住友理工 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2015年
3月期
2014年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 400,930 369,093 8.6 -
営業利益 10,492 13,577 (22.7) -
経常利益 8,408 11,041 (23.8) -
当期純利益 (4,429) 4,076 - -
自動車用品
売上高 344,023 312,439 10.1 -国内市場では自動車生産台数の減少により売上が減少したものの、海外市場では好調な北米や、景気減速感はあるものの成長を続ける中国で自動車販売が増加。
営業利益 7,924 9,642 (17.8) -欧州市場の低迷や南米市場の急落、ブラジルやロシアなどの新興国の通貨安、国内やアジア地域での市場伸び悩み等。

受注

<トヨタ>
-トヨタ自動車の新型燃料電池車 (FCV) 「MIRAI (ミライ)」向けに新製品「セルガスケット」を開発し、供給を開始。FCスタックを構成するセルに使用するゴム製シーリング材で、チタン製セパレーターの間に挟み込む。トヨタと共同開発した。高機能ゴムに精密成形を施して製造するもので、シーリング機能と水素や酸素の流路をつくる機能を併せ持つ。これにより、FCスタックが安定的に発電を行うための条件を整える。同社がFCVの基幹システム向けに部品を供給するのは初めて。(2014年12月16日付日刊自動車新聞より)

-その他「MIRAI」に搭載された同社製品は以下の通り。
防振ゴム
(1) モーターマウント
(2) スタックマウント
ホース
(3) 水素ホース
(4) エア系ホース
ウレタン製部品
(5) 水素タンクパッド
(6) 遮音カバー

海外事業

<韓国>
-持分法適用会社の大興R&T (DRT) に対する出資比率を20%から30%に引き上げたと発表。DRTは、韓国で自動車用防振ゴムの製造・販売を行っている。(2015年1月12日付プレスリリースより)

中期経営計画

-2011年11月に、中期経営計画「2015年TRI GROUP VISION」を策定。計画最終年度となる2016年3月期の経営目標数値は以下の通り:

  • 売上高:4,200億円
  • 営業利益:340億円
  • 営業利益率:8%
  • ROE:10%
  • ROA:8%

-連結売上高は、2013年に欧州・南米の自動車用ゴム部品メーカー3社を買収して事業規模を拡大したことや、米国の景気が好調に推移していること、さらに為替の影響などもあり、ほぼ達成の見込み。

-連結営業利益は、欧州や南米の経済が買収後に大きく低迷し、これらの地域を事業基盤とする3社の収益を圧迫しており、環境の変化に対応してDytech社の経営再建やAnvis社の事業構造改善など収益基盤の再構築を推進しているものの、達成は厳しい見通し。

2016年3月期の見通し

(単位:億円)
2016年3月期
(予想) [IFRS]
2015年3月期
(実績) [IFRS]
増減
(%)
売上高 4,200 4,010 4.7
-自動車用品 3,585 3,441 4.2
営業利益 160 82 95.6
当期純利益 80 29 176.8


-2016年3月期の自動車用品部門の売上高は、2015年3月期比で4.2%の増加を計画。日本では自動車生産台数減少のため伸び悩むものの、米国および中国では増収となる見込み。また、ブラジルでは2014年度に引き続き停滞するものと見られる。

2016年3月期の課題
・子会社であるDytech社とAnvis社における取り組み
-2014年夏に経営体制の強化と組織の刷新を図ったDytech社は、2014年秋以降グループ一丸となり、部品やユニットの共通化による開発の効率化やコスト低減、販路を活用した防振ゴムや産業用ホースの新規売り込みなど、経営統合によるシナジー効果の早期創出を目指した計画を進めている。中長期的には欧州や南米の市場も回復に向かうと見られ、業績は今後回復の見通し。

-Anvis社では、2014年から事業構造改善を進めていた同社傘下のフランス拠点について、自動車用部品事業をルーマニア拠点に移管するとともに、事業縮小に伴う従業員の退職手続きなどを進め、2015年春にはそれらをほぼ完了した。これにより、フランス拠点で行っていた自動車用部品事業はルーマニア拠点と合わせて、2015年度より黒字化を見込んでいる。

・自動車用品部門における取り組み
-買収によりグループに加わった子会社とのシナジー効果の最大化、新興国市場の開拓と既存事業のシェア拡大に努める。具体的には、欧州自動車メーカーに太いパイプを持つ子会社の販売チャネルを活用し、自動車用防振ゴムの世界シェアを25%へと引き上げる。また、自動車用ホースでも早期にトップグループ入りすることを目指す。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 12,821 11,673 9,698
-自動車用品 10,190 8,764 7,442

研究開発体制

-同社グループのコア技術を進化させる材料技術研究所と、将来を担う新製品を開発する新事業開発研究所の連携によって技術開発を進めている。

研究開発活動

-環境規制対応、乗り心地性向上、グローバル対応を目指して先進的な技術開発に取り組んでいる。
-最近の取り組みの成果として、独自の配合技術を駆使し、低温から高温までの幅広い温度範囲で長期シール性を実現した高機能ゴムと、自動車用防振ゴムなどの製品開発を通じて培った精密加工技術を融合し、燃料電池自動車に搭載される燃料電池スタック向けゴム製シール部材「セル用ガスケット」を開発した。

製品の軽量化

樹脂フィラーネックモジュール
-給油口からフィラーチューブまでの部品を組み合わせたモジュール設計と製品化までを同社で行い、カーメーカーの工数低減と高付加価値の製品を提供。燃料タンクへ燃料を導くフィラー配管を金属から樹脂に置換し、40%の軽量化に成功。また、優れた燃料低透過性(燃料が配管から染み出しにくい)で、環境規制に対応している。

設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 29,699 31,334 25,295
-自動車用品 22,458 26,348 19,240


-2015年3月期、自動車用品事業では、同社および海外子会社の自動車用防振ゴム、ホースの生産設備を中心に投資。

海外投資

<メキシコ>
-自動車用防振ゴム製造子会社TRI Anvis Mexico S.A.P.I de C.V. (TRAM) で開所式を行ったと発表。同社はメキシコにおいて、2012年12月に自動車用防振ゴムの現地子会社を設立し、日系自動車メーカーの現地生産拠点向けに製品供給を開始した。一方で、2013年5月に子会社化したドイツの自動車用防振ゴムメーカーAnvis Groupもメキシコに現地子会社を保有していることから、事業の効率化を図るため、両社を2013年12月に合併しTRAMを発足。Anvis 現地子会社の敷地内で建設中だった新工場を2014年1月に本格稼働した。TRAMの資本金は439百万ペソ (約34億円) で、出資比率はAnvis Netherlandsが50.5%、同社が44.5%、TRI Americaが5.0%。約277百万ペソ (約22億円) を投じた新工場の敷地面積は約14,400平方メートル、建屋面積は約8,000平方メートルとなる。生産能力は約360百万ペソ (約28億円) 相当。(2014年6月24日付プレスリリースより)

<中国>
-江蘇省の無錫 (Wuxi) にある自動車用防振ゴム製造・販売子会社の安維斯 (無錫) 橡膠減震器有限公司 (Anvis Wuxi) が事務所の増築と新工場の設立を完了したと発表。新工場への投資額は約3.3百万ユーロ。Anvis Wuxiの敷地面積は約35,000平方メートルで、増設後の建屋面積は約15,000平方メートル。新工場の建設により生産能力は約100百万ユーロ相当となり、2014年度の売上高は約63百万ユーロを見込む。(2014年12月10日付プレスリリースより)

-天津市に内装品・制遮音材を生産する新工場が完成したと発表。日系自動車メーカーに加え、現地資本の自動車メーカーへの販売を本格化し中国事業を拡大する。新工場は2004年に子会社の東海化成工業(岐阜県可児市)が設立した中国生産会社、東海化成(天津)汽車部品有限公司の新工場として3月に生産を開始した。4億7100万円を投資し、建屋面積約1万400平方メートルの工場を建設した。ウレタン発泡技術を使ったエンジンヘッドカバー、ヘッドレスト、アームレストなどを生産する。(2014年4月26日付日刊自動車新聞より)