古河電気工業 (株) 2010年3月期の動向

ハイライト

業績 - 古河電気工業(株)

(単位:百万円)
  2010年
3月期
2009年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 809,693 1,032,807 (21.6) -国内および米国その他先進国の需要低迷や円高などの影響を受けた。
-中国をはじめとする新興国の需要は堅調。
-顧客の在庫調整が落ち着いた。
-国内のエコカー減税等による自動車関連製品の需要回復。
-上高は減収ではあるものの、期首に予想した売上高を確保。
営業利益 20,321 9,752 108.4 -前期第4四半期に赤字に陥ったが、当期第2四半期から再び黒字となり順調に回復。
経常利益 19,347 (14,788) - 前期に実施した北米事業再編により米国子会社への円建て貸付金に伴う為替リスクが解消したことから、為替損益が大幅に改善。
当期純利益 9,704 (37,405) - -事業構造改革費用や独占禁止法関連での引当金繰入等による特別損失173億円を計上。
-投資有価証券売却益等の特別利益89億円を計上。
電装・エレクトロニクス部門
売上高 117,232 223,797 (47.6) -新興国における自動車需要の回復や国内のエコカー減税などの効果により、自動車用ワイヤーハーネスなどの自動車部品関連製品の売上は堅調。
-全体として厳しい市場環境による需要の低迷から減収。
営業利益 7,179 2,482 189.2 -

海外動向

-グローバル展開する日系自動車メーカーならびに軽自動車メーカーに対して拡販活動を本格化する。同社は、ホンダの「インサイト」にワイヤーハーネスなどの部品を供給している。インサイトが好調な販売を維持したことから、中間期は自動車分野が業績をけん引、3四半期ぶりに営業損益が黒字化した。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などのグローバルメーカーならびにダイハツ、スズキなどの軽自動車メーカーに対して積極的な拡販活動を行う方針。(2009年11月10日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-同社と古河ASは米リア・コーポレーション(ミシガン州)との合弁会社で古河電工グループが20%出資するリア・フルカワ・コーポレーション(テキサス州)の出資比率を引き上げ、経営権を取得した。古河主導による経営基盤確立を進め、北米におけるハーネス事業の商圏拡大を図る。リア・フルカワはワイヤーハーネスの北米での製造販売を目的に古河電工グループとユナイテッド・テクノロジー・オートモーティブの合弁会社として1987年に設立された。その後、リア社がユナイテッド社を買収、80%の株式を持つリア社の主導で事業運営が続けられてきた。今回、リア社の持つ株式のうち60%を取得、出資比率を従来の20%から80%へと引き上げ、経営権を古河側が持つことになった。これを機に社名をフルカワ・リア・コーポレーションに変更した。(2009年4月24日付日刊自動車新聞より)

<欧州>
-ドイツ子会社Trocellen GmbHは、ロシアのクリン市に建設した新工場(Trocellen Russia)が操業を開始したと発表。ロシアやウクライナをはじめとする旧ソ連地域を対象に、自動車向けなどの架橋発泡ポリオレフィン製品を製造・販売する。(2009年7月27日付プレスリリースより)

<中国>
-中国の自動車部品生産拠点を再編、2013年に売上高350億円を目指す。中国事業のパートナー企業であるシンガポールGPインダストリーズ(GPI)と共同出資していた中国向け投資会社を100%子会社化した。上海にあるワイヤーハーネス製造拠点はGPIに譲渡し、長春のワイヤーハーネス製造拠点を同社グループの100%子会社とする。一連の再編により同社はGPIとの資本関係を薄め、同社独自の中国自動車部品事業を本格化する。再編は6月29日付で行われた。これにより同社の中国生産拠点は長春、天津、深セン、恵州、重慶の計5拠点となった。(2009年7月1日付日刊自動車新聞より)

-中国における車載用部品の事業体制を強化する。中国全域をカバーできる製造拠点体制が整ったことから、ワイヤーハーネスを始めとした車載電装部品で地場資本の自動車メーカーの受注獲得に向けた取り組みを積極的に展開する。同時に製品の組み立てに使用する部品の構成部品の現地調達を推進し、製造コストのさらなる低減を図る。こうした取り組みに力を入れていくことで、今後3年程度で同国向けの売り上げの半数を地場メーカー向けで構成していくことを目指す。(2010年1月7日付日刊自動車新聞より)

<ベトナム>
-古河ASは、ベトナムの全額出資子会社Furukawa Automotive Systems Vietnam Inc.(FASV)が製造・出荷を開始した。FASVは2008年12月、ベンチェー省ジャオロン工業団地に設立された。ホーチミン市のFurukawa Automotive Parts (Vietnam) Inc.(FAPV)に次いで、ベトナムで2社目のワイヤーハーネス製造会社となる。FASVは2011年に年間売上高66百万ドル、従業員数3,000名を目指している。(2009年11月4日付プレスリリースより)

<マレーシア>
-マレーシアで自動車用ワイヤーハーネスの製造販売を手掛ける子会社パーミンテックス・インダストリーの出資比率を引き上げ、経営権を取得した。従来のパーミンテックス・インダストリーに対する出資比率は5%。同社はパーミンテックス・インダストリーの親会社パーミンテックス・ホールディングスから株式を買い取り、出資比率を51%に引き上げた。今後は古河電工グループの主導で会社運営基盤を早急に確立し、マレーシアにおける自動車部品事業の商圏拡大を図る。(2009年8月12日付日刊自動車新聞より)

<新興国>
-グローバルの自動車部品の売り上げ規模拡大に向けた取り組みを強化。2015年までにブラジルへの生産進出やインドの第2工場の建設に着手するほか、日系メーカー以外の現地自動車メーカーに対する受注獲得に向けた取り組みを進めるなど、新興国における事業拡大を中心に事業展開に取り組む。これにより、同年までに主力のワイヤーハーネス事業におけるグローバルの売上高を現状の2倍となる2千億円レベルまで引き上げていく考え。(2009年12月15日付日刊自動車新聞より)

事業再編

巻線事業
-モーターなどに使用される巻線の生産・開発事業を再編。同社および関連会社、子会社の3社がそれぞれ巻線事業の会社分割、事業譲渡を行い、これらを古河電工が全額出資して2009年4月に設立した新会社「古河マグネットワイヤ」に集約する。同時に販売機能を古河電工に一本化する。新会社は2010年4月に生産を開始、初年度は売上高240億円を目指す。巻線は昨年下期の金融危機以降、需要が低迷しており、グループ内の生産・開発資源を集約して品質、コスト競争力を高め新規ニーズの吸収に結びつける。(2009年5月1日付日刊自動車新聞より)

-2009年4月に設立した古河マグネットワイヤ(株)は、2009年10月に東京特殊電線(株)から巻線事業を譲り受け、また、2010年4月に古河電気工業および理研電線(株)の同事業を会社分割により継承した。

>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)

ニューフロンティア2012(2010-12年度中期経営計画)

高機能素材事業の強化
自動車用リチウム電池向け銅箔・アルミ箔 金属・軽金属部門 -民生用に加え、次世代自動車用が2011年-2012年に立ち上がり、2013年から本格化。
-需要予測を見極め設備増強へ。
-トップシェアの正極用アルミ箔も強化。
自動車用アルミハーネス 電装・エレクトロニクス部門 -軽量化のため、銅代替として提案。

セグメント別売上高・営業利益(2012年度計画 単位:億円)

セグメント   2009年度
実績
2012年度
計画
事業戦略
情報通信 売上高 1,355 1,600 -
営業利益 98 100
エネルギー・産業機材 売上高 2,088 2,500 -
営業利益 37 80
金属 売上高 1,196 1,700 <銅箔>
-リチウムイオン電池用で大幅に事業拡大。
-自動車用では圧倒的なデファクト化をめざす。
営業利益 (22) 55
電装・エレクトロニクス 売上高 1,772 2,300 <自動車部品>
-ワイヤハーネス:グローバル最適設計・生産・営業体制構築により、世界シェア5%(2015年)に拡大。
-開発力強化による新製品の売上拡大。
営業利益 72 110
軽金属 売上高 1,882 2,200 <アルミ箔>
-日箔完全子会社化のシナジーを実現し、第四の柱へ。
営業利益 (2) 140

開発動向

研究開発費 - 古河電気工業(株)

(単位:百万円)
  2010年3月期 2008年3月期 2007年3月期
全社 17,270 19,789 19,976
電装・エレクトロニクス 3,659 4,288 3,603

研究開発体制

拠点名 所在地 概要
古河電気工業(株)
自動車電装技術研究所
神奈川県
平塚市
自動車内のパワーと伝送システム技術の研究開発を行っている。

主な開発テーマ:
-自動車用電源マネジメントシステム
-車載センサ
-次世代ワイヤーハーネスシステム
-自動車部品関連シミュレーション技術

研究開発活動(電装・エレクトロニクス部門)

-超広帯域(UWB)技術を応用したレーダーの開発。このレーダーは、自動車周辺の小物体の位置を高精度に計測することができ、衝突予防安全システムでの採用が期待でき、システムメーカーや車両メーカーと技術協議を開始。
-自動車用バッテリーの充電状態や劣化状態を高精度に検出するセンサーを開発。数年以内に量産の見通し。
-高い導電性能や薄型皮膜を用いたハイブリッド車(HV)の駆動モータ向け巻線を開発中。
-次世代巻線に向けた高耐電圧、被服の薄肉化を研究開発中。

-同社と富士電機ホールディングス(HD)は、電気自動車などのエコカー向け次世代電力制御半導体(パワーデバイス)で共同研究を開始する。7月中に共同開発組織「次世代パワーデバイス技術研究組合」を設立する。3カ年計画で研究を行い、2011年度の量産を目指す。研究への投資額は毎年8億円で合計24億円となる予定。初年度の今年は両社が4億円ずつ投入する。次世代パワーデバイスで100億円規模の売り上げを見込めるめどが立てば、同組合を母体に事業会社を設立する。(2009年6月25日付日刊自動車新聞より)

-ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)用の部品開発を本格化する。耐熱性に優れ、軽量化も実現する「高耐熱電線」やワイヤーハーネスから生じるノイズを遮断する軽量な「アルミニウム製電磁シールド」を2012、13年頃をめどに実用化する。放熱作用に優れた「大電流高放熱基板」の研究も行っており、14年の実用化を目指している。HVやEVは、ガソリン車にはない大電力を扱うため、新たな技術を磨くことで市場競争力の向上につなげる。(2009年9月8日付日刊自動車新聞より)

-車載レーダー市場に本格参入する。電波漏れを大幅に低減する先進技術を採用した車載用ウルトラ・ワイド・バンド(UWB)レーダーの開発を発表。2013年までに実用化を目指す考えを明らかにした。開発した車載用UWBレーダーは、歩行者検知や車両後方の安全確認などに利用できる。グローバルで利用されることが見込まれている電波帯に対応しており、欧米をはじめ、新興国への展開も視野に入れている。「業界に先駆けた技術を武器に新規事業として育てていく」(同社)考え。(2009年10月22日付日刊自動車新聞より)

-LED(発光ダイオード)の光量を増幅させる周辺部材「MCPET」を日系自動車メーカーに供給する。 12月末に販売される新型軽自動車の車室内用イルミネーションへの搭載が決まっている。MCPETの成型品を自動車メーカーに供給するのは今回が初めて。 MCPETは同社が手掛ける発泡材で、ポリエステルの一種であるPET(ポリエチレンテレフタレート)に独自の微細発泡加工を施し、構成する気泡の径を 10マイクロメートル以下に抑えた。LEDの反射用部材には従来金属製の部品が採用されてきたが、これをMCPETに置き換えることで、明るさは 40-70%向上、消費電力は約20%削減する。加えて大幅な軽量化を実現し、成型コストは5分の1程度に抑えられるという。(2009年12月4日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額 - 古河電気工業(株)

(単位:百万円)
  2010年3月期 2009年3月期 2008年3月期
全社 25,433 41,275 45,264

-巻線事業統合に伴う設備集約、自動車用電装部品などの量産化等を目的とした設備投資を実施。

-2010-12年度までの設備投資計画において、自動車関連分野に集中投資する。同社は、10-12年度の3カ年の中期経営計画「ニューフロンティア2012」の期間中で330億円の設備投資計画を打ち出している。このうち140億円程度を自動車関連に振り向けていく。計画では、アルミを用いた軽量のワイヤーハーネスやリチウムイオン電池用の銅箔といったエコカー向けの研究開発に力を入れていく。また、新興国向けのビジネスに対応するための部品開発に取り組んでいく考え。(2010年4月27日付日刊自動車新聞より)