(株) デンソー 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:億円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 31,546.3 31,314.6 0.7 -下期にタイの洪水の影響による一時的な停滞があったが、7月に震災前の水準までに回復するなど、年間の生産量が前年を上回り増収。
営業利益 1,616.8 1,891.8 (14.5) -売上増加に伴う操業度差益や合理化効果等があったが、円高による為替差益により減益。
経常利益 1,807.5 2,072.3 (12.8) -
当期純利益 893.0 1,430.3 (37.6) -
日本
売上高 16,399.6 15,482.0 5.9 -震災の影響で上期は減産であったが、下期の挽回生産により増収。
営業利益 838.7 633.9 32.3 -操業度差益、固定費削減、合理化効果が寄与。
北米
売上高 5,040.8 5,288.7 (4.7) -車両生産が増加したが、上期の震災の影響や為替差損により減収。
営業利益 87.7 253.6 (65.4) -売上減少による操業度差損や為替差損により減益。
欧州
売上高 3,732.1 3,895.8 (4.2) -輸出が好調な欧州メーカーを中心に売上が増加したが、為替差損により減収。
営業利益 63.8 109.3 (41.6) -製品構成の悪化等により減益。
豪亜
売上高 5,797.5 6,046.5 (4.1) -日系自動車メーカーの挽回生産があったが、震災やタイ洪水の影響により相殺。
営業利益 594.9 830.2 (28.3) -製品構成の悪化等により減益。

-2012年1月30日(米国時間)、米国司法省との間で、同社顧客への一部自動車部品(ボデーECUおよびヒーターコントロールパネル)の販売に関して米国独占禁止法に違反したとして、罰金78百万米ドル(約61億円)を支払うことなどに合意し、司法取引契約を締結した。同社は、米国子会社Denso International Americaに対して米国司法省が立入調査を実施した2010年2月以降、当該調査に全面的に協力してきた。なお、本件に伴い、2012年3月期第3四半期決算において、上記金額を特別損失として計上する。(2012年1月31日付プレスリリースより)

受注

-ガソリンエンジン向けEGRクーラーが、新型「Camry」と小型ハイブリッド車(HV)「Aqua」に採用された。
-現行製品に比べて4割の小型化と軽量化を図った新型ラジエーターを開発。レクサスの新型「GS」に搭載。
-小型・高出力の両面冷却タイプのインバーターが、2011年8月発売の「Camry」に搭載。
-同社として初のモータージェネレーターが「Aqua」に採用された。
-新世代ガソリン直噴システムのインジェクターや高圧ポンプ等の製品が、マツダの高効率直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」を始め、日本、米国、欧州の自動車メーカーに採用された。
-アイドルストップシステムとして、タンデムソレノイドスターターを開発し、ダイハツやJaguarを始めとする国内外の自動車メーカーに納入を開始。

国内事業

-トヨタ系部品メーカー各社は、自然災害などによる部品調達網の寸断に備え、部品や材料、完成品の在庫量を部分的に見直す方針を明らかにした。同社は「当面、半導体など電子部品を中心に在庫量を従来の1~2週間分から2カ月分に拡大する」。(2012年2月6日付日刊自動車新聞より)

-熱交換器事業の新製品としてガソリンエンジン向けEGRクーラーを実用化し、トヨタ自動車向けに供給開始したと発表した。トヨタが昨年発売した新型「Camry」と小型ハイブリッド車(HV)「Aqua」に採用された。独自の加工技術により競合製品に対して約3割の小型化を実現したことなどが評価された。従来、同分野で排気系の製品は手がけておらず、初参入を果たしたことになる。さらに複数の新規受注を獲得しており、トヨタ以外に供給することも決まった。今後も国内外のメーカーに提案し、熱交換器分野の戦略商品として育成する。(2012年1月28日付日刊自動車新聞より)

-部品メーカーの間で、トヨタ自動車の再増産に対応した要員の確保や再配置が活発化している。トヨタは国内生産を12月上旬に正常化し、改めて増産体制に移行。部品各社も陣容を手厚くする方向にある。デンソーは1月末までに期間従業員を200人増員。(2012年1月5日付日刊自動車新聞より)

-福島県にある子会社のデンソー東日本(田村市)で10月初旬から、カーエアコンの生産を開始すると発表した。西尾製作所(愛知県西尾市)から製造工程の一部を移設する。デンソーは、リーマンショックや震災の影響により相次いで、同子会社の生産開始時期を延期してきた。当初計画よりも1年9カ月程度遅れて、同社初の東日本地区におけるエアコン生産拠点が稼働する。(2011年6月30日付日刊自動車新聞より)

買収

-株式会社アイネットより3D事業部を買収することで合意したと発表。同事業部では、3次元画像の生成・解析技術を活用したソフトウェアやサービスなどを提供している。デンソーは2012年4月1日付けで同事業部を取得し、同日から「株式会社スリーディー」として事業を開始する計画。新会社の2012年における売上額は4億円の見込み。同社は今後、インストルメントクラスター、ナビゲーションシステム、ヘッドアップディスプレイなどの車載ディスプレイの開発に、アイネットの3D事業部の技術を活用していく。(2012年3月22日付プレスリリースより)

事業再編

-2012年1月1日付で組織変更を実施すると発表した。ハイブリッド車(HV)関連や電子制御系のシステムを手がける電気機器事業グループを再編。同グループ内の電機事業部とEHV事業部をパワートレイン機器事業グループに、電気制御機器部を情報安全事業グループに組み込む。これにより、事業グループを現在の5グループから4グループに集約することになる。電動化関連は電気機器事業グループで専門的に手がけてきたが、電動化技術が普及段階に入ることを想定して走行、車体制御分野などのグループに分け、連携や提案力の強化を図る。(2011年12月22日付日刊自動車新聞より)

2013年3月期の見通し

(単位:億円)
  2013年3月期
(予想)
2012年3月期
(実績)
増減 (%)
売上高 34,200 31,546 8.4
営業利益 2,050 1,607 27.6
経常利益 2,150 1,808 18.9
当期純利益 1,500 893 68.0

-地域別の売上高は、欧州が2012年3月期に対して1.1%の減収となる以外は総じて増収。その他地域で同7.4%増加し、日本、北米、豪亜は二桁成長する見込み。
-営業利益は、日本が2012年3月期に対して54.4%増、欧州が同64.6%増と大幅な復調を見込む一方、北米は同43.0%の減少となる見通し。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

2015年 (2016年3月期) 中期計画

(単位:億円)
  2016年3月期
(予想)
2012年3月期
(実績)
増減 (%)
売上高 40,000 31,546 26.8
営業利益 3,200 1,607 99.1
セグメント別売上高
日本 25,400 21,976 15.6
北米 6,600 5,121 28.9
欧州 5,200 3,872 34.3
豪亜 9,400 6,267 50.0
その他 800 577 38.6

開発動向

研究開発費

(単位:億円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
日本 2,638 2,567 -
北米 124 133 -
欧州 79 73 -
豪亜 129 117 -
その他 12 9 -
全社 2,983 2,900 2,700

-2012年3月末現在、研究開発費において海外セグメントが占める比率は約12%。今後は開発体制の整備により同比率を増加していく方針。

-同社は、2013年3月期の研究開発費を、2012年3月期(実績)と比較して3.9%増加の3,100億円と予想。

研究開発体制

-地域ごとのニーズを迅速に吸い上げ製品開発に反映するために、米国、欧州、豪亜に加え、中国、インド、ブラジルのテクニカルセンターを強化し、日本を含めた世界7地域の連携を密にした開発体制を整備。

-サイバネットシステムは、米国のアンシスが開発した汎用解析ツール「アンシス」がデンソーの構造系解析ツールの標準ソフトウエアとして採用されたと発表した。サイバネットシステムは、アンシスを国内で販売・サポートしている。アンシスは、構造・伝熱・電磁場・熱流体といった様々な物理現象、それらを組み合わせた連成問題を、目的に合わせて柔軟に解析することができるマルチフィジックス解析ツール。デンソーは、このソフトウエアを活用して日本国内と海外拠点の製品設計・開発現場での設計・解析ソフトウエアの標準化を推進し、製品の品質向上、設計・開発の効率化を図る。(2011年8月12日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-2012年3月22日から、中国・上海の同済大学と共同で車車間通信・路車間通信を活用した交通制御システムの実証実験を、中国の江蘇省太倉(Taicang)市の公道で開始する。過去数年間にわたって同社は、日本・米国・欧州でこの実証実験を行っており、中国での実験は今回が初めて。車車間通信・路車間通信を活用することで、救急車や消防車などの緊急車両は、自車の位置や進行速度などを周りの車両や路側のインフラ機器にワイヤレスで伝える。これにより、緊急車両が接近すると交差点の信号を変え、周囲の車両に車線変更指示を行うことが可能になる。今回の実証実験は、このような緊急時における優先通行の実現と衝突事故防止を目的としている。(2012年3月13日付プレスリリースより)

-中国やインド、ASEAN向けの製品開発では、地域のニーズを踏まえ、必要な機能に絞り生産コストを低減させた製品の開発を推進。

製品開発

ラジエーター
-現行製品に比べて4割の小型化と軽量化を図った新型ラジエーター「グローバル・スタンダード・ラジエーター(GSR)」を開発したと発表した。フィン形状の見直しにより放熱効率を10%向上。さらに高強度の新素材を開発し、板厚を薄くしても従来と同水準の耐久性を確保できるようにした。これにより、厚さを従来の27ミリから16ミリに低減し、軽量化も実現した。新製品はトヨタ自動車が同日発表したレクサスの新型「GS」向けに供給を開始した。今後は新技術を全製品に採用し、GSRシリーズとしてメーカー各社に提案していく。GSRは、フィンの表面上に配置して放熱促進を図るルーバーの形状を微細化。単位面積当たりのルーバー数を30%増やすことで、放熱効率を高めた。また、素材に関しては世界各地で調達できるよう配慮しながら、薄肉、高強度の新素材を開発。グローバルに生産するラジエーターに全面展開することを可能にした。 (2012年1月27日付日刊自動車新聞より)

アプリケーションソフト「アルペジオ」
-カーナビゲーションの画面上でスマートフォンの操作を可能にするアプリケーションソフト「アルペジオ」を開発したと発表した。スマートフォンは通話だけでなく音楽再生やナビ機能なども搭載し、車室内での利用ニーズが高まりつつあるが、運転中の操作に安全上の課題がある。このため、カーナビ上で操作できるようにする専用ソフトを提供する。2012年から日本でサービスを開始し、順次、世界展開を図る。(2011年12月9日付日刊自動車新聞より)

ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)
-同社は、トヨタホームやミサワホームとホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)を共同開発したと発表した。デンソーのHEMS開発は初めてで、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や電気自動車(EV)と連携したオプション機能を備える。デンソーなど3社に新神戸電機を加えた4社で、HEMSと連携可能な家庭用蓄電池も同時に開発した。省エネ意識を高める電力使用量の把握などやスマートフォンからのPHV、EVの充電タイマーの設定などができる。HEMSは来年2月から販売予定。(2011年12月9日付日刊自動車新聞より)

タンデム・ソレノイド・スターター
-アイドルストップシステム用の新型始動装置「タンデム・ソレノイド・スターター (TSスターター)」を開発したと発表した。新製品は、スターター先端にあるピニオンギアの押し出しとモーター駆動を単独で制御する構造を世界で始めて採用、従来品と比べエンジン再始動の待ち時間を最大1.5秒程度短縮した。これによりスムーズな始動フィーリングを可能にした。(2011年9月15日付日刊自動車新聞より)

技術提携

-次世代型車載情報通信システムを米インテルと共同開発すると発表した。同社の車載ビジネスのノウハウとインテルの情報通信技術を持ち寄り、次世代システムを実用化する。同社が車載用情報通信システムの開発で他社と広範囲に協業するのは初めて。現在、車両用の情報端末はカーナビゲーションが主体となっている。ただ、同社は、将来的に同一端末上で車両情報の表示からインターネット検索、ナビ、オーディオ機能の活用まで可能にするようなシステムの実用化を目指している。スマートフォンやタブレット端末にも似た直感的なインターフェースを持たせることも視野に入れている。このため、IT分野でノウハウを蓄積するインテルと協業する。今後は両社で協議を開始し、開発スケジュールなどの計画を詰める。(2012年3月1日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:億円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
日本 1,030 954 -
北米 121 90 -
欧州 186 121 -
豪亜 382 228 -
その他 72 55 -
全社 1,793 1,450 1,144

-生産拡大対応、次期型化、新製品切替および新製品開発のための研究開発投資に重点的に投資。

国内投資

-日本国内で行うアルミダイカスト部品の加工、組み立てに関して、両工程を直結した新ラインを構築する。アルミ溶解から熱処理、表面処理までの加工設備を従来の5分の1の面積に縮小、専用ピットや高棟の建屋も不要な小型設備を開発した。これに構成部品の組み付け、検査工程を直結し、構内物流の効率化や省人化を図る。「加工から検査まで一貫して配置を見直すことで、トータルにコストを半減する効果も期待できる」(同社)。中期的に西尾製作所(愛知県西尾市)や大安製作所(三重県いなべ市)を始めとする国内工場、グループ会社にも展開する。(2012年1月6日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<メキシコ>
-2013年をめどにメキシコに新工場を設置すると発表した。生産子会社「デンソー・メキシコ」(DNMX)の第3工場として、中部のグアナファト州シラオ市に建設する。投資額は45億円を見込む。13年10月からカーエアコンを生産開始する。当初、米フォードやホンダ向けの製品を立ち上げた後、現地で完成車を生産する幅広いメーカーに納入する。(2012年1月11日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-2013年12月をめどに中国・広東省増城市の生産子会社広州電装の生産拠点を移転し、能力を増強すると発表した。カーエアコンなどを生産する既存工場の周辺地域が再開発の対象となり、中国政府から移転要請を受けた。これに対応して、増城市内で拠点を移設する。投資額は63億円を見込んでいる。移転後の増産によって広州電装の売上高を15年までに10年比28.5%増の450億円に引き上げる。カーエアコン関連では、中国に9カ所の生産拠点を設置している。11年12月に吉林省長春市で新工場の稼働を計画しており、今年度中に10工場体制となる。さらに広州電装の移転、増強に伴い、全体の能力が拡大する。移転スケジュールは12年2月に工場建設に着工、13年1月に建屋が完成する。13年3月から12月末にかけて移転作業を行う。この間は生産を継続しながら、段階的に作業を進める。(2011年11月18日付日刊自動車新聞より)

設備投資額 2013年3月期の見通し

(単位:億円)
  2013年3月期
(予想)
2012年3月期
(実績)
増減 (%)
日本 1,170 1,031 13.5
北米 130 122 6.6
欧州 190 187 1.6
豪亜 510 382 33.5
その他 90 72 25.0
合計 2,090 1,794 16.5