WABCO Holdings Inc. 2017年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2017年12月期 2016年12月期 増減率 (%) 要因
売上高 3,304.2 2,810.0 17.6 1)
営業利益 435.0 381.9 13.9 -

要因

1) 売上高
-2017年12月期の売上高は、前年比17.6%増の3,304.2百万ドル。為替の影響を除くと16.0%増。6.6%の市場成長と台当りの製品採用が増えたことが要因。欧州、北米およびアジアでの販売増が寄与した。



買収

-同社は、南アフリカにおけるSturrock and Robson Industriesとの合弁会社について、残りの株式51%を取得したと発表した。取引完了を受けて、完全子会社WABCO South Africaを設立し、同子会社を通して、サハラ砂漠以南の地域に製品を供給する予定。WABCO South Africaは、Johannesburg近くのGermistonに本部や物流、組立、試験施設がある。 (2017年12月4日付プレスリリースより)

-同社は、Meritorとの合弁会社Meritor WABCOの全株式の取得を完了したと発表した。買収に伴い、Meritor WABCOはWABCO North Americaに統合される。今回の株式購入金額は250百万ドル。Meritor WABCOの従業員数は約200名で、2016年度の売上高は300百万ドル。北米商用車市場向け安全・効率化技術を販売、供給している。(2017年10月3日付プレスリリースより)

-同社は、商用車向けステアリングを扱うRH Sheppardの買収が完了したと発表した。Sheppardは現在、大型商用車および特殊車両向けパワーステアリング製品を生産している。従業員数は900名超で、ペンシルバニア州Hanoverとバージニア州Wythevilleに生産拠点を持ち、高性能エンジンポンプの生産や再生部品製造サービスなども行う。買収に伴い、Sheppardは同社の北米事業部門に統合される。(2017年9月19日付プレスリリースより)

-同社は、インドでフリートマネジメントシステム(FMS)事業を強化すると発表した。同社はFMSスタートアップ企業のAssetTrackrの買収で合意している。AssetTrackrはBangaloreに拠点を置き、最新のクラウドベースのFMS技術を持ち、同社Indiaが市場投入したテレマティクス製品をサポートしている。両社はインドの商用車の安全性と性能を向上させるソリューションの開発に取り組んでいる。(2017年7月20日付プレスリリースより)



事業提携

-同社は、一汽解放汽車(FAW Jiefang Automotive)との戦略的提携に合意したと発表した。両社は先進ブレーキシステム、シャシー部品その他技術分野で提携し、中国市場向け商用車の安全および効率化を図る。同社は費用対効果の高い技術を提供するとともに、グローバルな体制を利用したトレーニングと技術サポートも行う。(2017年6月27日付プレスリリースより)



受注

-同社は、東風柳州汽車 (Dongfeng Liuzhou Motor) との戦略的提携を強化し、戦略的な供給を延長する合意文書に署名したと発表した。新たな合意は、先進技術の開発に重点を置き、合意の一環として、同社は燃費向上技術やESCsmart車両安定電子制御システム(ESC)やエアディスクブレーキ(ADB)などの先進運転支援システム (ADAS)を東風柳州に提供する予定。(2017年12月5日付プレスリリースより)

-同社インド現地法人WABCO INDIAは、トラック・バス用横滑り防止装置「ESCsmart」を同社のChennaiのテストコースで公開した。このESCsmartはTata「Prima」に初採用される。同システムは方位制御および横転安定性制御機能を有しており、方位制御機能は低摩擦の路面、横転安定性制御機能は高摩擦の路面の条件下で有効となる。同社のABSおよびEBSプラットフォームを使用するESCsmartは、インド市場向けにカスタマイズされており、インドで業界初となる空圧式ABS用インテリジェントESCシステムとなっている。(2017年10月4日付プレスリリースより)

-同社は、Daimler Trucksから大型車両向け自動マニュアルトランスミッション(AMT)の長期契約を獲得したと発表した。主に欧州、北米、日本および南米の量産車に搭載される。同社の革新的なAMT制御技術は、マニュアルトランスミッションを効率的に変換し、自動でギアをシフトしてクラッチ動作を制御する費用対効果の高いソリューションで、ドライバーは道路と交通状況に集中でき、最適なギアシフトによって燃料消費を抑制する。(2017年6月26日付プレスリリースより)

-インドにあるボルボとアイシャー・モーターズの合弁会社VE Commercial Vehicles Limited(VECV)傘下のEicher Trucks & Buses(アイシャー)は23日、最新式のAMT (Automated Manual Transmission)をトラックとバスに導入すると発表した。アイシャーが採用するAMTは、同社によって設計開発された「OptiDrive」。同社の「OptiDrive」は、トラックとバス用のモジュラーAMTで、排気ガスを低減しながら燃費も改善するとしている。マディヤ・プラデシュ州ピタンプール(Pithampur)工場で、AMTはアイシャーのトラックとバスに組み込まれる。アイシャーはAMTを軽量・中量・重量級の全てのバスに設定し、トラックは最初に中量級に投入した後、拡大採用する予定。(Based on communication with Eicher Trucks & Buses 2017年3月23日付プレスリリースより)

-同社は、「Tata Prima」トラックレースのイベントで先進安全技術のデモンストレーションを行った。同社のABS、高性能空調システム、コンプレッサーモジュール技術、先進エアアクチュエーションシステム、統合ペダルユニット(IPU)、ブレーキ部品などを搭載したTata「Prima」を公開した。さらに新型「1000 BHP PRIMA」にはシングルピストン・エアディスクブレーキが採用された。このディスクブレーキはブレーキ調整を最適化しながら、従来のドラムブレーキと比較して摩耗・損傷を削減するという。(2017年3月18日付プレスリリースより)

-同社は、ロシアのKAMAZとの長期技術提携を延長すると発表した。本契約に基づき、ABS(アンチロックブレーキシステム)およびEBS(電子制御ブレーキシステム)を装備する同社モジュラーブレーキシステムプラットフォームがKAMAZに提供されていたが、今回の契約延長によって、自動トラクションコントロール、ESC(車両安定電子制御システム)、ECAS(電子制御式エアサスペンション)まで拡大される。同社はロシアにある自社工場でブレーキ関連部品を製造する。(2017年2月1日付プレスリリースより)

-同社は、ドイツの大手自動車メーカーと、電動エアサスペンション用ツインコンプレッサーを供給する長期契約を結んだと発表した。2018年末に生産が開始される同納入先のプレミアム電動SUV全てに搭載される予定。同社の電動エアサスペンション用ツインコンプレッサーは、高速運転中に車高を低くしてエネルギー消費を抑制することができる。また駐車中にも車高を低くすることで、ワイヤレス電磁誘導充電を最適化することができる。 (2017年1月17日付プレスリリースより)



受賞

-同社は、Daimlerの「Supplier Award 2016」をパートナー(Partnership)部門において受賞したと発表した。WABCOは電動ブレーキシステム、安全機能およびパワートレイン部品がDaimler Trucksに評価されての受賞となった。(2017年3月2日付プレスリリースより)



2018年12月期の見通し

-2018年12月期の売上高の伸びは10.0%~15.0%と予想している。



研究開発費

(単位:百万ドル)
2017年12月期 2016年12月期 2015年12月期
全社 147.0 135.2 139.5



研究開発体制

-2017年12月末で2,663人が研究開発に従事している。



研究開発拠点

-同社は、ドイツHanoverに25百万ユーロを投資してエンジニアリングイノベーションセンターを建設すると発表した。2018年操業開始予定で、従業員数は450名。商用車向け最新技術およびシステムの研究所、テストルーム、オフィススペースを備える。延床面積は11,500平方メートル。コネクティビティ、eモビリティ、自動運転、安全技術に関するトラック、バス、トレーラーなど商用車向けの最新ソリューション開発を行う。(2017年3月27日付プレスリリースより)



研究開発活動

-インドでの子会社(WABCO India)は2017年12月期に研究活動に136.6百万インドルピー投資した。同社インドはモジュレ-タバルブソレノイド、補助電源ユニット部品、ABS用ワイヤーハーネス、センサー延長ケーブルなどの現地化をスタートした。また幅広い湿度アプリケーションの真空排気ブレーキアセンブリダイアフラムや低温製品性能に合う低温スイッチダイアフラム材なども開発した。研究開発チームはエアーサプライ用第2ゴム軸受、油圧ABSテストリグやモジュラーエアータンクを開発している。



技術提携

-同社は、米Nikola Motor Companyに10百万ドルの戦略的投資を行うと発表した。Nikolaはゼロエミッショントラックの試験を開始しており、2018年後半にリース販売を、2021年には量産を開始する計画。また、両社は電動ブレーキシステムや、トラクション・スタビリティコントロール等の安全技術を搭載する電動トラックの共同開発についても合意した。(2017年12月20日付プレスリリースより)

-同社は、Nexteer Automotiveとの長期提携契約に合意したと発表した。両社はNexteerのアクチュエーション技術「MagnaSteer」を用いて中大型商用車向けアクティブステアリングシステムを開発、供給する。先日、同社はSheppardの買収を発表しており、大型商用車の業界標準であるSheppardのパワーステアリングギアと「MagnaSteer」を組み合わせる。「MagnaSteer」はフレキシブルで精密なモジュラー設計で、Sheppardのギア製品ラインと完全に一体化することができる。また、中大型トラックやバスメーカーにも効果的に適応できるという。(2017年8月29日付プレスリリースより)



製品開発

商用車用「OnSide」先進死角検知システム
-同社は、米フロリダ州Orlandoで開催される米国トラック運送協会の展示会「MCE 2017」に先立ち、商用トラックやトレイラー向けレーダー死角検知システム「OnSide」を発売したと発表した。「OnSide」は、トラックの死角にある他車の存在を運転手に知らせ、側方衝突リスクを軽減するシステム。同社の中大型商用車用安全技術「OnLaneASSIST」との併用で、衝突回避能力も有するという。「Onside」は、2017年11月からレトロフィット用に、2018年第1四半期から北米の主要トラックメーカーに供給される予定。 (2017年10月20日付プレスリリースより)

「OnLaneASSIST」アクティブステアリングシステム
-同社は、北米商用車ショーで中大型商用車用安全技術「OnLaneASSIST」を発表した。「OnLaneASSIST」は、同社の先進運転支援システム(ADAS)関連ポートフォリオの中で、初のアクティブステアリング技術の採用となる。独自のアクティブステアリング技術と前方カメラの車線補正機能によって、車線逸脱が引き起こす衝突を回避してドライバーと車両の安全をサポートする。また、計画的な車線変更と車線逸脱の識別も行う。この「OnLaneASSIST」は、Sheppardのステアリング技術とNexteerのステアリングオートメーション技術を統合したADASをベースとするシステムとなっている。(2017年9月26日付プレスリリースより)

スマートトレーラーFMSフリートマネジメントソリューション
-同社は、中国の物流企業G7と共同で車両運行ソリューション「Smart Trailer FMS」を立ち上げると発表した。両社は同社の「Intelligent Trailer Program」を使用してトレーラー運行管理ソリューションを共同開発する。「Smart Trailer FMS」は中国商用車市場初となるソリューションで、同社は現在、中国市場における車両運行管理システムの拡張に注力している。G7は物流業界のテレマティクス、人工知能(AI)、ビッグデータアルゴリズム等の開発を行う企業で、車両位置、速度、ルート、燃料消費量、ドライバーの行動、貨物の温度などをリアルタイムソリューションによって可視化する。(2017年9月5日付プレスリリースより)

2017年MATSでの紹介技術
-同社は、2017 Mid-America Trucking Show (MATS) にTechnology Showcase Trailer を展示すると発表した。同Trailerには同社が開発した一連の最新技術が搭載されている。

・Air disc brakes (ADB): 大型トラック向けWABCO MAXXUS heavy-duty ADB及びトレイラー向けMAXX22T ADDを展示。シングルピストン型で従来のドラムブレーキに比べ25%部品が少なく、サービスの間隔は2倍に拡大。
・OptiFLow AutoTail: 高速道路走行で最大4.3%の燃費節約に貢献。
・TRISTOP D Brake Chambers: きれいな乾いた空気だけをブレーキシステムからブレーキチャンバーに送り込むInternal Breathing Valve (IBV) が特徴。
・EasyFit Automatic Slack Adjuster: 過酷な温度下でもブレーキライニングとドラムの間を一定に保ち、クラス最高の腐食防止機能を備える。
(2017年3月23日付プレスリリースより)

OptiFlowオートテイルエアロダイナミックトレーラーシステム
-同社は、2017 TMC Annual Meeting and Transportation Technology ExhibitionにOptiFlow AutoTailを展示すると発表した。OptiFlow AutoTailは、テールパネルに装備され、センサーが運転速度を感知してTrailer ABSに接続し、時速45マイルになると自動的に起動する。燃費が最適化される速度で常に運転ができるよう、時速10マイルになると自動待機になる。OptiFlow AutoTailは、SmartWayの試験によれば、高速道路走行で最大4.3%の燃費節約に貢献することができる。トレーラー1台につき毎年最大4.8トンのCO2排出量を削減することが可能。また、同社はOptiFlow Tailも併せて展示。手動による起動になるが、OptiFlow AutoTailと同様の燃費節約効果がある。OptiFlow AutoTailより軽量で、直接取り付けることができ、OptiFlow AutoTailへ簡単にアップグレードすることが可能。 (2017年2月27日付プレスリリースより)



投資額

(単位:百万ドル)
2017年12月期 2016年12月期 2015年12月期
全社 110.5 114.0 101.2

-2018年12月期は、設備投資額を前年度比で約6%増加させる見込み。



海外投資

<インド>
-同社のインドの子会社(WABCO India)はPantnagar,Uttarakhandの施設を拡張し、またJamshedpur施設の拡張を始めた。同社はバキュームポンプ、自動マニュアルトランスミッションの新規ビジネスのため最先端施設を設立、また販売量の増加に見合う様々な能力増強を行った。さらに他の同社施設を通じグローバル市場へスラックアジャスター、ダブルダイアフラムスピリングブレークアクチュエーター,スマートサスペンションコントロールやフリートマネジメントソリューションなどの供給を開始した。

<米国>
-同社は、サウスカロライナ州North Charlestonに工場を新設したと発表した。20百万ドルを投資して建設される新工場では、エアディスクブレーキ、エアコンプレッサーおよび関連セーフティシステムを生産する。現在のCharleston工場から145,000平方フィートの新工場へ移転して生産能力を60%引き上げ、230名の雇用を創出する。同社が米国で最新の商用車用エアディスクブレーキ(ADB)生産するのは初めて。現在ADBの製品ポートフォリオとして、大型トラック向け「MAXXUS」およびトレーラー向け「MAXX22T」を展開している。同社は2015年、Hendrickson Trailer Commercial Vehicle Systemsとの間で、WABCOのブレーキ技術とHendricksonのサスペンションシステム「INTRAAX」および「VANTRAAX」を統合する長期契約に関して合意に至っている。(2017年3月22日付プレスリリースより)