BorgWarner Inc. 2017年12月期の動向
業績 |
(単位:百万ドル) |
2017年 12月期 |
2016年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 9,799.3 | 9,071.0 | 8.0 | 1) |
営業利益 | 1,077.1 | 225.9 | 476.8 | 2) |
エンジン部門 | ||||
売上高 | 6,061.5 | 5,590.1 | 1.6 | 3) |
ドライブトレイン部門 | ||||
売上高 | 3,790.3 | 3,523.7 | 7.6 | 4) |
要因
1) 売上高
-2017年12月期の売上高は前年比8.0%増の9,799.3百万ドル。外国為替のマイナスの影響と買収・売却の影響を除き、前年比10.3%増。
2) 営業利益
-2017年12月期の営業利益は前年比476.8%%増の1,077.1百万ドル。主な増益要因は、2016年12月期に投入した特別損出が小額だったため。これらの費用はアスベストに関連したクレーム費用、Remy インターナショナル買収に伴う損出およびリストラ費用や資産減損損失等。
3) エンジン部門
-2016年12月期のエンジン部門の売上高は前年比1.6%増の5,590.1百万ドル。為替のマイナス影響を除くと、前年比7.7%増。ライトビークル向けターボチャージャーの販売増や世界市場での商用車の増加に伴うエンジンタイミングシステムの売上増加などが貢献した。
4) ドライブトレイン部門
-2017年12月期のドライブトレイン部門の売上高は前年比7.6%増の3,790.3百万ドル。為替のマイナス影響を除くと、前年比14.9%増。とくに全輪駆動 (AWD) システムとトランスミッション部品の売上増加が貢献した。
買収
-同社は、7月に発表したSevconの買収が完了したと発表した。SevconはEVおよびHV車向けのモーターコントローラー等ゼロエミッションソリューションを提供するサプライヤー。同社の2017年の売上高は約60百万ドルとなる見通し。(2017年9月28日付プレスリリースより)
最近の動向
-同社が電動パワートレーン戦略で攻勢をかけている。各国での環境規制の強化を背景に車の電動化が進むのに対応、一昨年には駆動用モーターを手がけるレミー・インターナショナルを買収した。レミーの技術を取り入れた製品を開発して中国をはじめ、グローバルで電動化関連ビジネスを拡大する。パワートレーン関連の調達は系列が中心の日系自動車メーカーは「要求が特殊」でハードルは高いとの認識ながら、ハイブリッド車(HV)向け製品の事業は拡大している。内燃機関向け部品が主力の大手サプライヤーが車の電動化時代に生き残る術を模索している。(2017年8月16日付日刊自動車新聞より)
-同社は、ZFのトランスミッションに搭載するデュアルクラッチモジュールの生産を開始したと発表した。この技術はまずV6およびV8ツインターボガソリンエンジンとV8ディーゼルエンジン用デュアルクラッチトランスミッションで使用され、その後はハイブリッド車向けにも対応する見込み。高性能スポーツカー向けに設計された、同社の欧州で初めてとなるデュアルクラッチモジュールは、ドイツで開発・生産が行われた。(2017年5月22日付プレスリリースより)
-同社は、Autotech Venturesへの10百万ドルの投資を発表した。Autotech Venturesは交通の将来に焦点を当てたベンチャーキャピタルファンドで、機関投資家およびスタートアップ企業のパートナーシップを促進している。同社は今回の投資を通じて、現行製品のポートフォリオ以外にも推進技術とモビリティ分野にも投資する機会を示した。また、同社の技術ポートフォリオの進化によって求められる人材も変わってきており、同社では2013年から現在までにパワーエレクトロニクスエンジニアリングチームの従業員数を3倍に増員している。2021年までにはさらに倍増する予定。(2017年4月3日付プレスリリースより)
受注
-特定車両モデルに供給している製品は以下の通り。
<エンジン部門>
製品 | 搭載モデル(エンジン) | 備考 |
R2S 2段ターボチャージィングシステム | BMW 「M5」, 「7 Series」 | 4 ターボチャージャー採用。低圧・高圧それぞれ2段階。 |
ウェイストゲートターボチャージャー | GAC Trumpchi 「GA8」, 「GS7」, 「GS8」, 「GM8」 | - |
R2S 2段ターボチャージィングシステム | BMW 「5 Series」, 「M5」 | 2段VTGターボチャージャー |
R2S 2段ターボチャージィングシステム | Mercedes-Benz 「S-Class」 | - |
6.35 mm サイレントオイルポンプチェーン | トヨタ 「 Camry」 | NVH低減の2リンクプロファイルのデュアルリンクデザイン |
エンジンタイミングシステム | Renault 「Kwid」 | - |
エンジンタイミングチェイン、主にチェインテンショナー、ガイド、アーム、バランサーチェイン、バランサーテンショナー | 東風汽車・Renault 「Kadjar」 | - |
R2S 2段ターボチャージングシステム | Land Rover [Range Rover Sport], 「Discovery」 | VYG技術および水冷式コンプレッサーハウジング使用 |
ウェイストゲートターボチャージャー | ホンダ 「Civic」 | - |
ウェイストゲートターボチャージャー、VCT フェーザー, エンジンタイミングシステム | Ford 「F-150」 | 3.5L Fordエコブーストエンジンに使用 |
ファンおよびファンドライブ | Freightliner 「Cascadia」 | デトロイト DD13, DD15, DD16エンジンおよびカミンズ ISX15エンジンに使用 |
R2S 2段ターボチャージングシステム | 長城汽車 Haval 「H8」, 「H9」 | - |
EGRクーラー, EGRバルブ, 空気圧バイパスバルブ | Ford 「F-250 Super Duty」, 「F-350 Super Duty」,「F-450 Super Duty」 | Ford パワーストローク6.7L V8ディーゼルエンジンに使用 |
サイレントタイミングチェーン, ガイド, 油圧テンショナー, スプロケット, オイルポンプチェーンを含む完全エンジンシステム | GM Chevrolet 「Spark」, 「Cruze」, 「Malibu」 | 南米および韓国で製造される1.0Lおよび1.5Lエンジンに使用 |
サーモスタックバルブ | Fiat 「124 Spider」 | 冷却流量の管理によりエンジン温度を安定化するためにFiatの1.4L エンジンに使用 |
エンジンタイミングチェインドライブシステム | GAC Trumpchi 「GS4」 | 1.5Lエンジンに使用 |
カムトルク可変カムタイミング技術 | スバル 「Impreza」 | スバル 1.6- 2.0Lボクサーエンジンに使用 |
HY-VOチェイン | GM Chevrolet 「Volt plig-in hybrid」, 「Malibu hybrid」 | NVH低減のための2つのユニークなリンクプロファイル |
コンパクトなプラグトップイグニションコイル | 昌安 「CS75」 | 昌安の1.5Lおよび1.6Lエンジンに使われる複合材料から作られたもの |
サイレントチェイン | スズキ 「Solio」 | - |
<ドライブトレイン部門>
製品 | 搭載モデル (トランスミッション) |
備考 |
NexTrac 全輪ドライブシステム | GAC Trumpchi 「GS8」 | 効率と騒音低減のサイレントチェ-ン技術 |
3L ガソリンエンジン用48-Volt マイルド ハイブリッドシステム |
Daimler含むグローバル自動車メーカーのモデル | eブースター電動コンプレッサーとiBAS統合ベルトオルタネーター使用 |
プリエンプティブ・オンデマンド・トランスファーケース | Range Rover 「Velar」 | モジュラーデザイン、軽量アルミハウジング、車両信号モニターなどが特徴 |
高電圧Hairpin 410 (HVH) 電動モーター | Scania 「Citywide」 ハイブリッドバス | 300kWと2,000Nmまで起こす650-Volt モーターとしての完全収納されたモーターあるいはローター/ステーターアッセンブリー |
トルクオンディマンド・トランスファーケース | FCA 「Dodge Challenger GT」 | センサー入力に基ずきトルクを再配分するビークルダイナミックコントロール技術活用 |
ハイスピードスターターモーター | GM Chevrolet 「Cobal」, 「Onix」, 「Spin」, 「Montana」 | GM Brazilの1.0L, 1.4L, 1.8Lエンジンに使用 |
Dual Tronic クラッチ/コントロール モデュール |
長城汽車とWEYモデル | 長城汽車のウエットデュアルクラッチトランスミッションの品質改善のための高度なソレノイドバルブと摩擦材を使用 |
スプラグワンウェイクラッチ | FCA Chrysler 「Pacifica Hybrid」 | 電気あるいは伝達トルクを発生させる2次モーターを可能にさせる |
電気駆動コンプレッサーの48-volt eブースター | Daimlerを含む3 OEMのモデル | 燃料効率を5% - 10%改善 |
ねじり振動ダンパー統合のDual Tronic クラッチ/コントロールモデュール |
長安汽車 「Eado」, 「Eado XT」, "CS85" | - |
4WD トランスファーケース | 江西いすゞ 「Ruimai」 | - |
2018年12月期の見通し
-20187年12月期の売上高は前年比5.0~7.0%増となる見通しで約10,500百万ドル。
研究開発費 |
(単位:百万ドル) |
2017年12月期 | 2016年12月期 | 2015年12月期 | |
合計 | 407.5 | 343.2 | 307.4 |
売上に対する比率 (%) | 4.2 | 3.8 | 3.8 |
-上記3年間に研究開発費全体の5%を超える個別の研究開発案件はない。
-2018年12月期の研究開発費は売上高の約4%の約420百万ドルを計上する見込み。
研究開発拠点
-同社は、AndersonとPendletonの既存の技術センターを統合して、インディアナ州Noblesvilleに新たに技術センターを開設すると発表した。2017年6月着工予定で、2018年春の完成を見込む。広さ100,000平方フィートの新センターにはスターター、オルタネーターおよび電動化技術に関するエンジニア、設計者、技術者らが従事する。現在の技術センターで働く従業員は、今後数年かけて新センターに移籍する予定。(2017年5月3日付プレスリリースより)
製品開発
2017国際CTIシンポジウムでの紹介技術
-同社は、ドイツBerlinで4日から開催される自動車用トランスミッションの国際会議「International CTI Symposium」で、同社の先進トランスミッション技術を紹介する。内燃、ハイブリッド、電気自動車向けの最新技術の紹介に加え、シンポジウムでは、同社の技術者らが高性能なP2ハイブリッドモジュールについて講演する。また、さらなるダウンサイジング・気筒休止を実現した可変スプリングアブソーバー(VSA)も公開される予定。(2017年12月4日付プレスリリースより)
高電圧PTCヒーター
-同社は、同社のEV向け高電圧PTCキャビンヒーターを世界的に知られるEVメーカーに供給すると発表した。同ヒーターは、送風機からの気流の温度を上昇させ、快適で臭いのないキャビン環境を提供すると同時に、効率的な運転によりバッテリーのパワーもセーブする。ヒーターコアにはセラミックPTCを採用。セルフレギュレータ機能により、低温時も強力なヒーティングが可能で、気温が上昇しヒーターへの要求が減ると、使用されるエネルギーも自動的に減少、ヒーターは最大で7kwのパワーを生み出すという。(2017年9月21日付プレスリリースより)
可変タービンジオメトリー (VTG) ターボチャージャー
-同社は、広範囲のガソリン車向けに対応できる可変タービンジオメトリー(VTG)ターボチャージャーを開発したと発表した。このターボチャージャーは、ハイブリッドシステム等の新しい内燃エンジンにもマッチする、クリーンで効率的な先進ソリューション。デザインと材料の最適化によりコスト効率とハイパフォーマンスを兼ね備え、低速時の応答性も高く、急加速にも対応できる性能を備える。ドイツのスポ-ツカーメーカーとの10年にわたる共同開発により、同社はVTGターボチャージャーの量産化に成功した。(2017年3月2日付プレスリリースより)
特許
-2017年12月末時点、同社は6,425件以上の特許および特許出願を保有している。
設備投資額 |
(単位:百万ドル) |
2017年12月期 | 2016年12月期 | 2015年12月期 | |
合計 | 560.0 | 500.6 | 577.3 |
売上に対する比率 (%) | 5.7 | 5.5 | 7.2 |
国内投資
-同社は、20百万ドルを投じてミシシッピ州Water Valleyの工場を拡張すると発表した。拡張は今後2年間にわたって行われ、スタート/ストップアキュムレーターや小型直動式可変ソレノイド等の先進トランスミッション技術の需要に対応する。同社のエコスタート技術はスムーズな再スタートにより燃費効率を改善し、小型直動式可変ソレノイドはシフト感、燃費効率、排ガス量の改善のために油圧設計を最適化する。同工場の従業員数は現在500名で、拡張により75名を増員する。(2017年9月19日付 Mississippi Development Authorityリリースより)
海外投資
<インド>
-同社は、インドのKakkalurにある同社 Morse Systemsの工場を2017年後半に17,000平方フィート拡張すると発表した。拡張により、乗用車、軽商用車、オートバイ向けエンジンタイミング部品の需要増加に対応し、新たな排出ガス基準「BS6」を満たす製品を開発・生産することを目指す。同社 Morse Systemsは2002年に設立され、本工場は2017年に設立15周年を迎えた。(2017年2月6日付プレスリリースより)