日本精工 (株) 2020年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
  2020年
3月期
2019年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 831,034 991,365 (16.2) -
税引前利益 24,065 79,229 (69.6) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 17,412 55,809 (68.8) -
自動車事業
売上高 573,814 689,658 (16.8) 中国や欧州での自動車市場低迷に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う自動車生産台数の減少など、またモデルチェンジの影響による電動パワーステアリング(EPS)の減少により減収
営業利益 9,804 44,949 (78.2) -

  

事業動向

2020年1月から子会社NSKステアリングシステムズの赤城工場にてボールねじの生産を開始

-衝突被害軽減ブレーキ義務化などに伴い、世界規模で電動油圧ブレーキシステム用ボールねじの需要拡大が見込まれることから、2019年3月に生産開始した埼玉工場に続き、同工場でも生産開始となった。海外生産も検討中の同社は、2026年には年産1,000万本のグローバル生産体制の構築を目指す。なお、ボールねじ生産に伴う投資総額は100億円規模を見込んでいるという。(2020年1月31日付プレスリリースより

-先進運転支援システム (ADAS) や電動化の普及で、応答性が高いモーターを使うブレーキブースターの需要増が見込まれる。ボールねじは高い位置決め精度が必要な工作機械などに使用されており、モーターの回転運動を直線運動へ高効率に変換できる。20年初めには緊急自動ブレーキを義務化する国際標準が発効され、各国でも順次広がることが受注拡大を後押しする。同社は、電動ブレーキブースター用ボールねじで21年度をめどに500万台分の規模を受注し、それに対応する生産能力を日本の工場で増強した。ただ、ここ数年で米中貿易摩擦や各国の政情不安による経済の停滞で新車販売が振るわないこともあり、当初の生産計画よりも時期が後ろにずれる見通し。(2019年12月18日付日刊自動車新聞より)

フォルクスワーゲン (VW) とステアリング事業における協業に合意

完成車メーカーと研究・開発することで、自動運転や電動化などで高度化する技術やノウハウを取り込む考え。ステアリングの生産でも補完し合う。まずは3、4年後の量産化に向けて次世代電動パワーステアリング (EPS) を共同開発する。自動車メーカーとの共同開発を超えた協業は今回が初となる。同社は10年以上にわたって取引先としてVWグループにベアリングや中小型車向けEPSを納入している。(2019年6月7日付日刊自動車新聞より)

 

研究開発費

(単位:百万円)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 18,265 19,023 17,059
自動車関連製品 13,866 14,909 13,222

 

製品開発

電動車向けの毎分3万回転の駆動モーターに対応する高速回転玉軸受を開発

-従来品は高速回転時に遠心力で保持器が外側に変形し、外輪などと接触して破損することが課題だった。開発品は保持器が変形しにくい材料や形状に変更し、高速回転性能を高めた。同製品で2030年に売上高100億円を目指すとともにさらなる高速回転対応の製品の開発にも着手する。新製品を適用したモーターは、毎分1万1千回転まで許容する軸受を採用するモーターに比べて体積で約45%の小型化に貢献するという。(2020年3月12日付日刊自動車新聞より)

電動化車両 (ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車など)用の新型テーパーローラーベアリングを開発

-希薄潤滑条件下での耐焼付性を劇的に高め、トランスミッションの信頼性と効率を向上させ、より小さな潤滑システムの使用とコンパクトなギアボックスの設計を可能にする。同社は毛管現象により微細な溝にオイルを保持および分配する特別なケージを作成した。オイルはローラーの端近くのケージに保持され、潤滑が少ない場合に微細溝から必要な領域に染み出すという。従来品と比較して、オイルポンプを停止した後、7倍の高耐焼付性を実現するとしている。新型ベアリングは、従来より焼付を防ぐために必要な潤滑油が95%少なく、幅が10%狭く、質量が5%小さくなっている。(2020113日付プレスリリースより)

モーター、インバーター、ワイヤレス充電ユニットで構成される第3世代のインホイールモーターを開発

-電気自動車 (EV)向けワイヤレスインホイールモーター (W-IWM)は、走行中に道路に埋め込まれたコイルから充電することが可能。大型乗用車向け(ホイールあたり25kW)のモーターは、2025年までにワイヤレス充電システムのテスト検証を目指す。この製品は日本精工、東京大学、ブリヂストンローム東洋電機製造の共同開発によるもの。(20191218日付プレスリリースより)

電気自動車 (EV)トランスミッションシステム用テーパーローラーベアリングの新型LCube IIシリーズを発表

-LCube IIは耐久性と耐焼付性により信頼性を高め、燃費効率を改善する。転がり接触面とローラーヘッドに気孔状の微小な窪みがあり、油膜を保持して表面の損傷を大幅に抑制する。その結果、従来品と比較して8倍以上の耐久性と同等以上の耐焼付性を実現するという。また、ローラー表面での潤滑油の蓄積と保持の改善により、低速時の摩擦を従来比10%削減するとしている。(20191213日付プレスリリースより)

電動車のギアボックスなど希薄潤滑環境向けの円すいころ軸受を開発

-円すいころ軸受は高荷重に対応できる一方で、他の転がり軸受に比べて油膜切れでころ端面に焼き付きが生じやすかった。新製品は保持器のころ端面と接触する部位に微細な溝を設けて潤滑油を保持し、給油することで耐焼付き性を高めた。ギアボックスは燃費や電費の改善を目的に潤滑油の削減が進む。希薄潤滑環境に対応できる軸受で2025年に年間売上高20億円を見込む。(2019年10月10日付日刊自動車新聞より)

電動化における先端技術や製品などを東京モーターショー 2019に出展

同社は、高速モーターに独自のトラクションドライブ減速機を組み合わせて、従来のモーターに比べて30%もの小型・軽量化することで電池搭載量を拡大し、電気自動車 (EV) の航続距離延長に貢献する「シームレス2スピードeアクスル コンセプト」や、世界初公開となる自動走行車の走る・曲がる・止まるの機能を1つにまとめた「クラスター・ローバー・モジュール・コンセプト」を披露。また、「電動車用希薄潤滑環境向け円すいころ軸受」を世界初出展したほか、「超高速プラネタリ用ニードル軸受」なども展示。(2019年10月11日付プレスリリースより

電気自動車 (EV) の航続距離の延伸と走行性能を高める2速の変速機構を開発中

-歯車を使用しないトラクションドライブ減速機と出力トルクを検出する磁歪式トルクセンサーなどで構成する。2023~24年ごろに発売されるEVへの搭載を目指す。日本精工はトラクションドライブ減速機や磁歪式トルクセンサーを用いた駆動システム「シームレス2スピードeアクスル」を全体または単体で提案する。小型軽量化とエネルギー効率を向上させることで欧州のCセグメントのWLTCモードで7%の電費改善を見込む。(2019年9月10日付日刊自動車新聞より)

揺動環境で使用する軸受けの耐久性を高めるグリースを新開発

-グリースの成分である基油、増ちょう剤、添加剤を最適化したことにより、耐熱性を確保したまま、軸受けの磨耗を低減できる。磨耗で生じるノイズを抑制する「音耐久性」 (近江勇人執行役) を向上し、軸受けの拡販につなげる。電動パワーステアリングなどの揺動環境で使用する軸受けは、一方向に回転する際に偏ったグリースがもう一方向に反転しても戻らずに、転動体と内外輪が金属接触する「フレッチング磨耗」が生じる。そこで同社は、基油を保持する増ちょう剤を転動体に付着しやすい仕様に変更した。増ちょう剤と基油を分離しやすくすることで、増ちょう剤が転動体の表面に層として残り、フレッチング磨耗を低減し、ノイズの上昇を従来品と比べて約7割抑えられる。(2019年4月19日付日刊自動車新聞より)

  

設備投資額

(単位:百万円)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 54,927 81,102 68,788
自動車事業 33,187 54,926 49,646

  

2021年3月期の設備新設計画

-新型コロナウイルス感染拡大の収束やその後の世界的な経済活動の回復時期を見通すことが非常に困難であり未定