NTN (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)

2017年
3月期
2016年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 683,328 716,996 (4.7) -
営業利益 35,622 47,770 (25.4) -
経常利益 29,604 38,211 (22.5) -
親会社株主に帰属する当期純利益 2,830 15,037 (81.2) -
自動車市場向け
売上高 480,216 499,258 (3.8) -
利益 20,005 24,448 (18.2) -



中期経営計画 「NTN100」 (2016年3月期 -2018年3月期)

-「NTN100」は、「NTN Transformation for Next 100 (次の100年に向けたNTNの変革)」。2018年3月に迎える創業100周年と、次の100年の持続的成長に向け、3つの基本方針を掲げている。自動車事業に関連する主な内容は以下のとおり。

攻める経営:新たな領域での事業展開
-EV事業では小型・軽量化を実現した 「新インホイールモーターシステム」 を開発。
-次世代自動車用商品の早期事業化に向け、「電動モジュール商品事業部」 を新設。「電動モーター・アクチュエーター」を発売予定。
-先端技術研究所 (三重県桑名市) 内に 「グリーンパワーパーク」 を設立。風力、水力、太陽光などの自然エネルギーを電気自動車等へ循環させる実証実験を行う。

稼ぐ経営:ドライブシャフト事業の構造改革
-「アドバンスドドライブシャフト (ADS) モジュール」 で軽量化と部品の共通化を推進。
-プレミアムカー向け 「リア用軽量ドライブシャフト」 を発売、高付加価値商品の市場展開を開始。
-中国 (襄陽) とメキシコの新工場立ち上げでグローバル供給体制を強化。
-米国にNTN Driveshaft Anderson, Inc. (NDA) を設立。2017年4月量産開始予定。

築く経営:財務基盤の強化
-ROE:4.3%超 (2018年3月期目標)、1.2% (2017年3月期実績)
-営業利益率:5.1% (2018年3月期目標)、5.2% (2017年3月期実績)

海外事業

<米国>
-同社は、高雄工業、高周波熱錬との合弁会社であるNTK Precision Axle Corporation (NTK) の第2工場を新設すると発表した。新工場は、2015年に設立したドライブシャフトの完成品工場であるNTN Driveshaft Anderson, Inc. (米国インディアナ州) の西側土地に建設し、シャフトの旋削・熱処理加工を行う。 (2017年3月17日付プレスリリースより)

研究開発活動

基盤事業
-自動車事業:転がり軸受、ドライブシャフトの低トルク化、小型・軽量化等の高機能化開発とともに、軸受の周辺部品を融合させたモジュール・ユニット製品の開発を推進

  • アドバンスドドライブシャフト (ADS) モジュール:等速ジョイント (CVJ) とハブベアリングをプレスコネクト方式で接合することで軽量化と高性能化を実現。
  • 2モーターオンボード駆動システム:電気自動車 (EV) 向け駆動システムとして、左右の車輪をそれぞれ専用のモーターで駆動する。1モーター式EVに比較して、左右の駆動力を適正に制御することができ、旋回性能やスリップ路面での走行性能、安全性等が大きく向上する。

-軸受・磁性製品:焼結材料、樹脂材料からなるすべり軸受、磁性材料からなる磁性製品の開発・製造・販売

  • 早期異常検知機能付き円すいころ軸受:転がり軸受に樹脂製のフィルターと鉄粉を検出するセンサーを設置。
  • アモルファスコア:EVの電源装置用に大電流・高周波に対応できる磁性材料。

新事業展開
-EV事業:電動モジュール商品事業部を新設

  • インホイールモーターシステム
  • 電動モーター・アクチュエーター

-同社は8日、新領域として「EV(電気自動車)事業」を本格展開し、次世代自動車に対応した各種システム商品の開発を推進する方針を発表した。2018年3月に創業100周年を迎えることから、次の100年を見据えた事業としてEV事業を経営の柱の一つに育成していく。2025年には、EV事業で300億円の売上高を目指す。(2017年3月9日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制のグローバル化
海外販売の拡大に対応するため、研究開発体制のグローバル化をさらに推進する。日本での最先端技術研究を産学官の連携を活用しながら進め、海外研究開発拠点とのグローバルな新技術・新商品の開発網を構築するとともに、米州、欧州、アジア他の各地域において拡販に即応した技術サービス、認定評価、調査、分析等、顧客対応の加速化を図る。

製品開発

次世代向けセンサー
-同社は自動運転車などの次世代自動車向けセンサーを拡充する。センシング方法や磁気エンコーダーの改善により、車輪速センサーの分解能を従来比40倍にまで高める技術を確立した。検知能力を高度化することで、車の制動距離を短くするのに寄与。ハブベアリングに搭載することで、緊急ブレーキ時などにも対応可能となる。加えて、検知精度を高めたセンサーも開発し、モーターの回転を検知する回転角センサー(レゾルバ)として応用する。いずれも次世代車の需要の本格化が予想される2020年ごろの受注を目指す。(2017年3月30日付日刊自動車新聞より)

高硬度の焼結合金
-同社は、カムやスプロケットなどの自動車用部品向けに高強度の焼結合金を開発したと発表した。材料となる合金粉末や熱処理工程を最適化することで密度7.6グラム/立方センチメートル、「疲れ強さ」660メガパスカル以上を実現した。従来の焼結合金では適用が限定的だった歯車・ブッシュなど切削加工が必要な機械部品との置き換えが可能としている。2020年度に同製品で売上高10億円を目指す。(2016年6月30日付日刊自動車新聞より)

電動モーター・アクチュエーター
-電気信号によりブレーキやシフトチェンジなどを制御する 「バイワイヤー制御」 に適応する汎用性が高い 「電動モーター・アクチュエーター」 シリーズを開発した。モーターの軸配列別に 「同軸直列タイプ」 「同軸中空タイプ」 「平行軸タイプ」 の3種類を用意、小型から大型まで3サイズをラインアップした。2018年に量産を開始する予定で、2025年度には300億円の売り上げを見込んでいる。(2016年5月31日付日刊自動車新聞より)

摩擦低減AT用シールリング
-同社は、従来製品に比べて摩擦抵抗を6割削減したオートマチックトランスミッション(AT)用シールリングを開発した。日系の自動車及び部品メーカーから受注した。摩擦を低減しながら、シールリングの摩耗量も10分の1に抑えた。日系以外の欧米メーカーなどにも幅広く提案し、2020年度に15億円の売上高を目指す。今回受注した「低トルクシールリング」は、特殊充填材を配合したポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を採用。側面にV字状の潤滑溝を設けることで、低トルク化と高いシール特性を両立し、シールリングの摩耗量を大幅に抑えた。シールリング幅も30%低減し、小型化を図った。
(2016年3月28日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-世界4極体制 (日本、欧州、米州、中国) で研究開発を実施。
-日本・欧州:要素技術をはじめとする基礎研究や最先端技術の研究。
-中国:産学官の連携による開発や、現地の自然環境にあわせた実証試験を行い、顧客対応力を強化。
-各地域で顧客ニーズに迅速に対応すべく、個々の商品開発や認定評価・調査・分析といった技術サービスを「現地完結型」で展開。



研究開発拠点

施設名称 所在地
産業機械技術開発センター 三重県桑名市
先端技術研究所 三重県桑名市
総合研究開発センター 静岡県磐田市
商品開発研究所 静岡県磐田市
生産技術研究所 静岡県磐田市
CVJ・アクスルユニット技術開発センター 静岡県磐田市
NTN Bearing Corp. of America -
Industrial Engineering Dept.
米国、イリノイ州
NTN Bearing Corp. of America -
NTN Automotive Center
米国、ミシガン州
NTN Waelzlager (Europe) G.m.b.H. -
Engineering Dept.
ドイツ、Erkrath
NTN Transmissions Europe -
Research and Development Dept.
フランス、Allonnes
NTN-SNR Roulements S.A. フランス、Annecy
NTN China Technical Center 中国、上海市



技術供与契約

(2017年3月31日現在)

相手先 国名 契約内容 契約期限
National Engineering Industries Ltd. インド ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 2011年11月2日から
2017年12月31日まで
台惟工業股份有限公司
[Taiway Industry Co., Ltd.]
台湾 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 2004年3月26日から
2022年11月23日まで
Unidrive Pty. Limited オーストラリア 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 1983年2月15日から
2017年12月31日まで



研究開発費

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 19,196 18,480 18,088



設備投資額

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 35,398 36,300 31,266

-2018年3月期見通しは44,000 百万円。



2017年3月期の主な設備投資

地域 会社名/事業所 内容 総額
(百万円)
日本 (株) NTN能登製作所 軸受製造設備の増設 12,198
同社赤盤製作所 軸受製造設備の増設
米州 NTN Driveshaft Anderson, Inc. 工場新設による建屋新築 11,350
NTN-BOWER CORP. 軸受用設備・等速ジョイント部品用設備の増設
欧州 NTN-SNR Roulements S.A. 軸受製造設備の増設 8,250
NTN Mettmann (Deutschland) G.m.b.H. 軸受製造設備の増設
アジア他 NTPT CO.,LTD 等速ジョイント製造設備の増設 3,663
襄陽恩梯恩裕隆傳動系統有限公司[Xiangyang NTN-Yulon Drivetrain Co., Ltd.] 等速ジョイント製造設備の増設



設備の新設計画

(2017年3月31日現在)

会社名/事業所
(所在地)
内容 総額
(百万円)
着手 完了 目的
同社
研究部門 研究用設備等 8,432 2015年04月 2018年03月 研究開発等
桑名製作所
(三重県桑名市)
軸受用建屋および設備 7,240 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
岡山製作所
(岡山県備前市)
軸受・等速ジョイント用設備 5,975 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
磐田製作所
(静岡県磐田市)
軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 3,575 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
子会社・関連会社
NTN三重製作所
(三重県桑名市)
軸受用建屋および設備 6,500 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
NTN能登製作所
(石川県志賀町)
軸受用建屋および設備 4,994 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
NTN Manufacturing de Mexico, S.A. de C.V.
(メキシコ、アグアスカリエンテス州)
軸受・等速ジョイント用建屋および設備 8,082 2015年04月 2018年03月 増産
NTK Precision Axle Corp. 軸受・等速ジョイント用建屋および設備 7,904 2015年4月 2018年3月 増産および合理化
NTN-Bower Corp.
(米国、イリノイ州)
軸受用設備・等速ジョイント部品用設備 4,368 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
NTN Driveshaft Anderson, Inc.
(米国、インディアナ州)
等速ジョイント用建屋および設備 12,212 2015年04月 2018年03月 増産
NTN-SNR Roulements S.A.
(フランス、Annecy)
軸受用建屋および設備 11,285 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
NTN-SNR Rulmenti S.R.L.
(ルーマニア、Sibiu)
軸受用建屋および設備 4,341 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
NTN Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.
(タイ、Rayong)
軸受・等速ジョイント・ 精密機器商品等用設備 4,395 2015年04月 2018年03月 増産および合理化
襄陽恩梯恩裕隆傳動系統有限公司
[Xiangyang NTN-Yulon Drivetrain Co., Ltd.]
(中国襄陽市)
等速ジョイント用設備 3,535 2015年04月 2018年03月 増産



2018年3月期の業績見通し

(単位:百万円)

2018年3月期
(予想)
2017年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 700,000 683,328 2.4
営業利益 36,000 35,622 1.1
経常利益 28,000 29,604 (5.4)
親会社株主に帰属する当期純利益 1,000 2,830 (64.7)
自動車市場向け
売上高 492,500 480,216 2.6
営業利益 18,900 20,005 (5.5)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-2018年3月期は、米国における各種政策が、日本、中国、及び新興国経済の減速の可能性、また欧州各国での国政選挙が予定されていることから、先行きに不透明感が残ると予想している。

-地域別の動向見通しは以下のとおり。

  • 日本:新モデル立上り効果はあるものの、同社北米への生産移管の影響でほぼ横ばい。
  • 米州:新車生産計画の見直しの影響はあるも、メキシコ製造の新案件立上りで増加。
  • 欧州:生産台数は横ばいであるものの、主要客先の需要好調により販売増。
  • アジア他:中国市場の継続的な成長と、アセアンの日系二輪向けの堅調な需要により増加。