thyssenkrupp AG (旧 ThyssenKrupp AG) 2017年9月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
  2017年
9月期
2016年
9月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 42,971 39,263 9.4 1)
EBIT 687 1,189 (42.2) -
部品テクノロジー
売上高 7,571 6,807 11.2 2)
EBIT 297 251 18.3  -
欧州鉄鋼事業 (Steel Europe)
売上高 8,915 7,633 16.8 3)
EBIT 493 316 56.0 -

要因
1) 全社売上高
-2017年9月期の売上高は前年比9.4%増の42,971百万ユーロ。部品テクノロジー事業、エレベーター事業、素材サービス事業、欧州鉄鋼事業 などほとんどの事業の売上が伸びた。産業ソリューション事業は鉱業や化学プラントエンジニアリングでの需要減により減収。

2) 部品テクノロジー
-2017年9月期の部門売上高は前年比11.2%増の7,571百万ユーロ。米国の乗用車市場での需要減にもかかわらず、西欧や中国での販売好調がそれを相殺した。また、中国や米国での商用車市場の好調が売上増に貢献した。

3) 欧州鉄鋼事業
-2017年9月期の売上高は前年比16.8%増の8,915百万ユーロ。売上増は鉄鋼価格の上昇と販売量の増加によるもの。



事業再編

-同社は、鍛造事業を再構築して、北米、南米、欧州、インド、中国に拠点を置く世界最大の鍛造組織を設立すると発表した。新事業部門「thyssenkrupp Forged Technologies」は2018年10月1日発足予定で、従業員数約7,000名、18カ所の生産拠点と70カ国を超える流通ネットワークで事業を展開する。全世界で50機を超える鍛造プレスで操業し、売上高は約10億ユーロを超える。同社のEssen本社が管理統括を行い、鍛造・加工部品や自動車・建設事業や機械工学向けの部品やエンジニアリングシステム等を生産する。また、新部門にはブラジルでクランクシャフトを製造する「Forging & Machining」部門も含まれる。(2017年10月4日付プレスリリースより)

-2017年9月、ブラジルの同社CSA製鉄所をラテンアメリカの鉄鋼メーカーのTerniumへの売却を完了した (買収額は1.5億ユーロ)。CSA製鉄所の売却は2016年9月30日にさかのぼる。売却の終結は同社の鉄鋼アメリカ事業の売却完了を意味する。そのプロセスは2014年のArcelorMittalおよび新日鉄から成るコンソーシアムへの加工工場の売却から始まった。



合弁

-Tata Steelと同社は、両社の欧州での平鋼事業と同社の製鋼所を統合し、欧州で製鉄合弁会社を設立するための了解覚書(MOU)に調印したと発表した。折半出資による合弁会社Thyssenkrupp Tata Steelは、高品質で差別化された製品の供給に注力し、年間鋼板出荷量は約2,100万トンを見込む。年間売上高は約150億ユーロで、従業員は約4万8,000人。オランダのアムステルダムに拠点を置く予定。(2017年9月20日付プレスリリースより)



受注

-中国の自動車メーカー上汽通用五菱汽車 (SGMW)から、次世代自動車向け車体プレス加工設備を受注、搬送を開始したと発表した。同社は契約に基づき、SGMWの新型SUV「CN300M」の外装パーツ (フェンダー、ドア、サイドパネル等) を生産するために必要なプラン、設計、設備を担当する。両社はまた、更なる長期協力関係を結ぶために自動車生産技術について共同契約を締結した。SGMWは、GM China、上海汽車(SAIC)、五菱 (Wuling) の合弁企業で、2019年から新型SUVモデルを年間150,000台生産する計画をたてている。SGMWは大手EVメーカーで、今後は一日EV 800台を生産していく予定。 (2017年7月12日付プレスリリースより)



受賞

-同社のステアリングシステム事業は、その開発力や顧客サポートによりFordから審査員特別賞で「World Excellence Award」を受賞した。

-同社のステアリングシステム事業は、VolkswagenおよびAudiへの、製品立上げの成功、中国やメキシコでの新工場の建設、グローバルでの現地化戦略やプロジェクト管理などによりグローバルチャンピオンカテゴリーで「2017 Volkswagen Group Award」を受賞した。



研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2017年9月期 2016年9月期 2015年9月期
合計 816 778 735

-同社の長期的成長戦略のキーの一つが研究開発費の投資。2012年9月期以降、売上高および利益は安定していないにもかかわらず、毎年研究開発費を拡大している



研究開発体制

-2017年9月末時点、90拠点で約4,500名が研究開発に従事。



研究開発拠点

-同社グループのthyssenkrupp Presta North Americaは、7百万ドル以上を投資して、米インディアナ州Fishersに広さ3万7,000平方フィートの技術センターを開設すると発表した。新センターでは、快適で安全なステアリングや、燃費効率を向上し排出ガスを低減するシステムなどを開発する予定。2018年にフル稼働し、現在Indianapolisを拠点にしているエンジニアリング部門が入るほか、インディアナ州Terre Hauteの生産施設やミシガン州Troyの営業・技術オフィスを補完する役割も担うという。(2017年12月19日付Indiana Economic Development Corporationの発表より)

-同社は,ドイツMulheimに付加製造のTechCenterを開設したと発表した。現在、金属と樹脂によるカスタマイズ製品の作成を開始している。同社ではこれまでの経験と研究を基に、短期間での3Dプリントによる製品製造を目指す。航空エンジニアリング、軍艦製造、自動車産業などが主な市場となる。(2017年9月1日付プレスリリースより)

-同社は、ステアリング事業部門の本社があるリヒテンシュタインのEschenにステアリング技術のテスト・開発センターを新設すると発表した。投資額は15百万ユーロ、2019年上半期に完成予定。広さ3,000平方メートルで、電動パワーステアリングシステムの開発を行う。同社ではすでにハンガリーのBudapestでステアリング部門のソフトウェア・開発センターを開設しており、ステアリング事業の拠点は世界11カ国16カ所にのぼる。同社は年間2,000万台超の車輌向けにステアリング部品を生産・開発している。(2017年1月20日付プレスリリースより)

-2017年9月期に、同社はリヒテンシュタインにAdvanced Robotics Labを開設。フィードバックに柔軟に対応するロボットのコントロールシステムを開発する。



製品開発

高集積電気ドライブアクセル (Highly integraed electric drive axle)
-同社は,リヒテンシュタインのE-モビリティコンピテンスセンターで高集積電気ドライブアクセルを開発中。電気アクセルは電気モーター、トランスミッション、パワーエレクトロニクスや新たに設計されたステーターなどを含んでいる。

薄い電磁鋼板 (Thin electrical stel)
-同社は,厚さ0.35ミリの新しいタイプの電磁鋼板を開発。電磁鋼板の低厚さは過電流のロスを低減しその結果電動機の効率を高める。

電気自動車バッテリー用軽量スティールエンクロジャー (Lightweight steel enclosures for electric car battery)
-同社は,電気自動車バッテリー用新しい軽量スティールエンクロジャーを開発。エンクロジャーは耐衝突性や耐食性でアルミ基板のコストの約半分で電磁シールドを提供する。



特許

-2017年9月末現在、約19,000件の特許を保有。



設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2017年9月期 2016年9月期 2015年9月期
全社 1,666 1,387 1,235
-部品テクノロジー 551 488 392
-欧州鉄鋼事業 (Steel Europe) 566 400 458

-部品テクノロジー事業は、特に中国、メキシコ、ハンガリーの電動ステアリングシステムの既存工場をサポートし生産能力の増強に焦点を当てた。アクティブおよびパッシブダンパーシステムのメキシコでの新工場建設やルーマニアの工場拡張も行った。また、スプリングとスタビライザー生産でハンガリー、中国に高度に自動化された工場の展開過程にある。さらに中国、欧州、メキシコでの工場でのシリンダーヘッドモジュールの生産能力の増強も行った。

-欧州鉄鋼事業への投資はHKMの高炉の改修にかなり費やされた。高炉は第2四半期に運転を再開し、高品質の特殊鋼の生産を可能にした。同社はまた独Duisburg-Hambornの熱と発電所も買収した。



国内投資

-同社は、ドイツSaxony-Anhalt州Schoenebeckの拠点にステアリング部品工場を新設したと発表した。広さ約3,000平方メートルの工場で、2018年から電動パワーステアリングシステム用ボールねじを生産する。新工場開設によって、65名の新規雇用を見込む。Schoenebeckの拠点では、今後段階的に拡張を行う予定。プロジェクトへの総投資額は約10百万ユーロで、同社はSaxony-Anhalt州から1.5百万ユーロの助成金を受けている。 (2017年10月25日付プレスリリースより)

-同社は、Duisburg-Huttenheim工場の熱間圧延鋼材用ピックリングラインを更新した。熱間圧延鋼材の品質向上と同施設の寿命延長を目的としたもの。酸洗処理槽および付属設備を全て樹脂製とし、最先端の設備を導入した。投資額は約17百万ユーロ。同工場は22年前に稼働を開始した。現在の従業員は約1,300名。(2017年1月31日付プレスリリースより)



海外投資

<中国>
-同社は、中国の大連に10百万ユーロを投資してエンジン部品用開発センターを新設した。2,000平方メートルの新センターは、大連の既存の生産拠点の敷地内に建設された。既存拠点では、2005年からカムシャフトおよびシリンダーヘッドカバーの組立モジュールを生産している。新センターでは、中国市場向けバルブトレイン製品の開発に焦点を置く。新規受注に伴い、同社は過去3年間で中国における部品生産ネットワークの強化に300百万ユーロを投資している。同社の中国における自動車関連拠点の従業員数は5,100名超。(2017年4月24日付プレスリリースより)

-同社は、中国の平湖(Pinghu)に30百万ユーロを投資してバネおよびスタビライザーの工場を新設すると発表した。2017年起工、生産開始は2018年を予定。欧米、日系および中国系メーカー向けに年間約500万個の部品生産を見込む。新工場は中国で3番目のバネ・スタビライザー工場となる。同社はこの3年間で、中国における部品事業の工場インフラ拡張に約300百万ユーロを投資しており、現在は常州にステアリングシステム工場を建設中。(2017年1月23日付プレスリリースより)

<ハンガリー>
-同社は、ハンガリーのDebrecenで自動車部品工場を建設すると発表した。敷地面積は2万平方メートル、2017年春から建設予定で、35百万ユーロを投資する。年600万個以上のコイルばねとスタビライザーを2018年初頭から生産する予定。2016年には100百万ユーロを投資して、電動パワーステアリングシステムおよびカムシャフト一体型のシリンダーヘッドカバーを生産する工場の建設をBudapest近郊で開始し、2018年に生産を開始する予定。2013年にはAudiのGyor拠点向けにフロントアクスルおよびリアアクスルの組立工場を開設。また、Budapestにはステアリング技術のソフトウェア開発センターがあり、完全自動運転への先駆けとして機電一体型のステアリングシステムおよび運転支援システムを開発している。(2017年2月3日付プレスリリースより)