住友理工 (株) (旧 東海ゴム工業) 2016年3月期の動向
業績 |
(IFRS、単位:百万円) |
2016年 3月期 |
2015年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 424,485 | 401,016 | 5.9 | -北米での販売が堅調、中国での販売が好転。 -円安による為替換算の影響により、増収。 |
営業利益 | 12,867 | 8,180 | 57.3 | -前期にAnvis社 (独) における事業構造改善費用を計上したこともあり、前期比増益。 |
税引前利益 | 11,896 | 6,452 | 84.4 | - |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 2,901 | 1,141 | 154.3 | - |
自動車用品 | ||||
売上高 | 369,149 | 344,109 | 7.3 | -国内市場において軽自動車を中心に自動車生産台数が低迷。 -新型車種の立ち上げに伴い、内装品の販売が好調。 -2015年より、量産を開始した燃料電池 (FC) 自動車のFCスタック向けゴム製シール部材の販売開始。 -北米、中国で売上高が増加。 |
営業利益 | 11,649 | 5,667 | 105.6 | -売上高の増加。 -前期にAnvis社 (独) における事業構造改善費用を計上したこともあり、前期比増益。 |
受注
-2015年12月、防振ゴムと自動車用ホースを独Daimlerから初受注したと発表。2018年をめどに供給を始める。子会社化した独Anvis社と伊Dytech社の共同プロジェクトとして進めてきたもので、Daimlerが欧州生産する中型車で受注を獲得した。子会社の販路や完成車メーカーとのネットワークと、住友理工のものづくり力を融合した提案活動を積極化し、今後も海外メーカーからの新規受注の拡大に力を入れる計画だ。(2015年12月16日付日刊自動車新聞より)
グローバル化を推進
-2015年7月、「真のグローバル化を進める」と述べ、日系メーカー以外の取り引きを増やす考えを示した。現在、非日系メーカーとの取引量は全体の2割にとどまるが、2020年をめどに5割に引き上げる。同社は近年、M&A(合併・買収)を活用して事業基盤を広げており「生産拠点を世界でバランスよく配置できた。欧米のユーザーの要求もカバーできる」などとした。「米Big3などへの拡販を強力に進める」ほか、世界最大市場の中国へのアプローチも積極化していく計画だ。(2015年7月8日付日刊自動車新聞より)
-2016年1月、名古屋駅前にグローバル本社を開設した。愛知県小牧市の本社から、総務、人事、経理、財務、広報、経営企画、グローバル営業企画などの本社機能を移転したもの。経営管理の高度化、グローバル化に対応した。登記上の本店は従来通り小牧市に置き、グローバル本社(名古屋市中村区)、小牧本社・小牧製作所(小牧市)という体制となった。(2016年1月5日付日刊自動車新聞より)
-2016年2月、自動車用ホースの世界市場シェアで2020年にトップとなる20%を目指すことを明らかにした。13年に実施した4件のM&A (企業の合併・買収) に伴うシナジー効果を継続し、世界シェア首位の自動車用防振ゴムと同様にナンバーワンを狙う。自動車用ホースの同社グループのシェアは14年度で13%だった。15年度は14%を見込む。(2016年2月19日付日刊自動車新聞より)
-世界5極 (日本、米州、欧州・アフリカ、中国・韓国、アジア) での製品開発・供給体制の構築完了。
合弁事業
-2015年8月、中国に練りゴムの新工場を設立すると発表。韓国の大興R&T社と合弁で新会社を立ち上げるもので、16年8月の稼働を目指す。新会社の資本金は800万ドル (約10億円) で、住友理工が40%、大興R&Tが60%出資する。投資額は1600万ドル (約20億円) で、江蘇省に敷地面積約1万3200平方メートル、延べ床面積約1万4500平方メートルの建屋を建設する。16年度の売上高は8300万元 (約17億円) を見込んでいる。住友理工は14年12月、大興R&Tへの出資比率を30%に引き上げ、持分法適用会社とした。これ以降、両社の連携強化を図った最初のプロジェクトとなる。(2015年8月5日付日刊自動車新聞より)
中期経営計画
「2015年VISION (2015V)」の振り返り
-2011年11月に、中期経営計画「2015年VISION (2015V)」を策定。計画最終年度となる2016年3月期の経営目標数値に対しての実績は以下の通り。
2015年VISION (2015V) | 2020年VISION (2020V) | ||
2016年3月期 (当初目標) |
2016年3月期 (実績) |
2021年3月期 (経営目標) |
|
連結売上高 (億円) | 4,200 | 4,245 | 5,300 |
連結営業利益 (億円) | 340 | 129 | 320 |
連結営業利益率 (%) | 8.0 | 3.0 | 6.0 |
ROE (営業利益/総資産) (%) | 10.0 | - | 7.0 |
ROA (純利益/株主資本) (%) | 8.0 | - | 8.0 |
-2016年3月期の連結売上高は、これまでの着実な取り組みにより、順調な事業規模の拡大を遂げ、当初目標を上回った。
-2016年3月期の連結営業利益については、目標を大きく下回った。主な要因は、
- 2013年に子会社化した企業の主要市場である欧州・南米経済の悪化
- 対応策として、不採算事業・部門の整理・再編のための構造改革費用を計上
- 先行開発投資を加速した
- 中国を主とする新興国におけるインフラ需要の低迷に伴って、一般産業用品部門の業績が大幅に低下
「2020年VISION (2020V)」
-2016年5月、中期計画 「2020年住友理工グループVISION」 を発表した。創業100周年を迎える29年の売上高目標を1兆円に設定し、その達成に向けた土台づくりとして20年度までの5年間に、「着実な成長」と「体質強化による収益力向上」に注力する。20年度の売上高目標は5,300億円で、1兆円に倍増させるには新たな原動力がいる。このため、売り上げの8割を占める自動車事業で防振ゴムなどに続く柱を育成するため「自動車新商品開発研究所」(仮称) を設立、7月に稼働させる。(2016年5月24日付日刊自動車新聞より)
-2015Vの期間中に進めた基盤整備の結果、グローバル・メガサプライヤーの地位はほぼ確実となった。グループ全体でのさらなる飛躍のためには、海外自動車メーカーへの新規拡販が不可欠との認識。販路拡大の主要な役割を担うDytech社とAnvis社の収益力向上が急務となっている。
主な施策
- Anvis社については、事業構造改革が完了。今後の収益拡大を見込む。
- Dytech社については、主要な活動基盤とする南米の自動車市場が冷え込む中で業績の回復遅れ。経営体質の強化とスリム化を推進する。経営統合によるシナジー効果の創出。
- 防振ゴム事業:メキシコの子会社に第2工場を建設し、2017年2月に生産を開始する予定。
国内では、山形県米沢市に建設中の住理工山形 (株) が2016年6月に稼働開始。 - ホース事業:ポーランドに新会社を設立し、2016年秋より生産を開始する予定。
- シール事業:2015年春に設立した住理工FCシール (株) が燃料電池車トヨタ 「MIRAI」 の増産に対応し、安定的な供給を確保する。
2017年3月期の見通し |
(IFRS、単位:百万円) |
2017年3月期 (予想) |
2016年3月期 (実績) |
増減 (%) |
|
売上高 | 410,000 | 424,485 | (3.4) |
営業利益 | 13,500 | 12,867 | 4.9 |
税引前利益 | 12,500 | 11,896 | 5.1 |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 5,000 | 2,901 | 72.4 |
-2017年3月期の売上高予測は前期比3.4%の減収。日本は自動車生産台数の増加により売上拡大見込みだが、海外は米国・中国で高水準の需要が続くも円高により減収。南米は低調な自動車生産のため、需要低迷が見込まれる。
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 14,215 | 12,821 | 11,673 |
-自動車用品 | 11,745 | 10,190 | 8,764 |
-2017年3月期、全社で145億円の研究開発費を見込んでいる。
-中期計画2020Vにおいて、2017年3月期から2021年3月期の5年間に800億円を投資する計画。
研究開発体制
-同社グループのコア技術を進化させる材料技術研究所と、将来を担う新製品を開発する新事業開発研究所の連携によって技術開発を進めている。
研究開発活動
-低温から高温までの幅広い温度範囲で長期シール性を実現した高機能ゴムと、自動車用防振ゴムなどの製品開発を通じて培った精密加工技術を融合し、燃料電池 (FC) 自動車に搭載されるFCスタック向けゴム製シール部材 「セル用ガスケット」 を2015年より量産化。さらなる性能向上に向けて、技術開発を継続している。
-グループ全体で小型軽量化・環境性能向上に対応し、高い安全基準を満たす技術開発や、次世代自動車への新製品開発に取り組んでいる。
製品開発
樹脂製燃料フィラーパイプ
-金属製に比べて4割軽量化した樹脂製燃料フィラーパイプを開発した。2016年春に発売する日本メーカーの上級車に初採用された。設計や加工技術の改良などにより樹脂を用いながら金属製と同等の価格を実現した。フィラーパイプは一部車種で樹脂製を採用するケースがあるものの、コストや衝突安全性などの理由により金属製が主流となっている。今回の採用を皮切りに燃費性能の向上につながる軽量化部品として提案を積極化する。(2016年2月26日付日刊自動車新聞より)
環境適応型バキュームセンシングホース
-2016年3月期、同社、トヨタ自動車 (株)、日本ゼオン (株) の3社協業で、バイオヒドリンゴムを原料とした、環境適応型のバキュームセンシングホースを開発した。高い耐油性、耐熱性、耐久性が求められるエンジン・駆動系ホースに、バイオヒドリンゴムを採用するのは世界初。バイオヒドリンゴムは、大気中のCO2を吸収しながら生長した植物を原料とすることで、従来に比べて製造から廃棄までのライフサイクルでCO2排出量を約20%抑制することができる。従来の石油系ヒドリンゴムを用いた場合と同等の品質と量産性を確保した。
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 30,538 | 29,699 | 31,334 |
-自動車用品 | 25,864 | 22,458 | 26,348 |
-2016年3月期、自動車用品事業では、同社および海外子会社の自動車用防振ゴム、ホースの生産設備を中心に投資。
-中期計画2020Vにおいて、2017年3月期から2021年3月期の5年間に1,800億円を投資する計画。
国内投資
-2015年4月に自動車用防振ゴムの製造・販売を行う完全子会社 「住理工山形株式会社 (SRK-YG)」 を設立し設立した。2016年6月より、山形県米沢市で新工場を稼働させる予定。新工場の敷地面積は約52,000平方メートル、建屋面積は約9,400平方メートル。投資額は約20億円。2018年度の売上高は約30億円を見込んでいる。(2015年7月7日付プレスリリースより)
-2015年5月、燃料電池(FC)用の部材を生産する新会社、「住理工FCシール」 を設立したと発表。住友理工は燃料電池車(FCV)に搭載するFCスタック用にゴム製シール部材 「セル用ガスケット」 を量産化しており、同部材はトヨタ自動車のFCV 「MIRAI」 に採用されている。FCVは将来的に市場拡大が見込まれており、今後、FCV用の基幹部品も需要が高まる可能性がある。このため、住友理工は部材の生産や販売機能を新会社に移管することで、安定した供給体制の確立や事業拡大を目指していく考えだ。(2015年5月12日付日刊自動車新聞より)
海外投資
<ポーランド>
-2016年2月、ポーランドSosnowiecで自動車用ホース製造・販売を行う100%子会社 「SumiRiko Automotive Hose Poland Sp. z o. o. (SRK-HP)」 を設立したと発表。2016年10月より工場を稼働させる。資本金は21百万ポーランドズロチ (約4.9百万ユーロ)。工場面積は約35,000平方メートルで、建屋面積は約10,000平方メートル。投資額は約10百万ユーロとなる。2020年度の従業員数は約200名、売上高は約24百万ユーロを見込む。2013年に買収・子会社化したDytech-Dynamic Fluid Technologiesは欧州自動車メーカーを主要顧客としている一方で、今回設立したSRK-HPは、主に欧州の日系自動車メーカーへの拡販を目指す。(2016年2月26日付プレスリリースより)
<メキシコ>
-2015年9月、メキシコに自動車用防振ゴムの新工場を建設すると発表。2017年2月の操業開始を目指す。生産能力は売り上げベースで6千万ドル (約72億円)。同社では現地に同等の能力を持つ工場を有しており、第2工場の稼働でメキシコの供給力が倍増することになる。現地では日系自動車メーカーの進出が相次ぐなど将来的に防振ゴムの需要が拡大すると予測される。同社では早期に生産ボリュームを拡大することで、販売増につなげる。新工場は既存の第1工場の近隣となるケレタロ州エルマルケス市に設ける。(2015年9月16日付日刊自動車新聞より)