三菱電機 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 3,639,468 3,645,331 (0.2) -
営業利益 225,444 233,761 (3.6) -
当期純利益 112,063 124,525 (10.0) -
産業メカトロニクス事業
売上高 967,779 921,667 5.0 -自動車機器事業は、東日本大震災やタイの水害による影響があったが、中国・インド等の新興国市場の拡大や北米市場の回復により、受注・売上とも増収。
営業利益 101,192 100,089 1.1 -

合弁会社

-中国の第一汽車(FAW Group)傘下の啓明信息技術股份 [QiMing Information Technology Co., Ltd.]との間で、中国に合弁会社を設立することで合意したと発表。カーマルチメディア製品の開発・製造・販売を行う。新会社の名称は「長春啓明菱電車載電子有限公司(仮称)」 [Changchun Qiming Lingdian Automotive Electronics Co., Ltd.]。2011年8月に吉林省長春(Changchun)市に設立され、2012年1月に操業開始する予定。資本金は175百万中国元(約22.4億円または約28百万米ドル)。新会社では、2016年3月までに従業員400名の雇用を見込んでいる。出資比率は啓明信息技術51%、三菱電機33%、三菱電機(中国)10%、コシダテック6%。なお両社は、2004年からカーマルチメディア製品のソフトウェア開発で協業を行っている。(2011年6月17日付プレスリリースより)

事業方針

-2015年度(15年4月~16年3月)にスマートグリッド関連事業で売上高1兆3千億円を目指す。このため、約70億円を投資し、兵庫県尼崎市と和歌山市でスマートグリッド・スマートコミュニティー実証実験を本格的に開始したと19日発表した。自社の実証実験設備を活用し、電力基幹系から需要家までの開発と検証を行い、事業を強化する。自動車関連では電気自動車(EV)への充電ステーションをはじめ、ITS (高度道路交通システム)を活用するEV支援など同社の持つ技術を総合的に生かしていく。(2011年10月20日付日刊自動車新聞より)

経営戦略 (2011年6月発表)

自動車機器事業
-新興国市場(中国・インド・ブラジル)における事業拡大。
-各地域ごとのニーズに対応した製品開発の推進。
「環境・省エネ」、「情報通信」をキーワードとした開発強化による競争力向上 オルタネータ・スターター
-ISS、エネルギー回生や高効率・小型軽量化など、低燃費化需要に対応した製品のタイムリーな開発と市場投入。

IPU (インテリジェント・パワー・ユニット)
-EV/HEV市場の拡大における、半導体技術と車載技術のシナジー効果による製品競争力強化。

EPS (電動パワーステアリング用モータ・コントローラー)
-低燃費化需要に対応した競争力あるラインアップの開発。

カーマルチメディア
-カーナビから車載情報センター化への進化に対応した車内外との通信機能の充実。

2013年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2013年3月期
(予想)
2012年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 3,740,000 3,639,468 2.8
営業利益 200,000 225,444 (11.3)
当期純利益 120,000 112,063 7.1

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費

(単位:億円)
2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 1,696 1,517 1,337
産業メカトロニクス事業 549 449 347

研究開発体制

-国内研究所、海外研究所(米、欧)および製作所・連結子会社の開発部門において、基礎研究から応用研究、製品化開発、生産技術開発を推進。また、国内外の大学、研究機関等と連携した研究開発活動を推進。

-自動車機器の開発の流れは以下の通り。
1) 基礎開発を情報技術総合研究所、先端技術総合研究所、デザイン研究所で実施。
2) 応用開発を自動車機器開発センターで実施。
3) 製品開発を姫路製作所、三田製作所、福山製作所で実施。

研究開発活動

産業メカトロニクス事業
-モーターおよびその関連製品、メカトロ機器、FA制御システム機器、自動車用電装品、電動パワーステアリングおよびその関連製品、カーマルチメディア機器などの開発を実施。

-2012年3月期の主な成果は以下の通り。
  • メモリーカーナビゲーションシステム
  • DSRC車載器
  • 車載用DIATONEスピーカー「SW-G50」
  • 曲面に対応した新しいディスプレイシステム
  • 車載用ブルーレイディスクプレーヤー

製品開発

SiCインバーター内蔵モーターシステム
-インバーターとモーターを一体化した電気自動車(EV)用の駆動システム「SiCインバーター内蔵モーターシステム」を開発したと発表した。インバーターとモーターを一体構造にすることにより、配線や冷却用の配管を含めたシステム全体をコンパクト化。インバーターとモーターが別体のタイプに比べ、体積を50%低減した。5年後の実用化を目指す。同社は2014年には車の駆動用モーターに参入する計画で、車の電動化に対応した技術開発を加速する。インバーターのスイッチのオン/オフを行うパワー半導体素子には、従来のSi (ケイ素)に代わりSiC (炭化ケイ素)を採用した。SiCは素子を薄型化して電気抵抗を下げることが可能で、SiC化によりインバーター損失を50%低減できた。電動車用のモーターは大手メーカーでは内製がほとんどだが、普及期にはモーターを外注するメーカーも増えると見て国内外での需要を想定している。同社はインバーターではホンダやフォード・モーターに納入実績があるが、車の駆動用モーターには未参入。14年にはSiインバーターとモーターを別体で組み合わせたEV、ハイブリッド車(HV)用駆動システムを量産化する計画だ。(2012年3月9日付日刊自動車新聞より)

車載用600ボルト耐圧の高耐圧集積回路
-電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の電圧変換器などに搭載されるパワー半導体を駆動する車載用600ボルト耐圧の高耐圧集積回路「M81729JFP」を2012年4月2日から発売すると発表した。車載用途に求められる広い温度保障範囲と高信頼性を実現し、EVやHVの電圧変換器の小型化と信頼性向上に貢献する。新製品は、電源電圧の低下時に出力停止制御を行うことで、パワー半導体の破壊を防止する。車載機器に求められるマイナス40~125度の動作保証温度範囲を実現し、高温での長時間動作試験などのバーンインの実施により信頼性を確保している。コンパレーターやフォトカプラーなどの専用回路が不要で、電圧変換器の小型化にも貢献する。サンプル価格は税別500円。(2012年3月8日付日刊自動車新聞より)

車載充電器
-電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に搭載する車載充電器を開発し、2012年末にも国内で量産を始める。電力効率を向上させる独自の階調制御技術などを使い、最大で94%の充電器変換効率を達成した。EV、PHVの広がりを見据え、電動車のビジネスに力を入れる。車載充電器は、100/200ボルトの商用電源からEVやPHVの2次電池に充電するために必要な装置で、交流を直流に変換するAC/DCコンバーターと、直流電流を異なる電圧に変換するDC/DCコンバーターで構成している。同社は自動車関連ではEV、PHV、HV(ハイブリッド車)向けの駆動用モーターやインバーター、レアアースレスモーターの開発を行っており、車の電動化を見据えた製品開発を強化している。(2012年1月23日付日刊自動車新聞より)

自動車用パワー半導体モジュール
-ハイブリッド車および電気自動車用モーターの駆動に用いる自動車用パワー半導体モジュールの新製品として、「Jシリーズ T-PM」を2011年4月に発売する。パワー半導体チップに端子を直付けする独自の内部配線(DLB)構造により、従来の30倍の製品寿命を実現した。(2011年4月7日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 167,500 126,964 102,767
産業メカトロニクス事業 45,271  34,116 22,911

-産業メカトロニクス事業においては、FA機器および自動車用機器における増産等を目的として投資を実施。

海外投資

<中国>
-電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、太陽光発電向けに需要拡大が見込まれるパワー半導体の生産体制を強化すると発表した。アセンブリー・テスト工程の製造委託先として協力関係にある中国の捷敏電子(上海)と合弁で、パワー半導体モジュールを製造する工場を中国安徽省に新設する。合弁会社は「三菱電機捷敏功率半導体(合肥)」で資本金が500万米ドル(約4億2500万円)。出資比率は三菱電機が70%、三菱電機(中国)が10%、捷敏電子(上海)が20%。安徽省にある合肥経済技術開発区に工場を新設し、2012年1月からパワー半導体モジュールを製造する。15年末までに従業員数を約800人にし、中国でのアセンブリー・テスト工程の生産能力を11年比で2倍に増強する計画。(2011年9月29日付日刊自動車新聞より)

設備の新設

(単位:百万円)
2013年3月期
(計画)
主な内容・目的
全社 160,000 -
産業メカトロニクス事業 50,000 FA機器および自動車用機器の増産、合理化等