パイオニア (株) 2017年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2017年 3月期 |
2016年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 386,682 | 449,630 | (14.0) | -カーエレクトロニクスが主にOEM事業において減少したことや、円高の影響などにより減収 |
営業利益 | 4,167 | 7,304 | (42.9) | -販売費及び一般管理費が主に為替の影響により減少したことや、原価率の良化はあったが、売上高が減少したことにより減益。 |
経常利益 | 2,966 | 7,250 | (59.1) | |
当期純利益 | (5,054) | 731 | - | -特別損失として海外における事業構造改善費用を3,014百万円計上したことなどにより損失を計上 |
カーエレクトロニクス | ||||
売上高 | 312,489 | 357,842 | (12.7) | 1) |
営業利益 | 6,051 | 8,581 | (29.5) | - |
要因
1) 製品別売上高
<カーナビゲーションシステム>
-市販市場向けは、中国で増加したが、国内や北米で減少したことから減収。
-OEM向けは、北米で増加したが、国内や新興国で減少したことから減収。
<カーオーディオ>
-市販市場向けは、北米を中心に海外で減少したことから減収。
-OEM向けは、国内で増加したが、北米を中心に海外で減少したことから減収。
なお、カーエレクトロニクス全体の売上高に占めるOEMの売上構成比は、前期の60%から58%に下降した。
国内動向
-同社はカーエレクトロニクス部門の収益改善に乗り出す。カーオーディオや先進運転支援システム (ADAS) 機能を搭載した市販向け新製品など、高付加価値モデルを積極的に投入することでモデルミックスの改善を図る。自動車メーカー向け事業では、事業プロセスの見直しによる収益性改善や、先進技術の提案活動を強化して新規受注を獲得する。カーエレ部門の今期の売上高営業利益率を前期と比べて1.4ポイント改善して3.3%に引き上げる計画。(2017年5月19日付日刊自動車新聞より)
-9月に同社初の10V型車種専用カーナビゲーションを発売するのを機に、ミニバンカーナビのシェア拡大に乗り出す。ミニバンユーザーはクルマのサイズに合わせ、見やすく使いやすい大型のモニターを選択する傾向にある。ミニバン向けラインアップを拡充するとともにナビ性能の高さで同業他社と差別化。「カロッツェリア」ブランドのユーザーに向けて訴求を強め、ミニバンのカーナビ市場に働きかける。ライバルが先行する市場にどれだけ食い込めるか注目される。(2016年5月17日付日刊自動車新聞より)
受注
-同社のサウンドシステムがレクサスの新型「LC」に標準装着されたと発表した。このサウンドシステムは、新開発の8チャンネルフルデジタルClass-Dアンプと12個のスピーカーで構成されている。(2016年12月12日付プレスリリースより)
事業提携
-同社は、HEREと提携し、走行空間センサー「3D-LiDAR(ライダー)」を活用して自動運転用地図を効率的に更新・運用するデータエコシステムを構築する実証実験を実施することで合意したと発表した。3Dライダーとヒアの高精度地図を組み合わせ、自車位置推定から始める。パイオニアは3Dライダーと高精度な自車位置特定技術を活用し、自動運転用地図の更新に必要なデータを抽出する。HEREは保有する自動運転用の高精度地図とクラウドを活用し、抽出データ(センサーデータなど)を収集、解析する。これをもとに更新地図データを車両へ配信する仕組みの実現を検討する。(2016年5月19日付日刊自動車新聞より)
-HEREとパイオニアは、グローバルな地図ソリューションと、自動車業界などさまざまな業界向けの次世代位置情報サービスにおいて戦略的な提携を進めていくことに合意した。それぞれが保有する地図と自動車関連技術などを組み合わせ、業界トップクラスの規模と品質で、グローバルな標準地図の相互提供と自動運転用高精度地図ソリューションの提供に向けた取り組みを進めていく。幅広い業界の顧客に対し、位置情報をさまざまなサービスと連携させる"ロケーションインテリジェンス"を活用した新しいビジネスをサポートする予定。また、パイオニアのセンシングデバイスによって収集されたリアルタイムデータを活用した新しいサービスの構築も検討していく。(2017年2月8日付プレスリリースより)
合弁
-同社とコニカミノルタは31日、有機EL照明の合弁会社を5月に設立すると発表した。両社がそれぞれ持つ有機EL照明パネルの商品開発や販売などの機能を新会社に統合する。同パネルは一部の上級車のテールランプなどで実用化が始まっている。省電力化につながる有機EL照明は今後、自動車分野で需要拡大が見込める。両社のノウハウを融合、商品競争力を高めることで受注獲得につなげ、中・長期的に売上高250億円を目指す。また、これに合わせ、パイオニアは三菱化学と締結していた同照明事業における業務提携を解消した。有機EL事業の新会社は「コニカミノルタ パイオニアOLED」。資本金4億9千万円で、両社が折半出資する。新会社では車載用照明を事業の軸として成長を目指す。(2017年2月1日付日刊自動車新聞より)
中期事業計画 (2017年3月期 - 2021年3月期)
-市販事業、OEM事業、地図事業・自動運転関連を事業の柱として成長戦略に取り組んでいく。
市販事業
-売上の持続的成長による高利益性の維持とコネクテッドカーライフの早期実現に向け、スマートフォン連携商品の強化や先進運転支援システムによる付加価値提案、車室内の新たなエンタテインメントの提供に加え、クラウドを活用した業務用ビジネスの拡大や、新興国での普及価格帯製品の強化を図る。
OEM事業
-既存顧客からの大規模受注への対応として、事業プロセス全体の最適化を進めるとともに、新規受注の獲得に向けて、顧客ニーズを先取りした製品の開発・設計に取り組み、収益性の改善を図る。
地図事業・自動運転関連
-自動運転に必須となる3次元走行空間センサー「3D-LiDAR (ライダー) 」と高精度地図データをともに供給できる強みに加え、アライアンスの活用により、高度化地図による「データエコシステム」の構築と事業化に取り組み、「自動運転の実現になくてはならない会社」を目指す。
-同社は2020年度までの5カ年中期計画を発表した。カーエレクトロニクス事業で従来の市販とOEM(純正)を軸に成長戦略を推進し、自動運転に必要な高精度地図や関連技術にも重点的に取り組む。20年度に売上高で15年度比13.4%増の5100億円、営業利益率は6%以上を目指す。新中計では「『総合インフォテインメント』のリーディングカンパニー」を目指す。市販とOEMで事業特性に合わせた戦略を推進し、車内での快適、感動、安心・安全を創出する。加えて今後、需要拡大が見込める地図事業・自動運転関連を三つ目の柱に据えた。(2016年5月20日付日刊自動車新聞より)
2018年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2018年3月期 (予測) |
2017年3月期 (実績) |
増減率 (%) | |
売上高 | 390,000 | 386,682 | 0.9 |
-カーエレクトロニクス | 322,000 | 312,489 | 3.0 |
営業利益 | 10,000 | 4,167 | 140.0 |
経常利益 | - | 2,966 | - |
当期純利益 | 3,500 | (5,054) | - |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 | 2016年3月期 | 2015年3月期 | |
全社 | 23,863 | 24,804 | 28,196 |
-カーエレクトロニクス | 17,733 | 17,807 | 16,470 |
-2018年3月期の全社研究開発費は、25,000百万円を計画。
研究開発拠点
施設名称 | 所在地 |
研究開発部 / ベリフィケーションラボラトリ | 神奈川県川崎市 |
研究開発部 (甲府) | 山梨県甲府市 |
東北パイオニア米沢事業所内 | 山形県米沢市 |
中国研究開発部 Pioneer China Holding Co., Ltd 研究開発部 |
中国北京市 |
研究開発活動
(1) 行動予測技術
-行動予測技術とは、個人の行動履歴や車内外で生じた過去の状況などから抽出されるさまざまな行動パターンと、天気やドライバーの生体情報など刻々と変化する現在の状況を組み合わせることで、ドライバーや同乗者の先の行動を予測する技術。
-ドライバーが車載機器を操作することなく、目的地や、到着時刻などを自動的に予測し、渋滞回避ルートやよく聴く音楽など、ドライバーや同乗者にとって最適な情報やサービスを最適なタイミングで提供することが可能になるほか、カーナビゲーションシステムの地図の拡大・縮小などドライバーがよく行う操作も予測し、自動的に行うことでドライバーの操作負荷を軽減することなども可能になるとしている。
-行動予測技術では、予測の精度を向上させるために機械学習(*)を活用する。
(*)機械学習:蓄積されたデータを繰り返し学習し、特定のパターンを見つけ出す技術
(2) 画像認識技術
-画像認識技術とは、人の視覚による認知や判断を推測する技術。
-人が車内から前方を見る際に注目する部分や、注目する順序、それらから認識される渋滞などの状況を、車載カメラで撮影した画像の動きや色合いから推測や判断をする。
-この技術で認識した状況を、前述の「行動予測技術」に取り入れることでより適切な予測が可能になるとしている。
居眠り検知システム
-同社は、ドライバーの居眠りを検知した際に運転席に内蔵した振動ユニットでドライバーに注意喚起するシステムを実用化する。現在、シートメーカーに対し、心拍センサーと合わせた先進運転支援システム(ADAS)として提案している。大手自動車各社が実用化を計画している自動運転レベル3(緊急時のみ手動運転)では、自動運転から手動運転へスムーズに切り替える必要があり、これを実現するHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の一つとしても早期の受注獲得を目指す。(2017年1月17日付日刊自動車新聞より)
-同社は、運転者の眠気を心拍の変化で検知して改善する「ドライバーモニタリングシステム」を開発し、2020年以降に実用化すると発表した。居眠り運転防止や、自動運転レベル3(緊急時のみ手動運転)で、自動運転から手動運転へ円滑な切り替えなどでの活用を見込む。開発中のシステムは、心拍計測と独自の解析アルゴリズムを用いた「眠気予兆検知技術」と、振動による効果的な「覚醒レベル改善技術」の連携により、運転者の覚醒レベルの低下を未然に防ぐ。心拍や脈拍の変化によって眠気の予兆を早期に検知できることに着目、シートやハンドルに内蔵する心拍センサーと、車載環境でのセンサー精度を考慮した眠気予兆判定アルゴリズムを開発する。今後、カメラとのセンサーフュージョンも視野に入れ、眠気検知の高精度化を図る。(2016年12月19日付日刊自動車新聞より)
-同社は25日、中国子会社の先鋒電子(中国)投資が、運転者の眠気を検知する「眠気検知ユニット」を開発したと発表した。高精度検知が可能で、先進運転支援システム(ADAS)への展開を目指す。新製品は次世代車載器を共同開発する中国・精華大学蘇州自動車研究院傘下のベンチャー企業・蘇州清研微視電子科技の技術を用いて開発したもの。独自の画像認識技術や眠気検知アルゴリズムを用いた解析に、ステアリング操舵状況を加えて、運転者の眠気を高精度に検出する。(2016年4月27日付日刊自動車新聞より)
クラウド型運行管理サービス「ビークルアシスト」
-同社は、2016年11月30日より「自動安全コンサルティング」の提供を開始すると発表した。安全運転管理ソリューションとして、2015年6月より提供を開始しているクラウド型運行管理サービス「ビークルアシスト」の自動車事故削減につながる機能を強化したサービス。「ビークルアシスト」で提供している危険挙動警告やメール通知といった車載機やサーバーがドライバーの運転挙動を分析・評価する機能に加え、月に一度のひと目で指導ポイントが分かるレポート機能「安全運転管理アシスト」を新たに搭載している。(2016年11月29日付プレスリリースより)
デジタル地図を活用した「事故リスク予測プラットフォーム」
-同社は、デジタル地図を活用した独自の先読み技術により「事故リスク予測プラットフォーム」を構築し、常時通信型IoTデバイスと連携させることで運転における予防安全を実現する、既販売車に搭載可能な先進運転支援システム「Intelligent Pilot」を開発した。Intelligent Pilotにより、事故多発地点、ヒヤリハットにつながる急減速多発地点などのプローブデータ、天候、運転傾向などから統合的に事故や危険を予測し、個々の車両が現在置かれている状況に合わせて注意喚起や警告をする先進的な運転支援を実現。パイオニアは今後海外での事業展開も視野に、自動車関連サービス事業者へIntelligent Pilotの活用を提案していく。(2016年11月25日付プレスリリースより)
-同社のクラウド型運行管理サービス「ビークルアシスト」用の"WEB APIサービス"の提供を開始すると発表した。この"WEB APIサービス"と同社製業務用車載端末を使用することで、既存のサービスでも「ビークルアシスト」のさまざまな機能を利用できるようになるという。(2016年5月19日付プレスリリースより)
技術導入契約 |
(2017年3月31日現在) |
提携先 (所在地) |
内容 | 期間 |
Dolby Laboratories Licensing Corporation (米国) |
デジタルサラウンド装置および雑音低減装置に関する製造技術の特許権実施の許諾 | 1971年12月21日から特許権満了日まで |
MPEG LA, L.L.C. (米国) |
MPEG-2ビデオ規格製品に関する製造技術の特許権実施の許諾 | 1994年1月1日から特許権満了日まで |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 | 2016年3月期 | 2015年3月期 | |
全社 | 21,952 | 25,426 | 32,586 |
-カーエレクトロニクス | 18,954 | 20,444 | 27,220 |
-2017年3月期の主な設備投資は、製品組込ソフトウェア、金型および生産設備。
-2018年3月期の全社設備投資額は、35,000百万円を計画している。
設備の新設計画 (カーエレクトロニクス) |
(2017年3月31日現在) |
会社名・ 事業所名 |
所在地 | 設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
本社 | 東京都 文京区 |
社内利用ソフトウエア他 | 1,027 |
川越事業所 | 埼玉県 川越市 |
カーエレクトロニクス製品生産設備、販売目的ソフトウエア、社内利用ソフトウエア他 | 21,223 |
東北パイオニア | 山形県 天童市・米沢市 |
カーエレクトロニクス製品生産設備 | 403 |
インクリメント・ピー | 神奈川県 川崎市 |
販売目的ソフトウエア他 | 3,385 |
Pioneer Manufacturing(Thailand) Co., Ltd. | タイ アユタヤ |
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 | 1,891 |
Tohoku Pioneer(Thailand) Co.,Ltd. | タイ アユタヤ |
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 | 523 |
Tohoku Pioneer(Vietnam) Co.,Ltd. | ベトナム ハイフォン |
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 | 950 |
Pioneer Technology(Shanghai) Co., Ltd. | 中国 上海 |
カーエレクトロニクス製品生産設備 | 532 |
Pioneer do Brasil Ltda. | ブラジル マナウス |
カーエレクトロニクス製品生産設備 | 1,090 |