日本特殊陶業 (株) 2016年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2016年 3月期 |
2015年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 383,272 | 347,636 | 10.3 | - |
営業利益 | 66,279 | 62,196 | 6.6 | - |
経常利益 | 64,478 | 67,907 | (5.0) | - |
当期純利益 | 30,815 | 36,753 | (16.2) | -米国反トラスト法 (独占禁止法) 違反関係で一部の顧客に対する和解金14,837百万円を特別損益として計上 |
自動車関連事業 | ||||
売上高 | 322,856 | 292,794 | 10.3 | -北米や欧州を中心に自動車販売が伸び、新車組付用製品も補修用製品も販売が堅調に推移 -連結子会社としたWells社の売上が寄与 -為替相場における円安基調が増収に寄与 |
営業利益 | 71,134 | 68,331 | 4.1 | - |
事業再編
-日本特殊陶業は、事業本部制を廃止し、製品別の事業部制を導入する組織改正を4月1日付で実施すると発表した。これまで、自動車関連事業本部が点火プラグやセンサー、テクニカルセラミックス事業本部で半導体などを手がけてきたが、プラグや燃料電池など九つの事業部に細分化する。(2016年3月4日付日刊自動車新聞より)
買収
-2015年5月8日付でWells Vehicle Electronics Holdings Corp. (旧社名: UCI Acquisition Holdings (No.2) Corp.) の全株式を取得する旨の株式譲渡契約を締結し、2015年7月1日付で当該株式の取得を完了、同社が完全子会社化した。
-2015年7月、スイッチやイグニッションコイルなどの補修部品を手がける米Wellsの全株式を取得したと発表した。取得金額は2億5750万ドル (約310億円)。Wellsは米国の補修市場で高いシェアを確保しているが、米国以外での販売拡大が課題だった。今後、日本特殊陶業の世界販売網を活用してボリューム拡大を目指す。同社もWellsを傘下に収めることで、自動車関連事業のさらなる強化につなげる。(2015年7月4日付日刊自動車新聞より)
海外事業
<中国>
-2020年度までに、中国の新車組み付け用点火プラグでシェア3割を目指す。現状4割を握る世界シェアに対して、中国では半分以下の2割弱にとどまっている。販売台数が増えている 「中低級車」 「低級車」 のボリュームゾーンに攻め込み、世界最大の自動車生産国でシェアを高める方針。中国地場資本の自動車メーカーへの提案活動を強化する。(2016年8月24日付日刊自動車新聞より)
製品開発
FCV向け水素漏れ検知センサー
-2016年3月、燃料電池車 (FCV) 向けの水素漏れ検知センサーの販売を開始したと発表した。熱伝導検知方式を採用して精度を向上したほか、経年劣化や振動、衝撃への耐久性も高めた。今回、新型FCVに採用された。同社では2006年にFCV用水素漏れ検知センサーの開発を開始。ヒーターから水素が奪う熱量を計測することで水素の有無を高精度に検知する熱伝導式を開発した。(2016年3月15日付日刊自動車新聞より)
排出ガス計測器
-2016年に車載型排出ガス計測器を市場投入する。排出ガス計測器を商品化するのは今回が初めて。同社が強みとするO2 (酸素) やNOX (窒素酸化物) などのセンシング技術を応用。車載型計測器の需要拡大が見込まれる中、小型かつ低コストを実現することで販売につなげていく。(2015年10月8日付日刊自動車新聞より)
固体酸化物形燃料電池 (SOFC)
-電気化学反応によって電気と熱を生み出す燃料電池。水素社会の構築に貢献することを掲げ、固体酸化物形燃料電池 (SOFC: Solid Oxide Fuel Cell) の発電をおこなう 「スタック」 の開発を推進。
無鉛圧電セラミックス
-外部から力を加えると電圧を発生する圧電セラミックスについて、鉛を含まずに同等の特性を持つ無鉛圧電セラミックスを開発。
研究開発体制
-活動の主体となるのは、本社機構である技術開発本部、新規事業推進本部、燃料電池事業推進本部および各事業部技術部。また、国内外の学会・協会への参画、大学・公的研究機関との共同研究等により最新技術を入手・導入している。
-テクニカルセンターを米国、欧州、ブラジル、韓国に保有。
研究開発活動
スパークプラグ
-耐高温性・耐高電圧性・高着火性を高めるとともに、より一層の小径化・長尺化を推進し、材料開発から製品設計、製造方法まで一貫して開発を実施。
-小径、長尺化によりエンジン冷却性能を最大限に引き出すことが可能になるロングリーチプラグに耐電圧性能を向上させた新絶縁体を組み合わせたプラグを開発し、欧州メーカーに採用されている。
-高効率ターボ機種向けのスパークプラグとして、耐久性を確保しつつ着火性をさらに高め、要求性能を実現したプラグの仕様を確立。
ディーゼルエンジン用グロープラグ
-排気ガス規制に対応した、昇温特性に優れ、高寿命を有するプラグやその温度をコントロールする制御システムを開発を行っている。
-グロープラグと圧力センサーを一体化した新製品の開発を推進。量産開始に向け、高精度な接合を可能とするレーザー溶接技術や量産部品の設計・工法などの量産技術を確立。
センサー
-排気ガス規制に対応すべく、高温、熱衝撃、振動、被水などの環境耐久性向上および省エネ、省資源タイプのセンサー開発を推進。
-新しい排気ガス規制に必要となるOBD (車載の自己故障診断装置) 用のセンサーやEGRシステムを制御するためのセンサー開発を推進。
-製品化を決定した乗用車向けEGRシステム制御用吸気酸素センサーにおいて、付加価値拡大を目的とした用途開発を継続。
その他
-ガスエンジン用プラグの耐久性向上を目指した点火ユニットの開発製品化。
-自動車に搭載されたエンジン制御回路とのインターフェース機能を持つ全領域空燃比センサー用次世代ASIC (特定用途向けIC) の開発。
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 23,123 | 21,337 | 19,400 |
既存製品の改良、応用研究等に 関する費用等を除いた研究開発費 |
5,401 | 4,596 | 4,017 |
-自動車関連事業 | 1,460 | 1,157 | 839 |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 (予想) | 2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 61,800 | 45,339 | 36,372 | 41,034 |
-自動車関連事業 | 48,200 | 37,682 | 31,876 | 34,353 |
国内投資
-スパークプラグ用絶縁体セラミックスの生産を、子会社である日特スパークテック東濃の二野本社工場 (岐阜県可児市) に一部集約するとともに、同工場での生産能力を2020年までに2倍に増強する。生産効率の高い工場に絶縁体の生産を移管するとともに、設備を増強して生産能力を増やす。同社は20年までにスパークプラグの世界販売数を現状より約2億本増の10億本に引き上げる目標を掲げており、スパークプラグの絶縁体の生産体制も拡充する。14年に竣工した二野本社工場に中部圏の生産能力を集約する。2016年3月で日本特殊陶業の本社工場 (名古屋市) での絶縁体の生産を停止したほか、17年中に小牧工場 (愛知県) でも生産を停止し、それぞれ絶縁体の生産能力を二野本社工場へ移管する。二野本社工場の生産能力は、16年6月時点で月産2千万本だが、今後、生産設備を増強して今期中に3千万本、20年には4千万本に引き上げる計画だ。(2016年6月24日付日刊自動車新聞 より)
-2016年3月、愛知県小牧市に建設していた点火プラグ用部品の新工場が竣工したと発表した。生産子会社である日特スパークテック WKS (愛知県小牧市) の新たな生産拠点となり、プラグの中心電極や端子など電子部品を手がける。投資金額は約70億円で、操業開始は3月を予定する。新工場の稼働により、子会社の生産能力は2020年までに現状より3割高まる見通し。生産体制の強化でプラグのシェア拡大に弾みをつける狙いだ。新工場は地中熱を利用した空調設備やエネルギーを見える化するシステムの導入など環境に配慮した設計となっている。敷地面積は約2万6千平方メートルで、15年5月から建設に着手していた。(2016年3月1日付日刊自動車新聞より)
設備の新設計画 |
(2016年3月31日現在) |
会社名 | セグメント | 投資予定額 (百万円) |
設備の内容 |
同社 | 自動車関連 | 34,400 | 増産および研究開発設備 |
テクニカルセラミックス関連 | 11,100 | 増産および合理化設備 | |
国内連結子会社 | 自動車関連 | 2,200 | 増産および保全設備 |
テクニカルセラミックス関連 | 1,211 | 増産および合理化設備 | |
海外連結子会社 | 自動車関連 | 11,666 | 増産および合理化設備 |
テクニカルセラミックス関連 | 1,223 | 増産および合理化設備 |
2017年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2017年3月期 (予想) |
2016年3月期 (実績) |
増減 (%) |
|
全社 | |||
売上高 | 369,800 | 383,272 | (3.5) |
営業利益 | 42,500 | 66,279 | (35.9) |
経常利益 | 45,300 | 64,478 | (29.7) |
当期純利益 | 30,500 | 30,815 | (1.0) |
自動車関連事業 | |||
売上高 | 308,800 | 322,856 | (4.4) |
営業利益 | 48,400 | 71,134 | (32.0) |
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
-営業利益は、増収・製品構成・合理化などの増益要因 (9,300百万円) に対し、為替の影響 (25,200百万円)、コスト増 (7,600百万円) などの減益要因が上回ると予想。
長期経営計画 「日特進化論」 (2010年策定)
- 深化 (2011年3月期-2013年3月期): 現業の掘り下げと新ビジネスの種まき
- 新化 (2014年3月期-2016年3月期): 新製品・新ビジネスの立ち上げ
- 進化 (2017年3月期-2019年3月期): 現業と新ビジネスの加速度的な発展
- 真価: ものづくり企業、高収益率企業、発展的企業、人"財"企業であることを実現し、2020年に真の価値を提供する。
第7次中期経営計画 (2017年3月期-2021年3月期)
-2021年3月期の業績目標
- 売上高: 520,000百万円
- 営業利益: 100,000百万円
-既存事業のさらなる強化
- プラグ事業・センサー事業: 新興国市場でのシェア拡大、環境規制対応製品の強化、Wells社を活用した自動車関連製品の拡充
-セラミックパッケージ (PKG) 事業の再生計画
- 独立事業子会社化: 2016年7月をめどに、NTKセラミック (新会社) および セラミックセンサ中津川 (CS中津川) を設立。10月1日までに、日本特殊陶業および100%子会社のNTKセラミック (現行) の半導体パッケージ事業を新会社に集約。また、NTKセラミック (現行) の車載用センサー事業をCS中津川に集約する。
- 製品の「選択と集中」: 2018年3月末をめどに、水晶PKG事業から撤退し、車載・医療・高速通信用途 (自動運転やLED関連製品を含む) に注力。2019年3月期までに単月黒字化、2020年3月期に通期黒字化を目指す。
-新規事業の創出
- 「次世代自動車」 を含めた非内燃機関向けの新製品を立ち上げ、「環境・エネルギー」 と 「医療」 を中心とした新規事業のポートフォリオを高める。