東洋ゴム工業 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 320,569 294,092 9.0 -
営業利益 12,893 12,182 5.8 -
経常利益 10,754 9,193 17.0 -
当期純利益 6,704 521 1,186.8 -
タイヤ事業
売上高 241,693 216,578 11.6 1)
営業利益 10,325 8,863 16.5 -
ダイバーテック事業
売上高 78,795 77,314 1.9

2)

営業利益 2,073 3,197 (35.2) -

要因
1) タイヤ事業
-上期は震災などの影響により国内自動車生産台数が大幅に減少したが、下期においてはエコカー購入補助金制度の再開などによる新車販売台数の回復に伴い、タイヤの販売も好調に推移した。その結果、販売量は前年度並みを確保し、売上高は高付加価値商品の販売拡大により前年度を上回った。

2) ダイバーテック事業
-自動車用防振ゴムは、震災およびタイにおける洪水被害による自動車メーカーの減産の影響があったが、下期において需要の回復および同社製品装着車種の生産が増加したことにより、売上高は前年を上回った。
-自動車用シートクッションは、震災等の影響に加えて、下期において同社製品装着車種の生産が減少したことにより、売上高は前年を下回った。

受注

-トヨタ自動車が2011年5月に発売した「プリウスα(アルファ)」に「プロクセスR35」を標準装着タイヤとして供給していると発表した。「プリウスα」の上級モデルである「G"ツーリングセレクション・スカイライトパッケージ"」と「G"ツーリングセレクション"」、「S"ツーリングセレクション"」の3グレードに新車標準装着タイヤとして採用されたもので、同車の快適な乗り心地や静粛性、操縦安定性など高い要求性能をタイヤ面から貢献したとしている。(2011年8月19日付日刊自動車新聞より)

-米国子会社Toyo Tire U.S.A.は、2011年秋に発売となるトヨタの新型ハイブリッド車「Prius v」に、同社のオールシーズンタイヤ「Proxes A20」が新車装着されたと発表。タイヤサイズはP215/50R17 90W。このタイヤは、燃費向上のために低転がり性能を実現するとともに、ドライ・ウェット時の優れた制動性能を発揮する。(2011年8月18日付プレスリリースより)

国内事業

-東京都豊島区のオフィスビルに入居している東京本社の拠点機能を、一部を除き2012年4月末までに大阪市西区の大阪本社へ統合すると発表した。今後のグローバル本社機能の確立を目指し、営業部門の本社機能を大阪本社に集中させる。また、拠点統合によりコスト削減と組織集約での重複機能を解消、迅速な意思決定を行うことで、よりスピードを高めた機動的な経営を実現するとしている(2011年8月12日付日刊自動車新聞より)

海外事業

-同社は、ニットータイヤの世界展開を加速する。メーン市場の北米に加え、アジア地域での販売を強化する。中国のアルミホイール製造大手YHIインターナショナル・リミテッドと提携。香港、ニュージーランドに続き、年内にも中国で販売を始める。ニットータイヤは北米市場で大口径タイヤを中心に高い人気を誇るブランド。同ブランドを生産する北米のTNA工場の拡張工事が終了し、12月には中国工場も稼働することからニットータイヤの供給体制が整ったと判断。北米以外の市場で拡販に乗り出すことにした。(2011年10月19日付日刊自動車新聞より)

-同社は、アジア地域でのタイヤ事業戦略を加速している。2010年末にマレーシア市場で第2位のシェアを持つシルバーストーン社(クアラルンプール市、略称=SS)を完全子会社化したのに続き、今年6月にはSSの中国法人を子会社化。さらにマレーシア国内では13年春稼働開始予定で東洋ゴムの新工場を開設する。同工場では15年度に年産500万本、遅くとも20年には同1千万本へと能力を拡充する計画だ。一方、中国でも同200万本の能力を持つ自社工場を江蘇省張家港市に建設中。同工場は今年末に稼働するが、さらに段階的な能力の増強を検討している。一連の事業強化の背景には、15年までに10年実績比で5割以上のプラスとなる年販4500万本体制の構築を目標とした中期経営計画がある。核となるのは旺盛な需要が期待されるアジア地区での増販であり、そのための生産面での対応を急ぐ必要がある。(2011年8月8日付日刊自動車新聞より)

合弁会社

-中国のボディーシーラーの製造・販売会社である広東時利和汽車実業集団有限公司(TGPM)と、同国の広東省佛山(Foshan)に合弁会社を設立することで合意したと発表。自動車などの輸送機器向けにウレタンシートクッションを製造・販売する。新会社「佛山東洋時利和汽車零件有限公司(Toyo TGPM Automotive Parts Foshan Co., Ltd.)」の資本金は50百万元(約600百万円)。出資比率は東洋ゴム工業が60%、TGPMが40%。2013年に生産を開始する予定で、2017年の売上額は13億円を見込む。(2012年1月27日付プレスリリースより)

企業買収

<中国シルバーストン社>
-2011年4月に買収を決めたトラック・バス(TB)用タイヤを生産する中国シルバーストン社(中国・山東省)の株式取得が完了したと発表した。これにあわせて社名を東洋輪胎(諸状)に変更した。同社は中国を始めとした海外市場でタイヤ供給能力を高めることを狙い、昨年買収したマレーシアのシルバーストン社の中国法人でTBタイヤ事業を手がけていた中国シルバーストン社の株式を75.0%相当を17億9500万円で取得した。東洋ゴムは今回買収した工場で「トーヨー」ブランドのTBタイヤを生産することにしている。(2011年7月2日付日刊自動車新聞より)

-マレーシアのシルバーストン社の中国法人である山東銀石瀘河橡胶輪胎(中国シルバーストン、中国・山東省)の株式を取得し子会社化すると発表した。中国シルバーストンはトラック・バス用(TB)タイヤの生産を手がけている。子会社化することで、中国を始めとした海外市場に対するタイヤ供給能力を高めるのが狙い。中国シルバーストンは2004年に設立。TBタイヤを年間約40万本生産している。従業員数は約500人。中国では、自社で江蘇省張家港市に乗用車用タイヤの工場を建設中で2011年内の操業開始を予定している。これに加えて、中国シルバーストンの生産拠点を新たに取得することでTBタイヤの供給能力の拡充を図っていく考えだ。(2011年4月14日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画

-同社は2020年までの経営計画「ビジョン'20」を掲げ、その中間地点である2015年を最終とする5ヵ年の中期経営計画「中計'11」を実行中。「ビジョン'20」の経営目標は売上高6,000億円、営業利益率10%。

-中期経営計画「中計'11」では以下4つの基本戦略に基づき、最終年度の2016年3月期において、売上高4,000億円、営業利益300億円、営業利益率7.5%の数値目標を設定している。
  • 成長市場、戦略事業への経営資源集中
  • 収益力向上のためのビジネスモデル構築
  • 独自技術による新需要の創出
  • 継続的な企業革新の取り組み
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
タイヤ事業 4,999  5,459 5,327
ダイバーテック事業 2,457  2,249 2,102
共通 856  847 886
全社 8,312  8,556 8,315

研究開発拠点

タイヤ技術センター 兵庫県伊丹市
研究開発センター 大阪府茨木市
自動車部品技術センター 愛知県みよし市
タイヤテストコース 宮崎県児湯郡
冬期タイヤテストコース 北海道常呂郡

-愛知県みよし市の自動車部品技術センターに「新テクニカルセンター」棟を開設し、千葉市の自動車部品東日本技術センターを移転統合したと発表した。防振ゴム事業の技術開発力強化が目的。東西に分散していた技術開発における知見とノウハウの集約により要素技術や情報収集能力、解析・評価技術力をトータルに強化。開発スピードの向上を図る。(2011年9月15日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

タイヤ事業
-タイヤ技術センターにおいて、タイヤ挙動と車両の挙動の解析を結び付けたタイヤ設計基盤技術およびタイヤ騒音や磨耗性能のシミュレーション技術開発により、商品開発を進めている。
-タイヤ技術センターの敷地に「生産技術工房」を建設し、工法にかかわる要素技術開発、生産技術の改善を推進。
-中国に建設する新工場向けに導入する要素技術開発も行っている。
-同社は、(株)TGMYが製作したEV「TGMY EV Himiko」に、低燃費タイヤをベースにカスタマイズしたタイヤを提供し、その実験の成功に貢献したと発表。このEVは、一充電で大阪-東京間に相当する距離(550km)を走行することを目指したもので、TGMYが大阪産EV開発プロジェクトとして、繁原製作所や大阪府立大学EV開発研究センターと連携して製作した。国土交通省国土技術政策操業研究所試験走路(茨城県つくば市)で行われた今回の実験では、一充電で587.3kmの走行を達成した。(2011年10月11日付プレスリリースより)

ダイバーテック事業
<輸送機器>
-カーメーカーから高級車種向けとして、エンジンマウントなど高機能部品を多く受注し、順調に立ち上げた。
-先行技術開発においては、環境対応車向けの新製品開発を行い、市場展開を目指している。
-環境問題への対応として鉛フリー、6価クロムフリーの製品開発を実施し、製造工程・製品からVOC(揮発性有機化合物)を削減するため、新素材への切替を進めている。
-車の燃費向上のために部品の軽量化および性能向上を目指し、アルミや樹脂材料の採用以外に新工法・新材料の開発を進めている。

製品開発

タイヤ
-日本自動車タイヤ協会(JATMA)の定める「低燃費タイヤの普及促進に関するガイドライン(ラベリング制度)」において、転がり抵抗性能「AAA」/ウェットグリップ性能「b」を達成したタイヤを開発したと発表。独自のナノ技術をベースにしたこのタイヤを、乗用車用タイヤの新ブランド「NANOENERGY」として展開していく。日本国内をはじめ、欧州などの世界市場に供給する予定。まず、転がり抵抗性能「AAA」/ウェットグリップ性能「b」を実現した低燃費タイヤを、「NANOENERGY 1」として日本国内で2012年2月より発売する。また、ハイブリッド車の多様化に対応する「AAA-c」商品を「NANOENERGY 2」として順次、市場展開していく予定。(2011年12月1日付プレスリリースより)

-米国市場に環境配慮型タイヤを初投入したと発表した。コンパウンドに国内で投入する「エコウォーカー」など低燃費タイヤに投入する技術をベースに開発した「グリーンパウダー」と呼ばれる技術を投入し、転がり抵抗の低減を実現しながら、ロングライフ性能や高い乗り心地性能を両立した。新タイヤの導入でハイブリッド車(HV)を始めとした環境対応車両ユーザーの取り込みを狙う。「Versado Eco(ヴェルサド・エコ)」の名称で発売する。(2011年7月7日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
タイヤ事業 26,564  26,299 10,842
ダイバーテック事業 2,800  1,814 2,372
その他 402
全社 29,767  28,324 13,215

タイヤ事業
-合理化および品質向上、北米タイヤ工場の生産設備増強、中国・マレーシア工場の立ち上げを中心に設備投資を実施。

ダイバーテック他事業
-合理化および品質向上を中心に設備投資を実施。

海外投資

<中国>
-乗用車とライトトラック用タイヤを生産する中国・江蘇省の新タイヤ工場「東洋輪胎張家港有限公司」で竣工式を開催した。式典では、東洋ゴムの中倉健二社長が「中国への生産進出は最後発だが、他社にはない高付加価値のモノづくり実現する。ここから東洋ゴムの新しい歴史が始まる」と挨拶した。新工場では年間約200万本の生産体制を早期に構築、旺盛な需要に対応する。(2011年12月10日付日刊自動車新聞より)

<マレーシア>
-マレーシアに乗用車用タイヤなどの新工場を開設すると発表した。約200億円を投資して、年産250万本規模の能力を持つ工場を建設、2013年4月の量産開始を目指す。15年度には同500万本規模に能力を拡充する計画だ。同社は4月に現地子会社「トーヨー・タイヤ・マニュファクチャリング・マレーシア」を全額出資で設立済み。同子会社の工場用地として、ペラ州内に約48万平方メートルを確保しており、ここに新工場を建設する。(2011年8月4日付日刊自動車新聞より)

国内投資

-独自の画像処理システムを用いてタイヤ外観の不具合を自動で検査するシステム技術を開発したと発表した。CCDカメラと「光切断」とよばれる処理技術を活用して、目視では見つけることができない細かな不具合を発見できるようにした。新検査システムは手始めに桑名工場(三重県)で導入する。その後、今年新設する中国工場など海外拠点にも順次展開していく計画。(2011年6月11日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2012年3月31日現在)
事業部門 計画金額
(百万円)
設備等の主な内容・目的
タイヤ事業 19,937 合理化および品質向上、グローバル供給体制への対応
ダイバーテック事業 4,173 合理化および品質向上、グローバル供給体制への対応
全社 (共通) 562 基礎研究技術の強化
合計 24,672 -