EVE Energy Co., Ltd.[恵州億緯鋰能股份有限公司] 2023年12月期の動向
業績 |
(単位:百万元) |
2023年12月期 | 2022年12月期 | 増減率(%) | |
売上高 | 48,783.59 | 36,303.95 | 34.38% |
営業利益 | 4,845.74 | 3,511.93 | 37.98% |
経常利益 | 4,828.79 | 3,498.13 | 38.04% |
当期純利益 | 4,520.27 | 3,671.89 | 23.10% |
要因
-同社は中国民生用電池分野で市場で主導的な地位を占めており、リチウム一次電池の販売および輸出において8年連続で中国国内トップとなった。
-新エネルギー車産業の成長の恩恵を受け、同社の駆動バッテリーの出荷も成長を続けている。
新製品
同社は、商用車向け超急速充電バッテリー「開源電池」を発表した。
・「開源電池」は3C超急速充電技術を採用し、SOC (充電率) 20%-80%の充電時間は15分。通常のバッテリーに比べ、充電時間を67%短縮し、サイクル寿命を7,000回に延ばした。
・安全面では、バッテリーパックを対角に9mmねじる試験を行い、6万回実施後も構造の完全性と良好な気密性を保持することができた。
・また、商用車バッテリーの大型かつ特殊構造を持つという課題に対しては、CTB全域発泡技術や上下両面冷却技術を採用することで、バッテリーの温度を正確にコントロールし、バッテリーの性能と寿命を延長することに成功した。
・今回発表した「開源電池」シリーズは、LF125P、LF125H、LF140P、LF150Pの4種類のセルパターンで展開される。これらのバッテリーをベースに、マイクロバスM3/M4や小型トラックT3、大型トラックH2/H3の4つのプラットフォームを開発し、物流車や大型トラックなどさまざまな商用車分野に幅広く適応する。(2024年5月11日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより)
新会社
-同社は、7つの地域統括会社(北京本社、華南地域、華中地域、西南地域、東北地域、アジア太平洋地域、東南アジア地域)および台北オフィスを設立したと発表した。新しい地域本社によって、顧客により迅速なサービスを提供していく。(2024年1月29日付EVE EnergyのWechatアカウントより)
-同社は、シンガポールに子会社「億緯鋰能新加坡有限公司」を設立したと発表した。東南アジア市場のニーズに対するレスポンスやサービスを高める。同社は中国とシンガポールの連携を強化し、東南アジアにおける販売ネットワークを整備する。
(2024年1月2日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより)
受注
提供先 | 受注内容 |
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江淮汽車 |
同社は、江淮汽車の「瑞風RF8」に大型円筒形三元系バッテリーを供給したと発表した。 ・「瑞風RF8」に搭載されるバッテリーシステムのエネルギー密度は180Wh/kgで、バッテリー容量は44.5kWh。圧力を逃がす弁を持ち、システムを取り囲む冷却設計により、ライフサイクル全体でNTP(熱拡散がなく、火災がない)を実現することができる。 ・また、バッテリー材料や構造の刷新により、超急速充電も可能にしたことで、高いエネルギー密度、高い安全性、急速充電を実現している。 (2024年2月1日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
GM | 同社は、傘下の湖北億緯動力有限公司がGMから車載用の12Vリチウムイオン電池システムを受注したと発表した。(2023年9月13日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
GAC Aion | 同社は、広汽埃安(GAC Aion)傘下である「Hyper (昊鉑)」ブランドの「Hyper GT」に駆動用バッテリーを供給すると発表した。この製品は角形三元系バッテリーで、ラミネート技術を採用し、エネルギー密度が高く、内部抵抗が低く、急速充電能力が高いなどの特性を兼ね備える。(2023年7月6日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
戦略提携
提携先 |
内容 |
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StoreDot |
・イスラエルの新興バッテリーメーカーStoreDotは、EVE Energyとの提携拡大を発表した。今回の契約により、StoreDotはEVE Energyの広範な製造拠点を利用しながら、100 in 5の超急速充電バッテリーセル(XFCバッテリー)を大量生産できるようになる。 ・StoreDotはまた、StoreDotの技術をEVE Energyにライセンス供与し、グローバルな能力の構築と併せて、他のサードパーティーとのライセンス契約を引き続き推進する。この取引により、将来的にはEVE Energyの先進生産ラインから生産されるStoreDotのセルが、同社の顧客ポートフォリオである世界の電気自動車メーカーに直接納入されるようになる。 ・EVE Energyは2017年にStoreDotとの提携を開始し、2021年には提携拡大して事業への大規模な投資をすることを発表していた。 |
開沃集団 |
傘下の億緯動力(EVE Power)は、開沃新能源汽車集団有限公司(開沃集団)と戦略的提携契約を締結したと発表した。 ・両社は駆動用バッテリーの開発・生産、市場開拓など協業する。 ・長期的な協業を念頭に電池分野において戦略的に提携する。億緯動力の技術的な優位性にベースに、開沃集団により競争力のある製品を提供していく。 (2024年1月29日付億緯動力のWechatアカウントより) |
Electrum、国威科創 | 同社は、PT Energi Kreasi Bersama(Electrum)、深圳市国威科創新能源科技有限公司(国威科創)と電動オートバイのバッテリーシステムおよびバッテリー交換事業について3社間で提携契約を締結したと発表した。3社はバッテリーシステムの設計や技術の改善や競争力強化を図る。さらには、中国および東南アジアでバッテリーシステムの安定供給やアフターサービスを確立し、電動オートバイのバッテリー交換運営分野における市場シェアを引き上げる。(2023年11月28日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
荊門公交集団 | 同社は、傘下の億緯動力が荊門士公共交通集団有限公司(荊門公交集団)と戦略的提携契約を締結したと発表した。両社は新エネルギー車(NEV)の普及、NEVの充電・バッテリー交換、バッテリーリサイクル、生産・販売面などで協力し、都市公共交通の電動化や公共分野におけるNEV産業チェーンを構築する。(2023年10月20日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
Li-Cycle | 同社は、カナダのリチウムイオン電池回収企業Li-Cycle Holdings (Li-Cycle)と了解覚書(MOU)を締結したと発表した。両社はグローバルで持続可能なリサイクルソリューションを模索し、EVE Energyが海外の工場および対象市場における不要になった電池のリサイクル事業を実現することをサポートする。また、今回の提携では、電池材料の循環型リサイクル供給システムを形成し、EVE Energyによる低炭素の目標実現を支援する。(2023年7月12日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
容百科技 | 同社は、容百科技と戦略的提携を締結したと発表した。両社は電池や素材、市場戦略、技術・製品開発、サプライチェーンなどの分野で協力し、グローバルで競争力をもつ産業チェーンの構築を目指す。(2023年5月30日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより) |
展示会
-傘下の億緯動力[EVE Power Co.,Ltd.]は、2024年ニューヨークモーターショー(New York International Auto Show)に出展したと発表した。同社は、BMW、Rimacなどの自動車メーカーから受注している円筒形バッテリーのほか、12V分野ではSIMBAシリーズを出展した。SIMBAシリーズは高/低温、サイクル寿命、軽量化などで優れた性能を発揮する、鉛蓄電池を代用できるもので、すでにGMから受注しているという。さらに同社は三元系電池、リン酸鉄リチウムイオン電池、リン酸マンガン鉄リチウム電池などさまざまな角形電池シリーズも紹介した。(2024年4月12日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより)
-同社は、先進的なセルや新しいエネルギーソリューションを9月12日-14日にデトロイトで開催されるThe Battery Show North Americaに出展すると発表した。イベントでは、塩化リチウム電池、二酸化マンガンリチウム電池、スーパーキャパシタ、小型リチウムイオン電池、円筒形三元系電池、円筒形リン酸鉄リチウム電池などを出展した。うち、46系大円筒形電池はBMWが新たに発表した電気自動車(EV)「BMW Neue Klasse」の主要動力源である。現在、億緯鋰能の複数の大円筒形電池はCサンプル段階に入り、2023年6月には46系大円筒形電池を100万個ラインオフを完了し、200万個目は9月にラインオフ予定。(2023年9月22日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより)
-同社は、ドイツMunichで開催のIAA Mobility 2023で乗用車向けのパワーセルソリューションを出展したことを発表した。同社は、Aセグメント、Bセグメント、CセグメントセダンからSUVといったさまざまな車種に対応するために高さ調節が可能だという直径46 mmの大型円筒形バッテリーを出展した。製造期間は7日に短縮し、従来の方法に比べて工程は30%効率化した。これにより、生産効率が40倍と飛躍的に向上したという。複数種類の大型円筒形バッテリーセルはすでにCサンプルの試験段階に入っており、生産量は9月下旬には200万個に達する見込み。π-SYSTEMで使用される円筒形バッテリーは、車両全体のエネルギー消費を最小限に抑えながら生産効率を最大化するよう開発されており、このシステムは、高度に統合された設計と軽量素材の使用により、10%の充電状態から80%の充電状態まで室温で9分という急速充電が可能で、最大充電電流は6.3 Cレートである。-10°Cの環境でも、π-SYSTEMは最大充電電流4.5 Cで、10%から80%までの充電時間は20分、加熱速度は1分当たり2°Cとなるという。(2023年9月11日付プレスリリースより)
工場建設
-同社は、傘下のEVE ENERGY US Holding LLCがElectrified Power、ダイムラー・トラック(Daimler Truck)、パッカー(PACCAR)と共同出資で米国にバッテリー生産を行う合弁会社を設立すると発表した。合弁会社が生産する電池は主に指定の北米商用車に使用される。(2023年9月8日付億緯鋰能のWechat公式アカウントより)
-バイオディーゼルや発電事業を手掛け電気自動車(EV)の開発も行うタイのEnergy Absoluteは、タイでのバッテリーセル工場設立のための調査実施に向け、中国の億緯鋰能(EVE Energy)および欣旺達電動汽車電池(Sunwoda Electric Vehicle Battery)傘下のSunwoda Mobility Energy TechnologyとそれぞれMOUを締結したと発表した。セル工場の初期の年間生産能力は6GWhとなる。EAグループ内のタイおよびASEAN地域での需要に対応し、電気自動車(EV)およびエネルギー貯蔵システム(ESS)業界においてコスト競争力のある先進的なセル工場の設立に、この調査結果が寄与すると期待される。(2023年7月31日付プレスリリースより)
-同社は、四川省成都市に21GWh規模の大型円筒形駆動用バッテリー工場を建設する計画を発表した。このプロジェクトへの総投資額は約52億元。本格稼働後の年間生産能力は約21GWhで、乗用車向けに46系の三元系大型円筒形バッテリーの生産を行う予定。(2023年6月26日付億緯鋰能のプレスリリースより)
-マレーシア投資開発庁は、億緯鋰能がケダ州Kulimで新工場の起工式を開催したことを発表した。EVE Energyの53番目となる新工場はまず422百万ドルが投じられ、マレーシア及び東南アジア市場向けの電動工具と電動二輪車に使用される円筒形リチウムイオン電池を生産する。EVE Energy Malaysiaの初期プロジェクトは段階的に建設され、建設期間は3年を超えない見込み。マレーシア投資開発庁は、EVE Energyとの協業によって、マレーシアにイノベーションと技術進歩の環境をもたらすとしている。(2023年8月7日付プレスリリースより)
研究開発体制
-同社の研究開発部門は、博士号を有するエンジニア約30名を中心に、材料や電気化学、構造設計、電子回路設計等の分野を専門とする600名近くの技術研究員で構成。
-研究開発センターの面積は5万平方メートル、研究開発向け資産は3億元超。電気性能、安全性試験、信頼性など一連の実験室を含む研究実験室を5つ有する。武漢大学、華南理工大学、華南師範大学など多くの大学や研究機関と提携。
研究開発センター
概要 | |
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本社R&Dセンター | ‐本社R&Dセンターに対する投資額は20億元を超え、延床面積は14.5万平方メートル。2021年8月に着工し、2022年11月に竣工した。駆動用バッテリーおよびバッテリーシステムの研究施設が設けられている。円筒形バッテリー、角形バッテリー、モジュール、BMS、蓄電池システムなどの精密検査と分析が行われる。また、新技術・製品発表会も開催し、大型円筒形バッテリー、“π”電池システム、全固体及びナトリウムイオン電池、リチウム金属二次電池、水素エネルギー技術を紹介した。大型円筒形バッテリーは、エネルギー密度が350Wh/kgで9分という超急速充電を実現する。“π”電池システムはCTP (Cell-to-Pack)技術をベースに複合材料と接着剤を使用して重量を10%軽減、エネルギー密度は260Wh/kgに達する。現在開発中の円筒形のナトリウムイオン電池は、正極材に層状酸化物を、負極材にハードカーボンを使用し、C40アルミケースを採用する。エネルギー密度は135Wh/Kgに達し、マイナス40℃でも稼働できるほか、充電回数2500回でも容量80%を維持できる。 |
リチウム電池技術センター | 材料分析実験室、電気化学分析室、安全測定及びパイロット生産ラインなどを含む2つの大型実験室を保有し、リチウム電池全ライフサイクルのテスト、分析、測定を実施可能。2017年、リチウム電池研究開発への設備投資を継続し、14,000平方メートルのリチウム電池研究開発ビルを新築。固体カソードリチウム電池の開発に注力。 |
リチウムイオン電池技術センター | リチウムイオン駆動電池、リチウムイオン蓄電池、民生用リチウムイオン電池及び新型材料とコア技術を重点的に開発。このほか、高安全性駆動/蓄電池モジュール及びシステムの統合技術開発に注力し、国内外の顧客に電源ソリューションを提供。 |
電源システム技術センター | 自動車用駆動電池、通信用蓄電池、安全信頼性の3つの部門で構成。主に通信用蓄電池と自動車用駆動電池製品の設計、開発、検証を担う。 設立以来、国と広東省の重点技術研究プロジェクトに取り組む: 1)BEVトラック用電源システムの重要技術の研究と産業化 2)レンジエクステンダーEVバス用デュアルエネルギー動力統合ユニット及びそのコントロールシステムの研究・商業化 |
研究開発費 |
(単位:百万元) |
2023年12月期 | 2022年12月期 | 2021年12月期 | |
研究開発費 | 2,870.62 | 2,260.95 | 1,379.21 |
対売上高比率(%) | 5.88 | 6.23 | 8.16 |
-2023年12月現在、研究開発人員は5,291名で、同社の総従業員数の19.35%を占める。
特許
-欧州自動車工業協会の情報セキュリティ管理システム評価TISAX AL3の審査に合格したと発表した。TISAX (Trusted Information Security Assessment Exchange)はドイツ自動車工業会 (VDA) が ENX (European Network Exchange) と共同で策定した情報セキュリティ評価基準。
-子会社の湖北億緯動力有限公司[EVE Power Co., Ltd.](億緯動力)がTUV NORD CERT GmbHからISO 26262: 2018 (Ed.2 up to ASIL D) プロセス認証を取得。億緯動力のLF173 およびLF230バッテリーはIEC62619 CB認証を取得し、LF105、LF173、LF304バッテリーはそれぞれUL2580、UL1642、およびUL1973認証を取得している。