日本板硝子 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 552,223 577,069 (4.3) -厳しい経済見通しを受けた消費者の買い控え等により軟調に推移。
営業利益 4,386 22,867 (80.8)
当期純利益 (1,749) 15,815 -
自動車用ガラス事業
売上高 251,229 264,031 (4.8) -
営業利益 5,123 11,937 (57.1) -

事業概況

自動車用ガラス事業
-南米等の新興市場の成長が継続するとの考えのもと、2012年3月期において、同社はブラジル、メキシコ、ポーランド等の新興市場における生産能力の拡大を実施。

-2012年3月期において、エネルギーおよび原材料等の投入コストの高騰に直面。自動車用ガラスの供給契約の関係上、短期的にはこれらのコスト上昇分の多くを顧客に転嫁するのは困難であるが、長期的には供給契約の見直しの中で、販売価格の引き上げを通じてコスト上昇の影響を緩和する方針。

<欧州>
-事業売上高の47%を占める。
-新車向け(OE)部門では、輸出自動車向けの需要改善の効果が域内販売向けの需要減少の影響により相殺された結果、売上高が前年比でわずかに減少。
-営業利益は、投入コストの増加、新設備の稼動開始コストの発生ならびに東日本大震災に伴う欧州自動車メーカーの部品調達への影響によるガラス需要変動の増大が影響し、減益となった。

<日本>
-事業売上高の18%を占める。
-売上高は前年度並みであったが、営業利益は前年度より増加。
-需要は2011年3月の東日本大震災を受けて、第2四半期になって自動車メーカーの生産が正常水準に戻ったため回復。以降、第4四半期においても好調な市場環境のもとで改善が継続した。

<北米>
-事業売上高の20%を占める。
-現地通貨ベースの売上高は前年度並みに推移したが、営業利益は減少。
-北米市場における顧客として日系自動車メーカーへの依存が比較的高い。これらの日系メーカーの中には東日本大震災およびタイの洪水により、部品の供給不足の影響を受け、生産水準の抑制を余儀なくされたことが影響。

<その他の地域>
-南米において数量が前年度に比べて増加したため、売上高は米ドル換算ベースで増加。営業利益は、需要変動の増大、投入コストの上昇ならびにブラジルの新設備の稼動開始に伴う費用の影響を受けた。

受注

-世界初の自動車用切替調光ガラス「Sundym Select」が、Mercedes-Benz 「SLK Class」および「SL Coupe」に採用された。

新会社

-ロシアでのフロートガラス事業拡大に向け、同社の持分法適用会社Pilkington Glass LLCがSTiSグループと合併すると発表。Pilkington Glass LLCは、モスクワ近郊のRamenskoyeでフロートライン1基を操業している。STiSグループは、ロシアで展開している複層ガラス加工メーカーであり、合併によって新会社は、フロートガラスから川下加工事業までを手がける総合板ガラスメーカーとなる。また、新会社に対しては、Russian Corporation of Nanotechnologies (RUSNANO)および欧州復興開発銀行(EBRD)が投資を実施する。この投資により、Ramenskoyeにフロートライン1基増設、およびLow-Eガラスコーティング装置の新設が可能となる。(2011年12月6日付プレスリリースより)

リストラクチュアリング

-生産能力および生産量を顧客需要に合わせるため、以下の通り削減。 
  • 英国の3基のフロートラインのうち1基を休止する計画を発表。同国St Helensに位置するフロートラインUK6とガラス切断加工ラインを、2012年4月までに休止する。これにより、両ラインあわせて従業員150名を削減する見込み。
  • フィンランド、ドイツおよびイタリアの自動車用ガラス生産ラインの一部を閉鎖。
-全世界従業員の10%削減を目標としている。

2013年3月期の見通し

(単位:億円)
  2013年3月期
(見通し)
2012年3月期
(実績)
増減
売上高 5,600 5,522 78
営業利益 (40) 44 (84)
当期純利益 (100) (17) (83)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 8,000 10,700 12,100
自動車用ガラス事業 3,300 4,000 4,300

研究開発体制

-兵庫県伊丹市の技術研究所で、自動車用ガラスの研究を行う。
-同社グループの研究開発部門は2012年1月、全ての事業部門をサポートする単一のセントラル部門として再編された。これにより、各事業部門は同社グループが持つあらゆる技術へのアクセスが可能となり重複が削除されること、また研究開発部門内で統一されたプロセスが確立されるなど、研究開発活動の効率および効果の改善が図られる。

研究開発活動

自動車用ガラス事業
-太陽からの紫外線を99.9%カットするサイドガラス向けのUVカットガラスを開発。トヨタの車種に初めて採用された。
-フロントガラス製造用の最新型プレス・ベンディング炉の開発を推進。2012年中に炉の最初の設置が行われる予定。
-大量生産ラインでの全量自動欠品検出装置の開発・導入。

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 34,700 31,900 15,700
自動車用ガラス事業 18,800  16,100 12,700

自動車用ガラス事業

-主にブラジルおよびポーランドにおける生産拡大のための投資、ならびに日本でのフロート窯の定期修繕に投資。

海外投資

<アルゼンチン>
-同社とSaint Gobainは、アルゼンチンにフロートガラス窯を新設すると発表。ブエノスアイレス州Exaltacion de la Cruzに建設予定で、両社による合弁会社Vidrieria Argentina S.A (VASA)が運営する。VASAにとっては、アルゼンチンで2番目のフロート窯となる。生産能力は800トン/日で、ウルグアイ・パラグアイ・ボリビア向けの供給も拡大していく。2014年第1四半期に生産を開始する予定。(2011年10月28日付プレスリリースより)

<ベトナム>
-ベトナムにおいて新たに2基のフロートラインの増設を計画している。1基は、薄膜系太陽電池基板ガラス生産専用のオンラインコーティング装置設置窯で、もう1基はタッチパネル基板用での使用が増加中の超薄板ガラス(UFF)専用生産窯。投資額はあわせて約3億2千万米ドル(約260億円)。両ラインとも、稼動時期は2013年内を予定している。完成時点の新規雇用は、2窯合計で約400名を見込む。設置場所は、同社の100%子会社Vietnam Glass Industries Ltd. (VGI)内。今回の投資により、ソーラー用オンライン窯は日本1、北米2、欧州2、ベトナム2の合計7窯体制となる。また、超薄板(UFF)窯は日本1、ベトナム1の2窯体制となる計画。(2011年5月23日付プレスリリースより)

<ペルー>
-ペルーに自動車用ガラスなどを生産する新工場を開設すると発表した。投資額は2億ドル程度で、2014年中の生産開始を目指す。同社グループと仏サンゴバンの合弁企業などが出資する連結子会社のヴィドリオス・リルケン社(チリ)がペルーの首都リマに建設する。新工場の設備は日産800トンのガラス製造窯1基を計画しており、自動車用のほか建築用ガラスも生産する。(2011年5月18日付日刊自動車新聞より)

主な設備の新設

(2012年3月31日現在)
所在地 設備の内容 投資予定
金額
(百万円)
着手 完了
Pilkington Brazil Ltda ブラジル 加工ガラス製造設備 2,500 2011年1月 2013年3月期第1四半期
Pilkington Automotive Poland SP. Zo. o. ポーランド 加工ガラス製造設備 5,900 2011年9月 2013年3月期第4四半期
Pilkington North America, Inc. 米国 加工ガラス製造設備 2,383 2011年8月 2013年1月