クラリオン (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上収益 216,227 198,632 8.9 -円安影響、米州、アジアにおけるOEM(相手先ブランドによる生産)市場の拡大及び新製品による増加。
営業利益 11,551 7,386 56.4 -増収による操業度改善、原価低減の推進等により増益。
税引前当期利益 10,495 6,131 71.2 -
親会社株主に帰属する当期利益 7,743 4,875 58.8 -


要因
<日本>
-新車販売の低迷、市場回復の遅れにより、前期同期比12.8%の減収。
-円安を受けた海外生産から国内生産への移管及び全社をあげた原価低減活動等により、前期同期比97.7%の増益。

<米州>
-米国での好調な自動車販売、OEM市場向け新製品の導入、中米子会社のEMS(電子機器受託製造サービス)事業の拡大等により、前期同期比47.6%の増収

<欧州>
-自動車販売は好調を維持しているものの、モデル切り替えの端境期のため、前期同期比13.9%の減収。
-売上収益が減少したものの原価低減を推進した結果、前期同期比6.8%の増益。

<アジア・豪州>
-中国、タイでのOEM市場向け売上の拡大、北米向け製品生産増による操業度改善等により、前期同期比11.8%の増収。

受注

-自動駐車システムの一部を受注した。車両に装着したデジタルカメラで駐車可能な空間を認識し、ステアリングやブレーキなど制御系に情報を伝える部分を担う。複数のカメラ映像を高精度な合成画像として表示する独自の画像処理技術を活用する。自動駐車システムは運転者によるステアリングやブレーキなどの操作が不要で、日系メーカーが2018年に発売する量販車に採用される予定。今後は運転者が車外から指示して自動駐車するバレーパーキングなどの検討・開発も進める。(2016年2月12日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画

-2017年度までの中期経営計画を発表した。20年を見据えて安心・安全を志向するインテリジェントセーフティ事業と「つながる」を実現するコネクティビティー事業に注力し、最終年度に連結営業利益率で5%以上を目指す。製品戦略では全商品でコスト構造改革を進める。インテリジェントセーフティ製品は近傍視界支援の「サラウンドアイ」や自動駐車で商圏を広げる。ナビゲーション・ディスプレーオーディオではスマートアクセスの進化とHMIでの差別化に取り組む。スマートアクセスでは「より安全、安心につながる重要な情報をユーザーに提供する」 (川本英利社長兼COO) 方針だ。(2015年5月28日付日刊自動車新聞より)

生産動向

-日本でカーナビゲーションなどを増産する。中国で生産している一部製品を日本に移管するもので、規模は年間数十万台の見通し。円安や中国での人件費高騰などへの対応策で、今後さらに円安が進行した場合も中国から移管する機種を増やす。同社は6カ国に生産拠点を持ち、4月時点の完成品の生産比率で日本は21%。国内回帰により2017年度は25%以上に高める。中国の東莞拠点(DCOE)で生産していた一部製品を日本に切り替えた。国内唯一の生産拠点である子会社のクラリオンマニュファクチャリングアンドサービスで5月から本格的に量産している。(2015年7月30日付日刊自動車新聞より)

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減 (%)
売上高 200,000 216,227 (7.5)
営業利益 10,000 11,551 (13.4)
税引前利益 9,000 10,495 (14.2)
親会社株主に帰属する当期利益 6,500 7,743 (16.1)


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 19,509 17,536 16,819

研究開発活動

(1) 自動車向けクラウド型テレマティクスサービス「Smart Access」の拡充
-日立グループの協力を得て立ち上げ運用する独自の自動車向けクラウド情報ネットワークサービス「Smart Access」の拡充を継続して行う。

-2015年3月期、車載情報機器の音声操作対応および対応言語の拡大を図り、北米と欧州に対応した。さらに、自動車メーカーに対して次世代インフォテイメントシステムと位置付けた新たなサービス提供を開始。

(2) セーフティアンドインフォメーション事業における技術、商品開発
画像処理ECU、カメラ等による運転支援技術
-画像認識や制御連携技術に加え、単体カメラを使った高度な物体検知技術や、映像信号のデジタル伝送による高精細「SurroundEye」画像を用いた精度向上型の認識技術を追加して、自動駐車システムの実用化に取組んできた。

-顧客にシステム評価を依頼、自動車開発の視点で指摘された内容を改善することで、2015年度は本格的な量産開発を開始。さらに高度なシステム要求があることを見越し、経路誘導技術のブラッシュアップやセンサーフュージョン、周辺検知距離の拡大、通信システムとの融合に取組んでいる。

-「SurroundEye」は業務用車両でも採用が始まり、グローバルな商品展開を進めている。

-2020年前後に商品化されると言われる自動運転に関しては、高精度な位置検出機器であるMPU及び新たな画像認識技術や車載通信技術分野で日立グループと連携してこの分野に進出することを狙っている。

車載通信技術
-乗車前のエアコン制御など利便性への応用だけでなくロシア市場でのエマージェンシーコール実現といった安心・安全も目的としたTCUモジュールの本格生産と納入が、2015年秋から始まった。

-将来の交通環境下では車両間あるいは車両と道路インフラ間で通信して安全情報を提供する機能も計画されており、車両側でこれを実現するC2Xプラットフォームの開発を日立グループと連携して進めている。

(3) 多様化する車室内音響技術への取り組み
-2015年6月にスマートフォン用の自動音響チューニングアプリ「Intelligent Tune App」をリリース。

(4) フルデジタルスピーカー
-2015年末に車載スペックに対応した高出力型のフルデジタル駆動回路 (LSI) を開発。2016年4月よりハイレゾ音源に対応した次世代カーオーディオシステムとして販売を開始。

-デジタルプロセッサーとフルデジタルスピーカーで構成する新たな車載用フルデジタルサウンドシステムを開発したと発表した。デジタル音源からスピーカーまでフルデジタルで伝送し、高音質で原音に忠実なデジタルサウンドとして再生できる。スマートフォン(スマホ)など多様な機器と接続可能な高い汎用性と直感的な操作による高精度のチューニングを実現した。2016年4月に日・米・欧・豪で発売する。ドイツで開催中のフランクフルト国際自動車ショーでデモ公開する。(2015年9月18日付日刊自動車新聞より)

自動運転技術の開発
-国内の部品サプライヤーが自動運転技術の開発に注力している。三菱電機は、前方を走行する車両から荷物が落下した場合、周辺の安全を確認してハンドル操作で危険を回避する技術を開発した。車載機器に搭載できるコンパクトな人工知能も開発、2017年以降の実用化を目指す。日立オートモティブシステムズは、クラリオンと共同開発した自動走行システムを19日に報道公開、22日から一般公道で走行実証試験を実施する。自動運転技術の開発では、ボッシュやコンチネンタルなど欧州系サプライヤーが先行していると見られている。自動運転関連技術の市場規模は、今後拡大することが見込まれており、日本のサプライヤーも開発を本格化している。(2016年2月20日付日刊自動車新聞より)

自動走行システムの実証試験を開始
-日立オートモティブシステムズ(日立AMS)は22日から茨城県ひたちなか市の有料道路で自動走行システムの実証試験を開始する。19日には同市の佐和事業所で報道陣に試験車両を公開した。試験車両には富士重工業の「インプレッサ」を使用する。ステレオカメラとミリ波レーダー、日立グループのクラリオンの周辺監視システム「サラウンドアイ」を搭載し、センサーからの情報を自動運転ECUで統合してステアリングやブレーキを制御する。セントラルゲートウェイやMPU(高精度地図)などのユニットを含め、検知から情報処理、制御までを、すべて日立グループの技術で対応した。パソコンを使用せずに組み込み機器で構成するなど、より量産に近い技術で自動運転車を実現した。(2016年2月22日付日刊自動車新聞より)

シートを振動させる警告システム
-シートを振動させて車両接近などを運転者に知らせる警告システムを開発した。音声出力と振動の両機能を持つスピーカーの一種をシートに搭載し、振動位置を制御することで、運転者はどの方向に危険が存在するかを直感的に理解できる。音声と振動での警告により、聴力の弱い高齢者にも確実に情報を伝えられる。安心・安全を実現する機能として、自動車メーカーやシートメーカー向けに提案する。(2016年2月18日付日刊自動車新聞より)

衝突防止技術
-日立製作所、日立オートモティブシステムズ、クラリオンの3社は、歩行者などの行動変化を予測し、リアルタイムで最適な速度パターンを高速演算することで、安全かつ実用的な速度で衝突を防止する基本技術を開発し、その有効性を実験車にて確認したと発表した。今後、検証を重ねることで技術開発を加速し、自動運転の実用化に貢献していく。(2015年10月14日付プレスリリースより)

「サラウンドアイ」の次世代モデル
-マルチカメラで車両周辺情報を俯瞰表示する映像システム「サラウンドアイ」の次世代モデルをフランクフルト国際自動車ショーに出展した。次世代型は車載カメラ映像のメガピクセルデータをデジタル伝送し、デジタルECU処理することで映像劣化を軽減した。運転時の視認性が現行型に比べ約3割向上する。車両の周辺をより細かく、遠方まで表示することで直感的に周囲の状況を把握できる。従来は運転手の死角を解消する視界支援の機能だったが、次世代型では警報支援や自動駐車などの監視・予防安全に向けたシステムを提供する。(2015年9月17日付日刊自動車新聞より)

生産ラインの開発
-設備投資を半減できるカーナビの生産ラインを開発する。まずは2016年度中に国内工場に導入した後、順次海外拠点へ展開していく。汎用設備を用いて自動化を低コストで実現することで、新興国の生産ラインの自動化を可能とし、人件費の上昇に対応する。新たな生産ラインの開発によりグローバル生産のコスト競争力を高めると同時に、品質の底上げや、為替変動による生産移管に対応しやすい体制を整える。(2015年7月2日付日刊自動車新聞より)

技術導入契約

(2016年3月31日現在)
相手先 国名 内容 契約期間
Discovision Associates 米国 光学系ディスクプレーヤーの製造技術

1994年12月01日-
許諾特許権満了日

一般財団法人道路交通情報通信システムセンター 日本 VICS技術情報の使用に関する契約 1995年11月28日-
両当事者での
終了確認日
Google Inc. 米国 音声認識および検索技術の使用に関する契約 2013年04月30日-
2016年08月31日

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 3,888 4,999 2,888

国内投資

-生産設備ならびに金型等に1,527百万円の設備投資を実施。

海外投資

<米州>
-Electronica Clarion, S.A. de C.V.のEMS事業 (電子機器受託製造サービス) の設備投資更新等に、547百万円の設備投資を実施。

<欧州>
-Clarion Hungary Electronics Kft.の生産設備等に374百万円の設備投資を実施。

<アジア・豪州>
-主に中国工場の生産設備更新、新機種生産のための金型等、Clarion Asia (Thailand) Co., Ltd.の設備拡張に1,439百万円の設備投資を実施。