Delphi 2007年度の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万米ドル)

2007年
12月期
2006年
12月期
増減率 備考
売上高 22,283 22,737 (2.0%) GM向け売上:
8,301百万米ドル (37%)
-前年度比 1,043百万米ドルの減少

その他顧客向け売上:
13,982百万米ドル (63%)
-前年度比 589百万米ドルの増加
営業利益 (1,945) (4,542) - -前年度比 2,597百万米ドルの損失縮小
当期純利益 (3,065) (5,464) - -前年度比 2,399百万米ドルの損失縮小

(単位:
百万米ドル)
2007年
12月期
2006年
12月期
増減率 主な要因
電子・安全
売上高 5,035 5,093 (1.1%) -販売数量の減少で161百万米ドル、契約価格値下げにより117百万ドルの売上減。

-為替差益により151百万米ドルの売上増。これが売上減を一部相殺。
営業利益 63 188 (66.5%) -契約価格値下げで117百万米ドル、販売数量の減少で64百万ドルの利益減。
パワートレインシステム
売上高 5,663 5,565 1.8% -為替差益により193百万米ドル増。

-販売数量の減少で162百万米ドル、契約価格値下げで101百万米ドルの売上減。
営業利益 (276) (128) - -販売数量の減少により177百万米ドル、契約価格値下げにより101百万米ドルの損失拡大。
電気・電子アーキテクチャー
売上高 5,968 5,365 11.2% -欧州、アジア、南米で販売数が増加し、526百万米ドル増。

-北米で販売が落ち込み、159百万ドル減。
-契約価格値下げによって131百万ドルの減。
営業利益 (36) (110) - -事業効率の改善、主として生産効率、材料効率の向上により284百万米ドルの増益。

-契約価格値下げにより131百万米ドルの減。
サーマルシステム
売上高 2,412 2,607 (7.5%) -販売数量の減少により335百万米ドルの減。

-為替差益により78百万米ドルの増。
営業利益 (29) (170) - -良好な業績によって191百万米ドルの増益。

-販売数量の減少で108百万米ドル、契約価格値下げによって55百万米ドルの減益。
オートモーティブホールディングスグループ
売上高 2,946 3,638 (19.0%) -販売数量の減少、工場閉鎖と一部生産中止によって737百万米ドルの売上減。

-為替差益の影響で63百万米ドルの増加。
営業利益 (393) (488) - -事業効率の改善、主として生産改善により352百万米ドルの増益。

-従業員に対する退職手当や、事業撤退に関わる費用の増加により、212百万米ドルの利益減。
共通・その他
売上高 259 469 (44.8%) -
営業利益 (1,274) (3,834) - -

受注

-奇瑞汽車
中国・奇瑞汽車(チェリー・オートモーティブ)から、複数のエアバッグを統合制御する乗員保護システムおよび、カーナビ・AVシステムを受注したと発表。奇瑞汽車に納入する乗員保護システムは、事故形態に応じて前席用エアバッグ、カーテンエアバッグ、サイドエアバッグで構成。助手席乗員検知システムやシート位置センサーを利用して、乗員の体格、助手席への乗車の有無といった状況を制御に反映、エアバッグの展開を最適化して被害を最小限にとどめる高機能タイプとした。09年から搭載の予定で、乗員保護システムについては全モデルに供給するメーンサプライヤーに選ばれた。高い成長率を継続する中国メーカーの主要サプライヤーに選ばれたことを生かして、グローバルな事業の拡大に結びつける。(2007年1月17日付日刊自動車新聞より)

-GM
"Set & Forget"クライメートコントロールシステムがSaturn Aura中型セダン(2007年モデル)に搭載されている。これは天候や環境条件の変化に応じて車内温度を自動調整し、快適性を高めるもの。(2007年2月28日付プレスリリースより)

-Chrysler
Chryslerに対して、車載用衛星TV放送(SIRIUS Backseat TV™)の受信機を供給する。2008年モデルの車種で同TV放送を受信できるのはChryslerの車両のみとなる。同社の受信機でデジタルオーディオ信号およびビデオ信号を受信、家族向けTV番組3チャンネルを車内で楽しめる。2008年モデルではChrysler 300、Dodge Charger、Dodge Magnum、Jeep Commander、Jeep Grand Cherokeeに本製品が採用される。また、2009年モデルではChrysler Town&Country、Dodge Grand Caravanに搭載される。(2007年4月2日付プレスリリースより)

-Daimler
Mercedes-Benzの最新型C-Class向けにコンプリート電気・電子ディストリビューションシステムを供給する。このシステムには、衛星ラジオおよびDAB(デジタルオーディオブロードキャスティング)の受信機、統合アンテナ、乗員感知システム、そして電気・電子ディトリビューションシステムが含まれている。また、220 CDIモデル向けにはコモンレール式ディーゼル燃料噴射システムが採用されている。(2007年4月5日付プレスリリースより)

-Ford
欧州Fordの新型Mondeoに同社の電気&電子アーキテクチャーが搭載される。従来型に比べ最大20%の軽量化に成功し、燃費と排ガス削減効果が向上。このMondeoには他にも、同社のスマートクルーズコントロール、ワイヤーハーネス、アクチュエーター、車体用電子機器、ダンパー、排気用キャニスター、アンテナが採用されている。(2007年7月2日付プレスリリースより)

-Mahindra&Mahindra
インドのMahindra&Mahindraに対して、"Ingenio"(2008年モデル)を皮切りにドライバー情報システム(DIS)を供給。Mahindra&Mahindraからの受注は今回が初。このシステムは、開放状態にあるドア、タイヤ空気圧の低下、燃料残量の低下などの重要事項を運転者に知らせる機能を持つ。(2007年8月2日付プレスリリースより)

-トヨタ
新しい超極薄肉ケーブルがトヨタ・Tundraの2007年モデルに搭載。この新ケーブルは世界初公開となる。ハロゲンフリー要求を満たしつつ、高い性能と耐久性を備え、更には小型化とリサイクル性も実現した。この新型ケーブルには、GEプラスチック社が同社と共同開発したFlexible Noryl® 樹脂が自動車業界で初めて使用されている。(2007年4月3日付プレスリリースより)

事業売却

-2007年1月
パワートレインおよびサスペンションマウント事業の大半を売却するため、投資銀行W.Y. Campbell & Co.と契約。

ブレーキホース事業売却に関して、Harco Manufacturing Group, LLCとの間で営業譲渡契約を締結。

-2007年6月
同社の子会社2社は、メキシコのSaltillo工場を含む同社のブレーキ部品関連事業の売却に関し、Robert Bosch LLC およびBoschの関連企業Frenados Mexicanos, S.A. de C.V.との間で合意。

-2007年9月
同社は関連会社を通じ、TRW Automotiveの子会社に北米のブレーキ部品生産・組立事業関連資産の一部を売却することで合意。

-2007年10月
触媒関連事業をUmicoreへの売却する手続を完了した。売却額は約6,600万ドル(最終調整前ベース)。同事業売却後も、エンジン制御システム(EMS)事業は継続する。

The Renco Groupの完全子会社に、内装システムおよびクロージャーシステム事業関連資産を売却することで基本合意。

サスペンション事業関連資産の売却を推進するため、投資銀行W.Y. Campbell & Co.と契約。

-2007年11月
芦森工業との合弁契約を解消。これに伴い、自動車用シートベルトを製造する米国、メキシコの合弁会社2社の株式を売却、2社の持株会社を清算する。合弁契約解消後も、自動車安全に関した部品分野の業務提携関係は維持する予定。両社は1999年8月に業務提携を、2000年に自動車用シートベルト製造と販売に関した合弁契約を締結していた。(2007年11月8日付日刊自動車新聞より)

-2007年12月

投資ファンドPlatinum Equity, LLCの連結子会社であるSteering Solutions Corporationに対して、同社のステアリングおよびハーフシャフト事業関連資産を売却することで最終的に合意。

会社設立

-米国
子会社Delphi Technologies Inc.(DTI)は、ミシガン州立大学およびAutomation Alleyと共同で、アンテナ事業の新会社Monarch Antenna, Inc.を設立。DTIと同大学が共同開発したSelf-Structuring Antenna (SSA)の商品化が目的。(2007年4月23日付プレスリリースより)

-中国
北京汽車工業(Beijing Automotive Industry Holding Company Ltd.)との合弁で、中国に"北京德爾福汽車安全産品有限公司(Beijing Delphi Automotive Safety Products Co., Ltd)"を設立。2007年8月よりシートベルトの生産を開始した。

>>> 詳細は設備投資参照

開発動向

研究開発体制

-2007年12月31日現在、18,500名が研究開発活動に従事。同社テクニカルセンターやカスタマーセンターに所在する16,000名のうち、1/3以上がソフトウェアのアルゴリズム開発を含めた、先端電子製品の開発に携わる。

-上海市の中国テクニカルセンター(CTC)の第2期工事を2007年4月中に開始、同年末に完成させると発表。2006年稼働した研究棟を拡張し、新たに総床面積1万2600平方メートルの2階建て研究棟を増築する。同社では中国での販売が好調なGMや、現地資本の自動車メーカーとの取引が順調に拡大している。(2007年4月23日付日刊自動車新聞より)

研究開発費
(単位:億ドル) 2007年12月期 2006年12月期 2005年12月期
金額 20 20 21

開発実績(2007年12月期)

-ガソリン直噴(GDi)システム
「2007年フランクフルト国際モーターショー(IAA)」で、新型ガソリン直噴(GDi)システムを発表する。バイオ燃料などに最適化したシステムで、複雑な後処理システムによるコストアップを避けながらも、米国カリフォルニア州の極超低公害車基準「SULEV」や欧州の排ガス規制「ユーロVI」といった、もっとも厳しいエミッション規制に対応することが可能だとしている。このほか「Euro6」や「US Tier2」などの規制に対応する新型コモンレール・システムや新型バッテリー・モニター、スマート・クルーズ・コントロールやアダプティブ・クルーズ・コントロールに使用する新世代のレーダー・センサーなど同社の最新の技術を一堂に展示する。(2007年9月7日付日刊自動車新聞より)

-オイルコンディションセンサー

ディーゼルエンジン用オイル、フィルターの交換サイクル延長を実現するセンサー技術を開発。オイルの粘度と誘電率を測定し、劣化具合を推定する独自技術。従来のオイル寿命の検知システムは、走行距離などの運転サイクルをベースに交換時期を推定しており、劣化前に交換するケースがみられた。新手法を利用すれば実際に劣化した段階で交換できるようになり、エンジンへのダメージを防ぎながら長期の使用につながる。2009年から大手トラックメーカーへの納入を予定。(2007年1月24日付日刊自動車新聞より)

-アンモニアセンサー
世界で初めて自動車用アンモニアセンサーの開発に成功。このセンサーはSCR(選択触媒還元)システムに対応している。SCRシステムは液体尿素の形でアンモニアを噴射。そのアンモニアがNOxと反応し、窒素と水に分解するシステム。同社のセンサーが排出ガスに含まれるアンモニア濃度を直接計測することにより、尿素の注入量を最適化。その結果、アンモニア排出の低減に貢献する。このセンサーは2010年中に生産開始を予定している。(2007年2月22日付プレスリリースより)

-貨物探知センサー
"Mid-Americanトラックショー"にて、トレーラー用貨物探知センサーを発表する。赤外線照明技術を利用し、トレーラー内の貨物の有無を容易に判別可能。このセンサーは貨物の有無を判断し、資産追跡システムを使用しているオフィス等に送信。この信号には同社の画像処理アルゴリズム技術が利用されている。ちなみにこのセンサーは40フィートから53フィートまでのほぼ全てのトレーラーに対応している。(2007年3月20日付プレスリリースより)

-バッテリーIVTセンサー
同社が新開発したIVTバッテリーセンサーは、電流(I)・電圧(V)・温度(T)を正確に測定する。このセンサーがアクティブバッテリー管理システムの一部として車両に統合されると、燃費の向上、バッテリー寿命の延長、オルタネーターの最適化が実現される。同社では2010年モデルの乗用車、商用車から同センサーの採用を見込んでいる。(2007年6月11日付プレスリリースより)

-スマートジャンクションボックス
ワイヤーハーネスの高機能化や軽量化に対応したスマートジャンクションボックス(分配器)を開発、今後、自動車メーカー各社への拡販を本格化する。電気分配機能と電子制御機能をパッケージ化し、車内通信系と電源供給などの配線を合理化できるとしている。(2007年10月31日付日刊自動車新聞より)

技術提携
車載テレビ受信機用チップを手がけるファブレス半導体企業であるディブコム社と、地上波デジタル放送の車載用受信の復調チップセットを共同開発すると発表した。日本の自動車メーカー向け車載器への搭載を前提に開発する。既存の北米向けなどの受信回路用プラットホームとの互換性を確保して、日本仕様の開発コストを削減する。2008年にも実用化する計画。(2007年1月20日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル) 2007年12月期 2006年12月期 2005年12月期
製品群別
電子・安全部品 161 180 282
パワートレインシステム 149 157 227
電気・電子アーキテクチャー 182 182 206
サーマルシステム 66 25 37
オートモーティブホールディングスグループ 3 53 126
共通・その他 19 25 147
廃止事業 66 99 1,025
合計 646 721 1,183
地域別
北米 255 253 572
欧州、中近東、アフリカ 217 275 331
アジア・大洋州 85 72 100
南米 23 22 22
廃止事業 66 99 158
合計 646 721 1,183

海外投資

-中国
エアコン関連部品で中国に2工場を新設する。2007年末にも上海近郊にオルタネーターの専用工場を着工するほか、2008年にはコンプレッサー工場も建設する。新工場の運営は韓国にある合弁会社が担当し、それぞれ中期的に年産万50規模に引き上げる。韓国向けおよびアジア地域での戦略拠点と位置付け、日系メーカー向け供給の拡大も視野に入れる。中国の2工場を運営するのは、同社が50%、GM系の大宇自動車(GMDAT)など韓国企業が50%を出資する韓国デルファイ・オートモーティブ・システムズ(KDAC、韓国南部のテグ市)。コンプレッサー工場の建設予定地は未定だが、オルタネーター工場は上海近郊の昆山市に建設する。2工場の新設により、デルファイの中国生産拠点は14工場となる。(2007年4月6日付日刊自動車新聞より)

同社と北京汽車工業(Beijing Automotive Industry Holding Company Ltd.:BAIC)は、中国にシートベルト生産の合弁会社を設立。新会社の商号は「北京德爾福汽車安全産品有限公司(Beijing Delphi Automotive Safety Products Co., Ltd)」で、北京市昌平区(Changping District)に本社を置く。延床面積は1,800平方メートル。2007年8月からシートベルトの生産を開始し、中国市場向けに製品を供給している。欧州の顧客へ製品を供給する契約も締結済み。(2007年10月26日付プレスリリースより)

-ルーマニア
ルーマニアにディーゼルエンジン(DE)用制御システムの生産拠点を建設すると発表。欧州最新の排ガス規制である「ユーロ5」に関連したユニットの受注が増えていることから工場を新設し、供給能力を高める。新工場はルーマニア北東部のヤシに置く。中期的に従業員を1千人規模に拡大するほか、累積投資は1億ユーロを超える見込みとしている。生産品目は制御システムに加えて、コモンレールシステム用の高圧ポンプ、インジェクターなどを追加、DE専用拠点として育成に取り組む。(2007年8月6日付日刊自動車新聞より)