日立金属 (株) 2018年3月期の動向

業績

(IFRS、単位:百万円)

2018年
3月期
2017年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 988,303 910,486 8.5 -
営業利益 46,326 68,267 (32.1)
税引前利益 46,985 66,016 (28.8) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 42,210 50,593 (16.6) -

-2015年3月期から国際会計基準 (IFRS) を適用。

要因 (自動車関連分野)
1)全社
-売上高は、主力製品を中心に需要が増加したことに加え、原材料価格上昇や為替が円安になった影響により前年同期比8.5%増の988,303百万円。
ー営業利益は売上収益の増加に伴う利益の増加や原価低減活動の効果等があったものの耐熱鋳造部品・アルミホイールの収益性低下や原材料価格上昇に伴うコストの増加により減少。

2) 特殊鋼製品
-自動車関連の環境親和製品が増加。

3) 磁性材料
-希土類磁石では、電動パワーステアリング及びハイブリッド自動車等向けの電装部品の需要が増加。フェライト磁石は、自動車用電装部品が好調。

4) 素形材製品
-自動車用鋳物では北米のピックアップトラックや乗用車向けが減少したが、商用車や農業機械、建設機械向けの需要が増加。また、アジアでも自動車需要の伸長に伴い増加。アルミホイールは、北米の乗用車需要が減少した影響や生産性に関する課題で前年同期を下回った。

5)電線材料
ー自動車用電装部品や各種センサー、電動パーキングブレーキ及びハイブリッド車向けのハーネスが伸長。ブレーキホースも堅調。

電動化対応

ー2018年5月、レアアース材料メーカーの三徳を完全子会社化。ハイブリッド車や電気自動車の駆動モーター、電装モーター向けのネオジム磁石合金をこれまで佐賀工場で一部製造していたが、買収後、全量をグループで内製化し、磁性材料の生産性向上とコスト競争力の強化を図る。また、三徳が手掛けるレアメタルのリサイクル事業も取り込むことで、リサイクル材を原材料として活用する。
・2017年7月付で電線材料カンパニーの傘下にある子会社のSHカッパーを特殊鋼カンパニーに移管するとともに、2018年4月にはSHカッパーをクラッド材事業を手がける日立金属ネオマテリアルと統合。自動車メーカーが電気自動車の開発を強化していることからリチウムイオン電池に使うクラッド材の需要拡大がみこまれるため、同事業を強化する狙い。

2019年3月期の見通し

(単位:百万円)
2019年3月期
(予測)
2018年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上収益 1,020,000 988,303 3.2
調整後営業利益 73,000 65,130 12.1
税引前利益 64,500 46,985 37.2
親会社の所有者に帰属する当期利益 48,000 42,210 13.7


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
合計 17,749 17,971 19,121

研究開発体制

ー2018年4月、埼玉県熊谷市にコーポレート研究所「GRIT」の新研究棟を竣工。
「GRIT」は各カンパニーから開発・研究員を集めるとともに、先端材料技術とプロセス技術を融合した研究開発へ推進する体制を整える。さらに海外にも人材を配置するとともに、株式会社日立製作所や国内外の研究機関との連携を強化し、グローバルなイノベーションを推進していくことで、新事業創生と早期事業化をめざす。(2018年3月31日報告書より)

-同社は、軟磁性部材事業の研究開発(R&D)体制を強化すると発表した。山崎製造部にある同部材に関連するR&D機能を量産拠点である日立フェライト電子に移管する。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などのパワーコンディショナー向け高性能軟磁性材の需要が増えていることから、開発と製造を同じ場所にして連携を強化する。軟磁性部材の生産を手掛ける日立フェライト電子に同部材のR&D機能を移す。約14億円の費用を投じて、同拠点内に新設備を増強する。(2017年4月14日付日刊自動車新聞より)

研究開発拠点

拠点名 所在地
グローバル技術革新センター 埼玉県熊谷市
冶金研究所 島根県安来市
磁性材料研究所 埼玉県熊谷市
素材研究所 栃木県真岡市
桑名工場開発センター 三重県桑名市
電線材料研究所 茨城県日立市

技術供与契約

(2018年3月31日現在)
相手方
(国名)
契約品目 契約内容 期間
安泰科技股份有限公司
[Advanced Technology & Materials Co., Ltd.]
(中国)
微細結晶軟磁性合金 微細結晶軟磁性合金に関する非独占的実施権の許諾 2005年10月1日から
契約対象特許の終了日まで

製品・材料開発

-特殊鋼製品 : 金型・工具、産業機器、航空機・エネルギー、エレクトロニクス等の分野に向けた高級特殊鋼、アモルファス金属材料・ナノ結晶軟磁性材料、各種圧延用ロール等の開発。

-磁性材料 : 高性能磁石、情報端末用高周波部品部材、その他各種磁石及びセラミック製品やそれらの応用製品等の開発。
自動車用センサーのアンテナ用コア (磁心) 材料で、外部応力や温度変化に対する信頼性 (ロバスト性) を高めたニッケル亜鉛 (Ni-Zn) 系軟質フェライト材料「ND57S」を開発したと発表した。キーレスエントリーやタイヤ空気圧センサー (TPMS) など、使用環境が厳しいシステムの小型化、高性能化につながることを訴求して需要を開拓する。新材料の投入で2018年に軟質磁性材料の売上高を現状の3割伸ばす計画。(2018年1月26日付日刊自動車新聞より)

-素形材製品 : 自動車用高級鋳物製品と輸送機器向け鋳鉄製品、排気系耐熱鋳鋼部品、アルミホイール、その他アルミニウム部品、自動車用鋳造部品と、管継手・バルブその他の配管機器の開発。

-電線材料 : 産業用・車輌用・通信用・機器用・自動車用及び医療用等の各種電線及び巻線に関連する材料、製造プロセス技術と接続技術、自動車用電装部品・ホース、工業用ゴム等の開発。

ー同社は、電気自動車 (EV) やハイブリッド車 (HV) のパワーモジュールの小型化、コスト削減につながる「高熱伝導窒化ケイ素基板」を開発したと発表した。熱伝導率の向上と耐久性を両立して、窒化アルミ基板などの従来の基板に対し4~5割薄く設計可能とし、冷却機構を小型化できるようにした。量産開始は2019年の予定。同社は、今後も窒化ケイ素基板の新製品投入や生産能力増強に取り組み、同分野の売上高を25年度に16年度比5倍に拡大することを目指す。(2017年11月22日付日刊自動車新聞より)

-同社は、自動車用電子機器の部品で、ノイズ抑制効果と耐温度特性を高めた新製品「FT-3K10Q」を開発したと発表した。コモンモードチョークコイルというノイズフィルターの磁心 (コア) で、ナノ結晶軟質磁性材料「ファイン・メット」を活用してインピーダンス特性などを改善、性能と信頼性の向上を図った。電気自動車の車載充電器の小型化につながることなどを訴求し、新規受注の獲得を目指す。タイ拠点で生産する。サンプル出荷は2018年1月、量産が同年4月の予定。(2017年10月31日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 91,786 63,843 59,602

-2018年3月期の主な設備投資:

ー電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の電源系回路などに使用されるナノ結晶軟磁性材料「ファインメット」の生産能力を、2018年度末までに現在の3倍に増強すると発表した。回路の高機能化で課題となっていた損失低減やノイズ対策に効果的な特性を持つ材料で、EV、HV向けに需要拡大が見込まれるため、増産体制を整える。メトグラス安来工場(島根県安来市)とタイのヒタチ・メタルズ・タイランドで増産する。投資額、生産規模は非公表。(2017年11月27日付日刊自動車新聞より)

ー自動車の熱交換器や電池の電極、内部リード、集電箔など幅広い分野で使用されるクラッド材の生産能力を増強すると発表した。子会社のSHカッパープロダクツにクラッド材を生産するラインを導入する。投資額は約75億円。クラッド材は、異なる金属を接合させることで、単一材料では得られない特性を持たせる複合材料で、自動車の熱交換器などで採用されている。今回、クラッド材の需要拡大に対応するため、SHカッパーにクラッド材を素材から加工まで一貫製造するラインを新設する。これによって2020年度までにクラッド材事業の売り上げ規模を16年度比3倍に増やす計画。(2017年8月7日付日刊自動車新聞より)

ー日本、中国でステンレス鋼ピストンリング材の供給体制を強化すると発表した。安来工場 (島根県安来市) と中国・江蘇省の日立金属 (蘇州) 科技に独自技術を採り入れた熱処理炉と周辺設備を導入する。設備投資額は約25億円。蘇州の拠点が2017年度下期、安来工場が18年度下期にそれぞれ新設備を稼働する予定。(2017年6月6日付日刊自動車新聞より)

ー子会社の日立メタルプレシジョンが精密鋳造(ロストワックス法)タービンホイールの増産投資を30 億円超の規模で行うと発表した。日立メタルプレシジョンの安来事務所の工場建屋を拡張するとともに製造ラインや加工設備を増設し、2020年度までに生産能力を2016年と比較して5割増強する。(2017424日付プレスリリースより)

2019年3月期の設備投資額は94,000百万円を計画