日立オートモティブシステムズ(株) 2010年3月期の動向

ハイライト

事業再編

-日立製作所の自動車部品事業を引き継ぐ同社が7月1日、正式に発足した。規模の拡大を図ってきた従来路線を変更、収益重視の経営を徹底。責任の明確化と迅速な意思決定に基づき、グループの総合力を生かした製品・サービスの提供に取り組む。収益確保の源泉となる営業活動では、提案型営業を積極的に行う。部品単体だけでなくシステムで製品を供給できる強みを前面に押し出す。研究開発に関しては電子・電動化をキーコンセプトに製品ポートフォリオを構築。ハイブリッド車(HV)用製品、高燃費効率エンジン機構製品、電子制御技術製品に集中投資する。(2009年7月2日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発活動

-ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)の電気駆動システムの受注拡大に向けて技術開発を活発化する。駆動モーターの活用を限定した廉価タイプから、電気駆動のメリットを最大限に引き出した高機能仕様までを網羅したフルラインの技術プラットホームを3年以内に構築する。こうして海外を含む自動車メーカーの商品企画に応じた技術提案を可能にして、二酸化炭素(CO2)削減に取り組む各社のニーズ吸収に結びつける。(2010年3月15日付日刊自動車新聞より)

製品開発

リチウムイオン電池
-出力密度が4500ワット/キログラムとなる世界最高出力のリチウムイオン電池を開発したと発表した。2009年秋から国内外の自動車メーカーにサンプル出荷を開始する。電極に新開発のマンガン(Mn)系正極材料を採用したほか、電極の薄膜化、集電方法の改良などで出力向上を実現した。2013年の量産開始を視野に拡販を進める。今回開発したのは同社では「第4世代」にあたるリチウムイオン電池で、現在量産中の「第2世代」(2600ワット/キログラム)に比べ7割強出力を高めた。サイズは120×90×18ミリで、1セル当たりの重量は0.24キログラム。第2世代に比べ20%軽量化した。正極には、Mn系の新規材料を用い、結晶制御など最適な粒子設計を実施。また電極そのものも薄膜化し大面積化した。(2009年5月20日付日刊自動車新聞より)

3軸複合センサー
-自動車の走行姿勢検出向けに、三つのMEMSセンサーを1チップに統合した3軸複合センサーを開発したと発表した。耐熱性と耐振動性を高めたことでエンジンルーム内への設置を可能にした。ブレーキの油圧制御装置に直接搭載することが可能となり、従来は車室内に設置していため必要だった配線部品が不要になる。採用が拡大する横滑り防止装置(ESC)に組み込み、低コスト化や搭載の簡易化につなげる。(2009年10月7日付日刊自動車新聞より)

プラグイン・ハイブリッド車用リチウムイオン二次電池
-プラグイン・ハイブリッド車(PHV)用リチウムイオン二次電池を開発したと発表した。現在、日立ビークルエナジーが量産している同社第二世代のハイブリッド車(HV)用電池と同等の出力密度を持ちながら、エネルギー密度を2倍に高めた。エネルギー密度は120ワット時/キログラム。2010年春、国内外の自動車メーカーにサンプル出荷を始める。1セルあたりの容量は25アンペア時と、これまでのHV用に比べ 4、5倍大型化させた。このため、より安全性を高める必要があり、セラミックスを応用した耐熱セパレーターを開発し採用した。2013年をめどに量産を始める。(2010年1月13日付日刊自動車新聞より)

運行実績解析ツール「SolidGuardian」
-車両の走行情報を解析する運行実績解析ツール「SolidGuardian」を2010年4月に発売すると発表した。通信機能を持たない業務車両でも、運行情報や速度の変化などの分析、安全運転やエコ運転の評価が行えるようにした。業務車両向けカーナビゲーション「SolidNavi」と組み合わせることで機能する。(2010年3月18日付日刊自動車新聞より)

アクティブサスペンション
-アクティブサスペンションの開発を完了した。油圧を用いてサスペンションのダンピングとストロークを自在に可変するもので、コイルスプリングを組み合わせていた従来のセミアクティブサスペンションの進化版となる。適用すれば乗り心地や操縦安定性が向上するだけでなく、各輪の荷重を自由に制御できるため、タイヤのグリップ力を最大限に活用することができ、安全性の向上にもつながる。(2010年3月30日付日刊自動車新聞より)

設備投資

国内投資

-次世代ハイブリッド車(HV)に用いる「第3世代リチウムイオン電池」の量産ラインを完成したと発表した。2010年から本格稼働する。現在の生産能力は月間4万セル(単電池)だが、稼働後には同30万セルを上乗せする。年間10万台以上のHV生産に対応できるという。これまで同社のリチウムイオン電池は小型トラックなど日米の商用HV向けが中心だったが、これを機に需要拡大が著しい乗用HVなどへの拡販を急ぐ。第3世代リチウムの量産ラインは、日立、新神戸電機、日立マクセルの3社が設立した日立ビークルエナジー(茨城県ひたちなか市)の本社工場内に新設。同社を通じて販売する。(2009年10月20日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<中国>
-中国における生産能力を強化する。現地生産台数の増加に対応するとともに、最新の低燃費技術を備えた部品生産を行えるようラインを再構築する。現在の先進国向け車種と同等の燃費性能を備えた車両の生産が本格化するため、各工場の供給能力を段階的に高めていく。中国では新車販売台数の増加を受けて、自動車部品の供給が追いつかない状況が続いている。日立は「サスペンション、ブレーキ、ECU全部足りない。想像の2、3割増しのオーダーが来ている」とし、現在設備投資を行い増産対応を進めている。増産にあたっては、現地調達比率を高め、地域に見合った生産技術を適用することで、これまで以上の低コスト化を図る狙い。(2010年3月23日付日刊自動車新聞より)