Valeo Group 2018年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)

2018年
12月期
2017年
12月期
増減率 (%) 要因
売上高 19,124 18,484 3.5 1)
営業利益 1,036 1,402 (26.1) -
部門別
コンフォート& ドライビングアシスタンスシステム 3,741 3,674 1.8 2)
パワートレインシステム 5,036  4,274 17.8 3)
サーマルシステム 4,517 4,611 (2.0) 4)
ビジビリティシステム 5,699 5,825 (2.2) 5)

-2018年度からIFRS15の適用により上記の数字は一部修正されている

要因

1) 売上高
ー2018年12月期の売上高は前年比3.5%増の19,124百万ユーロ。為替の影響を除くと売上高は約6%増。固定為替レートでは、事業による売上高は約1%増となる。売上増の主な要因は市光工業、FTE automotiveの買収とValeo-Kapecの設立によるもの。

2) コンフォート& ドライビングアシスタンスシステム
-2018年12月期の売上高は前年比1.8%増の3,741百万ユーロ。売上増の要因は中国市場シェアの増加によるもの。また、自動運転センサー、フロントカメラ、自動パーキングシステム、ドライバー監視カメラ、ジェスチャー認識システムの新規受注も売上増に貢献した。

3) パワートレインシステム
-2018年12月期の売上高は前年比17.8%増の5,036百万ユーロ。主な成長要因は、FTE automotiveの統合とValeo-Kapecの設立によるもの。

4) サーマルシステム
-2018年12月期の売上高は前年比2.0%減の4,517百万ユーロ。事業グループ内のサーマルフロントエンドおよびサーマル商用車製品グループは年度を通じて売上を伸ばしたが、年度後半の市場の低迷により売上は減少した。

5) ビジビリティシステム
-2018年12月期の売上高は前年比2.2%減の5,699百万ユーロ。欧州のWLTP排出ガス基準、中国における顧客ミックスの不調および生産の遅れが売上減の要因となったが、日本およびASEANの市光工業の成長により一部相殺された。

合弁事業

-富奥汽車零部件股份有限公司[Fawer Automotive Parts Limited Company]は2018年7月2日、Valeo Siemens eAutomotive Germanyと常熟に合弁会社富奥法雷奥西門子電動汽車零部件(常熟)有限公司[Fawer Valeo Siemens eAutomotive Parts (Changshu) Co., Ltd]を設立することで合意し、契約書に調印したと発表した。合弁会社の登録資本金は2.5億元。富奥汽車零部件が50.5%を、Valeo Siemensが49.5%を出資する。合弁会社は主に新エネルギー車用インバーターを生産、販売するほか、輸入部品の販売サービスも行う。(2018年7月3日付けリリースより)

受賞

欧州

授与者 受賞名 受賞者
PSA Peugeot Citroen Best of the Best Supplier Plants of the Year Issoire工場 (フランス)
Best Supplier Plant Reims工場 (フランス); Ben Arous工場 (チュニジア)
日産ヨーロッパ Top Quality Award Nogent-le-Rotrou工場 (フランス)
Daimler Excellent Second Tier Supplier Award Chonburi工場 (タイ)
Volvo Quality Excellence Award Rakovnik工場 (チェコ)

米国

授与者 受賞名 受賞者
トヨタ北米 Excellent Quality Award ビジビリティシステム事業グループ特殊照明製品生産ライン
Excellent Quality Award Queretaro工場、San Luis Potosi工場 (メキシコ) ; Seymour工場 (米国)
FCA Commodity Excellence Award ビジビリティシステム事業グループ照明製品グループ
Daimler Trucks North America Master of Quality サーマルシステム事業グループコンプレッサー
Ford Q1 Award 温嶺工場 (中国)
Q1 Achievement Award Togliatti工場 (ロシア)
GM Supplier Quality Excellence Award Juarez工場、San Luis Potosi工場 (メキシコ); 仏山工場、温嶺工場 (中国); 潮来工場 (日本)

アジア

授与者 受賞名 受賞者
日産 Superior Quality Award 江南工場、中津工場、邑楽工場 (日本)
Toyota Kirloskar Motor Zero PPM Award Pune工場 (インド)
現代 Best Performer Award Pune工場 (インド)
Maruti Suzuki Excellent Performance in Delivery and Human Resources Excellence Pune工場 (インド)
ホンダ Superior Quality Award 江南工場 (日本)
Excellent Supplier Award 広州工場 (中国)
三菱 Quality Award Chonburi工場 (タイ)
GM中国 Excellent Supplier Quality Award 太倉工場 (中国)
奇端汽車 (Chery) Excellent Development Performance Award 沙市工場 (中国)
長城汽車 (Great Wall) Quality Award 仏山工場 (中国)

研究開発費

(単位:百万ユーロ)

2018年12月期 2017年12月期 2016年12月期
コンフォート& ドライビングアシスタンスシステム 556 518 334
パワートレインシステム 319 272 183
サーマルシステム 285 286 184
ビジビリティシステム 377 395 235
その他 23 23 20
合計 1,560 1,494 956

研究開発拠点

-2018年12月31日現在、世界に研究センター21カ所、開発センター38カ所、研究開発センター全体で59カ所を保有。

-研究・開発センター各地域毎の拠点数。

  • 西欧: 26
  • 中・東欧: 6
  • アフリカ: 1
  • 北米: 6
  • 南米: 3
  • アジア、中近東、オセアニア: 17
  • 合計: 59

-チェコのビジネス・投資開発庁は、Valeoがプラハに開発センターを開設したと発表した。124百万チェコ・コルナを投じて新設した2,300平方メートルのビルには、250名超の従業員が従事する予定。プラハの開発センターは2002年から操業しており、2017年には自動駐車システム用試験エリアなどの研究施設を設立している。(2018年4月6日付チェコ共和国ビジネス・投資開発庁プレスリリースより)

-日本での自動運転技術の開発体制を強化する。来年初旬に茨城県に自動運転専用のテストコースを新設するほか、自動運転部門の開発スタッフを現在より3割増やして200人体制とする。自動運転の開発を進める日系自動車メーカーとの取引拡大を狙う。ボッシュなど他の外資系部品メーカーも日本での体制を拡充しており、国内の2次、3次サプライヤーとの取引が増える可能性もある。自動運転専用のテストコースをつくばテクノセンター (茨城県つくば市) 近隣に新設する。新設するコースは、最長直線距離300メートル、オーバルコース600メートル、自動車アセスメント (NCAP) 用のテストエリア150メートル×100メートルなどで構成する。中高速域や混合交通下など、より幅広い自動運転技術の開発に利用できる。(2018年10月18日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-2018年12月31日現在、19,800人が従事している。

技術提携

-2018年、同社とCapgeminiが共同開発したスマートデジタル・モビリティソリューションのMov'InBlueと、欧州のカーシェアリングプラットフォームのDrivyは、相互運用可能なシェアモビリティソリューションを発表した。Drivyのプラットフォームとの統合により、Mov'InBlueは250万人のユーザーがいるDrivyのコミュニティとあらゆるフリート車両を共有できるようになり、フリート管理者は車両の使用を最適化して追加の収入源を得ることができる。

-Automotive Information Sharing and Analysis Center (Auto-ISAC)は、ValeoとDelphi TechnologiesがAuto-ISACに新規加入したと発表した。Auto-ISACは、車両サイバーセキュリティ促進のためのグローバルな情報共有コミュニティ確立を目的として、2015年8月に自動車メーカーによって創設された。ValeoとDelphi Technologiesの加入により、自動車サイバーセキュリティをめぐるサプライヤー、商用車メーカー、自動車メーカー間の協力促進を図る。Auto-ISACは新たなサイバーセキュリティリスクに関する情報を共有して分析するための中心的なハブとして機能し、安全なインテリジェンス共有ポータルにより、メンバーは匿名でサイバー脅威に効果的に対応するための情報を提出して受け取ることができるという。(2018年12月6日付プレスリリースより)

-WABCO Holdingsは、商用車向けセンサー技術の開発でValeoと提携の覚書を締結したと発表した。Valeoは、77GHzのレーダーやソリッドステートライダーを含む先進の短距離・中距離センサーをWABCOに供給し、自動運転車の主要構成要素である次世代の先進運転支援システム (ADAS) の開発・製品化を目指す。Valeoのセンシング技術を用いた初製品は、WABCO の都市型旋回支援ソリューション「OnCityALERT」となる見通し。OnCityALERTは、Valeoの77GHzレーダー技術を用いて、視界が悪い状況などでも自動車の助手席側の死角の常時モニターを実現するという。(2018年9月19日付プレスリリースより)

-中国の百度(Baidu)と自動運転で戦略的提携を結ぶことで合意したと発表した。Valeoは百度のオープン自動運転プラットフォーム「アポロ」に参加して、センサー、レーダー、カメラ、超音波センサー、レーザーセンサーなどの技術を提供する。また、センサークリーニングシステム、自動運転車両接続、車内空気品質最適化技術についても供給する予定。一方でValeoはアポロのソフトウェア、ハードウェアやオペレーティングシステム、高精度HDマッピング、シミュレーションエンジンなどのデータツールを活用するという。(2018年7月4日付プレスリリースより)

-NTTドコモと次世代コネクテッドカーおよびモビリティサービスの開発・供給での協業に合意したと発表した。4月13日からサービスの開発・展開を開始する。両社はスマートフォンを使用した5G/V2X対応の次世代モビリティサービスや、車載機器ソリューションなどのコネクテッドカー向け通信サービスを提供する。(2018年4月12日付プレスリリースより)

製品開発

自動運転コンセプトカー「Drive4U」
-コンセプトカー「Drive4U」は、同社が開発した量産センサーを介して自動操作ができる初の自動運転車。センサーシステムには超音波センサー、カメラ、レーダーおよびSCALAレーザースキャナーが含まれており、これらのセンサーは車両の周囲を360度表示し、ドライバーの視界が届かない車両を含む他の車両とその軌跡の3Dモデルを形成する。「Drive4U」はSAEレベル4の自動運転が可能で、交差点、信号機、道路標識など様々な状況下で動作する。

トレーラービジョンシステム「Xtravue」
-ドライバーがトレーラー後部を見るのを補助するため、車両後部とトレーラー後部の両方にビデオカメラを使用するトレーラービジョンシステム。ドライバーがトレーラー周囲をクリアに見ることができるように、ディスプレイスクリーンはトレーラーが透明に見える単一画像を生成する。

照明システム「Picturebeam Monolithic」
-米国のCreeと共同開発の高精度照明システム。このシステムは防眩機能を備えた高精度ビームを道路に投影する。光線のピクセルはチップ上の光源に形成され、他の高精度照明システムと比較して小型で軽量になっている。また、各ピクセルは電子システムにより個別に調整することも可能。

空気質改善コンセプトカー「Oxy’Zen」
-車内外の空気の質を測定するセンサーを備えたコンセプトカー。エアフィルターが測定した情報を利用して、高効率フィルターと高性能イオナイザーを通して車内の空気を調整する。イオナイザーが車内を脱臭している間、フィルターが車内から超微粒子の98%を除去する。

中国Xchargeと共同開発の「V2G(Vehicle to Grid)」技術
-中国のスタートアップ企業Xchargeと「V2G(Vehicle to Grid)」技術を共同開発し、双方向充電の新たなソリューションプログラムで電力網のリバランスを実現する。このスマート充電システムは電力が余った時には車のバッテリーで電力を蓄え、電力が足りない時には車のバッテリーから電力網に放電するというもので、ユーザーはスマホアプリを通してこの充電と放電を行うことができる。2025年までに中国はEV駐車場の収容能力を1,000万台とする見込みである。100万台のEVがV2G機能を装備すれば3GWの電力が生まれ、これは原子炉3基の出力に相当するとしている。(2018年12月10日付け複数メディア報道より)

48V低電圧モーター制御システム
-新たなEV向け48V低電圧モーター制御システムを「CES 2018」で世界初公開すると発表した。このシステムは、既存の高電圧システムより20%経済的で、2人乗りの小型EVに搭載した場合、1充電当たりの航続距離 100km、最高速度 100km/h と、都市モビリティに最適だという。また、世界初のロボットタクシー「Autonom Cab」も出展。この自動運転のEVには、同社のSCALAレーザースキャナーを7台搭載している。SCALAは、自動車向けに設計された初の、そして唯一の量産LiDARスキャナー。ほかに、車内の空調を乗員それぞれの体調や感覚に合わせて調節できる新システムを披露。ドライバーの状態を検知し、疲労やストレスがある場合には、刺激的もしくは癒し系の香りやイオンを放出できるとしている。(2018年1月8日付プレスリリースより)

3Dジェスチャーユーザーインターフェース
-ドライバーの手や指の動作を3次元で検知し、コックピット周りのスイッチなどを操作できる「3Dジェスチャーユーザーインターフェース」を開発した。「3D ToFカメラ」を使って手や指の位置を検知する仕組みでスイッチ類に代わるコックピット周りのインターフェースとして実用化する。3D ToFカメラとステアリングを組み合わせたインターフェースで提案し、2022年~23年頃に市販される新型車で実用化を目指す。ドライバーが運転中、アダプティブクルーズコントロールやオーディオ、エアコンなどを操作するのに、スイッチ類に視線を向ける必要がある。同システムを使用すればドライバーは前方を注視した状態で操作できるようになり、安全運転につながる。また、ステアリングに物理的なスイッチ類や、伝達に使うコードなどを搭載しなくてすむメリットがある。(2018年6月28日付日刊自動車新聞より)

「Viva Technology」出展ソリューション
-Valeoは、パリで開催する見本市「Viva Technology」に電動化、自動運転、コネクテッドカーなどの分野の最新技術を出展すると発表した。同社は「Viva Technology」で、低電圧で作動する48V充電式ハイブリッド車を世界初公開する。5人乗りの車両で、EVモード時に30km以上を走行でき、長時間走行するときには内燃エンジンに切り替わるという。また、車車間通信によって、前方の車両を介してドライバーが路上で何が起きているかを認識できるシステム「Valeo XtraVue」や、自動駐車システム「Valeo Park4U Home」も展示予定。(2018年5月22日付プレスリリースより)

特許

-2018年で2,144件保有。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)

2018年12月期 2017年12月期 2016年12月期
コンフォート&ドライビングアシスタンスシステム 582 537 342
パワートレインシステム 458 390 357
サーマルシステム 454 430 302
ビジビリティシステム 538 508 330
その他 21 37 30
合計 2,053 1,902 1,361


-2018年12月期の設備投資額は前年比7.9%増。特にフランス、ドイツ、アイルランドなどの西欧および南米で投資が増加した。このほかチェコ、トルコでも投資額は増加。アジアでは中国への投資を削減する一方、韓国および日本への投資を拡大した。

-買収、売却を除くと、2018年12月期の設備投資額はコンフォート&ドライビングアシスタンスシステム事業およびサーマルコンプレッサー、トランスミッションシステム製品グループへの投資が減少したため、前年度比で減少した。また、車両電動化プロジェクトの数が増加したため、エレクトロニクスおよびサーマルパワートレイン製品グループにより多くの投資を行った。

海外投資

-10月18日、Valeo Siemens常熟新工場が開業した。法雷奥西門子新能源汽車(常熟)有限公司[Valeo Siemens eAutomotive (Changshu) Co., Ltd]は2017年6月設立。総投資額は1億ユーロ。Valeoと Siemensが各々50%の株式を保有する。主に新エネルギー車用モーター、インバーター、電気駆動システムを生産する。新工場の第1フェーズ敷地面積は27,000平方メートル。104名の従業員を擁する。Valeoが中国に設立した5番目の高圧ソリューションサプライヤーである。法雷奥西門子新能源汽車(常熟)有限公司の2018年上半期の受注額は47億ユーロ、2018年6月末現在の累計受注額は108億ユーロに達している。(2018年10月22日付け複数メディアの報道より)

-2018年4月26日、重慶両江新区竜興工業開発区(Longxing Industrial Park, Liangjiang New Area, Chongqing)は、Valeo重慶生産拠点の建設は順調に進んでおり、すでにスチール躯体の施工段階に入っていると伝えた。このプロジェクトの総投資額は約2.1億元、総建築面積は26,247.12平方メートル。スチール構造工場、消防ステーションなどを建設し、主に自動車ランプを生産する。完成後の生産高は約6億元。現在、付属工場のコンクリート躯体工事が完了し、スチール構造メイン工場工事は重要な段階に入っている。これと並行し、内装工事、生産設備の据え付け準備が行われている。2018年末にすべて完了し、2019年初めに正式に生産を開始する予定である。(2018年4月26日付け各種リリースより)