日立金属 (株) 2016年3月期の動向

業績

(IFRS、単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 1,017,584 1,004,373 1.3 -Waupaca Foundry, Inc.の連結子会社化等による影響
営業利益 99,954 84,407 18.4 1)
税引前利益 96,233 86,391 11.4 -
親会社の所有者に帰属する当期利益 69,056 70,569 (2.1) -
高級金属製品
売上収益 241,678 257,396 (6.1) 2)
営業利益 53,343 34,661 53.9 -
磁性材料
売上収益 119,922 135,400 (11.4) 3)
営業利益 9,574 11,492 (16.7) -
高級機能部品
売上収益 365,112 282,018 29.5 4)
営業利益 25,479 28,074 (9.2) -
電線材料*
売上収益 288,216 327,595 (12.0) 5)
営業利益 17,682 19,845 (10.9) -

*2013年7月、日立電線を合併し、同セグメントを新設。2014年3月期の第2四半期より計上されている。
-2015年3月期から国際会計基準 (IFRS) を適用。

要因 (自動車関連分野)
1)営業利益
-その他の収益として、日立ツール株式会社(現 三菱日立ツール株式会社)の発行済株式総数の51%に相当する株式を三菱マテリアル株式会社に2015年4月1日付で譲渡したこと等により、事業再編等利益30,232百万円を計上した。

2) 高級金属製品
-国内向けは自動車向け金型材が堅調に推移した。
-海外向けのその他産業部材は堅調に推移したが、自動車関連材料の一部で調整が継続した。

3) 磁性材料
-希土類磁石は、電動パワーステアリングおよびハイブリッド自動車向けなどの自動車用電装部品の需要が堅調に推移した。
-フェライト磁石は、自動車用電装部品および家電用部品の需要が国内、海外ともに堅調に推移した。

4) 高級機能部品
-2014年11月から Waupaca Foundry, Inc. の業績を反映し、自動車用鋳物全体として大幅な増加となった。
-耐熱鋳造部品は、年度前半に一時的な需要調整があったが、年度後半から欧州市場に加えて北米市場向けも増加し、前年同期比で増加した。
-アルミホイールは、米国を中心に好調に推移し、前年同期比で増加した。

5) 電線材料
-北米を中心に自動車の旺盛な需要が続き、電装部品、ブレーキホースとも好調に推移した。

中国マグネット事業の合弁

-2015年6月、中国でネオジム磁石の製造・販売を行う合弁会社を設立することで同国の磁石関連メーカーと合意したと発表した。現地での需要拡大が見込まれるハイブリッド車や産業用モーター向けなどの磁性材料を供給する。2017年度には、新会社で100億円の売上高を目指す。2015年12月に中国・江蘇省に北京中科三環高技術股份有限公司 [Beijing Zhong Ke San Huan Hi-Tech Co., Ltd.] との合弁会社 「日立金属三環磁材 (南通) 」 を設立する。資本金は4億5千万元 (約90億円)で、出資比率は日立金属が51%、中科三環が49%。16年12月に年間1千トン規模の製造設備でネオジム磁石の一貫生産を開始し、将来的には同2千トンまで生産能力を増強する。中科三環は中国におけるネオジム磁石のトップメーカーで、日立金属と古くからライセンス契約を締結していた。(2015年6月22日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画

-2013年8月、2015年度中期経営計画 (~2016年3月期) を発表。最終年度の売上高は8,800億円、営業利益は750億円を目標とする。
-「変革」と「発展」により、世界トップクラスの金属材料会社として持続的発展を実現。重点項目は以下の通り:
1) 新製品創出・新技術開発力の強化
2) グローバル成長戦略の強化・加速
3) 強固な経営基盤の確立

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上収益 950,000 1,017,584 (6.6)
営業利益 78,000 99,954 (22.0)
税引前利益 65,000 96,233 (32.5)
親会社の所有者に帰属する当期利益 45,000 69,056 (34.8)


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
高級金属製品 5,235 5,903 5,719
磁性材料 2,622 2,861 3,166
高級機能部品 2,211 2,516 2,709
電線材料 9,053 9,623 5,220
合計 19,121 20,903 16,814

研究開発体制

-同社の研究開発体制は以下の通り:

  • ディビジョンラボ制を導入しており、各カンパニーはそれぞれの事業戦略に沿って、各カンパニーの研究開発部門で開発を推進している。
  • 次世代の主力となる新製品・新技術や基盤技術は、株式会社日立製作所の各研究所と連携して開発を実施している。
  • 将来の新製品に繋がる新材料・新技術シーズの発掘には、海外を含めた大学等の社外機関と共同開発を行なっている。

研究開発拠点

拠点名 所在地
生産システム研究所 埼玉県熊谷市
冶金研究所 島根県安来市
磁性材料研究所 大阪府三島郡
素材研究所 栃木県真岡市
電線材料研究所 茨城県日立市

技術供与契約

(2016年3月31日現在)
相手方
(国名)
契約品目 契約内容 期間
安泰科技股份有限公司
[Advanced Technology & Materials Co., Ltd.]
(中国)
微細結晶軟磁性合金 微細結晶軟磁性合金に関する非独占的実施権の許諾 2005年10月1日から
契約対象特許の終了日まで

製品開発

-高級金属製品 : 金型・工具、産業機器、航空機・エネルギー、エレクトロニクス等の分野に向けた高級特殊鋼、アモルファス金属材料・ナノ結晶軟磁性材料、各種圧延用ロール、構造用セラミックス部材等の開発。
-磁性材料 : 高性能磁石、情報端末用高周波部品部材、軟磁性材料の応用製品等の開発。
-高級機能部品 : 自動車用高級鋳物製品とその製造技術・設計評価システム、管継手・バルブその他の配管用部材及び工法等周辺技術を含めた配管トータルシステム等の開発。
-電線材料 : 産業用・車輌用・通信用・機器用・自動車用等の各種電線及び巻線に関連する電線製造技術と接続技術、自動車用電装部品・ホース、工業用ゴム、情報ネットワーク機器、放送/携帯電話基地局用アンテナ等の開発。

セラミックパッケージ基板
-情報関連装置のデータ処理能力を10倍以上に向上するセラミックパッケージ基板を開発したと発表した。現在研究されている基板上にシリコンインターポーザーを搭載する方法よりも、低コストかつ高信頼性を実現できる。車載機器など、処理のスピード化とデータの膨大化が同時に進む分野向けでの拡販を想定している。(2015年12月19日付日刊自動車新聞より)

レアアースの使用量を抑える技術
-電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の駆動用モーターなどに使われるネオジム磁石のジスプロシウム(Dy)添加量を最小限に抑える新技術を開発した。価格が不安定なレアアースの使用量を低減することで、モーターの低コスト化につなげる。今年度から一部で量産を始めており、今後はEV、HVでの採用が増える見通しだ。同社では、ネオジム磁石の表面だけにDyを分散させる「重希土類元素拡散」に新たな技術を追加することで、耐熱性を保持したまま添加量を更に1~2%低減した新材料を実用化した。Dyの使用量削減に向けた技術開発は従来から進んでいるため、新たに低減できる量は限られるが、モーターの低コスト化には確実に貢献できるとしている。(2015年11月4日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 59,602 51,474 31,987
-高級金属製品 23,160 18,724 11,849
-磁性材料 6,795 10,209 7,297
-高級機能部品 16,819 12,576 6,380
-電線材料 11,524 9,094 5,604

-2016年3月期の主な設備投資:

事業部門 投資目的・内容
高級金属製品 国内における生産体制の増強及び合理化と高付加価値製品の生産能力増強
磁性材料 国内における磁石の生産能力増強
高級機能部品 国内における生産体制増強と海外における合理化
電線材料 国内における大型設備の更新合理化と海外における新製品生産体制構築

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
事業セグメント 予定金額
(百万円)
投資目的・内容
全社 72,000 -
-高級金属製品 18,000 国内工場における生産能力増強と高付加価値製品の生産体制構築
-磁性材料 14,300 海外工場における能力増強及び希土類磁石の海外拠点整備
-高級機能部品 21,000 国内工場の生産体制増強及び海外工場における合理化投資
-電線材料 12,000 国内における大型設備の更新合理化と海外における生産能力増強