Visteon Corporation 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2012年
12月期
2011年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 6,857 7,532 (9.0) -Duckyang社の連結除外により減少
-為替差損
-アジアおよび北米における生産量の増加
クライメート部門
売上高 4,286 4,053 5.7 -アジア、北米、欧州における生産量の増加
-為替差損
エレクトロニクス部門
売上高 1,250 1,367 (8.6) -欧州における景気悪化による生産量の減少
-為替差損
-北米およびアジアにおける生産量の増加
内装部門
売上高 1,412 2,285 (38.2) -Duckyang社の連結除外により減少
-製品ミックスにより減少
-欧州の景気悪化による影響
-為替差損

売却

<内装事業>
-2013年12月、中国合弁会社の延鋒偉世通汽車飾件系統 [Yanfeng Visteon Automotive Trim Systems:YFV] における保有株式50%を、華域汽車系統 [Huayu Automotive Systems:HASCO] へ売却。

-2012年、河西工業は 英国で自動車用内装部品の製造・販売を手掛ける連結子会社R-TEK (本社=タイン・アンド・ウィア州)の全株式を取得すると発表した。R-TEKに折半出資する英レイデル社(現Visteon)より保有するR-TEK株 式の売却の申し出があったためで、8月末をめどに株式を譲り受ける予定。河西工業では、R-TEKの完全子会社により、英国での事業基盤を強化し、自動車 メーカーの欧州市場での成長戦略や生産量拡大に対応していく。(2012年7月27日付日刊自動車新聞より)

<クライメート部門>
-2013年1月、同社と韓国子会社のHalla Climate Control (HCC)は、同社のクライメートコントロール事業をHCCに売却することで合意したと発表した。売却金額は410百万米ドル。HCCは、社名を「Halla Visteon Climate Control Corp.」に変更し、世界第2位の自動車空調部品・システムメーカーとなる。売却手続きは、2013年の第1四半期中に完了する見込み。(2013年1月11日付プレスリリースより)

-HCCが同社から取得する会社は以下の通り:
社名 所在地 主要機能
Visteon Climate Control System (Chongqing) Co., Ltd. 中国 製造
Visteon Visteon Climate Control System (Nanchang) Co., Ltd. 中国 製造
FAWER Visteon Climate Control System (Changchun) Company Limited 中国 製造
Halla Climate Control (Dalian) Co., Ltd. 中国 製造
Japan Climate Systems Corporation 日本 製造
Visteon Japan Climate Ltd. 日本 研究開発
Visteon Climate Systems India Ltd. インド 製造
Visteon Halla Climate Systems LLC 米国 研究開発
Coclisa S.A. de C.V. メキシコ 製造
Climate Systems Mexicana S.A. de C.V. メキシコ 販売
Visteon Hungary Kft ハンガリー 製造
Visteon Autopal Services s.r.o. チェコ 研究開発
Visteon Autopal, s.r.o. チェコ 製造
Visteon Climate Portugal, S.A. ポルトガル 製造
Visteon Ardennes Industries SAS フランス 製造
Visteon Climate Engineering Services Ltd. 英国 研究開発
Visteon Climate Engineering Services Deutschland GmbH ドイツ 研究開発
Halla Visteon Netherlands Cooperatief U.A. オランダ 販売

<照明事業>
-2012年、同社はインドの自動車部品メーカーVarroc Groupへの自動車用ランプ事業の売却を完了したと発表。売却金額は72百万ドル。両社は2012年3月12日付で、この計画について発表していた。今回売却した事業では、ヘッドランプシステム、リアランプシステム、補助ランプのほか、プロジェクターや電子モジュールなどの主要サブコンポーネントを含む様々な外装ランプ部品を生産している。2011年の売上額は531百万ドルを計上。Varrocが取得したのは、生産・エンジニアリング拠点であるチェコのNovy JicinおよびRychvald、メキシコのMonterrey、インドのPuneに加え、従業員約4,200名が含まれる。また両社は、既に発表されているように、中国におけるランプ合弁会社の大茂偉世通車灯有限公司(Visteon TYC Corporation)に対するVisteonの持分に関しても、20百万ドルでVarrocへ売却することで合意している。(2012年8月2日付プレスリリースより)

買収

-2013年11月、Yanfeng Visteon Automotive Electronics Co., Ltd. の株式の過半数を取得。

合弁事業

-同社の合弁会社「延鋒偉世通汽車飾件系統有限公司 [Yanfeng Visteon Automotive Trim Systems Co., Ltd.]」と「延鋒彼欧汽車外飾系統有限公司 [Yanfeng Plastic Omnium Automotive Exterior Systems Co., Ltd.]」は広東省東莞市の鳳崗碧湖工業園(Fenggang Bihu Industrial Zone)に生産拠点を建設中である。2012年6月に建設を開始したこのプロジェクトの総投資額は6.5億元。第一段階として年内に1.6億元を投資する予定で、すでに50%強が費やされ、2013年6月の正式稼働を目指している。稼働して3年から5年で生産高を32億元にする計画。製品の供給先は長安PSA。長安PSAの生産台数30万台分の生産能力を整備する。鳳崗碧湖工業園は長安PSAが生産拠点を置く深圳市観瀾から10kmの距離にあるため、Visteonは受注から3時間で納品が可能になると見込んでいる。(2012年12月7日付け各種リリースより)

受注

-照明付きメカニカルゲージリングを備えたレイアウト変更可能インストルメントクラスターを発表した。この製品は、北米仕様のFord 「Lincoln MKZ」の2013年モデルに初搭載される。「MKZ」は年内に発売となる予定。このインストルメントクラスターは、10.1インチの薄膜トランジスタディスプレイを内蔵。従来の製品と比べて部品数の大幅な削減を実現するとともに、全ての回路が1つのプリント配線基板に納められている。なお、このクラスターの生産はメキシコのCarolinas工場で行われている。(2012年11月5日付プレスリリースより)

-クライメートシステムがFordの新型SUV「Ecosport」に採用されたと発表。同モデルは最近のブラジルにおける発売を皮切りに、今後グローバル市場でも販売される予定。今回、同社が納入したクライメート製品には、小型HVACシステム、コンプレッサー、レシーバードライヤー付コンデンサー、金属シールコネクター「zero leak」を採用した空調ラインなどが含まれる。(2012年10月16日付プレスリリースより)

-Mahindra & MahindraのSUV「XUV500」向けに、エレクトロニクス、照明、クライメートシステムなど様々な部品を納入していると発表。5.8インチのタッチスクリーンを備えたオーディオインフォテインメントシステムは同モデルに標準搭載、多楕円型LEDヘッドランプはオプション搭載となっている。さら に、「XUV500」のフロントおよびリアのHVACシステムには、Visteonの小型熱交換器が採用されている。(2012年1月23日付プレスリリースより)

事業再編

-2012年9月、同社は価値創造計画 (Value creation plan)で内装事業に関して言及。同社は内装事業を長期的な戦略計画において非コア事業と位置付けた。事業は継続するものの、条件によっては同事業の売却も検討する。

-2012年2月、同社はエレクトロニクス部門に属するスペイン Cadiz拠点を閉鎖した。

国内事業

-同社は、米国運輸省(DOT)が2012年8月に立ち上げた「Safety Pilot」プログラム向けに、Cohda Wirelessと共同で車車間(V2V)通信用機器を提供すると発表した。このプロジェクトにより、衝突警告、危険な道路やカーブでの速度警告、交通情報などに関してドライバーの認識を大幅に改善する可能性がある。ミシガン大学交通研究所を中心に進めるこのプロジェクトでは、5.9 GHzの短距離通信機器を2,800台超の車両に搭載し、車車間(V2V)および路車間(V2I)の無線通信能力に関する実験を行う予定。試験車両は、近くにいる他の試験車両から発信される車両位置や状態に関する情報を、速度や予想進路などを含めて常時受信することになる。(2012年10月3日付プレスリリースより)

2013年12月期の見通し

-2013年度の連結売上高は7,300百万ドルから7,500百万ドル、同修正後EBITDAは620百万ドルから660百万ドルと予想。

受賞

-2012年の主な受賞は以下の通り。
部門 授与者
Yanfeng Visteon 北京拠点 北京汽車 (Beijing Auto) Best Partner award
Yanfeng Visteon 吉利汽車 (Geely) Excellent Supplier award
同社 チェコ Novy Jicin拠点 Jaguar Land Rover Quality award
Halla Climate Control 中国 Jinan拠点 吉利汽車 (Geely) Excellent Supplier award
Visteon Automotive Systems India インド Channai拠点 Mobis India Ltd. National Best Partner for Business Development award
Halla Climate Control タイ拠点 GM Thailand Quality System Basic certificate
Japan Climate Systems マツダ Excellence award of the year
Continuous Excellence award
Craftmanship Improvement award
Visteon Automotive Systems India インド Pune拠点 Tata Motors Quality award
Visteon Automotive Systems India Maruti Suzuki Overall Excellence - Silver award
Visteon Climate Control Beijing 現代 (Hyundai) Quality Five Star certification
同社 チェコ Hluk拠点 Jaguar Land Rover Quality award
Visteon Automotive Systems India Mahindra & Mahindra Business Partner of the year
Award of Excellence for Product Development (Nippon Audiotronix Ltd.と共同受賞)
Visteon Automotive Systems India インド チェンナイ拠点 Renault-Nissan New Product Development Support award
Visteon Automotive Systems India インド チェンナイ拠点 現代 (Hyundai) Best Contribution award
同社 タイ ラヨーン拠点 Auto Alliance Thailand 2011 Top 10 Supplier award
FAWER Visteon Climate Control System 第一汽車グループ (FAW Group) 2011 Core Supplier award

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
合計 299 326 353

研究開発拠点

-2012年、同社はインドPuneに同国で初のイノベーション・デザインセンターを開設したと発表。同社のエンジニアリングセンター内に建設された同センターでは、インドの自動車メーカー向けに同社製品全体に関するアイディア創出、コンセプト開発、商品化などを行う。なお、同社は現在インドにおいて生産4拠点、エンジニアリング3拠点、合弁1拠点を保有。同国のほかにはドイツ、米国、中国にイノベーション・デザインセンターを有している。(2012年10月24日付プレスリリースより)

-2011年、ブラジルのエンジニアリングテストセンターにおいて、自動車部品の試験能力を拡張した。Sao Paulo のArbor工場内に位置するこのセンターでは、内装・外装部品の熱サイクルテストが開始される。今回の拡張により、自動車メーカーはブラジル国内での熱試験が可能になり、試験時間・コストの削減に繋がる。同センターは、エレクトロニクス・クライメート・オーディオシステムに関する試験を行っている。また、エンジン動力計を備えたラボを保有しており、性能(トルク/出力)、燃費、燃料噴射/点火システムのマッピングに関する試験も実施している。

研究開発活動

-同社と英国の防衛・セキュリティ関連会社BAE Systemsは、新型ヘッドアップディスプレイを開発中。BAEの航空宇宙技術を自動車向けに活用する一方で、同社はエレクトロニクス、メカニカル設計、パッケージング、ソフトウェア、ディスプレイ統合、熱管理、EMC管理などにおける技術を用いる。初期の開発プロジェクトには、コンバイナのほか、薄膜トランジスター(TFT)の画像ソースを用いたフロントガラス用ヘッドアップディスプレイシステムが含まれる。(2012年11月13日付プレスリリースより)

特許

<Halla Visteon Climate Control>
-2012年12月現在、同社は1,508件の特許を保有しており、6,290件の特許を出願している。

技術提携

-同社とジャパンディスプレイ(JDI)は、新型のリコンフィギュラブル・インストルメントクラスターの開発に関して提携した。Visteonの第3世代リコンフィギュラブル・インストルメントクラスターのプラットフォームと、JDIの高画質薄膜(TFT)トランジスターディスプレイにより画像や動画の質が向上。この技術をドライバーへの警告やカメラ情報など3Dグラフィックスやビデオ機能に利用できる。また、Visteonの新型インストルメントクラスターのプラットフォームは、12.3型で解像度1920×720ピクセルのディスプレイを搭載することが可能。(2012年11月13日付プレスリリースより)

製品開発

レイアウト変更可能インストルメントクラスター
-同社は、照明付きメカニカルゲージリングを備えたレイアウト変更可能インストルーディスプレイを内蔵。従来の製品と比べて部品数の大幅な削減を実現するとともに、全ての回路が1つのプリント配線基板に納められている。なお、このクラスターの生産はメキシコのCarolinas工場で行われている。(2012年11月5日付プレスリリースより)

車両制御システム
-同社は、自動車メーカー向けに新たな車両制御システムを発表する。ユーザーが携帯用デバイスで慣れ親しんだ機能や特徴を備えるもの。この新型車載インターフェース「Ideal Occupant Interface」には3つの特徴がある。(2012年10月29日付プレスリリースより)
  • 隠しタッチパネル (Hidden Touch Lens):エンジンを切ると、ディスプレイはシームレスなタッチセンサー面と一体化し見えなくなる。
  • スマートパネル (Smart Panel):ユーザーの指を検知しても、わずかでも圧力がかからなければ作動しない。ビジュアルや音によるフィードバックのほか、触覚フィードバック機能も追加される予定。
  • 複合HMI (Multi-Modal HMI):通常のタッチ操作のほか、ユーザーが直接触れることなく操作ができる空間ジェスチャーコントロールなどの先進機能が可能になる。
HV/EV用ヒートポンプシステム
-同社は、外気や補助熱を利用してHV/EVの車内空調を向上させるヒートポンプシステムを開発した。リチウムイオン電池から利用する電力消費を軽減することで、このヒートポンプシステムを搭載した車両は1回の充電による稼働時間を延長することが可能になる。-10℃のNew York市を走行する車両の電気ヒーターと比べて、このシステムは電力消費を約50%低減するとともに、走行可能なマイル数を30%延長する。(2012年9月28日付プレスリリースより)

バッテリー接触熱交換器、バッテリー冷却器
-同社は、様々な新型EV/HVにおいて、異なる方法でバッテリーの温度管理を行う製品群を発表した。バッテリー接触熱交換器やバッテリー冷却器などがこれに含まれ、冷却剤ベースの接着熱交換器を使用するものや、冷媒ベースの冷却・加熱方式を採用するものがある。どちらのシステムも、同社のバッテリー接触熱交換器はエアコンシステムに接続され、バッテリーから生じる熱を冷却剤や冷媒に移動させる方法を採用している。(2012年9月26日付プレスリリースより)

冷媒漏れを防ぐエアコン用コネクター
-同社は、自動車のエアコン接続部からの冷媒漏れを防ぐエアコン用コネクター「zero leak」を開発した。この金属シールを採用したコネクターは、年内に北米・南米・欧州・アジアで発売となる複数の車両に搭載される予定。今後2年間で、同社はこのコネクターASSYを年間約15百万ユニット生産する見込みで、これは3.5百万台を超える車両分に相当するもの。(2012年9月5日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
クライメート部門 152 168 116
エレクトロニクス部門 26 26 23
内装部門 31 38 34
照明部門 - 18 24
コーポレート 9 8 12
合計 218 258 209

海外投資

<中国>
-同社は、中国・上海の生産工場である延鋒偉世通汽車電子(Yanfeng Visteon Automotive Electronics)の拡張を発表した。工場面積はこれまでの2倍超となる約3万平方メートル(323,000平方フィート)で、従業員も最大1,300名の雇用が可能となる。同工場ではドライバー情報システム、オーディオ、インフォテインメント、センタースタックコントロールなどの自動車用エレクトロニクスを生産している。今回の拡張により、同工場の年産能力は約50%拡大する見込み。(2012年6月5日付プレスリリースより)

-同社は、中国におけるクライメートシステムの合弁会社である富奥偉世通汽車熱交換(長春)有限公司(FAWER Visteon Climate Control System (Changchun) Co., Ltd.: FVCC)が、四川省成都(Chengdu)に新工場を開設したと発表。同工場ではアルミ製ラジエーターを生産する。FVCCは、同社と富奥汽車零部件(FAWER Automotive Parts)の合弁会社で、新工場はFVCCの完全子会社となる。一汽大衆(FAW-Volkswagen)の成都工場のほか、中国南西部の自動車メーカー向けに供給する計画。工場面積は3,700平方メートル(39,800平方フィート)。年産能力は、2013年までに50万ユニットに達する見込み。(2012年4月9日付プレスリリースより)