Harman International Industries, Inc. 2016年6月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2016年
6月期
2015年
6月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 6,911.7 6,155.3 12.3 1)
営業利益 580.0 469.6 23.5 2)
コネクテッドカー部門
売上高 3,101.8 2,911.2 6.5 3)
営業利益 359.3 294.1 22.2 -
ライフスタイルオーディオ部門
売上高 2,137.8 1,812.6 17.9 4)
営業利益 266.7 196.1 36.0 -
コネクテッドサービス部門
売上高 694.3 381.0 82.2 5)
営業利益 35.3 40.5 (12.8) -

要因
1) 売上高
-2016年6月期の売上高は、前年比12.3%増の6,911.7百万ドル。為替のマイナス影響 (209.8百万ドル) を除くと、売上高は前年比16.2%増となる。増収要因は、ライフスタイルオーディオ部門、コネクテッドサービス部門、コネクテッドカー部門における最近の買収効果。プロフェッショナルソリューション部門は減収となり、増収分の一部が相殺された。

2) 営業利益
-2016年6月期の営業利益は、前年比23.5%増の580.0百万ドル。主な増益要因は、最近の事業買収効果、固定費のレバレッジ効果が高まったこと、製品ラインナップの強化、再編コストの減少等。増益分の一部は販売管理費の増加分により相殺された。

3) コネクテッドカー部門の売上高
-2016 年6月期の部門売上高は、前年比6.5%増の3,101.8百万ドル。受注増加、自動車生産量の増加、新プラットフォームの拡大が増収要因。為替のマイナス影響による減収分は178.9百万ドル。

4) ライフスタイル部門の売上高
-2016年6月期の部門売上高は、前年比17.9%増の2,137.8百万ドル。グローバル規模で供給網を拡大したこと、最近供給を開始したプログラム、自動車生産量の増加、受注増加や事業買収効果などが増収に貢献した。為替のマイナス影響による減収分は51.2百万ドル。

5) コネクテッドサービス部門の売上高
-2016年 6月期の部門売上高は、前年比82.2%増の694.3百万ドル。主な増収要因はSymphony Teleca Corporationの買収によるもの。為替のマイナス影響による減収分は25.9百万ドル。

事業買収

-2016年3月、コネクテッドカーの車載ネットワーク保護向けにサイバーセキュリティシステムを提供するTowerSecの買収を完了したと発表した。TowerSecの組み込みソフトウェアセキュリティ製品 「ECUSHIELD」 や 「TCUSHIELD」 を、Harmanの 「5+1」 セキュリティアーキテクチャに統合することで、コネクテッドカーや自動運転車において車両システムや機能へのハッキングや侵入を防御できるようにする。(2016年3月11日付プレスリリースより)

事業提携

-2015年12月、スウェーデンのオーディオ会社で高性能のデジタルサウンド最適化システムを提供するDirac Researchと戦略的提携契約を締結したと発表した。Diracのデジタルオーディオシステムとチューニング技術を、Harmanの自動車用オーディ オ・インフォテインメントシステムへ適用することを目指す。また、今回の提携によりHarmanは、自動車用音響システムメーカーや自動車メーカー向けに、Diracの音響技術をグローバルで供給していく。両社はこれまでも提携関係にあり、Volvo 「XC90」 に搭載されたBowers & Wilkinsの車載サウンドシステムに、Diracのサウンド最適化技術 「Dirac Unison」 を採用している。(2015年12月3日付プレスリリースより)

開発動向

-2016年3月、最新の先進ナビゲーションシステムを欧州で発売したと発表した。データインテリジェンスとプレミアムナビゲーションを組み合わせたコンピュータープラットフォーム。組み込み式のクラウドベースサービスを組み合わせることで、最新の道路案内と安全情報を統合する。GPS、ジャイロスコープ、加速度計、LIDAR、カメラなど車のあらゆる種類のセンサーデータを受信できるようにカスタマイズができるという。(2016年3月1日付プレスリリースより)

-2016年2月、コネクテッドカーについての公共政策を進める 「Intelligent Car Coalition」 への参加を発表した。通信・自動車関連の企業や事業団体と連携しながら、コネクテッドカー技術が連邦議会や規制当局の取り組みにどのような影響を与えるかについての理解を高める。同社は同グループのメンバーとともに、コネクテッドカーの進歩に必要不可欠な公共政策に関する問題を提起する。これらの問題には、ドライバーの注意、データ機密性、サイバーセキュリティ、自律走行技術、技術革新政策などが含まれる。(2016年2月10日付プレスリリースより)

-同社の日本法人であるハーマンインターナショナルは、自動車メーカー向けのカーナビゲーション事業を強化する。これまで日本では自動車メーカー向けにオーディオ製品を供給してきたが、スズキの軽自動車のメーカーオプションとして初めて同社製ナビが採用されたのを機に、今後は供給車種の拡大や他メーカーからの受注を目指す。Harman本社ではインフォテインメント分野で日本を戦略市場と位置付けており、日本法人ではエンジニアの増員など投資も積極化する。(2015年7月7日付日刊自動車新聞よ り)

主な受注

<2016年6月期>

搭載モデル 製品
Maserati 「Levante」 次世代コンピューティングプラットフォーム
オーディオシステム(14スピーカー付きBang & Olufsenオーディオシステム、または17スピーカー付きBowers & Wilkinsオーディオシステムシステム)
インフォテインメントシステム
Mercedes-Benz 「GLC Coupe」、「AMG GLC43」 先進コンピューティングソリューション
Lincoln 「Navigator」 Revelオーディオシステム (QuantumLogicサラウンドシステム及びClari-Fi 音源復元システム付き)
トヨタ 「Prius」 PHV JBLプレミアムオーディオシステム (GreenEdge技術搭載)
現代 「Ioniq」 HV、EV Infinityプレミアムオーディオシステム
起亜 「Cadenza」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
スバル 「Impreza」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
スズキ 「Ignis」 インフォテインメントシステム (Apple CarPlay対応、音声認識機能システム搭載)
Aston Martin 「DB11」 Bang & Olufsen BeoSound DB11オーディオシステム (13スピーカー)
Audi 「Q2」 Bang & Olufsen オーディオシステム (14スピーカー)
インフォテインメントシステム
Volvo 「V90」、「S90」 Bowers & Wilkinsオーディオシステム
Rinspeed 「ΣTOS」 LIVS (Life-Enhancing Intelligent Vehicle Solution) コンピューティングプラットフォーム
Rinspeed 「Budii concept」 インフォテインメントシステム
Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
Porsche 「911 Carrera」、「718 Boxster」、「Macan」 インフォテインメントシステム
Mercedes-Benz 「C-Class Convertible」 インフォテインメントシステム
Seat 「Ateca」 インフォテインメントシステム
スズキ 「Hustler」 インフォテインメントシステム
Genesis 「G90」 インフォテインメントシステム (2D、3Dナビゲーション、高解像度マップ、音声認識システム、Bluetooth接続、200GBハードドライブ、Lexiconサラウンドシステム)
Lincoln 「MKZ」 Revelオーディオシステム (14スピーカー) またはRevel Ultimaオーディオシステム (20スピーカー)
Lexus 「RX」 Mark Levinsonプレミアムサラウンドシステム (15スピーカー)
BMW 「M4 GTS」、「330e GT」、「X1 Sports Activity Vehicle」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
Mercedes-Benz 「GLS」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム (14スピーカー、Logic 7技術搭載)
Audi 「Q7」 Bang & Olufsen 3D Advanced Soundオーディオシステム
トヨタ 「RAV4」、「Mirai」 FCV JBLプレミアムオーディオシステム (GreenEdge技術搭載)
現代 「Elantra」 Infinityプレミアムオーディオシステム (8スピーカー)
起亜 「Sportage」、「Sorento」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
Mercedes-Benz 「GLE」、「A-Class」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
BMW 「X1」、「M3」、「3 Series」、「X5 plug-in hybrid」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
Mini 「Clubman」 Harman Kardonプレミアムオーディオシステム
Smart 「fortwo」 JBLオーディオシステム
BMW 「7 Series」 Bowers & Wilkinsサラウンドシステム
インフォテインメントシステム
Audi 「A4」 Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム
現代 「Santa Fe」 Infinityプレミアムサラウンドシステム
VW 「Tiguan」 インフォテインメントシステム
スズキ 「Solio」、「Solio Bandit」 インフォテインメントシステム

受賞

-2016年5月、Fordより 「World Excellence Award」 を 「Lincoln Luxury」 部門で受賞したと発表した。HarmanのRevelブランドのオーディオシステムが、Lincolnの新モデルに初めて採用されたことが評価されたもの。(2016年5月31日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ドル)
2016年6月期 2015年6月期 2014年6月期
全社 433.1 380.2 343.8

研究開発体制

-2016年3月、中国江蘇省の蘇州 (Suzhou) 工業園区に建設した開発センター 「Harman Suzhou Global Product Development Center (PDC)」 が稼働を開始したと発表した。カーオーディオ製品の開発センターとしては、米国、ドイツに次いで同社にとって3番目の拠点となる。敷地面積は12,000平方メートル。最新の研究開発施設を備え、研究者、エンジニア、支援チームなど350名が勤務する。北京汽車工業 (BAIC)、比亜迪汽車 (BYD)、長安汽車 (Changan)、奇瑞汽車 (Chery)、吉利汽車 (Geely)、長城汽車 (Great Wall)、上汽通用汽車 (SAIC GM) など、中国自動車メーカーと緊密に連携していく。(2016年3月23日付プレスリリースより)

-2016年1月、米国のミシガン州Noviで自動車事業の北米本社を開所したと発表した。建物面積は188,000フィート。従業員1,000名がコネクテッドカー、車載オーディオ、クラウドサービスなど、先進技術のエンジニアリングや開発に従事する。(2016年1月25日付プレスリリースより)

研究開発活動

-2015年11月、「Open AVB」 プロジェクトに貢献するオープンソースソフトウェアを開発したと発表した。自動車、民生品、プロオーディオ/ビデオ、工業製品などの市場におい て、「Ethernet AVB/TSN」 の採用促進を目指す。この技術には、オーディオ/ビデオトランスポートプロトコル (AVTP) のデータパイプラインが含まれている。フレキシブルで拡張可能かつ安全な車載ネットワーキングシステムを用いて、コネクテッドカーをアップグレードさせながら、車内での信頼性の高い通信に対するニーズに対応する。(2015年11月3日付プレスリリースより)

技術提携

-2016年1月、コネクテッドカーの分野でMicrosoftと提携すると発表した。モバイル生産性を向上させるサービスを提供するととも に、クラウドプラットフォーム、テレマティクス、ドライバー生産性など既存の製品・サービス・技術を用いて、ドライバーの利便性・安全性・信頼性を向上させ、自動車メーカーの業務効率も大幅に向上させることができるとしている。まず、関連するMicrosoft Office 365の機能をHarmanのインフォテインメントシステムに統合することを目指す。(2016年1月5日付プレスリリースより)

-2015年9月、ルネサスエレクトロニクスとの提携により開発した車載ネットワークシステムを発表した。このシステムは、運転における安全性や利便性を高めるエンターテインメント体験の実現に貢献する。ルネサスのプレミアムおよびミッドレンジレベルの 「R-Car」 シリーズは、車載情報機器向けシステムオンチップ (SoC) デバイス。HarmanのEthernet AVB対応の車載ネットワークシステムと組み合わされ、発売が開始されている。(2015年9月15日付プレスリリースより)

製品開発

後方歩行者検知システム
-2016年4月、死角を減らす新たな安全システム 「Reverse Pedestrian Detection」 を開発したと発表した。リアカメラやセンサーなど、さまざまなHarmanの車載システムからデータを統合し、車両後方にいる歩行者を検知する。特に、最も被害に合いやすい1~2歳の子どもも検知できるようにした。コンピュータビジョンや魚眼レンズにより車両後方の歩行者を検知し、超音波センサーからのデータと統合することで正確に認識することができるという。精度の向上に向けて、ステアリングホイールの角度や速度も参考にして、推定される衝突軌道を計算している。(2016年4月14日付プレスリリースより)

ドライバーの眼や瞳孔の動きを追跡するシステム

-2016年1月、ドライバーの眼や瞳孔の動きを追跡するシステムを新たに開発したと発表した。認知的負荷の高さやマルチタスクによる精神的 な負担を測定し、ドライバーの状況をセーフティシステムへ伝達することができる。このシステムにより、シートやステアリングホイールなどにセンサーを組み込む必要がなくなる。カメラが絶えずドライバーの瞳孔拡張の様子を捉え、ソフトウェアアルゴリズムが高度なフィルタリングと信号処理により瞳孔反射の分析を行う。これにより、モバイル端末をお休みモードにする、ADASシステムによる介入度合を調整するなど、ユーザーインターフェースを直感的に調節し、ドライバーにとって物理的・精神的な妨げを最小限にできるという。(2016年1月5日付プレスリリースより)

CES 2016出展オーディオシステム

-2016年1月、国際家電ショー 「CES 2016」 において、2種類の新型カーオーディオ 「Summit Car Audio」 プラットフォームおよび 「Infinity Voyager Drive」 ライフスタイルオーディオシステムを展示すると発表した。(2016年1月5日付プレスリリースより)

クラウドベースのサービスデリバリープラットフォーム
-2016年1月、コネクテッドカー向けにクラウドベースのサービスデリバリープラットフォーム (Service Delivery Platform) を発表した。自動車メーカーやサービスプロバイダーがコネクテッドカーにクラウドサービスを導入し、簡単に展開できるようにする。同社のプラットフォームでは、納車後のソフトウェアアップデート、部品の故障を予測する車両データ、予防保全、保証クレームの分析など、さまざまなサービスの提供が可能になる。(2016年1月5日付プレスリリースより)

特許

-2016年6月末時点、同社は3,670件以上の特許を保有、2,490件の特許を申請中。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2016年6月期 2015年6月期 2014年6月期
コネクテッドカー 94.1 117.3 91.5
ライフスタイルオーディオ 51.8 40.7 43.0
プロフェッショナルソリューションズ 28.1 21.3 12.5
コネクテッドサービス 10.0 7.5 0.0
その他 14.4 5.7 10.1
合計 198.5 192.5 157.1