日立金属 (株) 2017年3月期の動向

業績

(IFRS、単位:百万円)

2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 910,486 1,017,584 (10.5) -
営業利益 68,267 99,954 (31.7)
税引前利益 66,016 96,233 (31.4) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 50,593 69,056 (26.7) -
高級金属製品
売上収益 234,621 256,343 (8.5)
営業利益 21,277 53,070 (60.0) 2)
磁性材料
売上収益 99,754 105,257 (5.2) -
営業利益 9,301 7,027 32.4 3)
高級機能部品
売上収益 333,506 365,112 (8.7) -
営業利益 15,920 23,608 (32.6) 4)
電線材料*
売上収益 241,219 288,216 (16.3) -
営業利益 20,953 15,979 31.1 5)

-2015年3月期から国際会計基準 (IFRS) を適用。

要因 (自動車関連分野)
1)全社営業利益
-売上総利益の減少に加え、前連結会計年度において、日立ツール株式会社(現 三菱日立ツール株式会社)の発行済株式総数の51%に相当する株式を三菱マテリアル株式会社に2015年4月1日付で譲渡したこと等により、事業再編等利益30,232百万円を計上したことによる。

2) 高級金属製品
-売上収益の減少の影響のほか、前連結会計年度での日立ツール株式会社(現 三菱日立ツール株式会社)の株式を譲渡したことに伴う事業再編等利益25,931百万円を計上したことによる。

3) 磁性材料
-希土類磁石は、電動パワーステアリングおよびハイブリッド自動車向けなどの自動車用電装部品の需要が堅調に推移した。
-フェライト磁石は、自動車用電装部品および家電用部品の需要が国内、海外ともに堅調に推移した。

4) 高級機能部品
-自動車用鋳物について、北米において、ピックアップトラック向けは高水準を維持したが、新興国経済の減速や穀物・原価価格が低調に推移した影響等受け、農業機械・建設機械向けの需要が減少したため、全体として前年同期と比較し減少したほか、為替の円高基調となった影響により前年同期を下回りした。

5) 電線材料
-自動車用電装部品、ブレーキホースとも堅調に推移した。

国内事業動向

-同社は、素形材の機械 (切削) 加工を事業とするグループ会社、真岡テクノクスとオートテックを合併して「日立金属アドバンストマシニング」を設立したと発表した。新会社は今後、素形材の機械 (切削) 加工事業において日立金属グループの中核となり、将来的には鋳鉄以外の素形材の加工事業も視野に入れる。資本金は8,000万円で日立金属が100%出資する。従業員数は約100名。 (2017年3月31日付プレスリリースより)

-同社は、連結子会社であるセイタンの全発行済株式を、シンニッタンに譲渡することで合意したと発表した。セイタンは自動車用鍛造部品の製造・販売を行っており、2015年度の売上高は3,757百万円。株式譲渡は2017年1月11日に実行される予定。(2016年11月14日付プレスリリースより)

-同社は、熊谷磁材工場(埼玉県熊谷市)にネオジム磁石とフェライト磁石の革新的生産ラインを導入すると発表した。ハイブリッド車や電気自動車の駆動モーター、電装モーター向けの旺盛な需要に対応する。新しい設備は、2018年度内の稼働を予定している。熊谷磁材工場に約180億円を投じて、建屋を新設し、ネオジム磁石とフェライト磁石の革新的生産ラインを導入する。高効率の製造工程やIoT(モノのインターネット)の採用で、生産性の向上を図る。(2016年10月19日付日刊自動車新聞より)

-同社は、過給器付のガソリン車向けにエンジン用耐熱鋳鋼の生産能力を6割増強すると発表した。九州工場(福岡県苅田町)の鋳造ラインや加工設備を増強する。自動車の低燃費化を背景に、グローバルでの普及が進むダウンサイジングターボの需要に対応する。2016年後半をめどに、鋳造設備や砂型工程の合理化を図る。生産能力は現在の月産750トンから同1200トンに増える見通し。同社の耐熱鋳鋼「ハーキュナイト」は、過給器を構成するタービンハウジングや集気用のエキゾーストマニホールドなどに使用されている。耐熱変形性や耐熱き裂性などに強みを持つ。(2016年5月13日付日刊自動車新聞より)

-同社は、ガソリンターボ車向けのエンジン用耐熱鋳鋼「ハーキュナイト」の需要拡大に対応するため、九州工場に生産能力増強に向けた投資を行うと発表した。鋳造ラインや加工設備を増強し、「ハーキュナイト」の生産能力を現在の月産750トンから6割増の月産1,200トンに引き上げる計画。(2016年4月25日付プレスリリースより)

海外事業動向

-同社と北京中科三環高技術股份 [Beijing Zhong Ke San Huan Hi-Tech] は、中国におけるネオジム磁石の合弁会社「日立金属三環磁材 (南通) 有限公司」の設立手続きを完了したと発表した。新会社の資本金は4.5億元 (約68.8億円) で、出資比率は日立金属が51%、中科三環が49%。2017年度より年産能力1,000トン規模で量産を開始し、その後設備増強を継続しながら生産能力を年間2,000トンまで引き上げる計画。2018年度の売上高は100億円程度を見込んでいる。(2016年9月2日付プレスリリースより)

-同社は、中国子会社の宝鋼日立金属軋輥 (南通) [Baosteel Hitachi Rolls (Nantong)] が2016年9月1日で生産を打ち切ると発表した。宝鋼日立金属は2006年に設立され、熱間圧延用ロールの製造・販売を行ってきた。しかし、当初想定したほどハイスロール市場が拡大しなかったことや今後も全世界的な鉄鋼メーカーの供給過剰の状況が長期化すると見込まれることから、生産打ち切りが決定した。2015年度の売上高は約139百万元 (26億円)。今後、合弁相手の宝鋼工程技術集団と宝鋼日立金属の解散に向けた手続きを開始する。(2016年8月31日付プレスリリースより)

-同社は、中国で設立するネオジム磁石の合弁会社「金属三環磁材 (南通)」に関して、設立予定が2016年7月に変更になったと発表した。これにより、量産開始は2017年3月となる見込み。この合弁会社の設立については2015年6月に発表済み。新会社への出資比率は日立金属が51%、北京中科三環高技術股份が49%となる。(2016年6月9日付プレスリリースより)

-同社は、4月1日付で米国の自動車用鋳物子会社の2社を合併したと発表した。関連事業の経営を一本化することで、生産体制を効率化する。同社では、今回の合併を「グローバル市場での成長に向けた重要なステップの一つ」としている。自動車用鋳鉄鋳物を製造するワウパカ・ファウンドリー(WFI、ウイスコンシン州)がヒタチ・メタル・オートモーティブ・コンポーネンツ・USA(HMAC、ペンシルバニア州)を吸収合併した。WFIは2014年11月に日立金属グループが買収して経営権を取得した現地大手の鋳物メーカー。15年4月からWFIの幹部がHMACの役員を兼務するなど、連携を強化していた。(2016年4月8日付日刊自動車新聞より)

2018年3月期の見通し

(単位:百万円)
2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上収益 950,000 910,486 4.3
調整後営業利益 80,000 65,983 21.2
税引前利益 63,000 66,016 (4.6)
親会社の所有者に帰属する当期利益 45,000 50,593 (11.1)


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

2018年度中期経営計画

-同社グループは目標とする経営指数として、最終年度(2019年3月期)の業績計画を以下の様に設定している。

売上利益: 1兆円
調整後営業利益:1,000億円
EBIT:910億円
親会社株主に帰属する当期利益: 610億円
ROE: 10%超

*想定為替レ―ト 1$=110円
 (2017年4月28日公表)

-本中期経営計画において「勝てる事業体へ [変革]、そして新しい目標に [挑戦]をキーワードに、以下のアクションプランを実行していく。

1) 成長戦略の立案と実行を加速
2) 筋肉質な事業構造・効率的な事業運営
3) 長期的な持続可能な経営基盤の確立

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
高級金属製品 5,210 5,235 5,903
磁性材料 2,523 2,622 2.861
高級機能部品 2,731 2,211 2,516
電線材料 7,507 9,053 9,623
合計 17,971 19,121 20,903

研究開発体制

-同社の研究開発体制は以下の通り:

  • ディビジョンラボ制を導入しており、各カンパニーはそれぞれの事業戦略に沿って、各カンパニーの研究開発部門で開発を推進している。
  • 次世代の主力となる新製品・新技術や基盤技術は、株式会社日立製作所の各研究所と連携して開発を実施している。

将来の新製品に繋がる新材料・新技術シーズの発掘には、海外を含めた大学等の社外機関と共同開発を行なっている。

-同社は、2017年4月1日付で新コーポレート研究所「グローバル技術革新センター (Global Research & Innovative Technology center (GRIT グリット) )」を設立すると発表した。2018年度中期経営計画において、持続的成長と社会貢献に資する中長期の先端材料研究開発テーマを推進する為に設立する。 (2017年3月30日付プレスリリースより)

-同社は、山崎製造部 (大阪府三島郡) 内の軟磁性部材に関する研究開発機能を、日立フェライト電子に移設するとともに、研究開発機能を増強すると発表した。軟磁性部材の製造を担う日立フェライト電子に研究機能も集約することで、製造と研究開発が一体となった、顧客ニーズをとらえた技術開発を加速していく。投資金額は約14億円。 (2017年3月15日付プレスリリースより)

研究開発拠点

拠点名 所在地
生産システム研究所 埼玉県熊谷市
冶金研究所 島根県安来市
磁性材料研究所 大阪府三島郡
素材研究所 栃木県真岡市
電線材料研究所 茨城県日立市

技術供与契約

(2017年3月31日現在)
相手方
(国名)
契約品目 契約内容 期間
安泰科技股份有限公司
[Advanced Technology & Materials Co., Ltd.]
(中国)
微細結晶軟磁性合金 微細結晶軟磁性合金に関する非独占的実施権の許諾 2005年10月1日から
契約対象特許の終了日まで

製品・材料開発

-高級金属製品 : 金型・工具、産業機器、航空機・エネルギー、エレクトロニクス等の分野に向けた高級特殊鋼、アモルファス金属材料・ナノ結晶軟磁性材料、各種圧延用ロール、構造用セラミックス部材等の開発。

-磁性材料 : 高性能磁石、情報端末用高周波部品部材、軟磁性材料の応用製品等の開発。

-高級機能部品 : 自動車用高級鋳物製品とその製造技術・設計評価システム、管継手・バルブその他の配管用部材及び工法等周辺技術を含めた配管トータルシステム等の開発。

-電線材料 : 産業用・車輌用・通信用・機器用・自動車用等の各種電線及び巻線に関連する電線製造技術と接続技術、自動車用電装部品・ホース、工業用ゴム、情報ネットワーク機器、放送/携帯電話基地局用アンテナ等の開発。

-日立金属ネオマテリアルは、高容量リチウムイオン電池(LiB)向けクラッド集電箔を開発したと発表した。従来の電解銅箔や圧延銅箔に比べて引張強度が高く、負極活物質の合金化に対応できるのが特徴。既に公的研究機関や電池メーカーから評価を得ており、2019年に量産を開始する予定。(2017年2月10日付日刊自動車新聞より)

-同社は11日、広い温度範囲に対応する車載用ソフトフェライトコア材料を開発したと発表した。自動車の電装機器に用いるトランスやインダクターなどの電子部品の高効率化や信頼性向上、小型・軽量化に寄与する。すでに量産準備を整えており、早期の受注獲得を目指す。新開発「ML29D」は車載用途を考慮し、広い温度範囲下での低損失特性を実現したマンガン-亜鉛系のフェライト材料。独自の粉末配合技術と粉末加工技術、熱処理技術などにより、セ氏140度の高温域でも従来材料に比べて磁心損失を大幅に抑えることができる。(2016年4月12日付日刊自動車新聞より)

-同社は、高周波特性に優れた新しいソフトフェライトコア材料を開発したと発表した。高周波領域での磁心損失を低減し、トランスやインダクターなどの動作の安定化を図ることができる。車載向け通信機器などに搭載する部品の小型・軽量化や省エネ化に貢献する高機能材料として拡販を目指す。新開発「ML91S」は、1~5メガヘルツでの低磁心損失化に有利なマンガン-亜鉛系のフェライト材料。独自の粉末制御と熱処理技術によって、従来のニッケル-亜鉛系フェライト材料よりも飽和磁束密度を高め、高周波領域で低磁心損失化できる。実使用での高温環境に近いセ氏80~100度での磁心損失も抑え、発熱量の低減と省電力化を両立することが可能としている。(2016年4月7日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 63,843 59,602 51,474
-高級金属製品 17,812 23,160 18,724
-磁性材料 13,659 6,795 10,209
-高級機能部品 22,575 16,819 12,576
-電線材料 7,212 11,524 9,094

-2017年3月期の主な設備投資:

事業部門 投資目的・内容
高級金属製品 国内における生産体制の増強及び合理化と高付加価値製品の生産能力増強
磁性材料 海外における磁石の生産能力増強と希土類磁石の海外拠点整備
高級機能部品 国内における生産体制増強と海外における合理化
電線材料 国内における大型設備の更新合理化と海外における新製品生産体制構築

設備の新設計画

(2017年3月31日現在)
事業セグメント 予定金額
(百万円)
投資目的・内容
全社 93,000 -
-特殊鋼製品 22,500 国内工場における生産能力増強と高付加価値製品の生産体制構築
-磁性材料 19,000 国内工場における磁石の生産体制増強
-素形材製品 25,500 国内工場の生産体制増強及び海外工場における合理化投資
-電線材料 10,000 国内における大型設備の更新合理化と海外における生産能力増強

*2017年4月1日の会社組織変更で社内カンパニーの名称に伴い、セグメントの名称を「高級金属製品」から「特殊製品」に、「高級機能部品」から「素形材製品」に変更した。