株式会社キリウ 2005年度-2006年度の動向

ハイライト

海外動向

<アジア>
タイ生産会社設立
- 2006年1月、タイにブレーキ部品の製造販売子会社を設立すると発表した。2月に設立後、年末までにブレーキローターやドラムの生産を開始、日産自動車など現地の日系メーカー拠点に供給する。新会社の名称はキリウタイランドで、全額出資子会社として設立する。同社としては、インドネシアや米国、中国、韓国に次いで5番目の海外拠点。操業直後は、素材を日本から輸出、現地で製品を加工するが、07年には鋳造設備を導入、素材生産から加工までの一環体制を整える。08年の生産計画は、鋳造が月産2千トン、加工は同20万個。(2006年1月13日付日刊自動車新聞より)

中国合弁会社設立
- 2005年4月、中国・広州の合弁生産拠点に鋳造工場を建設すると発表した。操業開始は06年7月、月産能力は2,300トンを予定する。これにより鋳造から加工までの一貫生産体制を整えて、日系自動車メーカーの現地拠点などの受注開拓に結びつける。鋳造工場を新設するのは、台湾の六和機械股?有限公司との合弁拠点、六和桐生機械有限公司(KLC)で、普通鋳鉄及びダグタイル(球状黒鉛)鋳鉄で素材を生産する。KLCは、昨年末からブレーキディスク、ドラムの機械加工を行っている。(2005年4月2日付日刊自動車新聞より)

- 2006年9月、中国・広州のブレーキ部品の合弁生産会社、六和桐生機械有限公司(KLC)が鋳造工場を稼働したと発表した。これによりKLCは素材から機械加工まで生産の一貫体制を確立、ブレーキディスクを始めとした部品の納入リードタイムを短縮し、現地日系自動車メーカー向けなどの新規開拓に結びつける。鋳造工場の月産能力は2300トン、普通鋳鉄及びダグタイル鋳鉄の素材を生産する。当面は東風日産が生産する「ティアナ」「シルフィ」クラス向けの素材を生産する。また、日系メーカーの受注増が見込めるため、08年にはフル稼働になる見通し。(2006年9月6日付日刊自動車新聞より)

韓国合弁会社設立
- 2005年12月、韓国・大邱市に自動車用ブレーキの主要部品であるブレーキディスクおよびドラムの合弁生産拠点を設立すると発表した。キリウとしてはインドネシア、米国、中国に続く4番目の生産拠点。同社が技術提携を結ぶ現地企業の三益(サミック)グループとの合弁会社「三益キリウ」で、06年から年産130万個の体制で生産を立ち上げ、主にルノー三星とGM大宇に納入する。08年には工場を増設し、年産能力を250万個に引き上げる。(2005年12月16日付日刊自動車新聞より)

<北米>
メキシコ拠点設置
- 2006年2月、日産自動車はメキシコ日産でのシリンダーブロック生産事業を同社に委譲すると発表した。4月までに、工場や土地などの資産を含め譲渡する。同社がメキシコに生産拠点を設けるのはこれが初めてで、今後、日産圏以外への事業拡大にもつなげていく。メキシコ日産は現在、車両工場2ヶ所と鋳造工場1ヶ所を持つ。今回、同社に譲渡するのは、メキシコ日産の車両工場と北米にある日産車両・エンジン工場にシリンダーブロックを供給している鋳造工場のレルマ工場で、同工場の一部である7万5千平方メートルと建物など。同社は、02年から、ブレーキディスクとブレーキドラムを供給しており、これらの製品の一部現地生産切り替えも検討する。(2006年2月25日付日刊自動車新聞より)

開発動向

新生産技術
ディスクブレーキの作動初期に発生するジャダー(異常振動)をゼロに抑えるブレーキローターの量産技術を開発した。新技術は、まず切削機の“剛性”を強化して、研磨工程だけでローター摺動面の厚みの変動量を従来の半分以下となる10ミクロン以下にとどめることを可能にした。その上で独自に開発した研磨手法によって変動量を5ミクロン以下に仕上げる。最新の高精度ハブに組み付ければ面振れ精度を10ミクロン以下にとどめられる。従来、こうした精度を確保するにはローターとハブを組み付けた後にローターを研磨することや「位相合わせ」が必要だった。新技術は、基本となる切削精度の改善でこうした手間を解消し、精度向上と量産化を両立した。(2006年6月30日付日刊自動車新聞より)

2006年人とくるまのテクノロジー展 情報

<展示ハイライト>
同社初のトヨタ用FRディスク、RRドラムインディスク(エスティマ)をはじめとするブレーキディスク類の展示と、独自の設計システムを活用したブレーキディスク専用の設計システムを発表。

■ブレーキディスク類の展示 

搭載部品 メーカー モデル モデルイヤー 生産拠点
FRディスク ホンダ エリシオン 人とくるまのテクノロジー展 2006展示 N.A
RRドラム ゼスト
RRドラムインディスク スバル レガシィ
FRディスク STI S204
FRディスク スズキ エスクード
FRディスク トヨタ エスティマ
RRドラムインディスク
FRディスク マツダ RX-8
FRディスク 日産 フーガ
FRディスク マーチ


■古典的有限要素法による高精度CAE解析
・古典的な有限要素法を使用した、独自のブレーキディスク設計システムを構築。
・標準的なブレーキディスクの設計であれば、2日間で完了することができる。
・現状の計算能力で処理可能な要素数全てを、ブレーキディスクモデルだけに割り当てることにより、精度の高い解析結果を得ることができる。
・複素固有値解析や非線形解析のような最先端の解析手法を使わずに、開発の初期段階から、設計品質の良いブレーキディスクの提供が可能。

・同社は専門メーカーとしてのノウハウと経験を活かして、古典的な有限要素法を最大限に用い、固有値解析と熱強度解析の精度を向上させることが出来た。本評価方法を適用した、ブレーキディスク専用の設計システムの構築により、以下の効果が得られた。>>>
 1.固有値および熱解析の自動化・高速化により、多数の形状を比較検討し、短期間かつ容易に最適形状を選定できる。(標準的なブレーキディスクの設計は2日間で可能)
 2.古典的な有限要素法を用いた固有値解析と熱応力解析の精度向上によって、ブレーキの鳴き・ジャダーおよびディスクの熱強度などの要求性能を満足する設計手法を確立した。
 3.数多くの解析の実施により、固有モードおよび熱特性に及ぼす、ブレーキディスク各部の形状・寸法・材質などの影響についてノウハウを蓄積できた。
 4.解析プロセスの継続的改善によるスパイラルアップで、最終形状決定までの期間を更に短縮でき、開発初期段階での設計品質が向上した。

・今後、非線形解析法などの導入による解析手法の高度化や、解析適用範囲の拡大、形状選定時の意思決定の自動化を図るとともに、ブレーキドラム版のシステム構築を行う予定。