パイオニア (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 449,630 501,676 (10.4) -
営業利益 7,304 7,778 (6.1) -
経常利益 7,250 (2,915) -
当期純利益 731 14,632 (95.0) -
カーエレクトロニクス
売上高 351,293 355,591 (1.2) 1)
営業利益 7,032 10,995 (36.0) -


要因

1) 製品別売上高
<カーナビゲーションシステム>
-市販市場向けは、国内は減少したが、中国で増加したことから増収。
-OEM向けは、国内や北米で減少したが、東南アジアや中国で増加したことから増収。

<カーオーディオ>
-市販市場向けは、主に新興国で減収。
-OEM向けは、主に国内や北米で増加したことから増収。

なお、カーエレクトロニクス全体の売上高に占めるOEMの売上構成比は、前期の57%から61%に上昇した。

受賞

-トヨタはサプライヤー6社に 「Superior Award」 を授与したと発表した。さらに、42社が 「Excellence Award」 または 「Special Recognition Award」 を受賞した。受賞したサプライヤーにPioneer Automotive Technologiesが含まれる。(2016年3月16日付プレスリリースより)

海外動向

<メキシコ>
-メキシコで車載用スピーカーを生産する。2018年以降に供給が始まる大型受注に対応したもので、17年2月に稼働するカーエレクトロニクス製品の新工場を活用する。メキシコ工場は北米と南米向けの車載用スピーカーの輸出拠点としても位置付け、今後は部品の現地調達率も高める。また、全額出資子会社の中国とベトナムの工場でも車載用スピーカーを増産する方針だ。(2016年3月4日付日刊自動車新聞より)

-メキシコに生産拠点を設立すると発表した。2017年2月に稼働予定で、現地向けのカーエレクトロニクス製品を生産する。新会社「パイオニア・オートモーティブ・ド・メキシコ」を16年2月に設立する予定。所在地はバヒオ地区で、資本金は25万ドル(約3千万円)。代表者は山田充利社長で、従業員は19年に450人を計画する。年産能力は200万台。自動車の生産台数が増加し、今後の成長が見込まれるメキシコに生産拠点を設立することで、グローバルの生産体制強化とともに、メキシコでの事業拡大を目指す。(2015年11月13日付日刊自動車新聞より)

-メキシコにカーエレクトロニクスの生産拠点を設立すると発表した。新会社「Pioneer Automotive de Mexico S.A. de C.V.」は、資本金が25万ドル。2017年2月より生産を開始する予定。生産能力は年間200万台で、2019年の従業員数は450名を見込んでいる。(2015年11月9日付プレスリリースより)

受注

-子会社の東北パイオニア (山形県天童市) が国内外の自動車メーカーからカースピーカー計約4500万本を新規に受注したと発表した。2018年以降、3~5年にわたり供給する予定。今回受注したスピーカーは東北パイオニアの中国とベトナムの工場で生産する。(2015年10月9日付日刊自動車新聞より)

事業提携

-中国最大のインターネット関連企業の百度 (バイドゥ) と中国におけるテレマティクス分野で協業すると発表した。バイドゥのテレマティクスサービス「百度CarLife」に対応した車載機器の開発・製造受託企業の第1号に認定された中国子会社の先鋒電子(中国)投資有限公司(パイオニア中国)が11月から自動車メーカー向けに供給する。(2015年10月3日付日刊自動車新聞より)

-デジタル地図事業を展開する独HERE(ヒア)社と自動運転向け技術の活用に関する協議を進めると発表した。ヒアが保有する高度運転支援向け地図と、パイオニアが開発している走行空間センサーの相互提供について協議していく。パイオニアでは、プローブ情報を用いたネットワークシステム「スマートループ」を展開するほか、高性能な小型・低コスト走行空間センサー「3D-LiDAR」の開発を進めるなど、自動運転向けの開発を加速させている。(2015年9月8日付日刊自動車新聞より)

-全額出資子会社の先鋒電子(中国)投資有限公司が中国・清華大学蘇州自動車研究院傘下のベンチャー企業の蘇州清研微視電子科技有限公司と、ADAS(先進運転支援システム)関連技術で協業すると発表した。予防安全領域でのADAS機能を搭載した次世代車載機器を共同開発し、2016年以降の製品化を目指す。協業ではパイオニアの車載機器などの技術と同研究院のADAS関連技術を組み合わせる。疲労や煙・アルコールの検知システムのほか、人工知能技術や画像認識アルゴリズムなどを用いて、ADAS機能を搭載した次世代車載機器を開発する。(2015年11月28日付日刊自動車新聞より)

中期事業計画 (2017年3月期 - 2021年3月期)

-市販事業、OEM事業、地図事業・自動運転関連を事業の柱として成長戦略に取り組んでいく。

市販事業
-売上の持続的成長による高利益性の維持とコネクテッドカーライフの早期実現に向け、スマートフォン連携商品の強化や先進運転支援システムによる付加価値提案、車室内の新たなエンタテインメントの提供に加え、クラウドを活用した業務用ビジネスの拡大や、新興国での普及価格帯製品の強化を図る。

OEM事業
-既存顧客からの大規模受注への対応として、事業プロセス全体の最適化を進めるとともに、新規受注の獲得に向けて、顧客ニーズを先取りした製品の開発・設計に取り組み、収益性の改善を図る。

地図事業・自動運転関連
-自動運転に必須となる3次元走行空間センサー「3D-LiDAR (ライダー) 」と高精度地図データをともに供給できる強みに加え、アライアンスの活用により、高度化地図による「データエコシステム」の構築と事業化に取り組み、「自動運転の実現になくてはならない会社」を目指す。

-中期事業計画における財務数値達成目標 (単位:億円)
2016年3月期
(実績)
2021年3月期
(計画)
売上高 4,496 5,100
営業利益 (率) 73
(1.6%)
310
(6%)


-2020年にカーエレクトロニクス事業の売上高で13年度比25%増の4,350億円を目指す。開発の効率化や事業体制の再構築、スリム化を通じて17年度までに営業利益率は13年度の3.6%から5%に改善、20年には6%以上を目指す。18年度以降は国内向けの業務用市場やテレマティクスサービスでの事業拡大、低価格製品による新興国市場の開拓に注力する。財務体質を健全化し、M&A(企業の合併、買収)や合弁事業、先行技術開発に投資を振り向けていく。(2014年11月11日付日刊自動車新聞より)

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 420,000 449,630 (6.6)
-カーエレクトロニクス 3,578 3,350 6.8
営業利益 8,000 7,304 9.5
経常利益 7,000 7,250 (3.4)
当期純利益 1,000 731 36.8

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 24,804 28,196 26,891
-カーエレクトロニクス 17,807 16,470 15,582


-2017年3月期の全社研究開発費は、25,000百万円を計画。

研究開発拠点

施設名称 所在地
研究開発部 / ベリフィケーションラボラトリ 神奈川県川崎市
研究開発部 (甲府) 山梨県甲府市
東北パイオニア米沢事業所内 山形県米沢市
中国研究開発部
Pioneer China Holding Co., Ltd 研究開発部
中国北京市

研究開発活動

(1) 3D-LiDAR(※)センサー
-光ディスク関連技術などを駆使した3次元走行空間センサー「3D-LiDAR(ライダー)」の車載実証実験を開始した。
-レーザー光で周辺状況をリアルタイムかつ詳細に把握するセンサーで、数十メートル先の物体までの正確な距離の測定や形状把握などが可能なため、将来的に自動運転車に不可欠なシステムになると言われている。
-高性能・低価格・小型化された「3D-LiDAR」の実現を目指している。
(※) LiDAR: Light Detection and Rangingの略称

(2) 高度化地図"データエコシステム"
-自動運転向けの地図を効率的に更新・運用する「高度化地図"データエコシステム"」の構築と事業化に取り組んでいる。
-2016年5月に、位置情報クラウド企業のHEREと"データエコシステム"の構築に向けた実証実験を行うことに合意した。

(3) ドライバーモニタリング
-ドライバーモニタリングに必要とされるセンサーからアプリケーションまでの技術を一貫して提供することを目指し、研究開発に取り組んでいる。
-バイタルセンサとして、視線や顔の向き、姿勢を検知するカメラセンサ、心電を検知するハンドルセンサ、脈拍を検知するシートセンサの開発に取り組んでいる。
-ドライバーの身体状態推定技術では、主に運転中の眠気、疲労、緊張の検出技術の開発に取り組んでいる。
-眠気の検出では、当社は自律神経系に着目し、心拍や脈拍の変化から眠気予兆を高精度に検出する技術の開発を進めている。
-不快に感じない無自覚の領域から音や振動等の刺激により、ドライバーを良好な身体状態に改善、維持する技術の開発にも取り組んでいる。

3D-LiDARの開発体制を拡充
-走行空間センサー「3D-LiDAR(ライダー)」の開発体制を拡充する。1月に3Dライダーの開発部隊となる組織を立ち上げた。今後は専任のエンジニアを中心に関連部署を含めた総勢100人体制で開発スピードをあげる。3Dライダーは数十メートル先の物体の距離や幅を詳細に検出し、その形状から物体を認識できる。17年初頭の完成を予定する試作品は、子会社のインクリメントPが使用する地図整備車両向けに導入するほか、自動車メーカーにも提供する。製品化は17年に業務用を、18年以降に一般車両向けを計画する。高性能化とともに、一般車両への搭載に不可欠な小型化と低価格化も図り、当初計画を遅延なく達成する。将来的には3Dライダーの搭載車両から周辺情報を自動的に収集し、高度化地図データを更新する「データエコシステム」の構築を目指す。(2016年2月23日付日刊自動車新聞より)

透過型の有機EL照明
-透過型の有機EL照明を車載分野で展開する。点灯時は外側から見える面だけが発光し、運転席からの後方視界を確保できる「透過型ハイマウントストップランプ」を開発した。2019年発売の車両への搭載を目指す。消灯時も視認性を維持できる特長から、サンルーフ一体型照明なども提案する。将来的には自動運転車で自車の存在を外部に知らせる用途も見込む。(2015年12月17日付日刊自動車新聞より)

テレマティクスソリューション
-自動車業界で初めてスマートフォン(スマホ)と自動車向けビーコン端末を活用したテレマティクスソリューション「クルマDEビーコン サービスプラットホーム」を開発したと発表した。同社が提供する自動車向けビーコン端末を活用することにより、ドライバーの乗車、運転中、降車などの状況を認識し、利用シーンに合わせてスマホを活用したサービスの提供を可能にする。東京海上日動火災保険が同日発表した自動車保険契約者向けの新たな事故時自動連絡支援サービスに採用された。車内に設置したビーコン端末がドライバーの乗り降りを認識し、事故発生時にスマホを1タップするだけで保険代理店または東京海上日動の事故受付コールセンターに事故連絡することができる。(2015年9月1日付日刊自動車新聞より)

自動運転支援地図の開発
-完全子会社のインクリメントPは10日、金沢大学と共同で自動運転支援地図の開発を開始したと発表した。過疎地や高齢化地域での自動運転車の実用化を視野に公道での実証実験も進める。金沢大の研究チームは2月に日本で初めて地域高齢者の移動支援を目的とした市街地での自律型自動運転車の実証実験を行った。同実証実験で用いられる自律型自動運転車は、目的地を設定すると運転手の操作なしに自動で到達できる高度有人運転支援システム。ルート探索や車線変更、交差点右左折、信号などの交通規制順守において、自律型自動運転システムと高度な地図情報との協調制御を行う。(2015年8月11日付日刊自動車新聞より)

新製品

テラヘルツスキャナー
-テラヘルツ波を利用して物体内部を測定するテラヘルツスキャナーを自動車業界向けに展開する。塗装膜の厚みやムラを計測できるのが特長で、完成車工場の塗装工程における品質管理などでの用途を見込む。現在は試作段階で、展示会などを通じて得た意見や要望を製品開発に反映させる。(2015年7月29日付日刊自動車新聞より)

ミラー型テレマティクス端末
-LTE通信モジュールを搭載したミラー型テレマティクス端末を2015年7月に発売すると発表した。次世代型法人車両ソリューション向けに提供を開始するとともに、同社の業務用車両向けテレマティクスサービス「ビークルアシスト」へ対応する。この製品は、高速・大容量・低遅延のLTE回線を使って常時ネットワークに接続しているため、クラウドサービスを活用した業務指示や車両の動態管理をリアルタイムで行える。広角車載フロントカメラを内蔵しており、ドライブレコーダーとして使用できるほか、独自の画像センシング技術によるレーン移動検知/前方車両発進検知や、GNSS (全地球型測位システム) による自車位置の捕捉、内蔵センサーによる危険運転検知などの運転支援機能を備える。(2015年6月17日付プレスリリースより)

技術導入契約

(2016年3月31日現在)
提携先
(所在地)
内容 期間
Dolby Laboratories Licensing Corporation
(米国)
デジタルサラウンド装置および雑音低減装置に関する製造技術の特許権実施の許諾 1971年12月21日から特許権満了日まで
MPEG LA, L.L.C.
(米国)
MPEG-2ビデオ規格製品に関する製造技術の特許権実施の許諾 1994年1月1日から2015年12月31日まで

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 25,426 32,586 22,135
-カーエレクトロニクス 20,444 27,220 16,651


-2016年3月期の主な設備投資は、製品組込ソフトウェア、金型および生産設備。
-2017年3月期の全社設備投資額は、27,800百万円を計画している。

設備の新設計画 (カーエレクトロニクス)

(2016年3月31日現在)
会社名・
事業所名
所在地 設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
予定
本社 東京都
文京区
社内利用ソフトウエア他 910 2015年8月 2017年3月
川越事業所 埼玉県
川越市
カーエレクトロニクス製品生産設備、販売目的ソフトウエア、社内利用ソフトウエア他 14,131 2014年7月 2017年3月
東北パイオニア 山形県
天童市・米沢市
カーエレクトロニクス製品等生産設備 989 2016年4月 2017年3月
インクリメント・ピー 神奈川県
川崎市
地図ソフト等 3,444 2016年4月 2017年3月
Pioneer Manufacturing(Thailand) Co., Ltd. タイ
アユタヤ
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 1,893 2016年4月 2017年3月
Tohoku Pioneer(Thailand) Co.,Ltd. タイ
アユタヤ
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 703 2016年4月 2017年3月
Tohoku Pioneer(Vietnam) Co.,Ltd. ベトナム
ハイフォン
カーエレクトロニクス製品生産設備、金型 646 2016年4月 2017年3月
Pioneer Technology(Shanghai) Co., Ltd. 中国
上海
カーエレクトロニクス製品生産設備 681 2016年4月 2017年3月
Pioneer do Brasil Ltda. ブラジル
マナウス
カーエレクトロニクス製品生産設備 263 2016年4月 2017年3月