LG Chem Ltd. 2020年12月期の動向

業績

(単位:百万ウォン)
2020年12月期 2019年12月期 増減率 (%) 要因
全社
売上高 30,076,510 27,353,078 10.0 -主にEV用バッテリーの販売増などで同社最高益を記録
営業利益 1,798,159 825,415 117.8 -石油化学部門での業務の効率化と収益性の改善など
当期純利益 682,408 376,104 81.4
-事業部門別売上高
バッテリーソリューション事業 12,363,524 8,350,251 48.1

LG Energy Solutionの設立

-2020年12月1日、同社のバッテリー事業を分社化し、LG Energy Solutionが発足。LG Energy Solutionは、全世界で従業員約22,000人 (韓国約7,000人、海外約15,000人) を抱える。韓国の梧倉、米国のミシガン州、中国の南京、ポーランドのヴロツワフに生産拠点を保有し、韓国の大田、米国のミシガン州、中国の南京、ドイツのフランクフルトでR&Dセンターを運営する。2020年は売上高13兆ウォン (1兆2,220億円) を見込んでおり、2024年にはこれを30兆ウォン (2兆8,200億円) 以上に成長させる計画だという。(2020年12月1日付プレスリリースより)

 

合弁事業

<GM/米国>
-GMは2020年11月、LG化学との合弁でオハイオ州ローズタウンに建設中のアルティウムバッテリーセルを生産するUltium Cells LLC工場で、従業員1,100人を募集していると発表した。敷地面積300万平方フィート(約28万平方メートル)となる同工場では、23億ドルを投じて電気自動車(EV)に搭載するアルティウムバッテリーセルの量産を行う。2022年4月までに操業開始予定の同工場は、旧GMローズタウン(Loadstown)工場に隣接し、年間生産能力は30GWh以上で、拡張の余地があるという。同社はフル稼働でバッテリーセルのコストを100ドル/1kWh以下とすることを目指しており、新アルティウムバッテリーはニッケルを多用しコバルトを最小限に抑えた大型のパウチ形セルとなる予定。また、バッテリーはGMの自社ブランドの電気自動車(EV)や、共同開発のホンダのEVに搭載される予定。
(GM press release on November 5, 2020)

現代自動車/インドネシア
-2020年6月、インドネシア現地紙Republikaは、現代自動車グループとLG化学がインドネシアで電気自動車(EV)用バッテリーの合弁会社設立を検討していると報じた。6月22日には、LGグループ会長と現代自の副会長が将来の電池や技術における提携について協議した。両社は協議したことを認めたが、決定には至っていないと述べた。現代自によると、現代自グループはLG化学と様々なプロジェクトで協業しているが、インドネシアのバッテリー合弁について具体的な議論は行われていないという。(From an article of Republika on June 24, 2020 and multiple sources)

Vinfast/ベトナム
-Free Malaysiaは2020年5月、ベトナム最大のコングロマリットVingroupの傘下で初の国産自動車メーカーであるVinfastが2021年に初の電気自動車(EV)モデルの量産を開始する計画だと報じた。EVの航続距離は最大500kmで、LG化学のリチウムイオン電池を採用する計画。LG化学は2019年4月にVinfastの電気スクーターおよびEV向けのリチウムイオン電池を生産する合弁会社の設立を明らかにしていた。
(From an article of Free Malaysia Today on May 28, 2020)

 

受注

米国の新興電気バスメーカーProterra
-米国の新興電気バスメーカーProterra (プロテラ)は12月10日、ロサンゼルス郡シティ・オブ・インダストリー(City of Industry)にある同社バス組立工場内にEV用バッテリー生産ラインを開設したと発表した。新設のバッテリー製造ラインでは、LG Energy Solutionと共同開発の次世代のセルを採用したバッテリーパックを生産する。(Proterra press release on December 10. 2020)

SkodaのSUV「Enyaq iV」
-同社がシュコダの電気SUV「Enyaq iV」に電気自動車 (EV)用バッテリーを供給するとチェコの政府機関Czech Investが発表した。今回の契約により、同社はシュコダのみでなくアウディやVWなどVWグループのEV用バッテリーサプライヤーとなる。「Enyaq iV」はVWグループのMEBプラットフォームを採用しているため、将来的にVWグループのMEBプラットフォーム搭載車にバッテリーを供給する可能性があるという。バッテリーは同社のポーランドのヴロツワフ (Wroclaw)の工場からの供給。同社が供給するバッテリーの容量は55kWh、62kWh、88kWhの3種類。「Enyaq 80 iV」は航続距離510kmの走行が可能な82kWhのバッテリーパックを搭載する。エントリーモデルの「Enyaq 50 iV」の航続距離は340kmとなる。これらのバッテリーは出力125kWの充電器に対応する。(Czech Investのリリースをみる)

 

 

その他の事業動向

-韓国のリチウムイオン二次電池用正極材メーカーL&Fは、LG Energy Solutionとその子会社に正極材を供給する契約を締結したと発表した。LG Energy Solutionの韓国および海外工場向けに供給する。契約期間は2021年1月から2022年12月までで、受注総額は1兆4,547億ウォン (1,381億9,650万円) に達する見込み。(2020年12月16日付プレスリリースより)

-韓国の複数メディアは、Samkee Automotiveが同国のLG化学から1,386億ウォン (121億9,680万円) 規模の電気自動車 (EV) バッテリー用エンドプレートを受注したと報じた。2021年2月から供給を開始する予定。Samkee Automotiveは現在、欧州プレミアムブランドおよびドイツ完成車メーカー向けのEV部品を供給しているほか、米国の完成車メーカー向けに受注したEV部品を2020年中に出荷開始する予定。(2020年6月18日付各種リリースより)

 

研究開発費用

(単位:百万ウォン)
2020年12月期 2019年12月期 2018年12月期
研究開発費 1,139,237 1,130,986 1,066,415
対売上高比率 3.8% 4.1% 3.9%

 

LGエナジーソリューションの研究開発

-同社はBEV、PHEVなどの自動車向けバッテリーのほかスマートフォン、電動工具及び住宅向けの研究開発を行っている。韓国本国のバッテリー研究センターのほか、米国、ドイツ、ポーランド、中国、日本などと連携して研究開発を行う。

拠点 研究内容 具体的な研究内容
バッテリー研究所 電池材料の開発 -大容量ハイニッケル系正極材の開発
-大容量急速充電負極材の開発
-高機能性(高温耐久性/急速充電/安全性)電解質の開発
-安全性の高い(難燃/耐熱)セパレーターの開発
電池の製造工程の高度化 -電極の製造工程、組立工程の開発
自動車電池開発センター BEV、PHEV電池 (セル/パックの開発) -大容量、高エネルギー密度BEV、PHEV用バッテリー(セル/パック)
小型電池開発センター 次世代新市場開拓に向けた電池の開発
ESS電池開発センター 電力貯蔵用電池の開発 -電力網、産業/住宅用長寿命、高効率及び低コストバッテリーの開発

  

設備投資額

(単位:百万ウォン)
2020年12月期 2019年12月期 2018年12月期
設備投資額 5,300,000 6,900,000 4,600,000

-電池事業部門における主な設備投資は、中国における円筒形バッテリー及び自動車向けバッテリーへの投資、またポーランドにおける自動車向けバッテリーに充てられた。

 

設備投資

<韓国>
-同社は、2021年1~3月期までに約650億ウォン (57億円) を投資し、全羅南道の麗水工場でカーボンナノチューブの生産能力を1,200トン増強すると発表した。工場増設が完了すると、同社は既存の500トンと合わせて合計1,700トンの生産能力を確保することとなる。これにより同社は、リチウムイオン電池の正極導電材用として急成長するカーボンナノチューブ市場の攻略を目指していく。また、北米、欧州、中国などの自動車メーカーを対象に販売規模を増やしていく計画で、2022年には工場の追加増設も検討している。(2020年4月27日付プレスリリースより)
<中国>
-中国の複数メディアは、塩城で開催された「江蘇‐韓国企業家交流会および第2回中韓貿易投資博覧会」にてLG化学とLGエレクトロニクスが南京経済開発区と投資に関する契約を締結したと報じた。LG化学は5億ドルを投資し、南京経済開発区に自動車駆動用円筒形バッテリー工場を建設する。製品は主にテスラ、BMWなどに供給する。工場完成後は年間売上高100億元を見込む。(2020年11月2日付各種リリースより)
<ポーランド>

-同社はポーランドの産業銀行などの金融機関から5.5億ユーロ (639億2,100万円) の資金を調達すると発表した。これによりポーランドの電気自動車 (EV) 用バッテリー工場増設などに要する資金を安定的に確保することが可能となった。LG化学は2020年、バッテリー分野で約3兆ウォン (2,640億円) 規模の設備投資を行う計画。なお、同社は現時点でEV用バッテリーの受注残高が約150兆ウォン (13兆2,000億円) に達している。また、2024年にはバッテリー分野で売上高30兆ウォン (2兆6,400億円)を達成する計画を掲げている。(2020年4月23日付プレスリリースより)