河西工業 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 237,992 214,884 10.8 -主要得意先の堅調な自動車販売を受け、増収。
-北米では、型設備売上や為替の効果もあった。
営業利益 16,373 11,651 40.5 -
経常利益 16,116 11,759 37.0 -
当期純利益 8,543 6,572 30.0 -



海外事業

<中国>
-2016年7月、中国湖北省武漢市に、内装部品を製造・販売する新会社 「東風河西 (武漢) 頂飾系統」 を設立したと発表した。2017年7月から天井の生産を開始し、2018年度に売上高8,800万人民元 (約15億円) を目指す。同社が中国で天井を現地生産するのは初めて。新会社の資本金は1,500万人民元 (約2億5千万円)。同社と東風汽車系の部品メーカーである東風ビステオンが折半出資する東風河西 (大連) 汽車飾件系統の完全子会社として設立した。まず天井を生産し、ホンダと東風汽車の合弁会社である東風ホンダに納入する。(2016年7月7日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-米国でホンダ向けの生産体制を増強する。アラバマ州の工場で建屋を拡張するとともに、生産設備を追加し、ホンダ向けの専用工場にする。ホンダは同社にとって日産自動車に次ぐ第2位の取引先。市場が好調な米国では両メーカーともに生産・販売台数を増やしており、同社の売上高も増加している。米国の主要4工場を日産向け、ホンダ向けに2工場ずつ専用化して効率を高め、北米事業の収益力を一段と高める。(2015年7月10日付日刊自動車新聞より)

<フランス>
-フランスの内装部品メーカーと協業し、欧州でRenault・日産向けの製品供給体制を整える。Renaultの工場で生産される予定の日産車の内装部品を受注したため、現地企業と新たな協力関係を結ぶことにした。受注したのは、日産が2016年以降の市場投入を計画している次期コンパクト車のドアトリムなど。日産は同モデルの欧州市場向けの生産をRenaultの仏Flins工場で行うことを決めている。協業先はフランスの内装部品メーカー、Eurostyle Systems。フランスに開発・生産拠点を持つほか、スペインや東欧に工場を展開している。フランスでの協業を機に、Eurostyle Systemsが拠点を持たない地域では河西工業が供給を担うといったビジネスも検討していく。(2015年5月27日付日刊自動車新聞より)

受注


-独Daimlerからトランクの内装部品を初めて受注した。Daimlerがメキシコで生産する計画の新型上級コンパクト車向けになるとみられ、2019年に供給を開始する。河西工業の売上高に占めるボリュームは大きくないとみられるものの、Daimlerとの初の取引を機に将来の採用拡大につなげたい意向。今後、Daimlerへの提案活動を強化し、主力のドアトリムに加え、力を入れている天井部品の採用拡大を目指す。Daimlerは日産自動車と次世代プレミアムコンパクト車を共同開発し、メキシコ中部のアグアスカリエンテスに建設している両社の合弁工場で複数モデルを生産する計画。同社はメキシコ現地の工場でトランク部品を生産し、Daimlerに供給する。共同開発モデルの日産車には、河西工業はさまざまな内装部品を受注したとみられる。一方で、これまで取引実績のなかったDaimlerへの提案活動は難航し、今回はトランク部品の供給のみにとどまった。今後、実際の部品供給を通じて品質や生産性、コスト競争力など同社のものづくり力を示すことで、受注品目や供給地域の拡大を目指す。(2016年5月17日付日刊自動車新聞より)


-英Land Roverと取引を始める。内装部品を受注したもので、今年半ばから納入を始める。同社は英国に工場を構え、日系自動車メーカーの英国工場にドアトリムなどの内装部品を納入している。現地メーカーも取引先に加えることで、欧州ビジネスの強化につなげる。受注したのはトランクの内側を覆うソフトトリム。主要車種で2015年に1車種、2016年に1車種の合計2車種で受注した。(2015年7月1日付日刊自動車新聞より)

<トヨタ>
-米国とメキシコでトヨタ自動車から内装部品を受注した。成形天井などを2019年から納入する。トヨタと直接取引するのは国内外を通じてこれが初めてとなる。米国とメキシコ新工場の両工場に納入できる生産体制を持っていることが受注につながった。トヨタから受注したのは米、メキシコで2019年に立ち上がる新型 「カローラ」 の内装部品で、サンバイザー。トヨタ向けが加わることで生産量が大きく増えるため、メキシコに成形天井を生産する新工場を建設する。既存2工場では生産能力が足りなくなることに加え、成形天井はサイズが大きく輸送費がかさむ。このため、同部品を納入しているマツダの工場からも近い場所に新たに工場用地を取得する方針だ。土地、建物、設備を合わせ20~25億円の投資を見込む。(2015年12月21日付日刊自動車新聞より)

<スバル>
-富士重工業より米国で新規車種向けの受注を獲得。2018年から生産開始予定。

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 220,000 237,992 (7.6)
営業利益 13,000 16,373 (20.6)
経常利益 12,700 16,116 (21.2)
親会社株主に帰属する当期純利益 6,800 8,543 (20.4)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-Renault/日産向けの取り組み: 新興国でのRenault車部品の受注獲得、欧州での部品供給拠点設立を検討。

-日産グループ以外への拡販: 日産向けを除く売上高の年平均成長率は19% (2012年3月期~2016年3月期)。顧客ポートフォリオを充実させ、安定した収益構成を目指す。

-天井ビジネスをドアに次ぐ第2の柱に成長させる: ヘッドライナーの売上構成比は13% (2016年3月期)。欧州地域への供給を検討。

  • メキシコ: 受注増に対応した生産能力強化。第3工場建設に向けて土地を取得済み (2016年3月期)。2018年下期からの稼働を目指し、工場建設を準備中。
  • 中国: 新規部品受注に対応し、武漢地域での新拠点設立を準備。2017年稼働開始を計画。

-河西テック (金型製作子会社) 第2工場の稼働開始 (2016年1月)。3,000トン級の金型製作能力を強化し、大型部品の受注に対応する。

-北米統括会社Kasai NAの本社新社屋: 2016年9月稼働開始予定。

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 1,339 1,211 1,128



研究開発体制

-グローバル開発拠点と連携して日本に拠点をおく先行開発部他を中心に研究開発を推進。研究開発費はすべて日本セグメントに属している。
-グローバル開発拠点: 米国 (Michigan, Dublin, Tennessee)、メキシコ、欧州、中国 (広州)、タイ
-本社新技術棟: 2017年7月稼働開始予定

研究開発活動

高品質
-スポーツモデルのドアトリム部品でクロスステッチを量産化。2016年人とくるまのテクノロジー展で、デザインステッチを初採用したスバル 「WRX S4 SporVita」 のドアトリムを出展。

軽量化
-無塗装でも高品質な外観を実現できる発泡成形品、軽量発泡射出成形ドアトリム
-軽量化と耐傷性を両立したナノコンポジット樹脂製品
-リサイクル材を用いた高剛性薄肉プレス成形製品
-超軽量ウレタン天井

安全性
-射出成形樹脂パッドを量産車に採用: 側面衝突安全性に寄与する車室内のエネルギー吸収部品を、同社独自の設計構造とすることで、高性能を低コストの射出成形部品で実現。
-射出成形樹脂パッドの次世代高性能化: CAE (コンピュータ・シミュレーション) を側面衝突解析に駆使することで、車両適用開発の効率化と、コスト競争力に優れる製品を開発。

快適環境
-内装遮熱天井材: 自動車室内温度を最適に保つエアコンのエネルギー消費を削減する製品の量産化。
-KPM (カサイプレスモールド) 工法: 接着剤を使わずにTPO (オレフィン系熱可塑性エラストマー) 表皮とPP樹脂発泡体、PP樹脂機材を同時成形する。
-100%リサイクル材のハイパピア
-樹脂部品への植物由来樹脂 (ポリ乳酸) の適用
-リサイクル樹脂の採用や工程内リサイクルで資源の再利用を推進
-接着剤、塗料等に含まれる有機溶剤ゼロ化: 水溶性接着剤や粘着剤への変更、ホットメルト化
-塗装から樹脂基材へ着色剤の練りこみによる塗装レス化、完全塗装レスの高品質な高輝度原着メタリック射出成形技術

魅力機能
-内装イルミネーション: デジタル開発段階での光学シミュレーション技術を実用化。
-IUI (インテリアユーザーインターフェース) コンセプト: 内装がクルマと乗員のインターフェースになり、自動運転など次世代自動車に対応する。

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
日本 5,513 3,981 3,440
北米 4,059 5,801 6,052
欧州 839 375 1,027
アジア 2,352 4,277 2,773
合計 12,765 14,435 13,294


-2016年3月期は、モデルチェンジに伴う生産設備を中心に投資。また、日本では河西テックにおける第2工場の建設を中心に投資を実施。

-重要な設備の新設、改修に係る、2017年3月期の投資予定額は16,710百万円。

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
会社名
事業所名/
所在地
設備の内容 投資予定額
(百万円)
着手 完了
予定日
本社工場
(神奈川県寒川町)
事務所建物、自動車内装部品組立設備、金型、治工具等 4,577 2016年
04月
2017年
06月
三重河西 (株)
(三重県津市)
自動車内装部品組立設備、治工具等 78 2016年
04月
2017年
03月
群馬河西 (株)
(群馬県明和町)
自動車内装部品組立設備、治工具等 856 2016年
04月
2017年
03月
九州河西 (株)
(大分県宇佐市)
自動車内装部品組立設備、治工具等 313 2016年
04月
2017年
03月
河西テック (株)
(静岡県富士宮市)
自動車内装部品用金型設備 28 2016年
04月
2017年
03月
M-TEK Inc.
(米国テネシー州)
事務所建物、自動車内装部品組立設備、治工具等 5,760 2016年
04月
2017年
03月
Kasai Mexicana S.A. de C. V.
(メキシコ グァナファト州)
自動車内装部品組立設備、治工具等 2,141 2016年
04月
2017年
03月
R-TEK Ltd.
(英国タイン&ウェア郡)
自動車内装部品組立設備、治工具等 598 2016年
04月
2017年
03月
広州河西汽車内飾件 (有)
[Guangzhou Kasai Automotive Interior Trim Parts Co., Ltd.]
(中国広州市)
自動車内装部品組立設備、治工具等 846 2016年
04月
2017年
03月
Kasai Teck See Co., Ltd.
(タイ アユタヤ県)
自動車内装部品組立設備、治工具等 479 2016年
04月
2017年
03月
PT. Kasai Teck See Indonesia
(インドネシア 西ジャワ州)
自動車内装部品組立設備、治工具等 375 2016年
04月
2017年
03月
Kasai India (Chennai) Private Ltd.
(インド タミルナードゥ州)
自動車内装部品組立設備、治工具等 126 2016年
04月
2017年
03月



長期経営計画

-2014年、長期経営ビジョン 「KR10 (Kasai Realize 10)」を策定。対象期間は2014年から2023年。テーマとして 「グローバルで統一したモノづくりにより、優秀な品質を提供する」、「ONLY1技術を生み出し、No.1技術に進化させる」、「自動車業を主軸に新規ビジネスに挑戦する」 を掲げており、最終年度の数値目標は以下の通り:

  • 売上高:3,000億円
  • 営業利益率:8%
  • 内装トリムのグローバルシェア:10%

-連結売上高に占める日産自動車向けの割合を、2019年度をめどに6割弱に引き下げる。日産ビジネスの継続的な獲得に加え、ホンダや日系他メーカー、海外メーカーとの取引を増やすことにより、日産への依存度を下げる。2023年度の長期ビジョンでは、売上高を2013年度比67%増の3千億円に引き上げる目標を掲げている。取引先を広げることによって、経営を安定化させながら事業規模の拡大を目指す。長期ビジョンに向け、主力のドアトリムに加え、成形天井、サンバイザー、樹脂部品などの販売を強化していくほか、納入先の分散化を進める。日産に次ぐ取引先であるホンダ向けの割合を現状の2割から2019年度に25%程度に高めるほか、日系他メーカーや、海外メーカーとの取引を拡大する。(2014年11月29日付日刊自動車新聞より)