thyssenkrupp AG (旧 ThyssenKrupp AG) 2016年9月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2016年
9月期
2015年
9月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 39,263 42,778 (8.2) 1)
EBIT 1,189 1,050 13.2 -
部品テクノロジー
売上高 6,807 6,753 0.8 2)
EBIT 251 294 (14.6) -
欧州鉄鋼事業 (Steel Europe)
売上高 7,633 8,697 (12.2) 3)
EBIT 316 514 (38.5) -


要因
1) 全社売上高
-2016年9月期の売上高は前年比8.2%減の39,263百万ユーロ。部品テクノロジー事業、エレベーター事業の売上が伸長したが、化学プラントや鉱業用設備市場の不調、素材価格の変動により一部相殺された。

2) 部品テクノロジー
-2016年9月期の部門売上高は6,807百万ユーロ。さまざまな要因が影響し、前年度実績を0.8%上回った。乗用車向け製品については、西欧、中国および米国市場で需要が増加したが、ブラジルとロシアでは著しく減少した。大型トラック製品については、特にブラジルと米国で低迷した。

3) 欧州鉄鋼事業
-2016年9月期の売上高は前年比12.2%減の7,633百万ユーロ。平均製品価格の下落と販売量の減少等が影響した。

事業再編

ダンパー事業の移転
-2016年2月、同社のダンパー事業をドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州Bochumの新拠点に移転すると発表した。2016年3月に、Ennepetalの本社からBochum北部に位置するHerner Strasseに建設した新オフィスに、thyssenkrupp Bilsteinの従業員約200名を移動させる計画。自動車関連の新規受注拡大により、Ennepetalではこれ以上の拡張が困難なことから、同州で拠点を増やして対応する。今回の移動に含まれるのは、グローバル自動車メーカー向けにダンパーシステムを納入するOEM部門の管理スタッフの大部分。技術、物流、品質、プロジェクト管理、販売などの部門がBochum拠点へ移る。なお、アフターマーケットの管理部門 (約270名) と生産部門はEnnepetal拠点にとどまる予定。(2016年2月15日付プレスリリースより)

買収

-thyssenkrupp Materials Processing Europeは、2016年7月にスペインのEl Puigに位置するThyssen Ros Casaresを取得した。これによりThyssen Ros Casaresは社名を 「thyssenkrupp Materials Processing」 に変更。面積は39,000平方メートルで、スリットストリップやブランク材の加工を行っている。今春より、欧州全域にわたる同社のサービスセンターネットワークには、ハンガリーGyorの新拠点のほか、ドイツWillichにあるステンレス鋼加工センターが新たに加わっている。(2016年7月27日付プレスリリースより)

受注

-2015年12月、ドイツおよびグローバル自動車メーカー数社からステアリングシステムの大口受注を獲得したと発表した。各社の代表的なモデルのプラットフォーム向けに、電動パワーステアリング (EPS) システムの開発・生産を行う。あわせて年間300万ユニットを納入し、売上高は約45億ユーロを見込む。納入先は、ドイツをはじめとする欧州、アジア、米国の自動車メーカーで、2016年以降に生産を開始する予定。なお、thyssenkruppは過去3年間で部品事業に約10億ユーロを投じている。そのうち約70%が中国やNAFTA地域、欧州など成長市場の自動車部品事業に向けたものとなる。(2015年12月3日付プレスリリースより)

-2016年9月期、部品テクノロジー事業は海外のOEMから電動パワーステアリング (EPS) プログラムを多数新規受注した。同社はこれにより、プレミアムカー向けサプライヤーしてのプレゼンスを確立するとともに、量産車である中・小型車向け市場、中国および北米市場におけるシェア拡大に成功した。

2017年9月期の見通し

-2017年9月期のEBITは17億ドルに達すると予測。長期的にはEBIT 20億ドル以上を目指す。

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2016年9月期 2015年9月期 2014年9月期*
合計 778 735 709

*IFRS第11号の適用により、2014年9月期の各数値は修正されている。

-長期的成長戦略に基づき、積極的な研究開発を実施。2012年9月期以降、売上高および利益は安定していないにもかかわらず、毎年研究開発費を拡大している

研究開発体制

-2016年9月末時点、約100拠点で3,500名以上が研究開発に従事。

研究開発活動

-自動車メーカー向けの研究開発は電動パワーステアリング (EPS) やアクティブおよびパッシブダンパーシステムを中心に行っている。また、同社の電動パワーステアリング (EPS) システム技術をベースとしたステアバイワイヤーシステムを開発している。

-e-mobilityプロジェクトに参画し、低価格で高容量のバッテリーを開発している。1kWhあたり200ユーロを投資し、エネルギー密度を現在の250Wh/Lから倍増することを目指す。新バッテリーは広面積のサンドイッチ構造を採用。同社以外の参画団体はFraunhofer Institute for Ceramic Technologies and Systems およびIAV等。同プロジェクトは独ザクセン州政府およびEuropean Regional Development Fund (欧州地域開発基金) による資金援助を受けている。

技術提携

JFEスチールと新成形技術のクロスライセンス契約
-thyssenkrupp Steel Europe (tkSE) とJFEスチールは、ハイテン材を含めた自動車部品用鋼板の新成形技術のクロスライセンス契約を締結したと発表した。これにより、自動車メーカーや部品メーカー向けに、JFEの 「CP-F (Closed Profile-Forming)」 とtkSEの 「T3 (thyssenkrupp Tailored Tubes)」 を組み合わせた新しい成形技術をグローバルに提案することが可能になる。自動車の骨格部品は従来、プレス成形した2枚の鋼板を溶接部位 (フランジ) でスポット溶接して製造するが、今回両社が開発した新しい技術では、フランジを省略した部品を1枚の鋼板から成形して製造する。これにより、剛性・衝突安全性を維持しながら、部品重量の10%以上を占めるフランジを省略して軽量化を実現できるという。tkSEとJFEスチールは、2002年より自動車用鋼板および関連した研究開発に関する包括的技術提携契約を締結している。(2016年8月23日付プレスリリースより)

特許

-2016年9月末現在、約18,000件の特許を保有。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)

2016年9月期 2015年9月期 2014年9月期*
全社 1,387 1,235 1,260
-部品テクノロジー 488 392 356
-欧州鉄鋼事業 (Steel Europe) 400 458 516

*IFRS第11号の適用により、2014年9月期の各数値は修正されている。

-部品テクノロジー事業は、主に生産能力の拡大に向けた設備投資を行っている。中国、メキシコでは電動ステアリングシステムの生産能力を増強した。メキシコではアクティブおよびパッシブダンパーシステムの新工場に投資した。パワートレイン分野では、中国、欧州、メキシコでシリンダーヘッドモジュールの生産能力を拡大した。ハンガリーでは、電動ステアリングシステムとシリンダーヘッドモジュールを生産する新工場で操業を開始した。

-欧州鉄鋼事業では、独Duisburgに取鍋加熱炉を建設した。高品質、高強度スチールの生産を目指す。各生産ラインの更新にも投資した。

国内投資

-2016年4月、ドイツのDuisburgに取鍋炉を建設すると発表した。高合金グレードを含む製品ラインナップの拡充を目指す。特に自動車向け特殊鋼の需要増に対応する。新たな設備は、Duisburg-Beeckerwerthにある第2塩基性酸素転炉に建設する予定で、投資額は約40百万ユーロ。2017年秋に建設を開始する予定。(2016年4月21日付プレスリリースより)

海外投資

<メキシコ>
-メキシコのグアナフアト州San Miguel de Allendeで2015年に開設した自動車部品生産拠点に、新たにアクティブおよびパッシブダンパーシステムの工場を建設する計画。同拠点では2016年はじめに、カムシャフト付きシリンダーヘッドカバーの生産工場の建設を開始している。同拠点への投資総額は約150百万ユーロとなる。2017~2018年に北米の複数の自動車メーカー向けに供給を開始する予定。新工場の面積は20万平方メートルで、従業員数は最大750名となる見込み。(2016年6月29日付プレスリリースより)

-2016年1月、メキシコのPueblaに新たにステアリングシステム工場を建設すると発表した。投資額は約70百万ユーロで、敷地面積は135,000平方メートルを見込む。近日中に着工し、2017年はじめに完成予定となる。新工場では、年間約140万基の電動パワーステアリングシステムを生産する予定。2018年より、ドイツおよび米国の自動車メーカー向けに生産を開始する。同拠点では、今後数年間で約400名の新規雇用を創出する見込み。なお、同社は2020年までに北米の部品事業に約500百万ユーロを投じる計画で、このうち約半分がメキシコ向けとなる。メキシコのグアナフアト州San Miguel de Allendeでは、2016年はじめにエンジン部品工場の建設も開始する予定。(2016年1月12日付プレスリリースより)

<ハンガリー>
-ハンガリーのJaszfenyszaruに、エンジン部品およびステアリングシステムを生産する自動車部品工場を建設する計画。投資額は約100百万ユーロで、2016年春に着工予定。2018年より、電動パワーステアリングシステムやカムシャフト一体型のシリンダーヘッドカバーを生産する。今後数年間で、同拠点において約500名の雇用を創出する計画。今回のハンガリーでの生産能力拡大は、同社の部品部門が複数のグローバル自動車メーカーより大口受注を獲得したことによるもの。(2016年2月23日付プレスリリースより)