その他 480 398 82

 

事業別売上高

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 増減
内装品 8,480 8,484 (4)
フィルター・パワートレイン 710 721 (11)
繊維・外装品他 310 330 (20)

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2010年3月期 2009年3月期 2008年3月期
全社 30,021 28,968 31,717

製品開発

新世代シート骨格
-軽量化を進めた新世代シート骨格の第二弾をトヨタ自動車と共同開発し、新型Wishに採用されたと発表。従来型(旧Wishに採用)と比較して軽量化、省資源化を図りながら、乗り心地性能を追求したことが特徴。骨格材質の一部に980メガパスカル級高張力鋼板を使用し、骨格構造や部品形状を見直すことで、従来型と比較して部品点数を約25%、締結点数を約25%、質量を約10%低減した。一部部品をアイシン精機、シロキ工業と共同開発している。新型Wishに採用されたシート骨格は「TB-NF110」。コンパクトカー「iQ」に採用された新世代シート骨格「TB-NF100」に続き開発したもので、今後シリーズ展開する予定。(2009年4月10日付日刊自動車新聞より)

スピーカー内蔵ヘッドレスト
-スピーカーを内蔵したヘッドレストを新たに開発し、トヨタ自動車の新型「Crown Majesta」に採用されたと発表。耳元のスピーカーから音が流れることで後席でも臨場感のあるオーディオを楽しむことができる。ヘッドレストサポート部は好みの角度に調整できる可動式とした。新開発のヘッドレストは、最上級グレード「G」の「Fパッケージ」に採用された。可動式のサポート部は「Alphard」のセカンドシートで採用されているが、これにスピーカーを埋め込んだタイプは世界初という。トヨタのほか、車両設計を担当した関東自動車工業、富士通テンと共同開発した。スピーカーを内蔵した左右のサポート部の内部にはメッシュ構造の部材を採用。本革表皮にも小さな穴を空け、音を通しやすい構造にした。(2009年5月15日付日刊自動車新聞より)

エコプラスチック
-トヨタ自動車と共同開発したエコプラスチックが、トヨタのパーソナルモビリティ「i-REAL Ann(アイリアルアン)」「i-REAL kei(アイリアルケイ)」に採用されたと発表。二酸化炭素の吸収能力が高い一年草植物「ケナフ」の繊維とでんぷんなどを原料としたポリ乳酸を混合した基材を活用し、100%植物由来のサイドトリムを開発した。表皮には石油由来原料のオレフィン系樹脂の一部をポリ乳酸に置き換えた成形表皮材を活用し、シートカバーやサイドトリム表皮を開発した。(2009年7月30日付日刊自動車新聞より)

-トヨタ自動車が開発したエコプラスチックを活用した自動車内装部品を開発し、レクサスのハイブリッド専用車「HS250h」に採用されたと発表。エコプラスチック製の不織布を表皮に活用したラゲージトリム、エコプラスチック製射出材を使ったスカッフプレートなどの内装部品を開発した。石油由来原料のポリエチレンテレフタレートの一部をポリ乳酸に置き換えた不織布を、ラゲージルーム内側の表皮全体に採用。同プラスチックに最適な成形方法・製品形状・成形条件を確立し、従来品と同等の性能・品質・風合いを実現した。ツールボックスやカウルサイドトリム、スカッフプレート、フィニッシュプレートといった内装部品に採用した。(2009年7月30日付日刊自動車新聞より)

シート
-トヨタ自動車の新型「Land Cruiser Prado」のシートをトヨタ自動車などと共同開発したと発表。フロントシートに新世代シート骨格を使った電動シートが採用されたほか、2列目・3列目には、新機構により乗員の快適性と荷室空間を拡大する新シートが採用された。フロントシートは、新世代シート骨格「TB-NF110」の手動タイプをベースに、シロキ・ブローゼと電動タイプを共同開発した。「Wish」「Prius」に搭載された手動タイプと基本骨格を共通化したことにより、旧型プラドに比べ部品点数、締結個所ともに約25%削減。重量は従来タイプに比べ約10%軽量化した。(2009年9月17日付日刊自動車新聞より)

エコプラスチック製表皮材
-エコプラスチック製の表皮材を東レ、トヨタ自動車と共同開発し、新型ハイブリッド車「SAI」(サイ)の天井やピラーなどの表皮に採用された。植物由来ポリエステルを従来材料に混合したもので、植物由来ポリエステルを使ったエコプラスチック製表皮材が量産車の内装に採用されたのは世界初。(2009年11月17日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2010年3月期 2009年3月期 2008年3月期
全社 43,076 60,496 52,961

-内装品では、シート・ドアトリムなどの新製品対応、富士裾野工場の建設、中国・北中南米での増産対応などに36,707百万円の投資を行った。
-フィルター・パワートレイン部品では、エアフィルター・オイルフィルターの新製品対応などに2,846百万円の投資を行った。
-繊維・外装品他では、バンパー・フェンダーライナーの新製品対応などに3,522百万円の投資を行った。

国内投資

-宮城県大衡村に自動車用シート工場を新設する計画を明らかにした。トヨタ自動車の車両生産子会社、セントラル自動車(神奈川県相模原市)が同村に本社と工場を移転するのに伴い、関連会社を通じてシート供給体制を整える。2010年末にも稼働を開始したい考え。8月、関連会社が宮城県や大衡村との間で工場立地協定を結び、その後、第2仙台北部中核工業団地の約5ヘクタールの土地を取得する。セントラル自動車は現地で年間12万台程度の車両生産を予定しており、同社もそれを踏まえて投資額や工場規模を決定する。(2009年7月30日付日刊自動車新聞より)

-富士裾野工場(静岡県裾野市)が竣工し、2009年8月に生産を開始したと発表。この新工場では御殿場工場から移管される自動車用シートおよびドアトリムを製造する。年産能力はシートが24万台、ドアトリムが29万台。2010年5月に移管が完了する見込み。(2009年9月10日プレスリリースより)

設備の新設

(2010年3月31日現在)

会社名
事業所名
所在地 設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了予定
猿投工場 愛知県
豊田市
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 11,679 2009年
7月
2011年
3月
刈谷工場 愛知県
刈谷市
エアフィルター等の新製品対応、設備の維持更新 3,258 2010年
4月
2011年
3月
大口工場 愛知県
丹羽郡
大口町
成形天井、フェンダーライナー等の新製品対応、設備の維持更新 1,336 2010年
4月
2011年
3月
トヨタ紡織東北(株) 岩手県
北上市
新工場の設備
6,194 2010年
4月
2011年
3月
Toyota Boshoku Somain S.A.S. フランス
ノール・パ・ド・カレ州
シートの新製品対応 3,548 2010年
4月
2011年
3月