Alcoa, Inc. 2014年12月期までの動向

ハイライト

近年の動向

生産再編

-長期供給契約が結ばれている米国アイオワ州での自動車アルミシート生産拡大に続き、米国テネシー州での生産能力増強を進めており、2015年半ばには完了予定。また、サウジアラビアでの合弁による圧延工場の生産能力増強が2014年末までに完了。この3カ所の拡張について、670百万ドルを投じている。

-2014年12月1日、米国サウスカロライナ州のGoose CreekにあるMt. Hollyアルミ製錬所の保有株式50.3%をCentury Aluminum Companyへ売却する手続きが完了したと発表。売却金額は67.5百万ドル。Mt. Holly製錬所の従業員数は500名で、アルミ製錬能力は年間22.9万トン。今回の売却により、Alcoaのグローバルの製錬能力は年間350万トンまで削減されるという。

-2014年8月、イタリアのカルボーニア=イグレーシアス県にあるPortovesmeアルミ製錬所を完全閉鎖すると発表。同製錬所は、2012年11月から生産を縮小している。今回の閉鎖により、同社のグローバルの製錬能力は年間15万トン削減され、年間360万トンとなる見込み。 (2014年8月25日付プレスリリースより)

-2014年3月、ブラジルのSao Luisに位置する合弁会社Alumarの製錬所およびPocos de Caldas製錬所において、アルミニウムの製錬能力を2014年5月末までに147,000トン削減すると発表。同社は2013年にPocos拠点で34,000トン、Sao Luis拠点で97,000トンを削減した。今回の計画では、Pocos拠点において62,000トンを削減し、これにより3つの電解炉を閉鎖する。Sao Luis拠点で残りの85,000トンを削減する計画。なお、この製錬能力削減に伴い、Pocos拠点では精錬所も生産能力を削減する。ただし、Pocos拠点の鉱山・アルミニウム粉末工場・鋳造工場およびSao Luis拠点の精錬所は、これまで通り稼働する予定。その他のAlcoaのブラジル拠点に影響はないという。 (2014年3月28日付プレスリリースより)

-2014年2月、オーストラリアにあるPoint Henry製錬所と同国の2カ所の圧延工場を完全閉鎖すると発表。Point Henry製錬所および隣接する圧延工場は、ジョージア州Geelongに位置。もう1つの圧延工場は、リサイクル工場とともにニューサウスウェールズ州Yennoraに位置する。Alcoa of Australiaが運営する製錬所は2014年8月に、Alcoa Inc.が運営する2つの圧延工場は年内に閉鎖する予定。従業員数は、製錬所が約500名、圧延工場が約480名となっている。今回の閉鎖により同社は、製錬能力19万トン、アルミ缶用シートの生産能力20万トンを削減することになる。閉鎖完了後に、同社全体の製錬能力は約3,760,000トンとなる見込み。 (2014年2月17日付プレスリリースより)

-2014年1月、米国ニューヨーク州のMassena East製錬工場において、2014年第1四半期に残りの2つの電解炉も完全閉鎖すると発表。これらの電解炉に関してはコスト競争力が維持できないと判断されたため。同拠点にある3つの電解炉の1つは、2013年8月にすでに完全閉鎖している。今回の計画により、同社は製錬能力を84,000トン削減する。なお、Massena West工場は引き続き操業を続けるという。 (2014年1月15日付プレスリリースより)

-2013年8月、米国およびブラジルにおいて、製錬能力を16.4万トン削減すると発表。2013年5月に発表した製錬能力の見直し計画の一環となる。米国ニューヨーク州のMassena East工場では、4万トンの処理が可能な電解炉を完全閉鎖する予定。さらに、ブラジルの複数の製錬所でも一時的に12.4万トンの削減を開始した。これらの計画は2013年9月末までに完了する予定。同社は、今年5月に発表した46万トンの削減計画のうち、これまで26.9万トンの計画を明らかにしている。これには、カナダのBaie-Comeau製錬所における10.5万トンの削減も含まれる。ただし、4.4万トンの生産能力を持つイタリアのFusina製錬所の完全閉鎖は、同計画には含まれていない。米国とブラジルでの閉鎖・削減計画が完了すれば、同社が使用していない製錬能力は全体の16% (64.68万トン) となる見込み。(2013年8月14日付プレスリリースより)

-2013年6月、イタリア・ベネツイアのFusinaアルミニウム製錬工場を完全閉鎖すると発表。同工場は、2010年から事業縮小の対象となっていた。同工場の閉鎖により、同社の全世界におけるアルミニウム製錬能力は、44,000トン削減され、年間420万トンとなる。同工場の閉鎖は、同社の全世界で46万トン削減するという目標の一部として検討されていた。同社が有するFusina圧延工場は、別途営業を続ける。(2013年6月28日付プレスリリースより)

-2013年5月、カナダ・ケベック州にあるBaie-Comeau製錬所の改修計画を見直し、その一環として電解炉の新設計画を延期すると発表。一方で、同拠点のアップグレードに向けて今後3年間で1億ドルを投資するほか、2つのゼーダーベルグ式電解炉を完全閉鎖する予定。新たに建設する電解炉の稼働開始は、これまでの計画の2016年から2019年にずれる見通し。同社が保有するなかで最もコストがかかる2つのゼーダーベルグ式電解炉は、8月末までに閉鎖する予定。これにより、10.5万トンの製錬能力削減につながる。なお、今回のプロジェクトは、2013年5月1 日付で発表された46万トンの製錬能力削減計画の一環となる。(2013年5月16日付プレスリリースより)

-2013年5月、今後15ヶ月をかけて製錬能力を46万トン削減する方針を検討すると発表。2011年のピーク時から、アルミの価格が33%以上下落していることに対応するもの。この計画が進められれば、同社の世界全体の製錬能力は11%削減されることになる。なお同社は現在、製錬能力の13% (56.8トン) を使用していないという。(2013年5月1日付プレスリリースより)

合弁事業
-2014年2月、同社とサウジアラビアの鉱業会社Ma'adenは、サウジアラビアに合弁で設立したアルミニウム複合施設においてアルミナ精錬所が稼働し、サウジアラビア産のボーキサイトからアルミナの精製を開始したと発表。フル稼働時には年間180万トンのアルミナを生産する計画。生産したアルミナは、コンベヤーで隣接する製錬所に運ばれる。この製錬所では、年間74万トンの高品質アルミ製品を生産し、湾岸のアラブ諸国をはじめグローバル市場に供給する。 (2014年12月21日付プレスリリースより)

受注

-2015モデルイヤーのFord 「F-150」 に同社の軍事グレードのアルミ製品が幅広く採用され、700ポンド (約318Kg) の軽量化を実現した。

-2014年発売のTesla 「Model S」 へ同社アルミ製品が多く採用され、鉄製比33%の重量削減、200ポンド (約90.7Kg) 以上の軽量化を実現した。

-2013年発売のCadillac 「ATS」 へ同社のアルミフードが採用された。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
合計 218 192 197

 

製品開発

アルミシートの生産技術
-2014年12月、自動車用アルミシートの新たな生産技術「Micromill」を発表した。金属の微細構造を劇的に変化させることで、自動車製品向けのアルミ合金は自動車製品の厳しい品質要件をクリアしながら、既存のアルミを使用した製品に比べて成形性が40%、強度が30%向上する。さらに、高強度鋼で作った部品に比べて成形性は2倍、重量も30%以上軽くなり、軟鋼と同等の成形性を持つという。すでに開発を受注しており、米国テキサス州のSan Antonioにある「Micromill」のパイロット施設において、顧客による試験を成功させている。 (2014年12月4日付プレスリリースより)

アルミニウムの接着技術
-2014年7月、同社のアルミニウム接着技術「Alcoa 951」がR&D Magazineより「R&D 100 Award」を受賞したと発表した。このアルミを多用した車両向けの接合前処理技術では、競合技術に比べて9倍の耐久性を持つという。現在、米国アイオワ州のDavenportにあるAlcoaの工場において、出荷前のアルミシートに「Alcoa 951」を適用する処理工程が行われている。 この技術は、2013年4月、ドイツのChemetallとの間でグローバル独占販売契約を締結したもの。

トラック用ホイール
-2014年3月、最軽量となる大型トラック用ホイール「Ultra ONE」を発表した。重さは40ポンドで、同サイズのスチール製ホイールに比べて47%の軽量化を実現。同社が開発した「MagnaForce」合金を使用したこの新型ホイールは、トレーラーリグ1台あたり最大1,400ポンドの軽量化につながる。フリート管理会社にとっては国の排出ガス基準に準拠しながら、さらに多くの商品を運搬することができるという。 (2014年3月27日付プレスリリースより)

-2014年1月、従来製品に比べ高耐久性でメンテナンスが容易な商用車用ホイール「Dura-Bright EVO」の量産を開始した。この新型ホイールは、従来のXBR技術を用いた「Dura-Bright」ホイールの特徴を備えながら、さらに性能を向上させたもの。道路用の塩や天候が原因となる腐食に対する耐性がこれまでの10倍となる。さらに、強力なトラック用洗浄剤に使用するフッ化水素酸などの化学薬品に対しても最大3倍の耐性を持つという。Alcoaは現在、この「Dura-Bright EVO」の生産をハンガリーのSzekesfehervar工場で行い、欧州市場で販売している。2015年までにグローバル市場での販売を開始する計画。 (2014年1月23日付プレスリリースより)

-2013年10月、トラックホイール用の新型軽量アルミ合金「MagnaForce」を発表。業界標準となっているAlcoa製合金6061に比べて強度が16.5%増した。この合金は、米国ペンシルベニア州のPittsburgh郊外にある軽金属研究開発センター「Alcoa Technical Center」において、2年間かけて開発された。同社は、2014年はじめにこの合金を使用した新型ホイールを発売する予定。(2013年10月20日付プレスリリースより)
 

技術提携

-2014年2月、同社とイスラエルのクリーンテクノロジー会社Phinergyは、空気とアルミニウムで発電するPhinergyのEV用バッテリーの開発を共同で進めることで合意した。新たな材料や生産プロセス、部品などを共同で開発し、EVの走行距離を1,000マイルまで伸長する空気アルミニウム電池の製品化を目指す。Phinergyの空気アルミニウム電池は、空気と水を使ってアルミニウムに貯蔵した電力を放電する技術。バッテリーに使用する50個のアルミプレートは1個につき車を約20マイル動かすことができるため、走行距離は約1,000マイルに伸びるという。Alcoaは、米国ペンシルベニア州のPittsburgh郊外にあるテクニカルセンターでこのプロジェクトに取り組む。 (2014年2月5日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
合計 1,219 1,193 1,261

国内投資

-2014年1月、米国アイオワ州のDavenportにある自動車用アルミシート工場において、拡張工事が完了したと発表した。投資額は300百万ドル。すでに長期供給契約を受注している同工場では、今回の拡張により従業員150名を増員した。このDavenport拠点のほかには、自動車用製品の生産能力拡大に向けて、テネシー州の拠点も2015年半ばまでに拡張を完了する見込み。また、サウジアラビアの合弁事業である圧延工場も2014年末までに完了する。なお、この3拠点に約670百万ドルを投じる計画。(2014年1月14日付プレスリリースより)

-2013年8月、米国テネシー州にある拠点の拡張工事を着工したと発表。これにより、自動車用アルミニウムの需要増加に対応する。投資額は275百万ドル。これまで発表された計画では、同工場のアルミ缶用シートの生産能力の一部を、高強度の自動車用アルミニウム用にするという。2015年半ばの完成時には、新たに200名の従業員を増員する計画。(2013年8月29日付プレスリリースより)

海外投資

<ハンガリー>
-2015年1月、ハンガリーにあるホイール工場の拡張を完了したと発表。今回の拡張により同社の「Dura-Bright EVO」ホイールの生産能力は2014年の2倍になる見込み。欧州市場において、耐久性が高くメンテナンスが容易な商用車用軽量アルミホイールの需要増に対応する。13百万ドル (28億フォリント) を投じた拡張工事は計画通りに完了し、フル稼働時には同国で新たに35名の新規雇用を創出するとみられる。今回の拡張計画に向けて、ハンガリー政府は政府主導の経済開発プログラム「Regional Operative Program」を通じて4.4百万ドルの支援を行っている。 (2015年1月30日付プレスリリースより)