Robert Bosch GmbH 2009年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2009年
12月期
2008年
12月期
増減率
(%)
要因
グループ全体
売上高 38,174 45,127 (15.4) 1)
EBIT (1,151) 1,515 - -
自動車技術部門
売上高 21,716 26,475 (18.0) 2)

要因
1)
-世界金融危機により業績は深刻な影響を受け、第1四半期の売上高は前年と比べ約25%減。年央から回復し始めたものの、それまでの不振を帳消しにするには程遠いものだった。

<アジア>
-2009年初め、経済金融危機は全地域の事業活動に影響を及ぼしたが、とりわけ年の後半は中国、インドといったアジア市場での経済活動が活発になったこ とにより状況は大幅に改善した。中国での売上高はユーロ換算で29%増、現地通貨換算では21%増。インドでの売上高はユーロ換算で約1%増、現地通貨換 算では6%増。

-アジア・太平洋の全体の売上高は、約2%減の7,700百万ユーロ。(現地通貨換算では約6%減。)日本での売上の伸び悩みが主な要因。

-アジア・太平洋での売上高が、初めてグループ全体の売上高の20%を占めた。

<欧州・米州>
-下半期、欧州や米州の市場は回復し始めたものの、売上高は上半期の大幅な落ち込みにより前年を大きく下回る結果となった。欧州での売上高は、20%減の 2,380百万ユーロ。現地通貨換算では18%減。北米での売上高は、11%減の5,300百万ユーロ。現地通貨換算では13%減。

-南米での売上高は、16%減の1,400百万ユーロ。為替換算調整後では13%減。

2)
自動車技術部門
-第1四半期、売上高は前年比約3分の1の減少。年央から回復し始めたが、売上高は18%減。為替換算調整後では19%減。

-自動車技術部門では、ほぼ全ての地域で市場の急激な落ち込みの影響を受け、特に商用車事業のディーゼルシステム部門、スターターモーター・ジェネレーター部門、合弁会社のステアリングシステム部門への影響が大きかった。


受注

メーカー・モデル 搭載部品
トヨタ「Venza」 ESC(横滑り防止装置)
GM「Chevrolet Traverse」 ESC(横滑り防止装置)、
TEHCM(電子油圧式トランスミッション制御モジュール)
GM「Chevrolet Equinox」 EPS(電動パワーステアリング)
BMW「7 Series」 横滑り防止装置「ESP(R) premium」、制御ユニット
BMW(電気自動車) リチウムイオンバッテリーセル
BMW「X5d」 ピエゾ式ディーゼルコモンレールシステム
Opel「Insignia」 駐車アシストシステム「Park Steering Information」
Ford「Lincoln MKT」 ガソリン直噴システム
Ford「Lincoln MKS」 ガソリン直噴システム
Ford「Flex」 ガソリン直噴システム
Volkswagen ハイブリッドシステム
Volkswagen「CC 2.0T」 ガソリン直噴システム
Volkswagen「GLI 2.0L FSI Turbo」 ガソリン直噴システム
Audi「A4」 ガソリン直噴システム
Audi「Q7 TDI」 ピエゾ式ディーゼルコモンレールシステム
Audi「TT Coupe」 EPS(電動パワーステアリング)
Daimler「Mercedes ML350 BlueTEC」 ピエゾ式ディーゼルコモンレールシステム
Porsche ハイブリッドシステム


-2009年、ブレーキ制御システムの累計生産数が2億個を突破。

-2007年から生産しているスタート/ストップ・スターターモーターの累積出荷台数が100万台を突破したと発表。この製品の搭載車両は、NEDC モードの市街地走行において最大8%の燃費低減、二酸化炭素(CO2)の排出削減が可能という。(2009年8月28日プレスリリースより)

-ホットフィルムエアマスメーター(HFM)の累計生産数が2009年10月に1億個を突破。同社は1989年から量産車向けにHFMを供給中。現在は同 製品の主力工場であるドイツEisenach工場の他、ロシアSaratov工場、韓国のDaejeon(大田)工場、Kunpo(軍浦)工場、中国の上 海工場で生産を行っている。(2009年10月22日プレスリリースより)

 

海外事業

<ポーランド>
-デンソーと合弁で設立したDPF(ディーゼル微粒子除去フィルター)の開発・生産会社を解散することで合意したと発表。両社は2007年7月に折半出資 で新会社「アドバンスト・ディーゼル・パティキュレート・フィルターズ」(ポーランド・ヴロツワフ市)を設立し、2009年からコージェライト製DPFを 生産する予定だった。しかし2008年秋からの世界同時不況による欧州市場の低迷で、合弁会社で見込んでいた量の需要が見込めなくなった。同社は建設中の 工場建屋を引き取るが、単独でのDPFの生産も行わない見通し。(2009年5月21日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-Bosch North Americaはシャシーシステムコントロール部門を米国ミシガン州Plymouthのテクニカルセンターに移転した。今回の移転により同テクニカルセン ターは、自動車機器テクノロジー事業の4部門 - シャシーシステムコントロール、自動車エレクトロニクス、スターターモーター・ジェネレーター、エレクトリカルドライブ - の販売・品質管理・エンジニアリング拠点としての機能を持つことになる。また、拠点を1ヶ所に集約したことで、同社はACC(アダプティブクルーズコント ロール)、PCW(衝突予知警報システム)、EBA(緊急ブレーキアシスト)、AEB(自動緊急ブレーキ)といったセーフティシステムの開発活動を強化す る考え。(2009年8月26日プレスリリースより)

<インド>
-インドで同社初のABS拠点が生産を開始。

<韓国>
-合弁会社SB LiMotive Co. Ltd.(韓)が蔚山(Ulsan)市にリチウムイオン電池工場を建設。
>>>詳細は、設備投資へ


企業買収

-Pacifica Group Limited (Pacifica) に対するTOB(株式公開買い付け)を実施し、同社の全株式を取得する意向を明らかにした。Pacificaはオーストラリアに本拠を置く自動車用ブレー キメーカー。同社は現在、筆頭株主としてPacifica株の約76.6%を保有している。(2009年6月16日付プレスリリースより)

 

合弁会社

-DeutzやEberspaecherとディーゼル排気制御システムを扱う合弁会社を設立することで合意。建設用・農業用機械および商用車向け に、ディーゼル排気後処理システムモジュールを供給するのが目的。新会社の名称は「Bosch Emission Systems GmbH & Co. KG」で、ドイツStuttgartに本社を置く。2010年1月に事業を開始し、2010年第3四半期から本格生産を開始する予定。(2009年12月 10日付プレスリリースより)

 

売却

-曙ブレーキ工業と北米ブレーキ事業を譲渡することについて協議を開始したと発表。ディスクブレーキ、ドラムブレーキなどの機構を生産するファウン デーションブレーキ事業を曙ブレーキが買収する内容。同社はトヨタ自動車に次ぐ曙ブレーキの大株主で10%強を出資しているほか、曙ブレーキに技術供与を 行うといった協力関係がある。北米ではファウンデーションのサプライヤーの生産能力が過剰な状況のため、両社は協力関係を生かして曙ブレーキに同分野を集 約、供給体制の適正化につなげることを目指す。(2009年8月31日付日刊自動車新聞より)

 

リストラクチュアリング

-年内に約1万人を削減する計画を発表。このうち自動車部門では、現行の16万8,000人から16万人に減員する。(2009年9月15日プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2009年12月期 2008年12月期 2007年12月期
グループ全体 3,603 3,889 3,583
自動車技術部門 2,862 3,250 2,899

研究開発体制

-研究開発員は世界で33,000名以上。
-このうち、約1,300名はグループ全体の研究・先進技術部門に属する。

 

研究開発拠点

  所在地 事業内容
地域センター 米国
ロシア
シンガポール
中国
日本
-地域動向の調査や市場機会の分析。


-約8百万ドルを投じ、米国ミシガン州Flat Rockのテストコースをアップグレードした。この施設は1989年以来、衝突防止技術の開発に重要な役割を担ってきた。(2009年7月13日付プレスリリースより)

-ロイトリンゲン大学応用科学部、シュトゥットガルト大学、バーデン=ヴュルテンベルク州とパワーエレクトロニクス(電子工学、電力工学、制御工学にまた がる技術)の研究調査センターを設立する。バーデン=ヴュルテンベルク州政府が、同プロジェクトの推進を承諾。研究対象には、ハイブリッド車などに使用さ れるモジュール、部品、システムなどのほか、太陽発電システムなどの再生可能エネルギー分野も含まれる。この分野での産学協力は、ドイツではこれが初め て。今後10年間で、同社とバーデン=ヴュルテンベルク州は、関連分野の教職ポスト設置やインフラ整備に2,500万ユーロ以上を投じる予定。この 「Robert Bosch Center for Power Electronics」は、ロイトリンゲンとシュトゥットガルトに設置される。(2009年11月3日付プレスリリースより)

 

特許

-2009年の特許申請件数は、3,870件。

 

技術提携

-独Infineon Technologies AGとの提携について発表。自動車機器用のパワー半導体事業が対象。同社はInfineonからライセンスを取得し、低電圧パワーMOSFET(酸化金属 半導体電界効果トランジスター)を生産する計画。また、今回の提携にはセカンドソース契約も含まれる。同社がドイツのReutlingen工場で半導体を 製造すると同時に、InfineonはMOSFET技術を用いて開発された部品を同社に供給する。(2009年3月23日付プレスリリースより)

-BMW Forschung und Technik、Continental、Daimler、Infineon TechnologiesとRoCC(Radar on Chip for Cars)プロジェクトを発足させた。あらゆるクラスの車両で使用可能なレーダーセンサーシステムの開発を目指し、共同研究を行う。現在、短距離用自動車 レーダーセンサーは超広帯域の24GHzが使われているが、欧州でこの周波数が利用できるのは2013年までとなっている。そのため、本プロジェクトでは 76-81GHzの周波数帯を利用し、最長250メートルまでの長距離と、5センチから20メートルまでの近距離をカバーするレーダーセンサーシステムの 開発を行う。プロジェクトの期間は3年間で、予算は17百万ユーロを超える。このうち8.3百万ユーロは、ドイツ連邦教育研究省が支援。(2009年5月 28日付プレスリリースより)

 

研究開発活動

-将来、自動車は電気自動車に移行するにしても今後20年間は従来の内燃機関エンジンが依然として主力であると予想。ハイブリッド車や電気自動車の開発を推し進めると同時にガソリン・ディーゼルエンジンの技術開発も継続。

-高性能エンジン用コモンレールシステムの開発に取り組んでいる。このシステムは、噴射圧が2,000バールを超え、ディーゼル燃料をより微細化するピエゾバルブを使用。2014年から導入される排ガス規制「Euro 6」をクリアするために採用可能なシステム。

-新興国などで成長が見込まれる「低価格車(LPV)」向けのディーゼルエンジン(DE)用燃料噴射システムの開発方針を固めた。既存のコモンレール式噴 射装置をベースに、噴射圧力を40-50%低い1100-1200気圧(バール)程度に抑えるなど機能を見直した専用タイプとする。中国やインドの排ガス 規制は当面、2000年以前の欧州規制「ユーロ3」に準拠した内容のため、噴射圧を落としても規制クリアが可能と判断した。噴射の低圧化に伴う強度要件の 緩和を生かしながらコスト競争力を高め、新規需要の獲得につなげる。(2009年6月16日付日刊自動車新聞より)

-自動車分野における二酸化炭素(CO2)の排出削減および安全システムの高度化、普及拡大に向けた技術開発の長期戦略をまとめた。CO2削減では電気駆 動システムの搭載拡大をにらみ電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)のコストアップの最大の要因である二次電池のコスト削減を始めとした課題解決に 取り組む。ただ、コストと性能のバランスを考えると今後の20年間は内燃機関がパワートレーンの主流となることに変わりがないとみており、低燃費な小排気 量エンジンで上級エンジン同等の出力を確保するダウンサイジング技術の高度化を進める。これによりミドルクラス車で1キロメートル走行当たりのCO2排出 を100グラム未満に抑える低燃費車の実現につなげる。(2009年6月18日付日刊自動車新聞より)


製品開発

ソレノイドインジェクター
-2009年、均圧バルブ付きソレノイドインジェクターの生産を開始。燃料噴射弁の開閉速度がより速くなり個々の噴射間隔が短縮、燃焼効率が向上。

ディーゼルエンジン
-ディーゼルエンジン(DE)の"ダウンサイジング"技術を確立。現在の2リットルクラスの出力特性を1・5リットル級で確保するような手法で、5、6年 後をめどに市販車への採用を目指す。燃料噴射の高圧化やターボチャージャーの制御の高度化によってめどをつけた。DEはガソリンエンジンと比べてCO2の 排出が少なく燃費特性では有利。ただ、重量が重く、コストが割高なことが弱点とされていた。新技術ではエンジン排気量を縮小できるためこれらの解決につな がる。排ガス後処理のコスト削減にめどがつけば、主力の欧州以外でもDEの普及が見込めるとしており、有望な環境対応ユニットとして幅広く提案す る。(2009年1月19日付日刊自動車新聞より)

ESP(横滑り防止装置)センサー
-ESP(横滑り防止装置)センサー「SMI540」を開発。このセンサーはヨーレートと加速度を同時に測定可能。2010年第2四半期から量産を開始する予定。(2009年9月4日プレスリリースより)

エアバッグコントロールユニット「AB plus」
-エアバッグコントロールユニットの新製品「AB plus」を開発。このコントロールユニットは、ESP(R)(横滑り防止装置)のイナーシャセンサーを格納。さらに加速度センサーとヨーレートセンサー を追加できるため、全方位の車両の動きを測定することが可能。また、従来型のパッシブセーフティ衝突検知機能を全て備えており、正面衝突、側面衝突、追 突、横転の危険性を検知するセンサー機能も、オプションで搭載できる。さらに、アクティブ歩行者保護システムも統合可能。この「AB plus」は最近、日系自動車メーカーに初めて採用された。(2009年12月発行プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2009年12月期 2008年12月期 2007年12月期
グループ全体 1,892 3,276 2,634
自動車技術部門 1,165 2,195 1,808

海外投資

<ベトナム>
-韓国KEFICOとの合弁会社がベトナム北部ハイズオン省のダイアン工業団地内に自動車部品工場を設立する。総投資額は60百万米ドルを計画。(2009年7月24日付プレスリリースより)

<韓国>
-Samsung SDI (韓)との合弁会社であるSB LiMotive Co. Ltd.(韓)は、国内の蔚山(Ulsan)市にリチウムイオン電池工場を建設する。2011年に完工予定で、BMW等に供給する。(2009年8月27日付プレスリリースより)